α 竹馬の友
昼 トキワの森付近 sideリヴ
リヴ「……やっぱり、癖というものはなかなか治せないなー。」
生い茂る草木を掻き分けて獣道を進みながら、僕は大きな独り言を呟いた。
二足歩行は[リオル]の姿で慣れてたけど、人間の姿は初めてだからまだ馴染んでないよ…。
馴染んでないといえば、この体の持ち主のショウタ君は大丈夫かな…?
僕の種族は浮遊して行動するから、苦戦しているだろうね。
あと、姿を変えれる事を言い忘れたけど、まっ、いっか。
そのうち気づくだろうし。
リヴ「久しぶりに[ニビシティー]を見ていこうかと思ったけど、ついこっちに来ちゃったな。………それに、人間の姿だと飛べないからな……。」
僕は青い空を仰ぎ見ながら呟いた。
これからエンに会いに行く予定だけど、船とか乗った事無いからな……。
いつもは自力で行ってたし……。
……だったら、この辺なら、アイツに頼むしかないか。
僕の脳裏に、ある友人の姿が浮かんだ。
僕の年は26だけど、
カラダは14歳だから、余裕だね。
リヴ「フェズ、いる?僕だよ!」
僕はそのポケモンの名前を呼んだ。
姿は違うけど、声で分かってくれるよね?
すると、遠くから風の音に紛れて何者かが羽ばたく音が聞こえてきた。
リヴ「分かるかな……。」
???〈………? 確かこの辺からリヴの声がしたような………。……気のせい……〉
リヴ「フェズ!待って! 僕ならここさ! 下だよ!!」
僕のちょうど真上に、風を切りながら一匹の[ピジョット]が飛来した。
本当は[テレパシー]で呼び止めようと思ったけど、無理だった。
……つまり、元の
僕にその能力が残ったって訳さ。
フェズ〈下?………いや、違う。リヴは……〉
リヴ「本当さ。訳あって体が入れ替わったのさ。だから、フェズの下にいる人間が、[ミュウ]のリヴさ!」
まっ、信じられないのも当然だよね。
フェズの表情は見えないけど、多分、複雑な顔をしてるよ。
フェズ〈……この喋り方は、間違いないね。わかったよ。〉
そう言って、フェズは
僕が僕である事を確信して、高度を下げた。
………でも、喋り方って、どういう事だろう?
………まっ、いっか。
別に大した事じゃないし……。
リヴ「急に呼び出して悪いね。」
フェズ〈いや、構わないよ。暇だったし。……でも、どうして人間の姿に?[ミュウ]は変えられないはずだけど?〉
彼は不思議そうな表情で僕に聞いた。
リヴ「この体の持ち主と思いっきり頭をぶつけてね…、[ココロ]と[カラダ]が入れ替わったのさ。」
フェズ〈……だったら、人間のはずなのに何故俺の言葉を?〉
リヴ「知り合いが言うには、中途半端に入れ替わったらしいのさ。……だから、人間の姿でも言葉が分かるのさ。」
もし、完全に入れ替わってたら完全に
鬱ぎ込んでたかもね……。
友達と話せなくなる訳だし……。
フェズ〈……何か都合がいい話だね……。………で、今更だけど俺に何かよう?〉
リヴ「僕はもう姿は変えられないから、ある場所まで乗せてってくれる?」
僕は伝説の種族だったからできたけど、人間には無理だしね。
………そもそも、姿を変えられる人間なんて聞いた事ないし……。
………仮に出来る人がいたら是非とも会ってみたいね。
リヴ「………[1の島]にある[
燈山]なんだけど、分かるかな……?〉
そこに、僕の親友のうちの一匹がいるんだよ。
フェズ〈[燈山]だね?……久しく行ってないけど、分かるよ。〉
リヴ「なら、連れてってくれる?」
フェズ〈ああ、いいとも。〉
フェズ、君ならそう言ってくれると思ってたよ!
リヴ「じゃあ、背中にのるよ?」
フェズ〈うん。〉
僕は彼の言葉を聞くと、すぐに彼の背中に跨がった。
………なんか、不思議な気分だよ……。
人間って、飛行タイプに乗せてもらう時ってこんな気持ちなのかな?
フェズ〈乗ったね?………いくよ!〉
フェズは僕の様子を確認すると、2、3回羽ばたいて高度をあげた。
そして、鬣や服を靡かせながら、僕達は例の場所へと向かった。
…………
燈山 sideリヴ
リヴ「フェズ、ありがとね。」
フェズ〈どういたしまして。〉
リヴ「明日の昼ぐらいにまた来てくれる?」
フェズ〈……でないと、リヴは帰れないでしょ?〉
本島に比べて少し暖かい山……、いや、火山の山頂付近に、僕を乗せたフェズは降りたった。
……ポケモンと比べて人間の身体は弱いから心配だったけど、杞憂だったみたい……。
今日は風があるから、熱が籠もりにくくなっているのかもしれないよ。
僕は彼の背中から頼みながら降りた。
リヴ「うん。 船の切符の買い方とか分からないし、その前にお金も持ってないからね。……じゃあ、お願いね。」
フェズ〈うん。〉
フェズ、頼んだよ。
僕の言葉を聞くと、彼は大きな翼を広げて飛びたった。
………
数分後 山頂 sideリヴ
リヴ「………ふぅ、やっと着いた。」
僕は汗を流しながら、山の斜面をよじ登った。
……たまには飛ばずにこうやって登るのもアリだね。
額に流れる汗を拭いながら、
リヴ「エン、昨日は来れなくてごめん!」
古くからの親友の名を呼んだ。
エンなら、この姿でも分かるはず。
………見かけによらず勘が鋭いし……。
炎タイプだけど、エスパータイプ並みに冴えてるんだよ。
……他にもそういう、タイプの気質に合わないポケモンもいるらしいのさ……。
実際、スノウは飛行タイプだけど言うほど陽気じゃないし……、エスパータイプだった僕だって、言うほど勘が当たらないし……。
???〈その声はリヴだな! 姿を変えたって、俺には通用しないよ!〉
リヴ「流石エンだね。」
すると、かなり近くから活気に満ちた声が響いた。
エン〈あのイカヅチより俺の方が仲がいいんだ。当然だろ?〉
リヴ「……
ハハハハ……。…まあね……。」
僕はいつものように苦笑いを浮かべながら答えた。
……昔からそうなんだけど、エンとイカヅチはいつも張り合ってるんだよね……。
性格も考える事も似てるから、闘争心が湧いてるんだろうね。
年も同じだし、もし、種族が同じだったら双子って間違われるかもしれない……。
……きっと、スノウもシードもそう思ってるはずさ……。
エン〈……にしても、変えられないはずの人間になってるって事は、何かあったって事だな?〉
リヴ「うん、あたりだよ。実はね…………(重複するので、省略します。 by @)………って話しさ。」
軽く冗談を交えながら、事の終始を語った。
………イカヅチとの唯一の違いは、エンには冗談が通じる事なんだよ。
彼は、笑いを交えて僕のボケにツッコミながら聴き入った。
エン〈……なるほど。……つまり、リヴはそのショウタっていう人間と中途半端に入れ替わったって訳だな。〉
リヴ「うん、そういうこと。」
エンには多少言葉を省いても伝わるから、本当に楽だよ。
……ええっと、こんな感じでエンと日が暮れるまで話し込んだ。