絆の軌跡 〜過去と未来の交錯〜
























小説トップ
巻之伍 待ちに待った遠征
弐拾参 揺るがない絆
西暦7000 濃霧の森入り口付近 sideフライ

シルク…………。

そんなに落ち込むことはないよ………。

ボク達は[誘いの坑道]で話してからほとんど言葉を発してないよ………。

……………ボクは何度かシルクに話しかけようとしたんだけど、彼女は今までに無いくらい沈んでいて………、話せるような状態じゃなかったんだ………。

………そんな状態を引きずっているうちに目的地に着いてしまった……。

………シルクをなんとかフォローしないと!

「………シルク、大丈夫?」

ボクは重い口を開いて、何時間ぶりかの一声を発した。

「フライ……………本当に…………ごめんなさい………。私が…………不甲斐ないばっかりに………、こんな事に………。」

シルクは消え入りそうな声で言った。

シルク…………相当気にしてるよ……。
シルク、人一倍素直だから…………。

「シルク、元気出して。誰にでも失敗の1つや2つ、するものだよ。」
「………でも、私だけでならともかく…………フライにも迷惑をかけたから………。」

そんな………、迷惑だなんて、とんでもない!

「今まで隠してきたけど、ただ話す時期(とき)が早まっただけだよ。……いつかは話さないといけないことだから!」
「………でも、フライをも巻き込んだのも………」
「シルク!ボクは仲間に加わった時点で苦楽を共するって誓ったんだ!“巻き込まれた”だなんて微塵(みじん)も思っていないよ!それに、これはボクが望んだ運命(みち)、[絆]の名の下に誓った以上、ボクに後悔はないよ! シルク、世の中に完全な人なんていない。いたらつまらないでしょ?だから、元気出して。シルクらしくないよ!」

シルクが沈んでいるのに、ボクが何もできなかったら元の時代の仲間に顔向けができない………。

それに、ここでシルクとの関係が良くないものになったら………、シルク、君の[絆]の名が廃るよ………。

…………ボクには、そんな事、絶対に出来ない!

「……………フライ…………、うん、そうね………。[絆]の名を持つ者として……、じゃなくて、一匹のエーフィーとして………、大切なものを見失いかけていたわ…………。………目が醒めたわ。フライ、本当にありがとう!!」

シルクの頬に一筋の光が流れた。

それがボクには、青空に鎮座する太陽よりも輝いて見えた。

「シルク………。ボクも安心したよ。シルクはやっぱりこうでないと!」

……シルクはボク達の司令塔、[太陽]だから…………。

ボクは心の声でシルクに伝えた。
伝わったかは定かではないけどね。

…………シルク、君の華が戻って本当によかったよ。

………

数時間後 sideシルク

あの後の私、完全に目が曇っていたわ。

フライ、あなたのお陰で[絆]の本質を取り戻す事ができたわ。
[絆の従者]として、しっかりしないといけないわね。


…………あっ、言葉の解説をしないといけないわね。

“とある青年の物語”シリーズをご覧の方は知っているかもしれないけど、私達のトレーナーは[絆の賢者]という伝説上の位置づけにあるのよ。彼にはその関係で準伝説のポケモンがついているの。その彼も大事な仲間の一員よ。

その彼に聞いたんだけど、[賢者]のはじめのポケモン、つまりパートナーは特別に[従者]と代々言われているらしいわ。
つまり、私がその[従者]というわけ。

言葉の解説は以上よ。

長くなってしまったわね………。
ここで話に戻るわ。

そんな訳で私達は今、ギルドのベースキャンプ、[濃霧の森]の入り口に来ているわ。

天気は曇り、そして名前のとおり、霧が立ちこめているわ。
さっき[シャドーボール]を発散させて突風を起こしたけど、全く晴れなかったわ。

そんな訳で、日が差さないから五感が鈍るわね……。

……………ちなみに、今この場所にいるのは私とフライ、フラットさん、ラックさん、そしてヤツら…………。
Br、探検隊だったのは事実だったのね………。

そして、私達は今何をしているのかというと………

「フラットさん、私のほうはできたわよ!」
「ボクのほうもOKです!」

一番に着いたから、休憩用のテントの設営を手伝っているわ。
任せっぱなしだと、流石にわるいからね。

「シルクさん、フラットさん、助かりました♪」

フラットさんがテントの紐を縛りながら言ったわ。

「フライさん、ボク達は待ってる間ヒマだから、手伝って欲しい事があったら言ってください!…………シルクはたぶんダンジョンの事とかの整理をすると思いますけどね。」

………確かに、そのつもりよ。
まずは出発する前に買ったこの時代の地図とノートにダンジョンの情報の記入。
地図はまだ何も書き込まれていないけどね。
そしてノートは二日目に買った2冊。調査用と日記用。地面に置いて書き込んでいるわ。

4足歩行する種族はみんなこのスタイルらしいわ。

……私達は元の時代で習ったから知っているけど、この時代の人はみんな文字を書けるらしいわ。

………えっ!?なら、元の時代はどうだったのかって?

私達の時代のポケモンで文字を読み書き出来た人はごくわずかだったわ。表音文字と表意文字が混ざっていたから、習おうと思った人が少なかったからじゃないかしら?

………そんな訳で、私とフライは私達の時代の文字、[かな文字]と[漢字]を使えるわ。
この時代のは無理だけどね。


ええっと、こんな感じで全員が揃うまで思い思いに自由時間を過ごしたわ。

………

数時間後 sideシルク

「やっと、やっと着いたでゲス!」「ふぅー、やっと着いたよ。」

「ベリーちゃん、疲れたね〜。」
「うん。わたしも疲れたよ。ウォルタ君、君も強くなったんだね!」

太陽が沈んだ頃、ラテ君達が疲労困憊といった様子でたどり着いたわ。

「遅い!予定より2時間遅刻だぞ♪!!」

フラットさん、ご立腹ね……。フラットさん、ラテ君達にだけあたりが強いと思うけど…………、きっとこれは期待している証拠よね?

「………大群に何回も襲われて………。」
「まあいい。さあ、荷物を置いてこい。ミーティングを始めるぞ♪」

「「うん!」」「「はい」でゲス!」

言うや否や、私達が建てたテントの方に行ったわ。

…………さあ、私達も、準備しないとね。


数分後

「全員揃ったな♪それでは……」

フラットさんの第一声と共に、明日の探索のための会合が幕を開けたわ。
…………いよいよね。

「ミーティングを始める前に、シルクさんとフライさんから話があるそうだ。」
「話って何でゲスか?」
「歴史にすることですかー?」

ギルドのメンバーが興味あり、という感じで口々に言ったわ。

「違います。」
「私達の事についてよ。」

私達は前に出ながらいった。

「シルクさん達のですか?」
「そういえば、聞いたことがなかったでゲスね。」

スズネさん、ブラウンさんの順番でいったわ。

ここでしばらく間を置いて………、

「実は、今までずっと黙っていた事があるんです。」

フライから話しはじめたわ。

「黙っていた事?」
「ええ。 私とフライは、この時代のポケモンじゃないのよ。」

「「「「「ええー!?何だって!??」」」」」

ラテ君、ベリーちゃん、ウォルタ君を除く全員が驚く。
これは想定内。
ちなみに、ヤツらは不在。きっと早々と寝たと思うわ。

「ボク達は遥か昔……人間がいた時代……。」
「5000年前のポケモンなのよ。」

……ここでもまた驚きの声。きりが無さそうだから、省略するわ。

私達は構わずに話を進める。

「私達は元の時代で、タイムスリップに巻き込まれてこの時代にやってきたのよ。」
「そう。だから、ボク達がこの遠征に参加した理由は、元の時代に戻るための手がかりを探すため……。」
「………私達が太古の昔の事、この時代の事を知らないのはこういう理由よ。」

とりあえず、ここに至った経緯は話したわ。

「ヘイ、1つ質問だが、シルクさん達はその5000年前に何をしていたんだ?」

ここでシザーさんが口を開いたわ。
良い質問ね。

「ボク達は仲間と、1人の人間と共に各地の伝説の追跡調査をしていたんです。…………いわゆる、考古学者です。」
「その人は、各地で名が知れ渡っていたわ。………私達が考古学者になったきっかけは、ある伝説に関わったからよ。」

ここで私は言葉を区切った。

「皆さんは“英雄伝説”を知っているかしら?」

私は疑問をなげかける。

「子供の頃に昔話として聞いたことがあるでゲス。」
「私も知っていますわー。2体のドラゴンポケモンと3体のポケモンのおとぎ話ですよねー?」
「そうです。それはおとぎ話ではなくて、実話です。」
「私達が何代かあるうちの一代だから……。ドラゴンポケモンがそれぞれ[理想]、[真実]を司っているのはしっているわよね?」
「その事ならよく知ってるよ〜。3体のポケモンは[絆]、[友情]、[志]を司っているんだよね〜?」

ウォルタ君、正解よ。まだ話してないのに、よく知っているわね!
流石は学者志望。

「ウォルタ君、あってるよ。2体、2人を[英雄]、3体を[守護者]、その人間を[賢者]、人間のパートナーのポケモンを[従者]というのが、おとぎ話で出てきているはずです。」
「確かに、聞いたことがあるでゲス。」
「私達の仲間の人間は、初代から数えて18代目の[賢者]なのよ。18代目は、ある集団と1人の[英雄]対、もう1人の[英雄]と[三賢者]の戦いと言ったら分かるかしら?私達はその世代よ。」
「ちなみに、シルクはその人間、[絆の賢者]と最初に……幼少の頃から苦楽を共にしたパートナー、つまり、シルクは[絆の従者]なんです。」
「フライの言うとおり、私は18代目の[絆の従者]よ。」

彼は私の全て。
………彼がいなかったら私はこの世に存在しなかった。

………彼がいなければ仲間達との出逢いはなかった。

………彼らがいなければ私の人生はどこにでもある、ありきたりなものだった。

………彼らがいなければここまで深い[絆]にはならなかった。

「私達の事はこれで全部よ。」

私達には帰る場所がある………、だから………。

この時代での[絆]を大切にして、かつ手段を探す。

特に[絆]は私達を表す代名詞。
この時代、元の時代の仲間も区別なく………個々の島を[絆]の橋で紡ぐ。

それが私達の歴史的な象徴……………。

@ ( 2013/08/04(日) 01:59 )