27 S 同族
夕方 ハナダシティー sideシティー
ウォルタ〈………って事は、ここでお別れだね〜?〉
シルク〈そうね。 ラテ君、ベリーちゃん、ウォルタ君、今日は楽しかったわ。〉
ラテ〈僕もだよ!〉
空が若干紅くなり始めた頃、私達は向きあって別れを惜しむ……。
……ええっと、最初から説明すると、元々私とリーフは依頼した後は情報交換だけをするよ予定だったのよ。
で、その後、私は南へ、リーフは東へ行くつもりだったわ。
私はそのまま[ヤマブキシティー]で休むつもりだったのよ。
……本当はもう少し話したかったけど、リーフは明日フライと[岩山トンネル]を調査するって言ってたわ。
……だから、ラテ君達は{フライにも会いたいから、僕達はリーフさんについていくよ。}って事になったって訳。
そこの麓にも一応ポケモンセンターはあるけど、場合によっては野宿になるわね。
………私も含めて……。
シルク〈リーフ、さんにんの事は頼んだわよ!〉
リーフ〈うん。みんな強いし、問題ないよ。〉
リーフ、あなたなら快く請けてくれると思ったわ。
私達は別れを惜しみながら、互いに握手を交わした。
ベリー〈シルク、機会があったらフライと一緒にわたし達の時代にも遊びにきてね!〉
シルク〈ええ! もちろんよ! ……それに、チェリーとの約束も果たせてないから、きっと行けるわ!〉
あの時は、目まぐるしく時が流れていたから、達成出来なかったのよ……。
……気になる人は、“絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜”を読んでもらってもいいかしら?
ラテ君達と私の関係も含めて、きっと分かるはずよ?
ウォルタ〈きっとだよ〜!〉
私は、彼らにとびっきりの笑顔を魅せた。
そして、私達はそれぞれに次なる目的地へと歩みを進めた。
…………地平線が紅く染まって眩しいわ………。
………
数分後 街道(ハナダシティーとヤマブキシティーの間) sideシルク
シルク〈………ちょっと急いだ方がいいかもしれないわね……。〉
深紅に染まった空を背景に、私は宵の風をきる………。
あと5分もすれば陽が沈むわね………。
暗くなる前に[ヤマブキシティー]に着きたかったけど、間に合わないなわ……きっと……。
私は内心焦りながら、走る四肢に力を込めた。
このペースで行けば、20分ぐらい………
A〈……だから、いい加減帰してください!!〉
B〈そういう訳にはいかねぇなー。〉
C〈折角見つけた可愛い娘だ。ミスミス逃がすのは惜しいだろー?〉
……で……?
ふと、話声が耳に入り、私の性格が自らの脚を止めた。
薄暗くてよく見えないけど、[ペルシアン]かしら?
見たところ、2匹の♂ね?
話し相手の方は……、西日の関係で見づらいけど、声からすると♀ね……。
………だとしたら、ナンパ?
A〈トレーナーの元に帰らないといけないんです!!〉
B〈姉ちゃん、不便な生活してるんだな? そんな奴の事は放っておいて俺達と遊ぼうぜ?〉
トレーナーのポケモン!?
私のお節介が、自らの身体を突き動かした。
シルク〈その子、嫌がってるじゃない!いい加減放してあげたらどうかしら?〉
考えるよりも先に、口が動いていた。
………確かに、放っておけないわ!
C〈!? 誰かと思えば、もう一匹、可愛い娘じゃんー!〉
B〈今日はツイてるじゃねぇーか!〉
この人達、まるで話を聞いてないわね……。
私は呆れてため息をついた。
そして、私は絡まれていた彼女の隣に立ち、
シルク〈忠告しておくわ。この子を帰して!〉
私はさっきよりも言葉を強めた。
B〈どうせなら、キミも俺達と遊んでいくかい?〉
C・A〈イヤとは言わせねぇーぜ?〉〈えっ!?〉
どうやら退くつもりは無さそうね……。
私を誘うように誘惑する彼らに対して、彼女は驚きの声をあげた。
私は彼女の声を聞きながら………、
シルク〈もちろん、ノーよ!!〉
彼らの誘いを丁重に断った。
そして、私は彼女の方に振り返り、
シルク〈とにかく、あなた…………えっ!?〉
彼女を連れ……!?
私は、あまりの事に目を疑った。
シルク・A〈〈[エーフィ]!!?〉〉
そこには、私と同じ種族の、[エーフィ]がキョトンとした表情で突っ立っていた。
……そして、声も、共鳴する。
………同族に、初めて会ったわ………。
B〈来ないのなら、〉
C〈力付くでも来てもらうぜ!〉
B〈[電光石火]!〉
エーフィ〈! 後ろ、危ない!!〉
シルク〈!?…〉
私は驚きの方が勝って、相手の接近に気づくのが遅れた。
シルク〈…[サイコキネンシス]!! あなた、名前は!?〉
咄嗟に、超能力で受け止めた。
B〈!? 動かない!?〉
同時に、慌てながらも彼女に名前を聞いた。
私に接近した相手は、私に拘束され、空中でばたつく……。
エーフィ・C〈[トリ]と言います!〉〈大丈夫か!?[電光石火]!〉
シルク〈トリさんね!! ここは戦うしか無さそうだわ。トリさん、ここは私が引き請けるわ!!〉
トリ〈でも、相手は2匹ですよ!?〉
私達が議論している間にも、もう一匹が接近する……。
……その距離、8m……。
シルク〈たったの二匹……それも野生なら、私にとっては[コイキング]一匹にも及ばないわ!〉
相手に背を向けながら、私は語る。
5m………。
トリ〈でも、暗いし、大丈夫なんですか!?〉
C〈背を向けるなんて、余裕じゃねぇーか。〉
2m………。
シルク〈平気よ!…〉
相手の方に向き直り、
シルク〈[目覚めるパワー]!〉
暗青色の小球を口元で生成する。
そして、冷静に放つ。
0m……。
C〈っ……!!〉
放たれたそれは、空気をかき分ける事無く相手に命中した。
B・トリ〈〈!!?〉凄い威力…。〉
……私に勝負を挑んだのが運の尽きね…。
相手は、派手に飛ばされた。
シルク〈さて、次はあなたの番よ?〉
B〈いや……待て……話せば分か………!?〉
拘束され続けている[ペルシアン]は、必死に私の機嫌を取り繕うとする……。
……自分が不利な状況になると手のひらを返したように弱気になる♂………、嫌いだわ……。
♂なのに、みっともなくて目も当てられないわ……。
相手に対する嫌悪感に襲われながら、維持していた超能力でその相手を斜め上に飛ばした。
シルク〈[目覚めるパワー]、[シャドーボール]、化合!!〉
そして、口元で漆黒と暗青色を混ぜ合わせる……。
相手に狙いを定め、撃ち出した。
暗い紺色のそれは、夜の闇に紛れながら飛んでいく……。
B〈!!!〉
膨張するそれは、的確に標的を捉えた。
シルク〈……やっぱり、ああいう♂は好きになれないわ………。〉
墜落しているのを見ながら、大きな独り言を呟いた。
トリ〈……たった一発で……。あなたは一体……。〉
トリさんは、私のバトルに開いた口が塞がらなかった。
…………でも、[トリ]っていう名前、どこかで聞いたような………。
シルク〈私はただの旅の化学者よ。………[シルク]っていう名前よ。〉
自問しながら、彼女に自己紹介した。
…………ええっと、私が知ってる[イーブイ]系のひとは……、
[ブラッキー]のラテ君、[シャワーズ]のニトル君(〜kizuna〜参照)、[ニンフィア]のテトラちゃん……、そして彼女のお兄さんて[リーフィア]のジルさん……。……この4匹だけ……。
…………そういえばテトラちゃん、他にも兄弟がいるって言って…………。
………!!
トリ〈……さん、シルクさ…〉
シルク〈思い出したわ!!っ!〉
トリ〈!?〉
7000年代での後遺症で若干喉が痛んだけど、私の脳裏に閃きの電流が流れた。
……間違いないわ!!
彼女は、突然の私の大声に腰を抜かした。
……そして、私はそんな彼女に真偽を確かめる……。
シルク〈トリさん、あなたには[テトラ]っていう名前の妹と、[ジル]っていう名前のお兄さんがいるわよね?〉
トリ〈!!? どうして……ワタシの兄妹の名前を……?〉
……反応を見る限り、正解のようね……。
シルク〈二匹……、特にテトラ、ちゃんのほうはよく知ってるわ。〉
トリ〈……………なら、………特長と種族は……?〉
シルク〈ジルさんが[リーフィア]、テトラちゃんが銀色の[イーブイ]よね?〉
私は彼らの情報を的確に言い当てた。
トリ〈………合ってます……けど、どうして知ってるんですか……?〉
彼女は完全に言い当てられて、棒立ちになっていた。
シルク〈話せば長くなるわ…。とにかく、あなたはトレーナーの元に帰った方が良いわね。…もう暗いから、また襲われないように送っていくわ。……その事は歩きながら話してもいいかしら?〉
トリ〈……あっ、はい。〉
暗い街中を♀一匹だけで歩いていたらあまり良いことは無いでしょ?
だから、私は半ば強引に引っ張るような感じで、彼女にお供した。
……もちろん、話しながらね!