42 S 水冷の証
昼 渦巻き島内 sideシルク
ユウキ〈………じゃあエレン君、いくよ!〉
エレン〈うん!〉
薄暗い洞窟の中で、青い瞳の[ピカチュウ]が隣で身構えている[ブイゼル]威勢よく言った。
………これが最初の戦闘だから、エレン君の実力はまだ分からないわ。
A「こんな所で野生の[ピカチュウ]か。……よし、[ゴーリキー]、[アリゲイツ]、行くぞ!」
そうそう。
最初からトレーナー戦よ。
私とユウキの両方とも、[絆の加護]を発動させているからユウキ達にダメージは殆ど加わらないけど、技術指導って事で大目に見てもらえるわよね?
ゴーリキー〈目が青いって……〉
アリゲイツ〈珍しいね…。〉
ボールから出て、相手もすぐに身構えたけど、ユウキの瞳を見て言葉を失ったわ。
………まぁ、無理ないわね。
ユウキ〈エレン君、まずは僕が援護するから。〉
エレン・A〈うん!……じゃあまずは[水鉄砲]!〉「[気合い溜め]、[ピカチュウ]に[噛みつく]!〉
アリゲイツ〈じゃあ先に行かせてもらうよ!〉
エレン君はすぐに口内に水を溜め、ゴーリキーに向けて放出した。
……定石通りね。
相手は身体に力を蓄え始め、もう片方は足に力を込めてユウキめがけて走り始めた。
ゴーリキー・アリゲイツ〈フッ、甘いな。〉〈[噛みつく]!〉
エレン〈えっ!?かわされた!?〉
ユウキ〈特殊技は飛距離がある分、しっかり狙わないとね。〉
エレン君の水を相手は難なくかわし、ユウキも、相手の接近を後ろに受け流した。
ユウキ・アリゲイツ〈例えば、こんな感じでね。[目覚めるパワー]!〉〈!?〉
アリゲイツは余所見しているユウキにまさか交わされるとは思っていなかったらしくて、頭からよろめいた。
対して、余裕でかわしたユウキは手元に即行で紅蓮のエネルギーを蓄積させた。
エレン・A〈!凄い!こんなに早く溜めれるんだ!〉「そのまま[水鉄砲]!それから[怪力]!」
アリゲイツ・ゴーリキー〈次はかわされない![水鉄砲]!〉〈俺の事忘れてないか?[怪力]!〉
ユウキ〈狙いはいいけど、まだまだだね。…〉
アリゲイツ・ユウキ〈!? あの色は炎なのに、防がれた!?〉〈[気合いパンチ]!〉
ユウキはエレン君に向けて放たれたソレに向けて紅蓮の弾を撃ち込んだ。
相性が悪いにも関わらず、互いに打ち消し合って消滅した。
……でもユウキ?
あなた、絶対に加減してるわよね?
弾の大きさですぐに分かるわ。
打ち消している間に、ユウキはすぐに技を発動させ、ゴーリキーに力を溜めた拳で対抗した。
ゴーリキー〈っ!? ……強い!?〉
完全に、ユウキが圧してるわね。
両者の拳がぶつかったけど、体格の大きいほうが派手に飛ばされた。
………今度は、全力でいったのね?
エレン〈うわぁ……あんなに大きいポケモンをたった一発で………。〉
エレン君、ユウキの技に呆気にとられているわね……。
………完全に、放心状態だわ……。
シルク《エレン君!! バトルに集中して!!》
エレン〈!? 〉
私は見かねて、彼に激を入れる…。
当然、ビクッってなって、正気を取り戻したわ。
一方の、飛ばされたゴーリキーは起き上がる事が出来なかった。
A「うそ………。[ゴーリキー]がたった一発で……。」
アリゲイツ〈マジかよ……。〉
ユウキ〈見た目で実力を判断してもらったら困るよ!……さあエレン君、二匹目もいくよ!〉
エレン〈うっうん。〉
………呆然としてるわね………相手………。
ユウキ〈エレン君、接近して[燕返し]を頼んだよ!〉
エレン〈うん!〉
ユウキに促され、エレン君は風を斬って走り始めた。
………でも、正面からは行かない方がいいと思うわ。
彼が続いて、ユウキも接近し始めた。
A「!? [水の波動]で迎え撃つんだ!」
アリゲイツ・ユウキ〈! [水の波動!〉〈エレン君! 右に避けて!![10万ボルト]!〉
エレン〈!?〉
アリゲイツは驚いた表情を見せながらも、なんとか音波を乗せた水流を放った。
エレン君は、慌てて右に跳んだ。
……でも、咄嗟だったから頭から滑り込んじゃったわね。
その後ろから、ユウキは高電圧の電撃を放って牽制した。
ユウキ〈僕が足止めしている間に接近して!![目覚めるパワー]連射!!〉
エレン〈うん!その後で[燕返し]だね!〉
彼は再び立ち上がって、走り始めた。
アリゲイツ〈!? 凄い数………近づけない!?〉
ユウキ、容赦ないわね。
ユウキはおびただしい数の紅蓮球で相手の進行を妨げた。
………その数、軽く30以上。
エレン〈今だ![燕返し]!!〉
その隙に、エレン君は右腕に力を溜める……。
アリゲイツ〈!?〉
そして、溜めた手刀で思いっきり相手を切り裂いた。
アリゲイツ〈っ!!〉
流石、固定技ね!
なかなかの威力だわ!
ユウキ〈[目覚めるパワー]!〉
ダメージを受けた相手に、ユウキが追撃………加減して……。
ユウキ〈エレン君!!〉
そして、視線で合図して、ユウキは相手から距離をとった。
……きっと、最後はエレン君な技できめようって考えね。
エレン〈うん![燕返し]!!〉
もう片方の手で二発目。
……まだまだ粗削りだけど、いい感じね。
アリゲイツ〈………くっ……負けた………。〉
そして、ダメージが蓄積したアリゲイツは力無く崩れ落ちた。
A「…………強い………。」
倒れたメンバーを元に戻すと、相手のトレーナーはかなり動揺しながら立ち去った。
………ええっと、見た感じ、エレン君は物理アタッカーね。
最初の方の[水鉄砲]の威力もそこそこあったけど、初速かイマイチね……。
それに、走る速さも、まだまだ鍛えられそう。
この後、客観的に観ていた私、スーナ、フライがバトルの好評をしたわ。
………もちろん、歩きながらね!
…………
数十分後 sideシルク
エレン〈…………ううっ……。〉
フライ〈……エレン君?顔色悪いけど、大丈夫?〉
エレン君は、{………チョットヤバいかも……}って、何かの痛みに耐えながら呟いた。
頭を押さえてるって事は……、頭痛ね。
スーナ〈さっきまでなんともなかったから、やっぱりここで間違いなかったんだね♪〉
シルク〈ええ。 ユウキの時も同じ症状があったから、確実だわ!〉
大分前になるけど、ユウキにも、こういう事があったわ。
………確か、[フキヨセの洞窟]に行った時だったわ。
そこでコルドと出会い、[絆の賢者]にも任命されたら、思い出の場所でもあるのよ!(シリーズ1参照)
私は確信と共に、こう分析した。
{…………ここに、[水冷の化身]がいる}と……。
それに、ここは[渦巻き島]だから、私達の推測通り、あの種族で間違いないわね!
フライ〈ユウキにもあったの?〉
ユウキ〈うん。 その時はまさに今のエレン君の状態、そのものだったよ。〉
エレン〈……ねぇ?……さっきから{間違いない}とか言ってるけど……どういう事なの?〉
次第に益す痛みに耐えながら、彼は何とか言葉を紡いだ。
……エレン君、今は辛いけど、もう少し耐えて!
私は申し訳ないとおもいながらも、心の中で彼を励ました。
ユウキ〈………そうだね、そろそろ言ってもいい頃かな?〉
シルク〈そうね。滝も近くなってきたから、頃合いかもしれないわね。…〉
……そうそう。
ここのもう一つの名所は、洞窟内に突然現れる開けた場所に存在する、計り知れない落差の大滝。
海のド真ん中の洞窟だから、珍しい海水の滝なのよ!
ちょうどその場所だけ洞窟の天井が無くて、上から差し込む光で反射して幻想的なの。
私は辛そうな彼を気遣いながら、話を進める。
シルク〈単刀直入に言うと、エレン君をあるポケモンに会わせるために、ここまで来たのよ。〉
……あと、[証]を授けてもらって、正式に[水冷の防人]に任命してもらうため。
彼の場合、住んでいるのがカントー、ゆかりの地がジョウトだから……。
十分に時間がある時にしか、来れないわ。
エレン〈会わせたい………ポケモン……?………そんな事より……凄く頭が痛いんだけど……。〉
ユウキ〈厳しい事を言う事になるかもしれないけど、耐えて! 会えばすぐに治まるから!〉
フライ〈もしよかったら、ボクが乗せてくよ?〉
スーナ〈ウチはその方がいいと思うけど♪?〉
私も、その意見に賛成だわ。
あの時のユウキでさえ、動けなくなる程だったもの。
まだ10歳のエレン君なら、尚更だわ!
私達三匹は、ユウキに揃って提案した。
ユウキ〈うん。その方がいいね。………じゃあフライ、頼んだよ。〉
フライ〈もちろん!〉
ユウキは見上げながら言った。
………よし。
エレン君、フライに乗ったわね?
私達はこのまま、滝に向けてつき進んだわ。
………
数分後 大滝 sideシルク
スーナ〈うわぁー……凄い滝♪〉
私達の目の前に突然広がった絶景に、スーナが思わず感嘆の声を漏らした。
洞窟の中にも関わらず、大きな吹き抜けみたいになっているわ……。
そして、20mぐらいかしら?
どこか高い場所にある岩の割れ目から、外の海水が轟音と共に流れ落ちている………。
水の勢いが激しくて、ある程度落ちると水が霧状に細かくなる……。
地面タイプのフライにとっては厳しい環境かもしれないけど、水タイプのスーナにとっては絶好な環境ね!
フライ〈こんなに大きな滝は[濃霧の森]以来じゃないかな?〉
シルク〈そうね。あそこもこの位の規模だったわね。〉
フライは煩わしそうに滝を見上げながらも、私と同じで未来での旅を回想しながら呟いた。
[濃霧の森]といえば、[霧の湖]の景色も良かったわね……。
それに、ベガさん達、元気かしら……?
エレン〈そんな事より………頭が割れるように痛いんだけど……本当に………大丈夫なの………?〉
ユウキ〈辛いかもしれないけど、もう少しだから。〉
エレン〈……でも………痛みが尋常じゃないんだけど……。…〉
エレン君、あと少しだから、耐えて!
エレン〈……それに……滝の裏に誰かいるみたいだけど………バレバレだよ……!〉
一同〈〈〈〈裏?〉〉〉〉
滝の裏に?
歯を食いしばりながら話すエレン君に、私達は疑問符と共に聞き返した。
………暗いせいか知らないけど、誰かがいるような気配とか、物音は全く無いわよ?
私は首を傾げ、その方を………
???《……まさかバレるなんてね。》
スーナ〈えっ!?誰!?〉
フライ〈コレってもしかして、[テレパシー]!?〉
シルク〈ええ、間違いないわ!〉
見………!?
議論を交わす私達の脳内に、ここにいる誰のものでもない声が響いた。
ここにいる中で[テレパシー]を使えるのは私だけだから………、あのポケモンで間違いないわね!
私は思考をフルに活用して、ある結論にたどり着いた。
シルク《あなたが、[四鳥伝説]の[水冷の化身]ね?》
そして私は、声からすると、彼がしたのと同じ方法で語りかけた。
???《そうだけど、何故自分しか知らない事を!?》
シルク《あなただけじゃないわ。 あなたと同じ、[四鳥伝説]の当事者から聞いたのよ。》
まだあどけなさの残る声を主は、凄く驚いた様子で語った。
???《自分以外にも!?》
シルク《ええ。 それと、[水冷の防人]を連れて来たわ。……だから姿を見せてくれないかしら?》
………みんなの反応がないから、今会話してるのは私だけのようね?
私は言葉なき会話で、滝の裏にいるはずの彼を交渉した。
???《[防人]を!? わかりました。……だからちょっと待っててください。》
シルク《ええ、わかったわ。〈》………すぐに出てきてくれるそうよ?〉
ユウキ〈あっ、交渉してくれてたんだね?〉
やっぱり、聞こえてなかったのね?
シルク〈ええ。〉
エレン〈交渉って………どういう事?〉
フライ〈伝説の種族は誰かに就いてない限り、滅多に姿を見せないのが一般的なんだよ。〉
スーナ〈それが{伝説}って言われている理由の1つ、かな♪?〉
スーナ、私もそう思うわ。
……中にはライト達の種族みたいに、姿を変えて積極的に出てきている者もいるけど、大概がそうなのよ。
???《お待たせしました。》
?
あっ、準備が終わったのね?
再び、声が響いた。
すると突然、滝の裏に大きな影が見えたかと思うと、派手に水しぶきをあげて、その声の主が堂々と姿を現した。
………やっぱり、私の推測通りだったわね。
そのポケモンは、全体的に白を基調として、アクセントで紺の配色……。
翼を羽ばたかせて、私達の前に悠然と降りたった。
……大きいといえば大きいんだけど、私が見る限りでは大体4mぐらいだから………、彼はまだ子供ね、私と同じで。
エレン〈凄い……………こんなに大きなポケモン………初めて見た………。〉
???〈どうも、[ルギア]の[ニアロ]と言います。さっき話してたのは君だね?〉
ニアロと名乗った彼は、軽く会釈しながら言った。
スーナ〈ううん、ウチじゃなくて彼女のほうだよ♪〉
シルク〈ええ。さっきあなたと話してたのは私。[エーフィ]のシルクと言うわ。よろしくお願いするわね。〉
私は彼にニッコリと微笑みながら言った。
ニアロ〈へぇ、君が?〉
シルク〈そうよ。〉
フライ〈で、こっちの[ブイゼル]が、[水冷の防人]なんだよ。〉
フライも、彼の事を見上げながら紹介した。
エレン〈エレン………です……。〉
彼は、顔をしかめながら言った。
………相当、痛みが酷いようね?
ニアロ〈君がだね? ………じゃあ早速、コレを右腕に着けてくれる?〉
エレン〈右腕………に?〉
と、彼は軽く握っていた指(?)にあたる部分から、1つの青いリングを取り出した。
ユウキ〈………という事は、[水冷の証]かな?〉
ニアロ〈[ピカチュウ]さん、あたりだよ。効果とかは後で話すから。 それさえ着ければ、痛みが治まるはずだよ?〉
……年齢のせいか、馴染みやすいわね。
それに、伝説の種族ではライト以外に年下のひとと会うのは初めてね。
シロさんとクロさんはちょっと特殊だがら、何歳なのか分からないけど……。
エレン〈……着けたけど?〉
ニアロ〈……じゃあ早速、自分を捕まえてくれるかな?〉
エレン〈えっ!?どういう事!?〉
伝説のポケモンの思わぬ発言に、青いリングを着けた[ブイゼル]の少年は驚きで騒然とした。
シルク〈伝説では、[化身]はトレーナー就きのポケモンになる事になってるのよ。〉
ユウキ〈それはどの伝説でも変わらないんだよ。〉
エレン〈そうなの!? でもオイラ[モンスターボール]持ってないんだけど。〉
………そうね。
ボールはスクール生にとっては少し高い買い物……。
よっぽど裕福な家庭にでも生まれない限り、難しい話なのよ。
…………ちなみに、ユウキは中の下ぐらいだったかしら?
ユウキ〈なら、僕のをあげるよ。フライ、僕の鞄から出してくれる?〉
フライ〈うん、わかったよ。〉
スーナ〈あと、エレン君も姿を戻さないとね♪〉
エレン〈あっそうだった!〉
エレン君、すっかり忘れてたのね?
エレンはスーナに言われ、ハッとした。
そして、目を瞑り、姿を元に戻した。
エレン「何か緊張するなぁー………。……じゃあいくよ!」
ニアロ〈はい!!〉
彼はフライから受けとった空のボールを、ニアロ君の方へふわりと投げた。
コツッ
軽い音と共に、彼はそれから発せられた赤い光に包まれる………。
……そして、その光と共にボールへと収まった。
…………やっぱり、いつ見てもこの瞬間は緊張するわね。
張り詰めた空気と共にそれは2、3回ほど揺れ、静寂と共に治まった。
エレン「………まさか……オイラが伝説のポケモンを捕まえるなんて………。」
彼は感動とスケールの大きさに圧倒されながら、ニアロ君の収まるそれを拾い上げた。
スーナ〈コルドの時も、こんな感じだったらよね♪〉
ユウキ〈そうだね。〉
シルク〈それに、ユウキは私を含めてバトルで仲間にしてないから、トレーナーとしては異端児なのかもしれないわね。〉
普通は、私達、ポケモンを捕まえる時はバトルで弱らせてから捕まえるのが一般的だけど、みんな違ったわね……。
私は衰弱し、きったところを保護され、オルトは私のバトルに心惹かれて加わった……。
スーナは私と話すうちに旅に興味を持つようになって、リーフは生き別れた家族を捜すために加わった。
コルドは運命的な出会いをして、フライは仲がいいライトと旅をしていた私達に加わるかたちで仲間入り………。
………全員、一切のバトルがなかったわ。
ユウキとは、言葉が分かる前から何となく心が通じていた気がするから、彼にはポケモンを惹きつける何かが有るのかもしれないわ……。
15年ぐらい一緒にいる私が言うのだから、きっと間違いないわ!
エレン「ニアロこれからよろしくね!」
彼は感動を噛みしめながら、ニアロ君をボールから出した。
ニアロ〈こちらこそ! エレン君、それに皆さんも、とにかく外に出ませんか?〉
ボールから出ると、彼は溌剌とした様子で上を見上げた。
フライ〈……でも、外に出られる場所なんてあるの?〉
ニアロ〈
飛ぶんじゃなくて、
泳ぐんです!〉
ユウキ〈そっか。ここは海の中の洞窟。店を辿れば出られるかもしれないね。〉
そうね。
滝から流れ落ちた水はそのまま流れてるから、可能性は高いわね。
フライ〈……なら、ボクはボールに戻ってるよ。……だから、後は頼んだよ。〉
スーナ〈うん!シルクもね♪〉
シルク〈ええ。〉
ユウキは私達が話している間に、自分の鞄から彼のボールを取り出していたわ。
………その間に、エレン君も姿を変えて、
エレン〈ならオイラは自力で泳いでいくよ。〉
ユウキ〈じゃあエレン君、掴まらしてもらってもいいかな?〉
エレン〈いいけど息保つの?〉
シルク〈ええ、私が何とかするから、平気よ。〉
エレン君、心配しないで!
私の[サイコキネンシス]で空気の層を造れば、大丈夫よ。
私は変わらない笑顔で、笑いかけた。
………フライ曰わく、この笑顔は♂のポケモンに対して殺傷能力があるらしいわ……。
………何故かは分からないけど……。
ニアロ〈……いきましょうか!〉
シルク〈ええ! [サイコキネンシス]!〉
準備が出来たのを確認すると、ニアロ君は真っ先に水に飛び込んだ。
エレン君もユウキと続き、私はスーナの背中にしがみついた。
そして、ユウキが水に入るのと同時に、彼の頭の周りに空気の層を造りだす。
………で、私のにも同じようにして、深海の暗闇に飛び込んだわ。