拾伍 毒素の影響
西暦7000年 ギルドB2F sideフライ
ボク達が遠征に参加する事を快く受けいれてくれたのは嬉しいけど……、あの三人組も加わるとなるとね……。………鼻が曲がりそう……。
ボクはまだマシだけど、シルクは………
「シルク?大丈夫?」
「ううっ、……頭痛が………。視界もぼやけているわ………。」
運悪く今日は雲一つない快晴。
シルクの五感が研ぎ澄まされて、今にも倒れそう。
足元もふらついていて……何より三人組の放つ異臭の影響で青ざめてるよ……。
「フライ、[毒消し]持ってるかしら?……本当はすぐにでも換気がしたいんだけど、……気分が悪くて[サイコキネンシス]ですら出せそうにないわ……。」
シルクはため息混じりに言った。
[サイコキネンシス]ですら出せないなんで……相当弱ってるよ……。
「シルク、ごめん。ダンジョンで見つからなかったから………。」
本当にごめん。
[モモンの実]を使うことも考えたけど、見つからなくて……。
「だから、シルクは部屋で休んでて。使える物を買ってくるよ。」
「フライ、すまないわね……。」
シルク、君が謝ることないよ。
「シルク、悪いのはあの三人組だよ。だから、元気だして。」
「うん。フライ、ありがとう。」
シルクは弱々しい笑顔で答えた。
「じゃあ、行ってくるよ。」
ボクは螺旋階段を飛び上がった。
シルク、待ってて!
………
トレジャータウン上空 sideフライ
ボクはギルドを出ると、急いで飛びたった。
……本当はラテ君達に余ってるか聞こうと思ったんだけど、依頼のために朝礼が終わるとすぐに出ていったから……。
だから、ボクはギルドのお膝元、トレジャータウンに向かった。
あそこなら、何かしらあるはず。
「……あれ?あれはもしかしてブラウンさん?」
あの茶色いポケモンは間違いなくそうだよ。……よし!
ボクは旋回しながら高度を落とした。
「ブラウンさん、ちょっといいですか?」
ボクは重力に身を任せて体勢をなおす。
「えっ!?どこでゲスか!?」
ブラウンさんは突然呼ばれて、驚きながら辺りを見渡す。
「上です。」
「上? !?フライさん!?」
ボクは2、3ど羽ばたき、地に脚をつけた。
「ごめん、驚かせましたね。それより、ここには[モモンの実]を売ってる店ってありますか?」
「あるけど、どうしたでゲスか?」
ブラウンさんは不思議そうに聞いた。
それもそうだよね。[モモンの実]はどちらかというと簡単に手に入る木の実だからね。
「今朝の三人組の放つ異臭の影響でシルクが倒れたんだよ……。シルクは[太陽ポケモン]、天気がいいほど五感が冴えるんです。……そんな状態で毒素を吸い込んだから……。」
たぶん有毒ガスによる中毒、今までにあれほどの毒素を吸い込んだ事がなかったから、身体が耐えきれなかったと……。
「シルクさんがあのガスで!?それは大変でゲス! フライさん、来て下さい!」
ブラウンさんが慌てて声を張り上げる。そのまま街の奥に向けて走りだした。
店に連れてってくれるんだね?
助かるよ。ボクはあとを追いかけた。
数分後 sideフライ
「フライさん、ここでゲス!」
ブラウンさんがある店の前で立ち止まった。
「この店でゲス。」
ええっと、店の名前は………、ダメだ。読めない。
この足形みたいな記号が何らかの意味を為していることはわかるんだけど……、少なくともボク達の時代の文字じゃないよ……。
「この店は?」
文字が読めない事は黙っておいた。知られるとややこしくなるからね。
「この店は[カクレオンの商店]、あっし達、探検隊御用達の店なんでゲス。シスさん、トランスさん、こんにちはでゲス。」
へぇー。探検隊のための店なんだね?
「「いらっしゃーい!」ブラウンさん、今日はどういうご用件で?」
左……色違い?……のカクレオンが威勢良く言った。
「シスさん、今日は[モモンの実]を仕入れているでゲスか?」
ブラウンさんが普通の色の方……ってことは、こっちがトランスさんなんだね?……を見て聞いた。
「悪いねー。今日はあいにく仕入れてなくてね。」
シスさん?は申し訳なさそうに言った。そっか…………。
「そうでゲスか……。」
ブラウンさんもボクと同じで表情が曇る。
「ってことは、ダンジョンに取りにいかないと……」
「ところで、そちらのフライゴンはこの辺では見かけないですね。」
ボクの言葉を遮ってシスさんがボクのほうを見て聞いた。
「この人はフライさんでゲス。この人はギルドの遠征に協力してくれる事になったんでゲス。」
「ってことは、この人も探検隊なんですね?」
今度はトランスさんが期待を込めて言った。
「いや、ボクは探検隊ではないです。この時……いや、地域では少ない考古学者をしています。」
ふぅ、危ない危ない。うっかり口を滑らすところだったよ…。
「珍しいですね?学者さんなんて。」
「しばらくここを拠点にして活動しようと思ってます。なので、今後もよろしくお願いします。」
ボクは2人に向けて一礼した。道具を扱っているなら、利用するかもしれないからね。
………あっ!こんな場合じゃなかったんだ!!
「そういうことで、この辺で失礼します。」
「急用があるから、あっしも失礼するでゲス。」
ブラウンはボクに続いて、この店をあとにした。
………
交差点 sideフライ
シルク、今日はツイてないよね……。
さっき連絡したら、本当につらそうだったから……。
………こうなったら……
「ブラウンさん、この辺に[モモンの実]を拾える場所ってありますか?」
これがたぶん最善策。でも、ボク達が唯一場所がわかるダンジョン、[オレンの森]は遠すぎるから……。
「[海岸の洞窟]なら、あるはずでゲス。」
「なら、ボクからの依頼として連れてってくれますか!?手持ちは少ないですが、非公式だけどお礼もしっかりします!!」
ボクは力を込めて、苦しんでいるシルクのために嘆願した。
場所がわからないから、それがいい!
「もちろんでゲス!こっちでゲス!」
ブラウンさん、本当にありがとう。
ボクはブラウンさんに連れられて、ギルドとは反対方向に向かった。
シルク、待ってて!