[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























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第7章ー乙 朽ちる事無き波止場
36 S 情報交換
数十分前 クチバシティー付近 sideユウキ

ユウキ〈………ふぅ。久しぶりのバトルだったけど、技は鈍ってなくて良かったよ。〉
オルト〈……ただ、もう少しフットワークの改善が必要だな。〉
ユウキ〈うん。……前はもう少し早く動けたんだけどね……。〉

僕は久々の運動で清々しい高揚感に浸りながら額の汗を拭った。

そんな僕を、[コジョンド]……、メンバーでは物理アタッカーのオルトが辛口のコメントを残した。

この半年間、元の姿で地方を駆け回っていたからあまり休めてないんだよね…。

バトルなら尚更かな?

オルト〈今日は全員集まって一区切りつくから、その時に調子を戻せばいいんじゃないか?〉
ユウキ〈そうだね。〉

バトルの直後で、[ピカチュウ]としての特性でパチパチ音をたてて流れていた微弱な電流を抑えてながら、僕は一息ついた。

………バトルの面でも仕事の面でも、オルトの批評は凄く参考になるよ。

読書好きなのもあって知識も豊富だし、何よりエスパータイプ並みの勘の鋭さで的確なアドバイスをくれる……、頼もしい存在だよ。

………ただ、ポーカーフェイスというか何と言うか………、もう少し感情を表に出してくれてもいいんだけとね……。

……出逢った時からそうだったから、まっ、いいか。

ユウキ〈………じゃあ、遅れるといけないからそろそろ行こうか。〉
オルト〈ああ、そうだな。〉

オルトは{当然だ。}と言わんばかりに大きく頷いた。

そして、僕達は待ち合わせ場所に向けて歩き始めた。


………ちなみに、オルトとは昨日合流したばかりなんだよ。

調査結果は揃った時にまとめて聴こうと思ってるから、まだ僕自身も話してないよ。

オルトが言わないのはたぶん、この事を察しているからかもしれないね。




…………

昼 クチバシティー sideシルク

スーナ〈オルト、久しぶりだね♪!〉
オルト〈ああ。別れて以来だな。〉

昼間の風を切りながら、私達は彼らの元に降下した。

………オルト、その様子だと何かいい情報が手に入ったのね?


……えっ?何故分かるのかって?

エスパータイプとしての勘よ。

スーナがある程度のところまで高度を下げたのを見計らって、私は彼の背中から飛び降りた。

そして、しなやかに四肢で身体を支え、衝撃を緩和する………。

ユウキ〈シルクはスーナと一緒だったんだね?〉
シルク〈ええ。ここに来る途中でたまたま会ったのよ!ユウキも、道中で合流したのね?〉
スーナ〈だって、予定ではふたりとも別々の場所から来るはずだからね♪〉


私の声は久しぶり会えた嬉しさで、いつも以上に明るく、溌剌とした調子になった。

………だって、オルととはスーナほどではなかったけどすれ違いが多かったのよ!

………例えば、この間みたいに、私が必要な書類の加工を依頼しに行って、そのすぐ次の日にスーナが受け取る……って感じでね。

それが何回か続いたのよ!

………オルトの他にも、フライとはそんな感じだったわ。

スーナ〈ふたりは何かいい情報が分かった♪?〉

スーナは吹き抜ける潮風を感じ、揚々とした感じてふたりに聞いた。

………そうね、私も気になるわ。

ユウキ〈僕はシルクが知っている通りだよ。オルトは?〉
オルト〈俺はイマイチだな……。〉
スーナ〈ウチは5の島で有力な情報を掴んだよ!!シルクもいい感じなんだよね♪?〉
シルク〈ええ!〉

……そっか。

オルトはあまり良くなかったのね。

………調査とは、そういうものだわ。

私が単独で調査した[シロガネ山]と[旧グレンタウン]では何の成果もなかった……。

あまり人が立ち寄らない所だからもしかしたらって思ったけど………空振りだったわ。

スーナのほうも、[2の島]と[4の島]は何も無かったらしいわ。

オルト〈……それとは別に、俺はあるひとと会えた。〉
スーナ〈あるひと?〉

………ライトの事ね。

本島の事を全く把握出来てないスーナを除いて、私達兄妹は{ああー。}っという感じで聞き入った。

オルト〈スーナもよく知っているはずだ。〉
シルク〈オルト、全員揃ってから話した方がいいんじゃないかしら?〉
ユウキ〈その方がいいね。〉

……だって、二度手間になるでしょ?

そのほうが効率がいいわ。



………この後、溜まりに溜まった調査以外の内容で会話の華を咲かせながら、リーフ、コルド、フライの到着を待ったわ。

………方向的にも、三匹とも揃って来るかもしれないわ。

あの後、リーフとフライは[シオンタウン]の南の街道、コルドは[セキチクシティー]を調査しているはずだから………。



………

二時間後 sideシルク

シルク〈………あっ、来たわ!〉
ユウキ「あれは絶対にそうだね。」

たわいのない雑談で盛り上がっていたその時、ここから丁度東のほうに大きさが異なる3つの影が確認できたわ。

……私の予想通り、全員一緒ね!

オルト〈シルクの予想が当たったな。〉
スーナ〈本当だね♪みんな、久しぶり♪!〉

私とスーナは、確信を持って彼らの元に駆け寄った。

リーフ・コルド〈別れて以来だね。〉〈遅れてすみません! 待ちました?〉

リーフは自然と笑みを漏らし、コルドは律儀に謝りながらも再開を喜んだ。

フライ〈ちょっと連戦続きでね。〉

この小説では最後に登場の[フライゴン]のフライが、ハハハって少し疲れた様子を見せながら会釈した。

リーフ〈いい運動にはなったし、何よりも[通常攻撃]の仕方を教えてもらえたから僕は満足だよ。〉
シルク〈[通常攻撃]……、ああー、あれね!〉

フライ、ふたりに教えたのね?

………私は[代償]で使えなくなったけど。


解説すると、[通常攻撃]は技を使わない攻撃方法。

5000年後の世界では割と主流なのよ。

〜交錯〜では全く触れなかったけど、私も[従者の証]を授かるまで使っていたわ。

………知っての通り、あっちでは常にバトルしているような状態だから、エネルギーが保たないわ。

………で、元の時代に帰ってきてから、フライはずっと使い続けていたのよ。

………そのおかげで、長期戦に強くなって、未来での経験から遠くても近くても戦えるようになっていたの。

フライが急に強くなったのも、未来での経験からかもしれないわ。

…………私も油断してられないわね!

ユウキ「………じゃあ、再会の余韻に浸るのはこのくらいにして………、〈」そろそろ情報交換を始めようか。〉

そうね。

ユウキは元に戻していた姿を歪ませながら提案した。

………幸い、誰にも見られてないわね。

ユウキの号令に、6つの声が調和した。

………

一時間後 sideシルク


ユウキ〈…………これで以上だね?〉
フライ〈うん!ボクば全部話したよ。〉

私はみんなの調査結果をノートにまとめながら、みんなと一緒に頷いた。

私は[サイコキネンシス]で浮かせているノートのページを最初に戻しながら………、

シルク〈なら、最初から整理するわね。…〉

みんなの顔に視界を巡らせて、返事を待った。

コルド〈はい、お願いします。〉

コルドをはじめ、傾き始めた太陽を背に、みんなも私に応じてくれた。

シルク〈ええっと、まず、オルトは地元の情報屋に船が立ち寄らない島への調査を依頼して、その結果待ち。………図書館で調べた書籍では、ナナシマに存在する[四鳥伝説]に関わりそうな場所の下調べ………。それであってるわよね?〉
オルト〈ああ、そうだ。〉

オルトは、{その通りだ。}と付け加えて頷いた。

シルク〈スーナは、2、4、5の島での聞き込み調査。2、4の島は空振りだったけど、伝説に縁のある場所を特定できた………。そうよね?〉
スーナ〈うん♪〉

あってるわね……。

私は、そのまま続ける………。

シルク〈ユウキは、[氷雪]との交流に成功。[チカラ]と[代償]について聴くことができた。〉

私は、チラッと彼に視線を送った。

………頷いたから、いいわね。

シルク〈リーフは、街道の通っていない森と、フライと[岩山トンネル]の調査。前者で[サンダー]を目撃。後者は空振り。

コルドは、地元のポケモンへの聞き込み調査。[氷雪]、[陽炎]、[豪雷]以外………もう一つの位置付けの特定に成功……。………確か[水冷]……。降雨を司る。縁の地は[ジョウト地方]の可能性あり…………。

フライは、3、7の島での調査。そこで[ファイヤー]がいる場所の特定に成功。場所は[1の島]の[燈山]。

…………で、最後に私は[グレン島]と[シロガネ山]の調査。どちらも空振り。………だけど[豪雷の防人]との交流に成功。

…………こんな感じね。〉

………ふぅ、短く要約した積もりだけど、案外かかったわね。

私は{ふぅー。}って一息ついてから、超能力でノートをパタン、と閉じた。

ユウキ〈………という事は、次は[水冷]についてと、[燈山]を調べればいいね?〉
リーフ〈うん。………そのくらいだね。〉
コルド〈[氷雪]、[豪雷]は[チカラ]と[代償]………誰がそうなのかも分かっていますから……。〉
オルト〈それに、俺が依頼した結果待ちもな。〉
スーナ〈うん♪………とりあえず今日は一旦休んだ方がいいんじゃないかな?〉
フライ〈ずっと調査で動きっ放しだったしね。〉
シルク〈第1に、今日はあまり時間が無いから、それが一番いいわね。〉


…………相変わらず、私達って次の行動を決めるのがはやいね。

ともかく、やるべき事が明確になったわね。

みんなはそれぞれに議論を交わした。


明日からまた調査だから、今日はもう休憩にあてるべきね。


議論が終わる頃には、西の空が紅く色づいていた。

@ ( 2014/01/25(土) 01:28 )