48 L テトラの戦法
午後 クチバシティージム sideティル
ライト「ティル、いくよ!」
ティル〈うん! ライトは無理しないようにね!〉
俺はライトのいつもの宣言と共に、恒例のバトルステージに飛び出した。
………それにしても、ライト、大丈夫かな?
見た感じ立ち直ったみたいだけど、なんかいつもと違うんだよね………。
………何というか、さっきのかけ声、あまり威勢が無いんだよね……。
これは俺の勘だけど、まだ立ち直れてないね……、きっと……。
でも、それを表に出さないのはたぶん俺達に心配をかけないためだね。
………もし俺がライトの立場ならそうするし……。
マチス「Oh.youは珍しいポケモンを使うんだなー? なら、[ライチュウ]、Are you ready ?」
ライチュウ〈もちろんさ!〉
…話に戻ると、今俺達はこの街のジムに来てるんだよ。
ここをクリアーしたらあとは二ヶ所だけだね!
何か知らない言葉を使ってる軍人風のジムリーダーは、最初のメンバーを出した。
………相手は[ライチュウ]、[ニトロチャージ]で攻撃するのはやめた方がいいかもしれないね。
彼はトレーナーのかけ声に頬からパチパチと火花を散らして答えた。
ティル〈ライト、まずは[ニトロチャージ]でしょ?〉
ライト・マチス《うん!「》いつも通り、[ニトロチャージ]で加速して!」「[放電]で様子見!」
ティル・ライチュウ〈ライトもね![ニトロチャージ]!〉〈うん。さあ、始めようか![放電]!〉
もちろん!
俺は身体に燃え盛る炎を纏って、一目散に駆けだした。
対して、相手は俺の行く手を阻むように、フィールド全体に高い威力の電気を放出した。
……流石、6箇所目のジムだね。
あまり隙が無いよ!
相手の周りを走って加速している俺に、それが迫る……。
俺まで、3m………。
ライト「[炎の渦]で防いで!」
ティル・マチス〈威力を弱くするんだね?[炎の渦]!〉「接近して[10万ボルト]!」
ライトは咄嗟に判断して、俺に指示を出した。
素早さが上がっている俺は、瞬時に技を解除して環状の炎を放った。
………部分的に電気が無い部分を作れば、いいかな?
………俺まで、2m………、
ライチュウ〈思い通りにはさせないよ![10万ボルト]!〉
ティル〈俺のスピードについて来れたらね!………だから、お互い様だよ!〉
ライト《連射して拘束して!》
……相手が移動できる範囲を、狭くするんだね?
ティル〈連射!!〉
………にしても、相手の電撃も凄い威力だね。
まだ少し距離があるのに、俺の毛も静電気で逆立ってきたよ。
……でも、俺だって負けないよ!!
走るスピードを緩めずに、俺に接近し始めている相手の進路を妨げるように、軌道を変えた。
それと同時に、俺の炎で軽減された電気の壁を突破し、環状の炎を続けて二発撃ちだした。
マチス・ライト「Wow! How fast you are ! [雷パンチ]で迎え撃つんだ!」「ここから攻めるよ!![火の粉]から[サイケ光線]!」
ライチュウ・ティル〈流石、5箇所攻略した実力だね。……でも、これならどう?[雷パンチ]!〉〈うん![火の粉]!!〉
俺の炎が相手に達する前に、彼は左手に電気を纏わせた。
……左利きなんだね?
俺も、速攻で火片をいつもより強めに放出した。
ティル・ライト〈うわっ!! 火力が!?〉「えっ!? これってもしかして、[火炎放射]!?」
!!?
[火の粉]じゃない!?
いつものそれは小片じゃなくて、温度の高いブレスになって放出した。
凄い火力………、突然だったからビックリしたよ……。
………これって、[火炎放射]?
マチス・ライチュウ「〈!!?〉まさかの……フェイント!?…………こんなの……アリ!?〉
俺も驚いたぐらいだから、相手も凄くビックリしてるよ……。
俺の思いがけない技に相手は反応できず、まともにダメージを受けた、
ライト「………! ティル、今のうちに[サイケ光線]!」
ティル〈……あっ、うん! [サイケ光線]!〉
!
俺はパートナーの声で我に返った。
………見た感じ、あと一回技を当てれば、勝てそう。
……ふらついてるし。
俺は、イメージを実体化させて、標的めがけて思いっきり撃ちだした。
そのイメージは七色の波となって、相手に迫る………。
マチス・ライチュウ「!?[10……]…」〈……!?………こんなに………呆気なく………。〉
大幅に体力を削られた相手は、身動きがとれず、力尽きた。
………本当は、俺のスピードが速かったから……だけど…。
……でも、やっぱり炎タイプ定番の技、[火炎放射]は凄いね!
さすがに、[大文字]とか[フレアドライブ]よりは威力は低いけど、使い勝手が良さそうだよ。
ライト「ティル、お疲れ様。[火炎放射]の威力、すごかったよ!」
ティル〈本当に?〉
ライト《うん!》
ライト、バトルしていつも通りに戻ったね?
声に光が戻ってるよ!
ティル〈……じゃあライト? 俺はここで交代だよね?〉
俺は横目で、平生を取り戻したライトをチラッと見て聞いた。
ライト《そうだよ。「》ティル、一度下がって!」
ティル〈だって、作戦だもんね!〉
うん!
俺は大きく頷いて、フィールドから退いた。
………
sideテトラ
ライト・マチス「テトラ、勝つよ!」「[エレブー]、are you ready ?」
テトラ・マチス〈うん!〉〈……まっ、お手柔らかに。〉
ライト、任せて!!
私は色違い特有の効果と共に、ちょっとした優越感に浸りながらフィールドに降りたった。
……だって、普通のひとはこういう効果は無いでしょ?
相手は…………、見かけによらず温厚そうな、[エレブー]だね?
特性は[静電気]か[蓄電]。
物理技を使わない私にとっては関係ないね!
マチス「Wow!! She is very cute!! I have never met such as her!!」
テトラ〈…………この人、何て言ってるの?〉
ライト《…………うーん、わたしも分からないよ………。》
私達は初めて聴く、意味不明な言葉に固まった。
………何語?
テトラ・マチス〈……とにかく、ライト、いくよ!!〉「[電撃波]!」
ライト・エレブー「……あっ、うん。 技をかわしながら接近して!!」〈……始めだから、このくらいかな……?[電撃波]!〉
………っと!危うく相手のペースに乗せられるところだったよ!
私はすぐに気持ちを切り替えて、ライトに指示を催促した。
………うん、わかったよ!
私は大きく頷いてから、相手の電塊を避けるように、左回りに走りながら接近を始めた。
マチス・ライト「[雷パンチ]で直接攻撃!」「[スピードスター]!」
エレブー・テトラ〈なるほどね。…なら、これは?[雷パンチ]!〉〈近づかせない作戦だね? [スピードスター]!〉
私は空いている触手に妖艶なエネルギーを溜めながら接近する………。
……今更だけど、喋りながらでも溜められるから触手って便利だね!!
相手も、私に対抗すべく手元に電気を纏った。
テトラ〈さあ、私の技をかわせる?〉
相手を誘惑するように、フェアリータイプの流星をはなった。
エレブー〈なかなかの数々だね。……でも、まだまだ。〉
テトラ〈!?〉
いとも容易く私の技をかわし………、
テトラ〈くっ!!〉
そのまま私を捉えた。
………でも、君こそ、まだまだだね!
思いがけず鍛えられた私を守備力をなめないで!!
私は彼の攻撃に耐えて立ち上がった。
マチス「Oh.youのポケモン、defenseが強いんだなー?」
ライト「……はい?」
ライト………、やっぱり困ってる。
何語、これ?
エレブー〈……訳すと、{君の守りは強いね。}ってなるよ。……本当にすまないね、彼、こう見えてスクールで英語の非常勤講師してるから……。〉
テトラ〈……それはご丁寧に……、どうも……。〉
……彼も、手を焼いてるのかな?
ため息のつきながら、翻訳(?)した。
テトラ〈………とにかく、再開するよ!ライト!!〉
……この調子だと、日が暮れても続きそうだよ………。
私は彼に苦笑いで答え、気持ちを切り替えた。
ライト《………うん。》
テトラ〈なら、試したい技があるんだけど、やってもいい?〉
ライト《試したい技?》
テトラ〈まだイメージしか出来上がってないけど、どうかな?〉
……実は私、ボールの中で待機してる時に凄い組み合わせを思いついちゃったんだよ!!
どうなるかは分からないけど、やってみたいんだ!!
私は期待を込めて振り返った。
………きっと、ティルなら真っ先に試してるかもしれないね。
ライト《………じゃあ、テトラに任せるよ!》
テトラ〈本当に!? やった!〉
本当!?
私の声は嬉しさで高くなった。
エレブー〈……君も、さっきから何を独りで喋ってたんだい?〉
……相手は不審そうに私を見つめる………。
テトラ〈ちょっとトレーナーと相談をね!…〉
エレブー・テトラ〈??相談?〉〈じゃあ、いくよ!!〉
当然、私の不審な言動に首を傾げた。
私はそれだけ言うと、すぐに相手めがけて走り始めた。
………さあ、いくよ!!
私は最初の技のイメージを膨らませながら接近する………。
マチス「? [雷パンチ]!」
エレブー〈……意味不明だけど………[雷パンチ]!!〉
私の行動に気づいた相手は、さっきみたいに手元に電気を纏いながら走り始めた。
……同じ手は、通用しないよ!!
………それに、私が考えたこの組み合わせは
キミに有効だから!!
少し近づいてから私は急に立ち止まり………、
テトラ〈今更だけど、どう?私のこと?〉
エレブー〈!!? 改めて見ると……、可愛いよ。〉
私は、こう言いながら相手を魅了した。
………よし、成功!!
私は♀、相手は♂。
うまくいったね!!
相手は突然立ち止まって技を解除した。
マチス・ライト「!!? What's happen!?」「えっ!?止まった!?」
………もう気づいたかな?
私が使った技。
異性のポケモンに対して有効で、攻撃頻度を減らせる技………、[メロメロ]。
私の場合、♂に対しては有効だよ!
………でも、このままでは終わらないよ!!
私は技の効果を確認すると、また別のイメージを膨らませた。
その通りに、エネルギーを溜める……。
………本来ならノーマルタイプのそれを触手のほうで凝縮させて………、
テトラ〈[フラッシュ]!!〉
エレブー〈!!!眩しい!!〉
丸く形成した光の束を相手の目の前に飛ばして、一気に発光させた。
………実際に使ってみて分かったけど、私も目を閉じないと大変な事になるね……。
だって、この技は命中率を下げる技だから………咄嗟に閉じたがら何とかなったけど。
………どう?私の戦法。
私、攻撃技は自信がないけど、こういう変化技ならいけるんだよ!!
相手は私に[メロメロ]でなかなか攻撃できないうえに、視覚もまともに機能してないから、相手が私に技を当てるのはほぼ不可能。
………凄いでしょ?
相手のトレーナーも、凄く焦ってるみたいだし。
マチス・テトラ「!? [10万ボルト]!」〈さあ、その状態で私に当てれるかな?〉
エレブー〈どこ!? どこにいるんだい?〉
作戦通り。
相手はハッキリしない視覚で私の事を捜してるよ……。
テトラ〈ここだよ!![スピードスター]連射!!〉
エレブー〈っ!! そこ……だね!?〉
もちろん、かわせずに命中する。
……でも、場所を悟られないように走り回った方がいいかな?
……うん、よし!
私は技を維持しながら右に、左にと走り回った。
エレブー〈本当に…………どこ………なんだい?〉
そして、本人も気づかないうちに力尽きた。
………まさかここまで上手くいくとは……、正直ビックリしたよ……。
私は白星と共に、大きな収穫を得た。