拾九 マイペースな少年
西暦7000年 海岸 sideウォルタ
あっ、どうも、こんにちは〜。
ぼくはミズゴロウのウォルタ、よろしくね〜。
ぼくは世界中を旅して、伝説について調べるのが夢なんだ〜。
ぼくは今日、シスさんの店に行ったら噂に聞いていた考古学者の人達に逢ったんだ〜。まさか会えるとは思わなかったよ〜。
それからぼくはシルクさん達に弟子入り……まさか本当にするとは思わなかったよ〜。
ダメかと思ったけど、案外あっさり受けいれてもらえたんだ〜。
もう嬉しくて涙が出ちゃうよ〜。
………えっ?どうしてシルクさんの名前を知っているのかって〜?
実はぼく、ベリーちゃんと幼なじみなんだ〜。
ぼくは毎日ベリーちゃんから依頼の話とか、探検の事とかを聴くのが楽しみなんだよね〜。
「この辺ならいいかな?」
「海岸なら、人通りが少ないから、大丈夫そうね。」
そうそう、ぼく達は今、シルクさん、とフライさんが話があるって言ってたから海岸に来ているんだよ〜。
トレジャータウンでも出来ると思うんだけど、どうしてだろう〜?
「シルクさん、フライさん、話って何〜?」
「実はボク達に加わる前にどうしても知っておいてほしいことがあるんだよ。」
「この事はラテ君とベリーちゃんにしか話してないわ。」
えっ?そんなに大切な事なの〜?
「ベリーちゃん達しか知らないこと〜?」
「ええ。だから、時がくるまで誰にも話さないでくれるかしら?」
そんなに大事なの〜?
「え?うん。」
「じゃあ、話すよ。実はボク達、この時代のポケモンじゃないんだよ。」
「………………えっ!?」
!? フライさん、どういう事!?
「驚くわよね? 私達、この時代から5000年前のポケモンなのよ。いわゆる“大昔のポケモン”よ。」
「えっ!?5000年も前の!?でも、どうしてここにいるの〜!?」
5000年も前!!?でも、どうして!??
「ボク達はいわゆる“タイムスリップ”をしたんだよ。」
「した、というより、巻き込まれたって感じね……。私の記憶が正しければ、タイムスリップする直前に見たポケモンは[セレビィ]だったと思うわ。」
巻き込まれたんだ〜。
「[セレビィ]?シルク、そのポケモンってどういうポケモンなの?」
フライさんはシルクさんに聞いた。
えっ?フライさんでも知らないの!?
「幼少の頃に聞いた事だから詳しくは覚えてないけど、確か数が極端に少ない種族だったと思うわ。」
「って事は、伝説に準ずる存在なのかな?あの2人みたいに。」
えっ!?伝説!?
「きっとそうね。………ウォルタ君、話がそれたわね。本題に戻ろうかしら?」
そう言ってシルクさんが笑顔……………可愛いすぎるよ〜………。
「だから、元の時代に戻る方法が見つかったら必然的に分かれないといけないって事。これが知っておいてほしいことだよ。」
………そうなんだ〜。
うん、それでもぼくは…!
「それでもいいよ!だって、小さい頃からの夢が叶うんだから!!」
もう決心したんだから!!
「……その決意、本物ね。 ウォルタ君、今、この瞬間からあなたを[絆]の名の下に誓った仲間として、正式に受けいれるわ!」
やった、これでぼくは、本当に、弟子入りできたんだ〜!
「あっ、そうそう、ボク達には普通にタメ口でいいよ。」
「もちろん、私達を呼ぶ時も呼び捨てでかまわないわよ。」
「えっ?いいの〜?」
呼び捨てだなんて……恐れ多くて……。
「ええ。もちろんよ。私達は人と人との[絆]を大切にしてるから、ね?」
「そのほうが仲が深まるでしょ?」
[絆]、か〜。………うん、そうだね〜。
「うん、わかったよ、シルク、フライ!」
「ええ。これらよろしくね!」
うん。こちらこそ、よろしくね〜!
………
海岸 sideフライ
ウォルタ君、これからよろしくね。
ウォルタ君を見てると、シルク達と出逢った頃を思い出すよ。ボクも旅することに憧れてたっけ?
………そういえば、ウォルタ君って、元の時代でのボク達の仲間と似ているんだよねー。
……ある事件がきっかけで人格が変わったけど……。
「ウォルタ君、さっそくだけどあなたの技を見せてくれるかしら?」
「えっ?ぼくの技〜?いいよ〜。」
ウォルタ君、どれくらいの実力を持っているんだろうね。
「ボクだと相性がわるいから、シルク、頼んでもいい?」
ウォルタ君はたぶん水タイプ、地面タイプのボクにとっては致命傷になるかもしれないからね。
「ええ、わかったわ。じゃあ、ウォルタ君、かかってきて!!」
「えっ!?うん?[体当たり]!」
ウォルタ君は戸惑いながらもシルクに突っ込む。
「っ、……なるほどね。ウォルタ君、なんの遠慮もいらないわ!全力でかかってきて!」
さすがシルク。一目で全力を出せてないのを見抜いているよ。
「ウォルタ君、シルクはよっぽど体調が悪くない限り倒れる事はないから、心配する事はないよ!野生の相手と闘うつもりで、”伝説”のポケモンと闘うつもりで!!」
これだけ言えば闘争心に火がつくかな?
「!?うん![水鉄砲]!!」
目つき、変わったね。伝説という言葉が効いたのかな?
放たれた水流をシルクは余裕で受け止める。
「次!」
「[泥かけ]!」
続いて足元の砂を湿らせてシルクに飛ばす。
「命中率を下げる技ね?っ。」
それを正面から受け止める。
「次で最後ね?」
「うん〜!お父さんから受け継いだ技、[地震]!」
ウォルタ君は地面を踏み鳴らし………
「「えっ!?地震!?」」
大地が大きく揺れはじめた。
ボクの特性は[浮遊]だから、ボクにはダメージはないけど、度肝を抜かれたよ……。
「っ! なかなかの威力ね。さすがにこれには驚いたわ。ウォルタ君、あなたの攻撃の技量は大体わかったわ。 次に素速さと状況判断力を見せてもらうわ。[シャドーボール]、[サイコキネンシス]!」
シルクは周りの空気を歪ませ、漆黒の弾を1つ作り出した。
「ウォルタ君、今から私が[シャドーボール]を操るから、それを交わし続けて。威力はそこそこ高いから、油断しないようにね。」
シルク、いつものあれをするんだね?
どんどん弾の数がふえていくんだ。
ちなみにボクの最高記録は6個、仲間の中では3位だよ。
「うん、わかったよ〜。」
「いくわよ!!」
シルクのかけ声と共に、漆黒の弾が飛び交い始めた。
ウォルタ君、頑張って!
………
数分後 sideシルク
「くっ!」
私が操る漆黒の弾の1つがウォルタ君に命中したわ。
ウォルタ君、初めてにしては上出来ね。
記録は4個、これからに期待が出来る成果ね。
ウォルタ君、お疲れ様。よかったわよ。
「ウォルタ君、お疲れ様。疲れたでしょ?」
「うん……。こんなに集中したの………初めてだよ……。」
威力を抑えたとはいえ、疲れとダメージで息が切れてるわね。
頑張ったと思うわ。
「ウォルタ君、お疲れ様。これ飲んで!」
フライはそう言って、ポーチから水色の液体が入った小瓶を取りだしたわ。
これは私の自信作、店では売ってない非売品よ。
「見たことない液体だけど………何なの〜?」
「簡単に言うと、回復薬よ。騙されたと思って飲んでくれるかしら?」
きっと驚くと思うわ。楽しみねー。
ウォルタ君は口で蓋をこじ開けて一気に飲みほしたわ。
「…………美味しい……これ、何なの〜?」
不思議そうにきいたわ。これは美味しいだけじゃないわ。
「[オレンの実]と[林檎]を一定比率で混ぜ合わせたものよ。
「さっきのダメージも回復したはずだよ?」
フライの言うとおり、この薬の効能は体力の回復、元々の木の実よりも効果があるはずよ?
「ほんとだ〜!身体が凄く軽いよ〜!」
ねっ!言ったでしょ?
「でしょ?シルクは考古学だけでなくて、複数のものから別の物を作り出すのが得意なんだよ。」
「へぇ〜。」
「これは“化学”という、5000年前の学問を応用したのよ。」
私はどちらかというと、実験をして、物質を研究するほうが好きだわ。
違う物質から新たな物質が生成される、凄いと思わない?
一応私は考古学だけど、化学者って名乗りたいぐらいだわ!
「よくわからないけど、凄いんだね〜。」
「そうそう。好評すると、ウォルタ君の能力のバランスは平均的ね。のばそうと思えばどのタイプの戦法に派生させることも可能だし、平均的に強化して技巧的にたちまわることも可能よ。」
ウォルタ君の将来が楽しみねー。
………
ギルドB2F sideシルク
ギルドから戻って、ウォルタ君の事を頼んだら、快く承諾してくれたわ。
ラックさん日はく、〈友達が増えるねー!友達友達!〉。私の親友に負けないくらい明るいわね。
時間もまだあるから、とりあえず私達は部屋に戻ったわ。
「シルク達って、強いんだね〜!」
「戦法がいいだけよ。」
「でも、シルク?同時に2つの技を出すのはシルクにしか出来ないと思うよ。」
今までに会ったことがないから、そうかもしれないわね………少なくとも5000年前は。
どうしてウォルタ君が知っているのかというと、あの後、ウォルタ君に頼まれて私達の技を披露したのよ。私達の合わせ技を見て、興奮していわわ。
フライ日はく、技の技は芸術に匹敵するらしいわ。
ええっと、こんな感じで、3人で食事までの時間を潰したわ。
やっぱりウォルタ君、性格が変わる前の仲間の1人に似ているわね。