30 S 派生技
夜 屋上 sideシルク
トリ〈………これって………引き分け………?〉
[チカラ]全開の……バトルは、両者の相打ちで……決着がついた……。
短期の激戦を繰り広げた私達は、ふらつきながら立ち上がった。
シルク〈……カレンさん、……私では……あなたのスピードには……追いつけなかったわ……。〉
カレン〈……シルクこそ………接近する隙が……無かったよ……。〉
私は重い体に鞭打って、………彼女の元に……歩み寄った。
カレンさん………技の威力はそこそこだったけど………、恐らく……素早さは……極限値を……越えてるわね…。
彼女の場合、……私の特殊技に………あたるのが………素早さなのかしら………?
トリ〈………あっ! そうだった!! [傷薬]とか切らしてたんだ!!〉
カレン・シルク〈〈………えっ!?〉〉
私達が……賞賛し合ってる側で……、トリさんは……何かを思い出して……声を荒げた……。
[傷薬]が………?
[代償]の効果で………使えない………私にとっては……関係のない話だけど………、カレンさんにとっては………致命的ね………。
カレン〈……明日買いに行く……つもりだったのを………すっかり忘れてた……。〉
カレンさんは、やってしまった、って感じで……右翼で頭を抱えた……。
シルク〈……今から戻って………店に行っても……もう開いてないわね……。〉
日が暮れて……もう大分時間が経つから………もう無理ね………。
トリ〈カレン…?ワタシが研究室まで走って取りに行こっか?〉
シルク〈……その必要は無いわ……。私、カレンさん達の部屋に置いてある………私の荷物の中に…………調合の材料を持ってるから………私が薬を造るわ……。〉
鞄の中にある………材料でなら………応急処置ぐらいなら……出来るわね……。
私は切れ切れに………言葉を紡いだ。
カレン〈……でもシルク………、きみもその身体では動けない……………………はず……。〉
シルク〈………エネルギーの消費量が…………多いから…………あまり………使いたくないんだけど……、私には………自力で回復する方法が………あるのよ………。〉
カレン・トリ〈シルク………君は既に………6つの技を………使っていた……はずだけど……?〉〈えっ!?そんな方法が!?〉
私の思いもよらない言葉に……彼女達は………目を丸くした。
………それは………これまでの一年間で………ある人から………習ったのよ……。
シルク〈ええ……。………見てて。〉
私はそれだけ言うと、目を閉じて………意識を集中させた………。
トリ・カレン〈〈……??〉〉
当然………二匹とも………首を傾げる。
まず……私の使える技の1つ………、[瞑想]のイメージを…………極限まで膨らませる…………。
それと同時に、……限界まで………集中する………。
私が今から…………しようとしている事の場合………、精神統一から………徐々に祈りへと………意識を変えていく………。
………そして、その[祈り]のイメージを………身体全体に………満たしていく…………。
完全に満たされたところで………、
シルク〈………[瞑想]…………[朝の日差し]!!〉
イメージを元に………技を発動させる……。
すると、漆黒の空から………私にだけ光が差し込み、私を包みこむ………。
光に包まれた私の身体はある程度軽くなり……、傷も少し癒えた。
トリ〈!?〉
シルク〈……ふぅー…。こんな感じよ。[派生技]と言って、既存の技を応用してそれを派生させる方法なのよ。………ただ、1日に一回………それも残っているエネルギーの2/3を使わないと発動させれないんだけど……。〉
これは、バトルで使うにはかなりリスクがある方法なのよ。
自分の技の1つを一度だけ上級の技に派生出来るんだけど……かなりの実力とそれに伴う集中力が必要だわ……。
おまけに、エネルギーの殆どを使うから、底をつく可能性が高まる………。
ピンチな時に役立つけど、諸刃の剣なのよ……。
カレン〈……そんな方法が………あったんだ……。〉
シルク〈ええ。シンオウ地方のリーグチャンピオン、[シロナ]さんのポケモンから教わったのよ。シロナさんが考古学者だって事は知ってるわよね?〉
彼女のメンバーは、これをいとも簡単に使っていたわ。
……これも、私達が完敗した要因の1つかもしれないわ。
トリ〈うん。………何回かテレビで観た事があるから、知ってるけど?〉
シルク〈考古学のよしみで、知り合いなのよ。………だから、直接学べたってワケ。………カレンさんの回復もしないといけないから、事の続きは戻ってから話すわね?〉
……忘れかけているかもしれないけど、まだ戦い終わった直後。
回復したとはいえ、私もまだ完全ではないわ。
……そして、私は疲労で動けないカレンさんを超能力で持ち上げながら、彼女達の部屋へと降りていった。
………補足説明をすると、[派生技]は一匹につき1つの技にしか使えないわ。
例えば、私の場合、[瞑想]を派生させている状態で[10万ボルト]を[雷]に派生させるのは不可能。
チートでもしない限り……いや、原理的に不可能なの。
……ちなみに、私とユウキを含めたメンバー全員が使えるわ。
攻撃技だったり、変化技だったり、それぞれ違うわ。