補之弐 使命
西暦7000年 とある森 sideシード
チェリーと再会してから3日目、ぼく達は久しぶりに行動を共にしていた。
海に行ったり、山に行ったり…………、いわゆるデートかな?
どんな景色よりも、やっぱりチェリーの笑顔が一番好きだよ。
そんなある時………
「シード、あなたに紹介したい人がいるの。」
「紹介したい人?誰なの?」
一体誰なんだろう………。
ぼくもそうだけど、チェリーもこの時代には殆ど知り合いがいないから………。
「私と一緒にこの時代に来た仲間の1人、グラス、前に話したジュプトルよ。ぶっきらぼうところがあるけど、いいひとだよ!」
「グラス………ああー一昨日言ってたあの人だね?」
そういえば、そう言ってたっけ?
って事は、チェリーと同じ、この時代から250年後のポケモンか。
「そうよ。 実はグラスとはここで待ち合わせているの。」
「へぇー。いつぐらいに来る予定なんだ?」
場合によっては、長い間待たないといけないからね。
…………ぼくもできるだけ早くあの2人を捜さないといけないから……。大丈夫かな?
「今日の夕方よ。」
夕方かー。日の傾きから推測すると、あと30分ぐらいかな?
「夕方なんだね?なら、すぐに来そうだね。」
「うん。でも、グラスは結構短気だから案外早く来るかも…………」
「短気とは、俺のことか?」
「「!?」」
えっ!?後ろから声??
ぼくが後ろを向くと、全体的に緑で目つきが鋭いポケモン、ジュプトルがそこにいた。
突然だったからビックリしたよ………。
「グラス、案外早かったのね?」
「ああ。何の邪魔もなく下見が出来たからな。」
下見?何の事だろう……。
「って事は、あれがある場所がわかったのね?」
チェリーが嬉しそうに言った。
話についていけないぼく、取り残された……。
「ああ、そうだ。元の世界で目星をつけた通りだった。………ところでチェリー、そのセレビィは誰だ?」
そう言ってぼくの方を……………、眼力、強すぎるよ………。まるでシロさんに会った時みたいな威圧感………。
一応ぼくも伝説の部類に入るけど、身がすくむよ………。
「彼は私のボーイフレンドで、この時代から5000年前の出身のシード。だから、安心して!私達の見方だから!」
「う、うん。よろしく……。」
グラスさんって言ったっけ?警戒心が………強すぎる……。
不審者を見るような目でぼくを睨まなくても………。
「そうか……。ヤツの手下ではなかったんだな?………疑ってすまない……。」
そう言って彼は申し訳無さそうに謝った。
警戒、解いてくれたのかな?
「そういえば、250年後の出身って事は………」
チェリーと同じ時代って事は、きっと………。
「チェリーから聞いているようだな。………そうだ。俺はあんな世界にさせないためにも、あれを、[時の歯車]を集めなければならない。」
「確かに、チェリーに一度連れてってもらったけど、あんな世界になってほしくないですよ。」
うん。ぼくは一度、チェリーに連れてってもらって未来の世界を見たことがあるんだ………。
光、風、音、色までも消え失せた暗黒の世界…………。まさに地獄絵図そのものだったよ……。戻ってきてから一週間ぐらいはまともに眠れなかった……。そんな世界に、絶対になってほしくない!
「ああ。あんな時代、もうたくさんだ!この時代に来てからますますそう感じた。“星の停止”の阻止、それが俺とあいつの[使命]だがら……。」
グラスさんがまるで自分に言い聞かせるように言った。
うん!グラスさんの言うとおりだよ!!
「グラス、絶対に、阻止しないとね!そのためにも………。」
チェリーがいつになく真剣な表情で言った。
「その地域のやつには悪いが、まずは[キザキの森]を狙う。これも未来のためだ。」
「ここからなら近いから、手頃ね?」
確か、ここからは大体20kmぐらいのところにあるから。
それが一番いいかもしれない……。
「ああ。だから、俺はこの辺で失礼する。」
言うや否や、グラスさんは走り去っていった。
チェリーの言うとおり、本当に短気かも………。
「シード、グラスはいつもあんな感じだから、気にしないで。」
「………うん。」
グラスさんが去って、この場には西日と共にぼく達だけが残った。