補之参 時を越えた出逢い
西暦7000年 霧の脇道 sideシルク
私とウォルタ君は、ラテ君達とは違って森の東側に来ているわ。
ダンジョンかと思って意気込んで来たけど、無駄だったわ。
だって、ここはダンジョン化していない道、まっすぐ林道が延びているわ。
「シルク?伝説の事とか詳しく教えてくれる〜?」
「ええ、もちろんそのつもりよ。」
ウォルタ君が横から話しかけたわ。
彼は[真実の英雄]候補、まさかウォルタ君に[真実]が秘められているとは思わなかったわ。
「伝説については知っているわよね?」
「うん。もちろんだよ〜。小さい時に聴いてるからよ〜く知っているよ〜。」
ウォルタ君は大きくうなずいた。
「なら、省くわね。 ウォルタ君は[英雄]と[使者]、[賢者]と[守護者]の繋がりは知っているかしら?」
これは伝説には語られてないから知らないはず。
当事者の間でしか語られてない事だからね。
「繋がり〜?何なの〜?」
「聞いておいてよかったわ。なら、話すわね。 [英雄]と[使者]、[賢者]と[守護者]は離れていても意志疎通が出来るのよ。そのかわり、[真実]なら[真実]、[絆]なら[絆]に限るけどね。」
このためには[証]が必要なのよ。[証]には象徴によって違う効果があるのよ。
私の時代だと、[絆]は姿を変えれて、[友情]は私達、ポケモンと会話する事が出来るようになったわ。
「へぇ〜。知らなかったよ〜。本当に“伝説”って感じだね〜。出来ることが常識からかけ離れているよ〜。」
「ちなみに、伝達の方法は[テレパシー]に似ているわ。」
性質は少し違うけど、本人が言うにはそうらしいわ。
「[テレパシー]………。そういえば、シルクも使ってたけど、[従者]も使えるの〜?」
「いいえ、出来ないわ。 私が使える理由は、練習したからよ。 エスパータイプは経験を積めば使う事が出来るのよ。…………根気よく続けないといけないけどね。」
あの時は大変だったわー。確か、その時はホウエン地方で調査している時だったわ。懐かしいわね………。
「[水タイプの恩恵]みたいな感じなんだね〜。」
「そうよ。」
ちなみに、[水タイプの恩恵]とは、水タイプだけに与えられた特権よ。
当たり前かもしれないけど、水中でいつまでも行動できる事を言うわ。
…………あっ、話している間に傾斜が出てきたわね。
「練習すればの話だけどね。」
私は笑顔で言ったわ。
傾斜、キツくなってきたわね………。
私達は4足歩行だからあまり関係ないけどね。
………
霧の高台 sideチェリー
ここは霧の高台。わたしが時を越えるのに使っている[時の回廊]がある場所なのよ。
それに、常に霧がかかってるから奴の追跡から身を隠すのには丁度いいんだよ。
だから、わたしはこの時代ではここを住処にしているわ。
ちなみに、シードと初めて逢ったのもここなんだよねー。
…………えっ?シードはどこにいるのかって?
彼は手違いで連れてきてしまったエーフィーとフライゴンを捜しにいったわ。
「シードとわかれてから2日経つけど、見つかったかしら?それに、グラスも順調だと良いわね。」
1つ気がかりなのが、この時代に来るときにはぐれたあの人、何にも情報がないから心配ね……。
「……………とりあえず、伝説について私が知っている事は全部話したわ。」
「シルク、わかったよ〜。ありがとね〜。」
えっ!?誰!?しかも2人!?こんな事、初めて!?
もしあの2人に[時の回廊]に近づかれたら……大変な事に…………。
わたしは慌てて木の陰に隠れた。
「あら?行き止まりかしら?」
「そうみたいだね〜。 ………でも、シルク?あそこに何かあるよ〜。」
シルクと呼ばれたエーフィーにミズゴロウが言った。
まさか、気付かれた!?
これはどうしても止めないと!!
〈そこまでよ!!ここから先は行かせないわ!!〉
わたしは2人に語りかける。
「えっ!?これは[テレパシー]〜!?」
「そのようね。」
《あなたは一体誰なの!?》
えっ!?[テレパシー]??エーフィーなのに!?有り得ない……。
でも、ここは戦うしか………。
わたしは意を決して2人の元に向かう。
「ここは絶対に通さないわ!」「!?この種族は………まさか……[セレビィ]!?いや、でも、普通は黄緑のはず………。」
彼女、わたしの種族を知ってるのね。
でも、彼女達は敵、ここに来たって事は奴の手下の可能性がある………。
「シルク、[セレ………]……」「ウォルタ君、この雰囲気、戦闘になるわ!相手は草タイプ、だから下がって!!」
エーフィーは声を張り上げる。
………誰が来てもおなじこと………。
「[エナジーボール]!」「本当は戦闘は避けたかったけど、やむを得ないわ……。[絆]の名に賭けて……いくわよ!![瞑想]!」
わたしは手元に緑のエネルギーを溜める。
相手は目を瞑った。
「伝説を見くびらないでほしいわ!!」
「どういう訳があってか知らないけど………、[シャドーボール]、[目覚めるパワー]!
相手は目を瞑ったまま口元にエネルギーを溜める。
完全に見えてないわね!もらったわ!!
わたしは相手に向けて放つ。
やった!命ち………えっ!?かわされた!?
相手は右に跳んだ。
完全に読まれてる……。
「もう一発!!」
相手も放ち、わたしめがけて飛んでくる。
わたしはそれをかわす。
そのまま接近して……
「[花びらの舞]!」「[サイコキネンシス]!っ!」
直接攻撃。
えっ!?消えた!?
しかも残ったのは風だけ!?
くっ!見失った………。
「[目覚めるパワー]、[シャドーボール]連射!」
「えっ!?上!?」
いつのまに………。
相手はわたしの遥か上空からいくつもの深青色の弾を放つ。
「[エナジー………」……えっ!?増えてる!?どういうことよ!??」
その弾は瞬く間に増えた………。しかも、大きさが変わらない……。
まさに青の雨………、わたしでもかわせそうにない………。
ダメだ………、やられる………。
「っ!!!」
わたしに数えきれない数の弾が命中…………。
……………強い……。
わたしは…………地面に…………墜落した………。
このエーフィー……………、一体…………何者……………?
「シルク…………伝説のポケモンを相手に………勝っちゃった…………。」
わたしはここまで聞いて意識を手放した。
………
霧の高台 sideシルク
「っ!!!」
私が作り出した深青色の雨がセレビィ…………声からすると♀ね………に降りそそいだ。
私は地面に着地、彼女は体力が尽き、落下した。
「……ふぅー、………とりあえず、収まったわね………。」
「うん。でも、どうして突然襲いかかってきたんだろうね〜。自我がちゃんとあったけど………。」
確かに……。野生なら、まともに会話もできないはず……。でも、彼女はしっかりと話していたわ…………。
「………おそらく……、何か理由があるに違いないわ……。」
理由無しに攻撃するのは有り得ないから。
自我があるなら尚更…………。
これは真相を確かめる必要があるわね……。
私達は彼女の意識が戻るのを待つことにしたわ。
………
数分後 sideシルク
「………ううっ。」
「シルク、気がついたみたいだよ〜!」
あれから数分後、意識が戻ったみたいね。
それまでの間に、彼女に私の回復薬を飲ませておいたわ。
「!?まだ戦う気!?」
「まって!私達は戦うつもりはないわ!!」
私は必死に戦うつもりは無いことを訴える。
「そうだよ〜!それに、君は何か理由があって戦いを挑んできたんだよね〜?」「あなたの住処に勝手に入ったのは謝るわ!私達はあなたの住処を奪うつもりは全くないわ!!……元々私はこの時代のポケモンではないわ……。あなたなら、時代を超えられるから、わかるわよね?」
[セレビィ]は時を超える力を持つポケモン……。
元の時代で出逢った人とはちがうとはいえ、わかってくれるはず………。
「シルクは大昔のポケモンだから……」
「大昔………?まさかあなた、5000年前の出身?」
彼女は恐る恐る私に聞いたわ。
えっ!?
「……そうよ。私は2000年代の出身………」
「本当にごめんなさい!!わたし、盗賊か何かと勘違いしてしまったわ!」
彼女は元々の色以上に赤くなって土下座……。
「気にしないで!あなたにとって、何も名乗ってない私達は不審者、あなたは当然の事をしただけだわ。だから、自分を責めないでくれるかしら?だから、顔を上げて。」
私は彼女を優しくなだめる。
「…………、うん。」
「元気だして〜。多分ぼくが君の立場だったら同じことをしたとおもう。だから…。」
彼女は顔を上げ……、
「………うん、そうよね!いつまでも落ち込んでいても仕方がないよね?うん、元気がでたわ、!」
満面の笑みで答えたわ。
よかったわー。
「……私はエーフィーのシルク、一応考古学者よ。………専門は古代の伝承。実は化学も得意なの。」
私は彼女に自己紹介。………化学者って名乗ってもいいわよね?私は文系というより、理系だし………。
「ぼくはミズゴロウのウォルタ、学者志望だよ。よろしくね〜。」
ウォルタ君も私に続いたわ。
「2人共、学者なのね?ふふっ、この時代では珍しいわね!わたしは、見ての通り色違いのセレビィ、チェリーって言う名前よ。よろしくね!」
彼女…………チェリーは溢れんばかりの笑顔でいったわ。
「こちらこそ、よろしくお願いするわ。」
「そうそう、わたしは7200年代の出身なの。」
えっ!?7200年代の!?
つまり、未来のポケモン!?
私との時間差が5200年……。
「チェリーさん、あなたは秘密を言ってくれたから、私も言うわね。…………私は[英雄伝説]の18代目、[絆の従者]よ。」
「えっ!?あの伝説の?!」
チェリーさんが驚きの一声……、それもそうよね……。
この時代では、私はおとぎ話の登場人物だから………。
「うん。そうだよ〜。」
「シルクさん………」
「シルクでいいわよ。そのほうが[絆]が深まるでしょ?」
敬語を使われるのはあまり好きじゃないのよね……………。
「言われてみれば、そうだね!なら、わたしの事もチェリーって呼んでいいよ!もちろん、ウォルタ君、君もね。」
チェリーが無邪気な笑顔で言った。
「うん。わかったよ〜!」
こうして、私達に新たに[絆]は橋が架かったわ。
巻之補 其之参 完 続く