40 S 水を秘めた少年
朝 クチバシティー sideシルク
ユウキ〈………じゃあ、そっちは頼んだよ。〉
コルド〈はい! 皆さんも、お願いしますね。〉
シルク〈ええ、もちろんよ!〉
私は二組に別れたうちの、もう一班に目配りをして大きく頷いた。
みんなのほうこそ、任せたわよ!
………ええっと、最初から話すと、私達は[1の島]を調査するグループと、[水冷の化身]がいる可能性が高いジョウト地方の[渦巻き島]に行くグループに別れたのよ。
前者は、オルト、リーフ、コルド。
後者は、[水冷の防人]候補のエレン君の事も考えて、空を飛べるスーナ、フライ。
……そして、身体が小さい私と、[ピカチュウ]の姿でのユウキ。
本来の姿では170cmぐらいだけど、[ピカチュウ]ではだいたい40cmぐらい。
[エーフィ]の私が94で、[スワンナ]のスーナは1.3m、[フライゴン]のフライは2m………。
リーフ〈じゃあ、行ってくるよ。〉
ええ。
私、ユウキ、スーナ、フライの4匹で、船着き場の方に歩いていくみんなを見送った。
………さあ、私達もいかないとね!
私は一度、東に見える太陽をチラッと見てから、エレン君との待ち合わせ場所に向かった。
…………
数十分後 sideシルク
ユウキ〈ごめんね。 ……待たせちゃったかな?〉
エレン「ううん。オイラも今来たばかりだから全然待ってないよ!……それに船着き場のほうまで行ってたんでしょ?」
場所はこの街のジムの前。
私達が挑戦した時は呆気なく終わったわ。
有星者ルールで一番手の種族と使える技を言わないといけなかったけど、どうって事なかったわ。
……何しろ、その時の一番手はフライで、相手は電気タイプ……。
元々私達は自分の独断で闘っていた事もあって、簡単に攻略できたのよ。
スーナ〈えっ!? 何でわかったの♪!?〉
えっ、エレン君!?
私達がココに来る前に寄る場所は言ってないのにどうして分かったの!?
私達は少年の思わぬ言葉に再会早々に言葉を失った。
エレン「オイラは生まれつき耳がいいんだよ。……この街の広さぐらいならはっきり聞こえるんだよ。……ポケモンならこのくらい普通でしょ?」
フライ〈ううん。 種族にもよるけど、街全体は流石にボク達でも無理
だよ……。〉
そうよ。
私達のメンバーの中で、生息地が砂漠のフライでさえ、400mトラック分で精一杯。
………だとしたら、これも[チカラ]の影響?
………そうなると、五感に干渉するモノは初めてね…。
私は驚きを露わにしながらも、彼についての仮説を立てた。
エレン「でもニド………オイラの[ニドラン♂]も遠くの音を聞き分けられるんだよ!?」
シルク〈………ああ、だからね………。 ……エレン君、[ニドラン]は♂も♀も聴覚が発達している種族なのよ。〉
どうりで、こう思っていたって訳ね。
スーナ〈ウチはまだ会ったことが無いけど、ウチら、ポケモンの間では結構有名な話なんだよ♪〉
エレン「そうなの!?」
ユウキ〈うん。………僕は2年ぐらい前に知ったばかりだけど。〉
エレン君はまるで、[マメパト]が豆鉄砲をくらったような様子で驚いた。
エレン「そうだったんだ……。……でも2年前?……ユウキさんっていつから姿を変えれるようになったの?」
………エレン君、好奇心旺盛ね。
彼は矢継ぎ早に質問をくり返す……。
ユウキ〈……ええっと、それは
うえで答えるよ。〉
エレン「上?どういう事?」
……ユウキ、上手く逃れたわね。
兄は青い空を見上げながら呟いた。
ユウキ〈昨日話した[渦巻き島]っていう場所……、隣のジョウト地方にあるんだよ。〉
シルク〈それも、海流が不安定な海域にね!〉
スーナ〈なら、泳いで行くのは無理って事だね♪?〉
シルク〈ええ、そうよ。〉
…………えっ?
この島を知っている理由?
……実は、ユウキがスクール時代に卒業研修で行ったのがそこなのよ。
当時、私はまだ[イーブイ]だったわね……。
………あの時私は10歳だったから、9年ぶりかしら………。
あっ、そうそう。
その時は先生のポケモンの[テレポート]で行ったのよ。
ユウキ〈………だから、夕方までに戻らないといけないみたいだから、そろそろ行こうか。〉
フライ〈……そうだね。 明日からはいつも通りスクールが始まるみたいだから、尚更だね!〉
………今まで触れたことは無かったけど、今日は日曜日。
泊まりで行く訳にはいかないわ。
スーナ〈うん♪……ユウキ? ウチはユウキを乗せればいいんだよね?〉
フライ〈で、ボクが一番大きいから、シルクとエレン君だね?〉
ユウキ〈うん、あってるよ。〉
体格的に考えて、それが一番ね。
フライ〈………じゃあエレン君、ボクの背中に乗って!〉
エレン「うん! オイラ海ならしょっちゅう泳いでるけど空は初めてだよ!!〉
エレン、相当楽しみだったようね?
彼は目を輝かせ、嬉しそうに言った。
スーナ〈結構飛ばすから、しっかり捕まっててね♪〉
そして、私達も彼らの背中に飛び乗った。
エレン「うん!」
フライ〈ユウキは道案内を頼んだよ!〉
ユウキ〈もちろん。〉
……何故なら、ジョウト地方はまだみんなで行ってないから……。
私も、行くのは6年ぶりだし………。
シルク〈ユウキの記憶だけが頼りね。〉
フライ・スーナ〈〈うん、そうだね。〉〉
私の言葉を聞いて声を揃えると、二匹とも地面を蹴って大きく羽ばたいた。
エレン「うわっ!!凄いスピーd…………」
そして、彼の言葉が風に流されると同時に、私達は上昇した。