31 L 超能力の脅威
朝 事務所 sideライト
テトラ〈……ィト、ライト、起きて!〉
ライト〈…………うー……ん……。……!?〉
わたしは閉じられた瞳によって広がる闇の中で、身体が揺れるのを微かに感じた。
寝起きで朦朧とする意識で、声の持ち主が誰か探った。
………ええっと、この声は………テトラ?
伏せるように背もたれの無いソファーで眠っていたわたしは、ゆっくりと目を開けた。
…確か、
ここはヒイラギの事務所の控え室だったっけ…?
話し込んでいたら……いつの間にかひがくれてて……。
………それから、近くのレストランで夜ご飯を食べて、わたし達の旅の話で盛り上がったんだ……。
そして、どこまで話したか覚えてないから………寝オチしたのかな?
だとしとら、もう朝なのかな?
窓から入る光が眩しいし。
テトラ〈ライト、おはよう!〉
ライト〈……あっ、うん、おはよう。〉
ボーッとしていたわたしの目の前で、テトラが爽やかな笑顔で笑った。
……目を開けて目の前にいたからビックリしたよ……。
お陰で目が覚めたからいっか。
わたしは、とりあえず起き上がっ………いや、浮遊した。
ずっと元の姿だったから、このまま寝ちゃったんだ……私……。
ライト〈……あれ? そういえばみんなは? 姿が見当たらないけど……?〉
わたし達がいる部屋、他に誰もいないんだよね……。
静かだし……。
テトラ〈みんななら、起きて屋上にいったよ! ショウタ君の技とジム戦に備えてウォーミングアップをするんだって。…………ティルは今にも戦いだしそうな勢いだったけど……。あと、ヒイラギさんはたぶん書斎にいると思うよ。〉
ライト〈やっぱりみんな、張り切ってるね。「〉……うん、わかったよ。ありがとう。」
………って事は、ラグナは監督かな?
しっかりしてるし。
姿を変えながら、彼女の言葉に笑顔で答えた。
……それにしてもテトラ、進化してから凄く明るくなったね。
見た感じ、色違いだって事を気にしてなさそうだし、何よりも見ず知らず人やポケモンにも怯える様子も無い……。
テトラ、成長したね!
テトラ〈ライト? 今回のジムは相性的に有利なラグナじゃなくて、私とティルで挑むんでしょ? ………だから私達も早く行こうよ!〉
ライト「……うん、そうだね!」
テトラは、身体に馴染んだ触手でわたしの手を引っ張りながら上機嫌で言った。
テトラ、わかったよ!
わたしは自分の荷物を持ち、彼女に導かれるように仲間が練習する場所へと向かった。
……もちろん、わたしの幼なじみに一言声をかけるのを忘れずにね!
………
二時間後 ジム sideライト
ライト「………じゃあナツメさん、お願いします!」
わたしは、いつものようにボールに手をかけた。
……あの後、みんなでちょっとだけ技の調整をしたんだよ。
ティル、テトラ、二匹とも調子がいいから、期待してるよ!
………で、張り切ってビルをあとにしたんだけど、なにしろこれだけ大きな街だから迷っちゃったんだよね……。
だって、右も左も同じような建物ばかりだし………。
私、トレーナーなのにこんな感じだったからラグナに叱られちゃった。
………これからは前もって場所を調べておかないと………、わたしは胸の中に堅く誓った。
……あと、今日はショウタ君とコロナちゃんも来てるよ!
姿を変えれるようになったみたいだし、騒ぎになる心配も無いでしょ?
……でも、ふたりはわたしの正式なメンバーじゃないから、側で見学。
ナツメ「……そうですね……。」
ここのジムリーダーのナツメさんも、わたしと同じように構えた。
………無口だね?
……あまり喋ってないし……。
………
sideテトラ
ライト・ナツメ「テトラ、作戦通りいくよ!!」「[ユンゲラー]……出番です。」
テトラ・ユンゲラー〈うん!もちろん!〉〈………。〉
私は色違い特有のボールの効果と共に、勢いよく飛び出した。
………もう色違いだって事、殆ど気にならなくなったよ!
だって、[バトル]っていう、それ以上に楽しい事を見つけたし、……何より、もう吹っ切れたよ!!
色違いであっても私は私。
他人に私の容姿について口出しする筋合いはないもんね!
……もし、するようなら、そのひとの[心]が幼いだけ……、そう思うようにしたんだよ。
ライト・ナツメ「まずは[妖精の風]で様子見して!」「……[瞑想]。」
テトラ・ユンゲラー〈だって、どういう攻め方をするか分からないもんね![妖精の風]!〉〈……[瞑想]………。〉
私は作戦通りに、天に祈りを捧げた。
対して、相手は精神を統一して、特殊技に関するステータスを高める。
……少しすると、私の背後から妖艶な風が吹き始めた。
出だしは、いい感じかな?
ライト「[スピードスター]!!《」星に隠れるように接近して!!》
テトラ・ナツメ〈うん。[スピードスター]! だって、エスパータイプだから止められるもんね!〉「[念力]で受け止めてください。」
ライト、任せて!!
私はフェアリータイプのエネルギーを、触手に蓄えた。
……口元に溜めるより、こっちの方がタイミングを調整し易いんだよ!
私の触手は腕みたいなものだし、四足歩行する種族にとっては有利だね、きっと……。
それに、もう少し応用を効かせれば別の技に強化できるかもしれない。
左右の触手を振るい、流星を放ちながら接近する。
………もちろん、これは
囮……私の予想通り、幾つもの流星で相手の超能力によって止められた。
ライト《[電光石火]で
撹乱して!!》
テトラ〈周りを走り回ればいいんだね?[電光石火]!!〉
私はティルみたいに素早くないけど、頑張ってみるよ!
ライトから密かに受けとった指示を元に、私はフィールドを縦横無尽に駆け回った。
ナツメ「[未来予知]!!」
ライト「[未来予知]!? テトラ、作戦を変更するよ!!」
ユンゲラー・テトラ〈…………。〉〈えっ!? どういう事!?〉
相手は、私の行動には目もくれず、何かを念じ始めた。
………どうせ、何かを企んでいるに違いない!
………でもライト!?作戦変更ってどういう事!?
私は風を切りながら彼女を問いただした。
ライト《[未来予知]は繰り出すのに結構時間がかかる技……、けど威力が高くていつ来るか分からない技なんだよ!》
テトラ〈えっ!?そうなの!?〉
ライト《うん!だから、相手が動けない今のうちに手を討っておかないとこっちがやられるんだよ!!……だから、次の段階にいくよ!!》
ライトの声が、私の頭の中に緊迫した様子で響いた。
テトラ〈……うん。とにかく、技を出すのを防げばいいんだね?〉
ライト、わかったよ!!
私は彼女の言葉の意味を理解して、進行方向を急に変更した。
……もちろん、目指す先は[ユンゲラー]。
そして、あっという間に距離が詰まり、
ライト・テトラ「〈[欠伸]!!〉」
私達は次なる行動に移った。
ユンゲラー〈……!?〉
私は相手の目前で、睡眠作用を秘めた吐息をはいた。
………よし、あとは効果が表れるのを待つだけ。
気を逸らせたから、きっと大丈夫だね!
ライト・ナツメ「テトラ、このまま攻撃を続けて!!」「[催眠術]。」
テトラ・ユンゲラー〈うん![電光……]……〉〈[催眠術]…。〉
テトラ〈[……石火]……!?〉
ユンゲラー〈っ!!〉
私は瞬時に力を込め、相手にダメージを与えた。
………だけど、その代わりに相手の心地いい音波をまともに聴いてしまった。
ライト「テトラ!!」
でも、特性で強化された[電光石火]でダメージを与えたから、ある程度は削r…………zzz……。
突然襲った眠気によって、私の意識は強制的に薄れていった………。
………
sideライト
ライト「テトラ!!」
わたしの判断ミスで、相手の[催眠術]がテトラに命中してしまった。
………あそこで一度距離をとるべきだったかな……。
あの様子だと、[未来予知]も成功してるし、マズいかもしれない……。
[欠伸]で眠気を誘ってるけど、こっちは相手の攻撃をかわす術がない……。
完全に向こうの流れになってるから………、何か他の手を考えないと……。
わたしが思考を巡らせている間に、相手のポケモンも眠りに堕ちた。
……ジムのルールでジムリーダーは交代する事ができないから、起きるまでなら時間はある………。
………相手が使った技は、[瞑想]、[念力]、[未来予知]、[催眠術]………。
技を見る限り、[念力]か[催眠術]で相手の動きを封じて、高威力の[未来予知]を命中させる……。
たぶん、相手はこういう作戦………。
…………なら、
ライト「テトラ、一旦戻って!」
テトラ〈…zzz………。〉
交代すれば、回避出来る。
………いや、それしか方法が思いつかない!
わたしは冷静に判断して、一度テトラをボールに戻した。
………
sideティル
ライト「ティル、お願い!!」
ティル〈うん!……えっ!?〉
俺は、テトラの結k……!?
まだ倒れてないの!?
俺は二番手のはずだよね!?
俺は目の前の相手に驚愕した。
ティル〈ライト!?これってどういう事!?〉
俺は訳が分からず、彼女を問いただした。
ライト《ティル、いまの状況を簡単に説明するよ! ……まず、テトラは相手の[催眠術]で眠らされた。…だから動けないんだよ……。おまけに[未来予知]までされてるから、かわすにもかわせない……。……だから、交代したんだよ。》
俺の頭の中に、ライトの声が響く……。
俺は、進化して自由になった前脚………いや、両腕を組んでパートナーの指示を聴いた。
ティル〈……で、テトラはどのくらいダメージを与えたの?〉
ライト《多分半分ぐらいはいってると思う…。》
ティル〈……うん、大体わかったよ! ライト、まずは何をすればいい?〉
ある程度減ってるなら、[ユンゲラー]とは早くに決着がつきそうだね?
俺は自分なりに結論をだして、ライトに指示を催促した。
ライト《なら……、「》連続で[ニトロチャージ]!!《」素速さを強化するよ!!》
ティル〈OK! [ニトロチャージ]!! 一気にいくよ!!〉
ライトならそう言うと思ったよ!!
俺は瞬時に炎を纏い、脚に力を込めた。
………スピードなら、負けないよ!!
ユンゲラー〈……zzz………、……っ、……!!?〉
ちょうど3mぐらいまでに迫った時、相手は目を覚ました。
炎の塊と化した俺は、そのまま相手に突っ込む。
ユンゲラー〈……っ!!〉
咄嗟に反応出来なかった相手に命中し、起き上がる事無く、倒れた。
ナツメ「………戻って………。[フーディン]、出番です……。」
フーディン〈………朝一から出番か………。面倒くさい………。〉
…………今思ったけど、ここのジムリーダー、大人し過ぎない?
さっきから殆ど喋ってないよ?
相手は怠そうにボールから出た。
怠いと言うか…………眠そう……。
ライト「ティル、このまま[ニトロチャージ]を続けて!」
ティル・ナツメ〈うん!![ニトロチャージ]!!〉「[サイケ光線]。」
フーディン〈………[サイケ光線]!………朝っぱらから戦わせるなよ……。〉
俺は一度解除したその技を再び発動した。
相手は、何かブツブツ文句を言いながら実体化させた波を放出した。
正面からか………。
なら……。
俺は右脚に力を込めて、左に跳んだ。
すると、波は俺を捉えずに空を斬った。
次第に、俺は加速していく………。
フーディン〈っ!〉
ティル〈もう一発!!〉
俺の技は見事に標的を捉え、相手は後方に飛ばされた。
ライト「追撃して!!」
俺はパートナーの指示を聞く前に、独断で相手を追った。
ナツメ「[サイコキネンシス]!!」
フーディン〈……っ……痛い…じゃなか……。[サイコキネンシス]!!〉
ティル〈!? 動かない!?〉
俺は、相手の超能力によって動きを封じられた。
………くっ、…しまった……。
俺を包み込んでいた炎は消滅した。
ティル〈ヤバい!!〉
ライト「ティル!!落ち着いて!!《」焦ったら相手の思うつぼだよ!!》
俺はかなり焦って、空中に持ち上げられながらももがいた。
………だけど、抵抗も虚しく空気を掴むだけ……。
このま……
ティル〈…うわっ!!! ………そうだった………忘れてた…………。〉
もがく俺に……、予め予言されていた衝撃が………到達した。
ライト《ティル!まだ動ける!?》
ティル〈うん……何とか……。〉
俺は拘束されたまま、何とか答えた。
ナツメ・ライト「[サイケ光線]!!」《ならまずは相手の気を逸らして!!》
フーディン・ティル〈ハァー……早くおわらないかな……。〉〈気を……逸らす?………そっか!〉
ライト………、君が言いたい事が………わかったよ。
エスパータイプの技は………頭で考えて……技をコントロールする……のがほとんど……。
俺も使えるようになって……わかったけど……、少しでも意識か逸れると……失敗する……。
……だから、逆にそれを利用すれば………。
俺は相手の技によって……引き寄せられながら、
ティル〈……[火の粉]!!〉
[猛火]によって強化された………火片を……放出した。
フーディン〈!?〉
ティル〈……よし、……解かれた…。〉
俺の突然の炎に……驚いて、相手は咄嗟にそれをかわした。
そして、解放された俺は……地面に落下する。
受け身をとって、……何とか立ち上がった。
フーディン〈[サイケ光線]!!〉
ライト「ティル、同じ技で迎え撃って!!」
ティル〈……[サイケ光線]!!〉
俺は、潜在的な何かに………意識を向ける…。
そのイメージを身体全体に満たして…………、エネルギーに変換する……。
……そして、それを……一気に放出する。
進化して出来るようになった技………。
………[火の粉]より飛距離があるから………何かと便利なんだよ……。
[ニトロチャージをの追加効果で………素速さか上がっている俺は、相手より先に……技を放った。
ライト《ティル、ここから一気に攻めるよ!》
うん。
俺は、技を途切らせないように注意しながら…………、ライトの声に………耳を傾けた。
…そして、軽く頷く。
ライト《技を解除してから一度距離をとって……、それから[火の粉]。後を追うように[ニトロチャージ]で直接攻撃して!!》
………つまり、[火の粉]に意識を…向けさせるんだね?
………やってみるよ!
俺は技への意識を遮断して………技を解除した。
ライト・ティル「〈[火の粉]!!〉」
フーディン〈!?〉
俺は速効で………左に逸れて、……相手の光線を………回り込むように迂回した。
そしてそのまま……囮の炎を……放出する。
素速さが上がってるから………ついてこれないはず………。
ライト・ティル「〈[ニトロチャージ]!!〉」
ナツメ「!? [サイコキネンシス]!」
フーディん〈[サイコキネンシス]!〉
当然、………炎に意識が………集中する………。
火片でカモフラージュされた俺は………、炎を纏って………密かに接近する。
ティル〈これで………最後!!〉
フーディン〈何っ!!? っぐ!!〉
相手が気づいた時には………俺はもう目前まで迫っていた。
急には反応できず……命中。
フーディン〈……クソっ!………。〉
そして、一度………堪えたかと思ったけど………、それは叶わずに崩れ落ちた。
…………ギリギリ…………勝てた………。