弐拾弐 学者の戦闘スタイル
西暦7000 誘いの坑道 sideシルク
私の準備もできたし、戦闘開始ね!
フライ、いくわよ!
相手はコマタナ2体、ダンゴロ1体、アイアント1体、コロモリ3体。
腕がなるわ!
「ラックさん、フラットさん、ここは私達に任せてくれるかしら?」
「えっ♪?シルクさん?」
「フラットさん、ボク達、これでも経験積んでますから。」
「でも、フライさん、危ないですよ!」
フラットさんが慌てて止めようよする。
それもそうね。
私達はフラットさんからしたら研究家、戦闘を積んでないと思われているからね。
「フラット、今の2人の技、見たでしょ?僕達が苦戦した相手をたった一発で倒したんだよ?友達はひょっとすると僕達より強いと思うよ?」
流石はギルドの親方ね?人を見る目があるわね。
「[岩雪崩]!」「まずは悪と草からいくわよ!」
フライは相手との間に岩石を複数出現させ、私は二色を配合、深翠色の弾丸を生成したわ!
「だから、任せてみよ!」「「!?」」
岩は一体に直撃、私の混乱作用を秘めた弾丸は横方向に弾ける。
狙い通りよ。
小弾は二体に命中、そのうち一体は混乱状態になったわ。
その間にフライは急接近、距離はすぐに詰まる。
「[目覚めるパワー]連射!」
フライは次々に紺色の弾を打ちだしたわ。その数、1秒間に2発。
「次はあれをいこうかしら?っ!」
私は漆黒の弾を垂直に跳びながら下に発散、上昇気流が発生したわ。
「[目覚めるパワー]、[シャドーボール]!」「[超音波]!」
私は口元で二色、竜と霊を秘めたエネルギーを混ぜ合わせたわ。はるか上空に飛ばされながらね。
……よく考えたら、私、3つの技を同時にだしているわね……。
[サイコキネンシス]と[目覚めるパワー]、[シャドーボール]。[瞑想]で強化してないとできないけどね。
もう少し[精神力]を高めれば、出来るようになるかもしれないわね。
話がそれたわね……。
フライは振動数の高い音波を発生、これで混乱した相手は4体ね。
私の弾は半径5cmまで膨れ上がったわ。
さあ、いくわよ!
私はそれを下に向けて放った。
「もう一発!」「次は[銀の針]で……、[ドラゴンクロー]!」
すぐに深青色の弾を衝突させる。
膨張しながら飛んでいき、4、8、16、32と増殖。
……膨れ上がりながら……。
フライは[銀の針]を両手に持ち、暗青色のオーラを纏わせた。
黒い雨が降り注ぐ。きっと逃げ場は無いわね……
「「!!??」」
相手は大ダメージを被ったわ。
私は身を翻し着地。
「フライ、あとは頼んだわ!」
「任せて!!いくよ!!」
私の残りは岩だけ。溜めるのに時間がかかるわ……。
フライ、任せたわ!
フライは両手の[銀の針]を小刀を持つように構えたわ。
何をするつもりなのかしら?
「効果が続くか、試させてもらうよ!!」
言うや否や、低空飛行で距離を詰める。
相手は何とか立ちあがったわ。
3m、2m、1m、あっという間に接近。私には出せないスピードだわ。
ちなみに、フライの戦闘タイプは相手の死角を利用したスピード型、私は典型的な特殊特化型よ。だから私に物理技は苦手で……。きっと野生より弱いと思うわ。
フライは敵が目前に迫り、急に右に進路を変えたわ。
尻尾が風になびく。
「残る敵は4体…………。っ!」
身を翻し、
「一体目!」
左、
「二、よし、いける!!」
右、
「三!」
左、………えっ!?技が終わらない!?普通は2回攻撃したら効果が切れるはずなのに、どうしてなのよ??
「最後!」
フライは右手の物を投げたわ。
竜の効果、[銀の針]に残ってるわね…。
「っ!!」
相手は崩れ落ちた。
フライ、鮮やかだったわ。
「ふぅー、完了!」
「フライ、お疲れ様。その技、どういう原理なのかしら?」
気になるわ。本来なら二発で終わるはずなのに、どうしてなの??
「たぶん、直接切り裂いてないからじゃないかな?[銀の針]を仲介しているでしょ?」
「言われてみれば、そうだった気が………。」
でも、金属だから法則では混ざるはず…………。
[ドラゴンクロー]を[銀の針]を利用して……………[銀の針]が媒介して…………。
………ん?[銀の針]?
……………銀…………。
………!!
そっか、そういうことね!!
「わかったわ!!」
「シルクさん!?」「えっ!?」「シルク!?」
私の脳裏に閃きの電流が流れたわ!
……?
突然叫んだから驚かせたかしら?
「金属のイオン化傾向ね!銀はイオンになりにくいから、混ざらなかったのね!!」
「「「???」」」
たぶん、私の一言で三人は疑問で押しつぶされているわね。
でも、謎が解けたからスッキリしたわ!!
「フライ、謎が解けたわ![化学]でね!」
「化学?………」
「ええ。簡単に解説すると、金属にはそれぞれ物質との混ざりやすさが違っていて、その関係で技が継続されたのよ![銀の針]の材質は銀よね?それは他の金属より混ざりにくいのよ!」
そう、金属は種類によってイオンになりやすい物となりにくい物があるのよ。
前者の例は、ナトリウム、カリウム。
後者は金、白金がそれにあたるわ。
「なるほどね。シルク、わかったよ。」「[化学]…………?化学って………もしかして♪……。」
「さっきの技、凄かったよー!」
私達が話している横でラックさんの声、興奮しているわね。
フラットさんは何か考えているけど……。
「[化学]って…………!? シルクさん!?もしかして、[化学]って、人間がいた時代の学問、“失われた学問”ですよね♪!??」
フラットさんが声を張り上げ………、!?“失われた学問”!?
………まさか………、私達がこの時代のポケモンでないことが感づかれた??
私としたことが…………、口を滑らせてしまったわ…………。
「シルク!!」
「フライ、ごめんなさい。つい口を滑らせてしまったわ………。」「シルクさん、フライさん、あなた達は一体……。」
フラットさんは情報屋、[化学]のことを知っていたとは……不覚だったわ………。
完全に感づかれたわね………。
「フラットさん、私達が[化学]を知っている
理由は話せないわ……。感づかれたから……バレるのも時間の問題ね…………。」
「シルク、でも…………。」
「フライ、もう話すしかないわ!…………だから………全員揃ったら話します………。だから………………」
………今はこの事については触れないで………。
「………………うん、わかった……。………フラットさん、時が来たら話します。…………ボク達の全てを………。」
……………もう隠し通せないわね………。
「………何か深い理由があるのですね♪?」
「はい……。」「ええ………。だから、今は触れないでいただけないかしら?」
しばらくの沈黙……………。
「うん、わかったよ!誰にでも秘密はあるから、そうするよ!」
ここでラックさんが口を開いたわ。
私達とは正反対で明るい声。
「そ、そうですよー♪だから、そんなに気を落とさないで下さい♪」
フラットさんが必死に場の空気を取り繕う。
「「…………………はい。」」
この後、進み始めたわ。
洞窟を抜け…………[言霊の森]を抜けて…………。
私達は無言。……………気まずいわ…………。