26 L 幼なじみ
午後 ハナダシティーポケモンセンター sideライト
ライト「ショウタ君、コロナちゃん、お待たせ。」
わたしはメンバーが入っているボールを抱えながら、部屋のドアノブに手をかけた。
ジム戦が終わった後、カスミさんと話し込んじゃったから、遅くなっちゃったよ…。
……ええっと、話すと言っても、この地方では珍しいティルとテトラ、ラグナについてだけど。
……で、ラグナに諭されて慌てて戻ってきたんだよ。
ショウタ〈おかえり。 ジム戦どうだった?〉
ライト「テトラとラグナが頑張ってくれたから勝てたよ!」
ドアを開けると、[ミュウ]のショウタ君が上機嫌で飛んできた。
……その様子だと、何か良いことがあったのかな?
何の違和感も無く飛べてるみたいだし。
コロナ〈勝ったんだ。ライトさん、私達の方もうまくいったよ!〉
コロナちゃんも、嬉しそうに言った。
わたしはメンバーの3匹をだしながら、
ライト「って事はショウタ君、出来るようになったんだね?」
ショウタ〈うん! リヴさんの身体だから、案外簡単に出来たんだよ!〉
ふたりに真意を確かめた。
ショウタ君、わたし達がジム戦をしている間に、{技の練習をしていたい}って言ってたんだよ。
だから、ちょっとコツを教えたんだよ。
わたしとリヴさんの両方が使える、[サイコキネンシス]のね!
本当は[念力]から習得しないと使えるようにならないんだけど、リヴさんが使えて助かったよ。
ティル〈ショウタ君、これで君もバトルが出来るね!〉
進化して[テルーナ]となったティルが、若干低い声で言った。
ショウタ〈うん!〉
テトラ〈その前に、もう少し他の技を使えるようになったらのほうがいいんじゃない?〉
ラグナ〈さすがに[サイコキネンシス]1つでは戦えないぞ。〉
今にも戦いそうな2人を、テトラとラグナが冷静に止めた。
………だって、ここは部屋の中でしょ?
ガラスが割れたり、壁焦げたりしたら大変だよ。
ティル、君たちの気持ちも分かるけど、今は無理だね。
ティル〈あっ、そうだね。………ところでライト? この後はどうするの?まだ休むには早すぎるし……。〉
彼は我先にと、わたしに予定を伺った。
…だって、まだ2時ぐらいだし。
……でも、わたしの中ではもう決まってるよ!
ライト「ここには泊まらずに[ヤマブキシティー]に行くのはどう?」
テトラ〈[ヤマブキシティー]に? まだこの街にも観る場所があると思うんだけど、どうして?〉
わたしの言葉に、テトラは首を傾げた。
コロナ〈海水浴場とかには行かないの?………私は泳げないけど……。〉
ティル〈俺も炎タイプだから無理だね。〉
ライト「シルクから聞いて知ってたけど、また今度にするよ。……実は、[ヤマブキシティー]に会いたい人がいるんだよ。」
一同〈〈〈〈会いたい人?〉〉〉〉
わたしの言葉に、誰もが疑問を感じた。
…だって、まだこの話はまだしてないし、そもそも、カントー地方にはこの旅で来るのが初めてだから不思議に思うのも当然だよね?
右も左も分からない状態だし……。
ライト「うん。そこに私の幼なじみが住んでるんだよ。」
その人も、わたしにとってはユウキ君達とかティル達と同じくらい大切な人なんだよ。
……会うの、4年ぶりだけど……。
………元気かな……?
わたしはその、懐かしい彼に思いを馳せた。
ラグナ〈幼なじみか……。…だが、その場所は分かるのか?〉
ライト「うん。 わたし、この旅を始める前はホウエン地方にいたんだけど、その時に電話で聴いたんだよ。」
………その時はまだ使い方分からなかったから、お兄ちゃんに頼んでだけどね。
でも、今はもう使えるよ。
ショウタ〈住所とか?〉
ライト「うん。」
ティル〈じゃあさっそく会いに行こうよ!〉
……ティル、相変わらずだね?
進化したら大抵性格変わるんだけど、ティルはそのままだね?
フライは[ナックラー]だった時は内向的だったし、オルトは内気だったみたい…。
……でも、いっか。
わたしも早く会いたいし。
ティルは待ちきれないと言わんばかりに、話すわたし達を急かした。
ライト「うん! みんなも、いいよね?」
テトラ〈もちろんだよ。〉
ラグナ〈俺は構わない。〉
ショウタ〈いいよ!〉
コロナ〈なら、決まりだね。〉
みんなも、快く了解してくれた。
……じゃあ、行こう![ヤマブキシティー]に!
………
数時間後 ヤマブキシティー sideライト
ティル〈……この建物がそうなの?〉
ライト「うん。彼の話だと、3Fにオフィスがあるんだって!」
わたし達は林立するビルのうちの1つの前に立ち、上を見上げながら呟いた。
………あっ、そうそう、ここに来るまでに何回か戦ったんだよ。
ティルとコロナちゃんがタッグで戦ったんだけど、ふたりとも凄かったよ。
まずはコロナちゃん。
ティル以上に火力が強かったよ。
……きっと、シルクに直接鍛えてもらったのかもしれないね!
……そしてティル。
動きが更に素早くなってたけど、驚いたのがエスパータイプの技を使った事だね。
ティル、進化して[サイケ光線]を使えるようになったみたい。
コロナ〈……上を見上げすぎて首が痛いよ……。〉
???〈僕達、こういう所は慣れてないから仕方ないよ。〉
コロナちゃんは少し苦い表情を浮かべながら言った。
それに、♂の[ロコン]が半ば笑い気味で呟いた。
……えっ? この[ロコン]誰だって?
話せば長くなるんだけど、彼は姿を変えたショウタ君。
ラグナに{伝説の種族が街中を彷徨いたら騒ぎになるだろ? [ミュウ]は全ての種族に姿を変えられると聞いた事がある………。だからお前の身の安全のためにも習得したらどうだ}って提案されたんだよ。
それで、どの種族に変えようかっていう話になって、一番一緒にいる期間が長い[ロコン]にしたらどう、っていう事になったんだよ。
……だって、ショウタ君とコロナちゃんは小さい頃からずっと一緒みたいだから……。
……それに、技もそうたけど姿を変えるにはイメージが大切なんだよ。
[ロコン]なら、イメージし易いでしょ?
だから、ショウタ君は[ロコン]に姿を変えたってワケ。
……長くなったね。
……そろそろ話に戻るよ。
テトラ〈私も、こういう人混みは慣れないね…。私、森育ちだし……。……あんなところ、もう帰りたいとは思わないけど……。〉
テトラも、若干顔を歪めながら呟いた。
ライト「……確かにね。ホウエン地方は
此処みたいに高いビルとか少なかったからわたしもちょっと痛いよ。」
わたしも半笑いで答えた。
ラグナはそんな様子は無さそうだから、慣れてるみたい…。
涼しい顔で平然としてるし……。
ライト「じゃあ、首の痛みが強くなる前に入ろっか。」
わたしはこう言って、みんなを先導した。
………
数分後 sideライト
ライト「……ふぅ、やっと着いた…。」
わたし達はエレベーターに乗り、目的の扉の前にたどり着いた。
ティル〈………ここ?〉
ライト「うん。」
ティルは、不思議そうにわたしに聞いた。
テトラ〈……何て書いてあるの……?〉
テトラは、その扉に書かれている文字を目にして首を傾げた。
ショウタ〈……{探偵事務所}…?こんな所にいるの……?〉
ラグナ〈探偵か……。昔の癖でついゾッとしてしまうな……。〉
……実は、わたしが会いにきた彼、まだ駆け出しだけど探偵なんだよ。
…………探偵といっても、某アニメみたいに事件を解決したり、推理したりするほうじゃなくて、内偵とか、特定の人を捜しあてたりするほうの探偵なんだよ。
テトラ〈……そっか。ラグナは組織のポケモンだったっけ?……しっかりしてるから未だにしんじられないけど……。〉
口々に感想を漏らした。
ライト「……すみません!」
そして、わたしは込み上げる懐かしさと共に、扉のノブを回した。
そして、それを前に開け、部屋に踏み入れた。
???「いらっしゃいま………えっ!!?ライト!?」
ライト「ヒイラギ、久しぶり!!」
そこには、まだあどけなさが残る青年が、あまりの事に腰を抜かしそうになっていた。
行くって、あえて言わなかったんだよ。
……サプライズ、っていうやつだね!
ライト「突然だからビックリしたでしょ?」
ヒイラギ「本当にビックリしたよ。……まさかライトに驚かされるとは思わなかったよ。」
ライト「昔はよくわたしがされてたから、たまにはね!」
わたしと彼は、4年ぶりの再会に心を躍らせた。
ティル〈ライト? この人がそうなの?〉
ライト「うん! 紹介するよ。彼がわたしの幼なじみのヒイラギ。わたしと同じ場所の出身で同い年なんだよ。」
テトラ〈……って事は、18歳?〉
ティル〈同じなら、ホウエン地方の出身なんだね?〉
ふたりとも、ヒイラギに興味津々だね?
ヒイラギ「あたりだよ。ライトはトレーナーになるって聞いてたけど、みんなはライトのメンバーだね?」
ショウタ〈ううん。〉
コロナ〈私達は一時的に、かな?〉
ヒイラギ「そっか。……なら、[テルーナ]の君と、[ニンフィア]の君と、[グラエナ]の君がライトのメンバーなんだね?」
ヒイラギ、あたりだよ。
ラグナ〈そうだ。〉
……………。
ティル・テトラ〈〈………えっ!?今、俺/私達の言葉に答えたよね!?〉〉
ショウタ〈なんで!?〉
コロナ〈私達の言葉は伝わらないはずなのに!?〉
みんなは、やつと気づいて時間差で驚いた。
自然な流れだったから、気付くのが遅れたね、きっと。
ヒイラギ「うん。分かるよ。」
ティル〈でも、どうして!?〉
ティルは切羽詰まった様子で問いただした。
ライト「……わたしと同じ存在って言ったら分かる?」
………もう感づいてるかもしれないけど、そういうこと。
コロナ・ショウタ〈〈えっ!?〉〉
テトラ〈……って事は………〉
ティル〈この人もポケモンなの!?〉
ヒイラギ「流石、ライトのメンバーだね。」
ラグナ〈男という事は………[ラティオス]だな?〉
そう。ヒイラギは、[ラティオス]なんだよ。
彼は変装とか人やポケモンのマネが上手くて、よく驚かされたんだよ。
今思うと、懐かしいなー。
マネが上手いから、わたしよりも早く人の姿に変えられるようになったんだ。
ラグナは確信して彼の種族名を言った。
……だって去年、お兄ちゃんに会ってるもんね。
………その代わり、バトルではわたしのほうが上だったけど……。
テトラ〈伝説関係ってのはわかったけど、本当なの?〉
テトラは、彼に疑いの眼差しを向けた。
ヒイラギ「……なら、見せようか?ぼくの本当の姿。」
ライト「その方が早いと思うよ? わたしならそうするし。」
初めてテトラに会った時だって、すぐに元の姿に戻したし、きっとそうしたね・わたしなら……。
ヒイラギ「それが一番いいね。……じゃあ、いくよ。」
そう言って、ヒイラギは目を閉じて意識を集中させた。
ライト以外〈〈〈〈〈!!?〉〉〉〉〉
すると、わたしが姿を変える時と同じように、彼は眩い光に包まれた。
10秒ぐらい経つと、光は次第に収まっていった。
そこには、わたしが赤に対して青に白のポケモンが浮遊していた。
ヒイラギ〈でしょ?〉
ライト「ラグナの言うとおり、〈」ヒイラギは[ラティオス]っていう種族なんだよ。〉
わたし達以外は、唖然として言葉を失っていた。
………わたしが知る限り、[ラティオス]はお兄ちゃんとソウルさん(シリーズ2参照)と彼だけだよ。
ちなみに、ヒイラギにはお姉ちゃんがいるんだよ。
そのポケモンは、“とある青年の物語〜kizuna〜をよんでくれた人は知ってると思うよ?
………もう分かったよね?
ヒイラギのお姉ちゃんはアオイさんなんだよ!
わたしも、彼女には凄くお世話になったんだ!
………とにかく、ヒイラギの事はこんな感じかな?
この後はわたし達………、殆どわたしとヒイラギだけだけど………、話に華を咲かせた。