45 L 探偵の猛攻
数分前 クチバシティー side???
A「…………よし、あの人で間違いない。」
僕は右手に持っている写真と、目を光らせている複合施設とを目線だけで往復させる。
……ここまで1時間ぐらい張り込んで、ようやく人混みから目的の人物が姿を現した。
B〈……あの厳つい目、連れている種族…。情報と一致してるな。〉
A「うん。………初めてきた大きな仕事。絶対に見失わないようにしないと。」
僕は相棒の[ギャロップ]の言葉に、声を潜めて答えた。
B〈もちろん、そのつもりだ。……警察からの依頼、失敗は許されないからな。〉
A「うん。……[フレア]、身を引き締めていこう。〉
フレア〈ヒイラギこそ。〉
相棒の言葉を改めて自分に言い聞かせ、僕はその自分に注意を向けた。
……最近、周りの事に一切目を向けず、警察の度重なる注意を請けたにもかかわらず迷惑行為を繰り返す……。
…それが、目的の彼………[カトル]を追跡している理由……。
………とは言っても、実はこれが初めての接触なんだけど……。
……それに、いつもは人捜しとか迷子の[ニャース]を捜すぐらいしか仕事がなかったから、密偵は初めてで緊張してるんだよね……。
フレア〈ヒイラギ?
目標、突っ立ってるけど、何をしてるか検討がつくか?〉
ヒイラギ「ん? ……さあ、全く想像が出来ないね。」
フレア〈……だよな。慣れない仕事だし、これから分かるようになればいいな。〉
ヒイラギ「うん。そうだね。」
僕は彼の炎の
鬣を撫でながら呟いた。
………仁王立ちして動く気配がないから、そろそろ自己紹介をしないと。
僕は探偵のヒイラギ。
一度登場してるから分かるかな?
僕はまだ駆け出しで、それほど実績はないけど、ちょっとした依頼でなら成果をあげてるよ。
……ちょっと前だから覚えているかどうか分からないけど、僕の正体は人間じゃなくて[ラティオス]というポケモンなんだよ。
……だから、相棒のフレアの言葉も理解出来てるって話し。
もちろん、他の[ラティアス]や[ラティオス]みたいに自分の正体を隠してだけど。
……僕の事を知っているのは、同じ事務所のメンバーのうちの1人と、僕の相棒。
そして刑事課の警官1人だけ。
……強いて言うなら、僕以外に溶け込んでいるひとだけかな?
……僕の姉はちょっと特殊で、別の話になるけど……。
僕は探偵、ライトはトレーナー、スカイさ………
フレア〈ヒイラギ!!目標に動きが!!〉
ヒイラギ「なっ、何だって!?」
フレア〈何かを指示した様子だ。〉
……んは……!?
フレア、本当か!?
僕は相棒に促されてハッと見ると、彼の言うとおり、メンバーに……
ヒイラギ「!? [ラティアス]!? あれはまさか……ライト!?」
し……!!
目標が見る先………施設の入り口からは、切羽詰まった様子の[ラティ…アス]!?
ライト、何故ここに!!?
僕が遠くから見た光景は、目標がまさに、僕の幼なじみに危害を加えようとしているところだった。
フレア〈ヒイラギ?声を張り上……〉
ヒイラギ「フレア、予定変更だ!! 今すぐにターゲットに接触する!!〉
フレア〈……げ……ハァ!? ヒイラギ、正気か!?〉
僕はいても経ってもいられず、相棒の背中に飛び乗りながら叫んだ。
………ターゲットの思い通りにされたら……、いや、ライトの身が危ない!!
ヒイラギ「もちろん、正気だ!彼女は僕にとって大切なひとなんだ!!」
フレア〈だが、依頼…〉
ヒイラギ「
今はそれどころじゃない!!……だからフレア、戦闘準備だ!!」
彼の言葉を受け付けず、怒鳴るように言い放った。
フレア〈だが……〉
ヒイラギ「
フレア、もし君の大切なひとが集団で襲われていたらどうする!?自分に出来る事があるのに目をつむれる!?………まさに今はそんな状況だよ!!」
フレア〈…!そっ………それは………。………わかった。……なら、しっかり掴まれよ!!〉
誰だって、助けに向かうでしょ!?
僕は彼を、ほぼ説き伏せる形で説得……。
………フレア、君なら分かってくれると思ったよ。
相棒は四肢に力を込め、一気に駆けだした。
ヒイラギ「……ありがとう。」
僕は聞こえるか聞こえないか、際どい大きさの声で感謝を伝えた。
そして、彼は行き交う群集をすり抜け、彼らの元へと急ぐ。
フレア〈[跳び跳ねる]!!〉
種族自慢の跳躍力を生かして、群がる野次馬達を飛び越す。
ヒイラギ「フレア、一応これを口に含んでおいて!!」
フレア〈? [モモンの実]だな?〉
それと同時に、僕は目当ての物を鞄から探り出し、それを相棒の口に押し込んだ。
ターゲットの連れているメンバーの一匹は毒タイプ……。
毒状態にしてくる可能性が高い……と言うか、実際に[ヘドロ爆弾]を指示していた!
ヒイラギ「フレア、[二度蹴り]!!」
フレア〈よし、任せな![二度蹴り]!!〉
そして、群集の中に着地すると同時に僕は相棒から飛び降り、技の指示を出した。
ガンマ・ヒイラギ「!? 誰だ!?」「一匹を二匹で襲うなんなて……、許せますんね!!《」ライト! 大丈夫!?》
ラッタ・ライト〈!!?っぐ!!〉〈!!? その声は………ヒイラギ!?〉
慣れない睨みを利かせながら、幼なじみに言葉を念じた。
ガンマ「どこの馬の骨が知らんが、知ったことか!! 俺の獲物を横取りする気か!?」
ヒイラギ「横取りも何も………、そんな事、絶対にさせません!![跳び跳ねる]で追撃!!」
フレア〈まさかモラルが無いだけでなくて…卑怯な輩だったとはな……。[跳び跳ねる]!!〉
ベトベター〈……くっ………。これは………詰んだな……。〉
フレアの言うとおり、卑怯極まりないね……。
………今まで18年間生きてきたけど、ここまでの人は初めてだね………。
フレアは自慢の跳躍力で一気に距離を詰めると、標的を思いっきり蹴り飛ばした。
………口の中に[モモン]の実が入っているから、ちょっと声が篭もってるけど……。
幸い、毒状態にならずに済んだみたいだね。
驚きで打ちひしがれていたライトは、安心したのか、崩れ落ちた。
……外傷は無いみたいだから、きっと疲れからかな?
一方、飛ばされた相手のうちの一匹は、相性が抜群だったから気絶し、もう一匹は起き上がった。
ガンマ・ヒイラギ「クソっ![毒々]だ!!」「[火炎車]で直接攻撃!!」
ベトベター・フレア〈……もう無駄だと思うが……[毒々]。〉〈一気に攻めるという訳か!了解だ![火炎車]!!〉
………?
まさか、諦めてる?
相手は戦意喪失しながらも、何とか毒素を放った。
対して、勇み立っているフレアは炎を纏い、走る速度を上げた。
……それに、フレアの特性は[貰い火]。
この技とは相性が良すぎる!
フレア〈戦闘放棄とは、失礼に値するな!〉
ベトベター〈…………っ!!〉
突っ込むと同時に言い放ち、相手は返答する間もなく崩れ落ちた。
ガンマ「クソっ!戻れ!………こうなったら……力づくで!」
そう言って、ターゲットは立ちはだかるフレアを無視して、僕に直接殴りかかってきた。
………人間の姿だけど……、ポケモンの運動能力をなめてもらっては困りますよ!!
ガンマ「!!?」
僕は殴りかかってきた腕を掴み、そのままの勢いで投げ飛ばした。
………{背負い投げ}………。
刑事として溶け込んでいる[ラティアス]から習っておいて良かった……。
僕が一本をきめると、ギャラリーからは歓声があがった。
フレア〈……殴りかかるなんて……{傷害罪}に値するな………。〉
ヒイラギ「……ふぅ。《」本当に、そうだね。》
一息つきながら呟いた。
ライト〈ヒイラギ………いつの間にあんな技を………。〉
対して、助けられた身のライトは僕の護身術に圧倒されていた。