γ 豪雷と氷雪
午前 ヤマブキシティー 化学研究室 sideカレン
トリ〈カレン、忘れ物は無いね?〉
カレン〈ええ、鍵にボールも持ったから大丈夫やよ!《〉じゃあ後は頼んだよ!》
A「はい、任せてください!」
うちは研究所の同僚に[チカラ]のうちの1つである[テレパシー]で言葉を伝えた。
うちの事は知ってるよね?
世間一般では化学者、そしてもう一つの顔が、[豪雷の防人]。
[チカラ]に目覚めた時は大して興味は無かったけど、いざ究めてみると便利だったんよ!
何しろ、この姿だと飛べるし、それ以前に化学者である以上、実験で電気を使うから電気代が助かってる。
[テレパシー]も使えて、[ハトーボー]姿でも会話出来るから、いつもこの姿なんよ。
トリには{人間の姿でいたほうがいいんじゃない?}って言われてるけど、せっかくの[チカラ]だからフルに使わないとね!
うちは嘴でビルの窓を開けて、窓の冊子に飛び乗った。
うちの肩? いや、翼に引っ掛けるように鞄をかけて、大空を見上げる。
その中には、トリと、もう一匹のメンバーが入った、計二つのボール。
それから部屋の鍵、財布、メモ用のノート、ポケギア。
さっきトリに散々チェックされたから、きっと大丈夫。
トリ〈……じゃあカレン、乗るよ!〉
カレン〈うん。 多忙な人だから待たせる訳にはいかないから、急いで行くよ!〉
トリ〈うん!だって、今話題の気象予報師だもんね!〉
うちのパートナー、[エーフィ]のトリが、うちの背中に飛び乗りながら言った。
{無理なんじゃない?}って思うかもしれないけど、運よくうちは種族の中では大きいほう……平均より20cmぐらい大きくて、トリは逆に平均より5cmぐらい小さいから可能なんよ!
カレン〈じゃあ捕まっててよ!〉
トリ〈じゃないと落ちちゃうでしょ?〉
そして、お決まりのやりとりを交わして、うちは大空へと舞った。
………目指すは[氷雪の防人]が待つ隣の[タマムシシティー]。
歩いてだと軽く一時間はかかるけど、うちの[チカラ]で強化された素早さなら、5分あれば充分。
……トリ、しっかり捕まっててよね!
…………
数分後 タマムシシティー sideカレン
トリ〈………ねえカレン? あのビルの屋上にいる人がセツさんじゃないかな?〉
カレン〈そうやね。[ポワルン]を連れてるし、きっとそうやね!〉
鳥ポケモンとして発達した視力が、ビルの上の人影を捉えた。
トリ、きっと当たりやよ!
だって、あのビルはカントー放送の収録スタジオが入っているから……。
うちも、[ディフェンダー]を発表した時によく行ったんよ。
うちは羽ばたくスピードを速め、一目散にそこに降りたった。
……トリ、降りたね?
カレン《………ええっと、あなたが気象予報師のセツさんやね?》
テレビでよく観る人だから知ってるけど、うちは念のため[テレパシー]で話しかけた。
セツ「……という事は、あなたが化学者のカレンさんですね?」
ウェズ〈…でもまさか、本当にポケモンの姿で来るとは思わなかったよ。〉
トリ〈この姿の方が、早く来れるんですよ。〉
やっぱり、そうやね!
カレン〈……そして、もう一つの肩書きが、「〉[氷雪の防人]。そうやね?」
セツ「はい、あってますよ。………あなたも、[豪雷の防人]ですね?」
カレン「そう。」
うちらは、それぞれの位置付けを念入りに確認した。
………でも、口頭よりも、彼と対面させた方が早いかな?
セツ「なら、もうひとりを紹介しないといけないですね?」
?
セツさんも、うちと同じ考えなんやね?
カレン「そうやな。」
うちらはほぼ同時に、二つ目のボールに手をかけた。
スノウ〈イカヅチ、久しぶりね。〉
イカヅチ〈スノウの方こそ、アイツとは違ってこんなに近くにいるとは思わなかったな。〉
………話では聞いていたけど、うちと同じで伝説の種族を連れているのは本当やったんやね?
澄んだ声の[フリーザー]、スノウと、口調はキツいけど、こう見えて凄く真面目な[サンダー]、イカヅチが、再会を喜ぶように言葉を交わした。
イカヅチによると、彼女とは幼少の頃からの仲みたいなんよ。
他にも、3匹、それも全員伝説らしいよ。
スノウ〈本当にそうね。〉
トリ〈へぇー……。やっぱり、イカヅチと一緒で大きいんだね?〉
ウェズ〈僕も、初めて会った時は本当にびっくりしたよ……。……あっ、僕は[ポワルン]のウェズ。よろしくね。〉
トリ〈うん、よろしくね! ワタシは[エーフィ]のトリ。これからは何回か会うことになりそうだね!〉
ウェズ〈だって、同じ伝説、[防人]だもんね。〉
それぞれに、自己紹介も済んだみたいやね。
………この後、セツさんの時間の許す限りお互いの事について話したんよ。
……セツさんを紹介してくれたシルクには、感謝しないとね!