拾弐 5000年前の事
西暦7000年 オレンの森 奥部 sideベリー
「私の戦法はこんな感じよ。」
シルクの技、すごかったなー。
だって、綺麗な色の弾が次々に出来るんだよ!
もう感動したよ!!
「シルク凄いよ!こんな技、初めて見たよ!」
わたしも使ってみたいなー。
でも、2つの技を同時に出すのは無理かもしれないよ……。
「シルク、僕達にも出来るかな?」
ラテも気になるよね?
だって、わたしも気になるもん!
「タイミングさえ合わせれば、可能よ。」
「1人でするのはかなり難しいから、2人でなら出来るよ。息を合わせないといけないけどね。」
「わたし/僕達にも出来るの!?」
わたしとラテは声を揃えた。
「うん。練習すれば2人にも出来るようになるよ!」
本当に!?
「本当?」
「ええ。2人なら、きっと出来るわ!」
シルクはにっこり笑った。
太陽のように眩しいよ。
わたしもシルクみたいな優しくて強いポケモンになりたいな。
「ベリー、僕達も頑張ろう」
「うん、もちろん!」
わたし達は向きあって頷きあった。
決意を新たに、目的に向けて歩きはじめた。
………
数十分後 sideラテ
忘れかけていたけど、もう一つ依頼が残ってたんだよね……。
そう、お尋ね者のラクライの逮捕。
「ラテ、たぶんこの辺にいるはずだよね?」
「そういえば、もう一つ依頼があるって言ってたね。ボクも忘れてたよ。」
フライも?
「私もうっかりしていたわ。気を取りなおしていきましょ。」
「「「うん!」」そうだね。これから闘わないといけないからね。」
僕達はまだ見ぬ敵に向けて歩みを進めた。
これからが正念場だね!頑張らないと!
数分後
そろそろ一番奥かな?確かラクライは奥深くに潜伏してるって書いてあったから、もう近いはず。
「ラテ、とりあえず目撃情報があった場所に着いたね。」
「うん。ベリー、この辺を捜そう。」
「……ラテ、ベリー、ここは手分けして捜したらどうかな?」
ここでフライが提案。それが良いかもしれないね。
………でも、
「でも、どこでおちあうの?」
こんなに広いから、至難の技だよ。
「やっと、これが役に立つ時がきたわね、フライ。」
「うん。ここからがボク達の本領発揮だね!」
シルクとフライ、何のことを言ってるんだろう……。
「役に立つって、何の?」
ベリーが聞いた。確かに……。
「私達の耳に付けている物の事よ。」
そういえば、何なんだろう?シルク達が着けてる黒いアクセサリー、耳元から口元まで延びているけど……。
「前から気になってたけど、それ、何?」
僕は聞いてみた。見たことないよ。
「これは、無線の通信機、ボク達の時代の精密機械だよ。」
「通信機?」
「精密機械?」
ますます分からないよ……。初めて聞く言葉……。
「これを使えば、離れていても会話が出来るのよ。ラテ君達の時代からは大昔になるけど、技術がかなり発達しているのよ。」
「そうなの?」
5000年も大昔だよ!?今でも十分に発展しているのに!?
「うん。人間の技術はボク達、ポケモンでは全く開発が出来ないから。肉眼ではとらえきれないような細かい作業が必要なんだよ。」
「この時代の長さの単位はわからないけど、ナノの世界、大体1メートルの物を10億個に分けたうちの1つ分の長さよ。」
10億…………、想像出来ない……。
「そんなレベルの繊細さを要するんだよ。例えば、この通信機を作るのにね。」
「あとは、物理学とか化学とかを応用しているのよ。このふたつと、数学があれば、ほぼ全ての事物の説明が出来るわ。…………私は化学しか把握してないけど……。」
物理学? 化学?………頭か痛いよ……これも学問なのかな……。
「………とりあえず、これとボク達の時代の学問についての話はこのくらいにして、犯罪人を捜そっか。」
「「…………うん。」」
住む時代が違うと、ここまで変わるんだ……。情報屋のフラットも知らないかもしれないよ………。
うん、ここで考えても仕方がないから、気を取り直してお尋ね者を捜さないとね。
数分後 sideシルク
「じゃあ、ボクはラテ君とだね?」
「相性を考えると、これが一番いいと思うわ。」
「なら、わたしはシルクとだね?」
話しあいの結果、私はベリーちゃんと組む事になったわ。
私とラテ君は技のタイプがかぶるからね。
「フライ、何かあったら連絡してね。」
「うん。シルクの方もね。」
宝の持ち腐れだった無線機のがようやく使えるわね。
こういう時に便利よね。
「じゃあ、後でね。」
「うん。」
私達は二班に別れて捜索を開始したわ。
これなら早く見つかりそうね。
フライ達は西のほう、私達は東のほうに歩きはじめたわ。
「シルク、さっき聞きそびれたけど、物理学とか化学ってどういうものなの?」
フライ達が見えなくなった頃、ベリーちゃんがふと思い出して聞いたわ。
「物理学が学んでないからわからないけど、化学なら説明出来るわ。物理学も化学も奥が深いのよ。」
「へぇー。」
私はどうしても物理学はわからなくて……。
えっ!?どうしてポケモンが知っているかって?
私のトレーナーがまだスクールに通ってる頃、彼が専攻していたのが化学だったのよ。私も何気なく聴いていたから、自然と覚える事ができたのよ。異なる複数の物質から別の物質を生みだす、実験を見てて凄く面白かったわ。
……思い出話はこのくらいにして、話に戻らないとね。
「簡単な化学だと、海の水は普通の水とは違うでしょ?」
「うん。しょっぱくもんね。」
日常にある物質なら、わかりやすいわね。
「海水には、数えきれない種類の物質が溶けているからなのよ。」
「へぇー。何かが溶けていたからだったんだー。」
わかってくれたみたいね。
「私の戦略も化学からヒントをもらったのよ。他にも、化学は日常の生活に大きく関わっているのよ。」
私の戦法は化学反応からヒントをもらったのよ。異なるタイプを化合させて別の効果を生みだす、これが私の戦法の公式よ。
「よくわからないけど、そうなんだね?あの魔法みたいな技も化学だったんだね?」
………ちょっと違うけど、似ているわ。
「タイプごとの効果は全く関係ないけど、そういう感じよ。」
「うん。なんとなくわかったよ。」
ベリーちゃんは目を輝かせて言った。
………
同刻 sideラテ
ベリー達は東なら、僕達は西だね。
「フライも強いんだね?」
シルクの戦法もすごかったけど、フライのバトルも負けてなかったしね。
動きが速くて、とらえるのが大変だったし、探検隊だと、ゴールドランクぐらいの強さのポケモン以上しか使えない上級技、[ドラゴンクロー]を使ってたのが何よりの証拠だよ。……使える種族が限られているけど……。
「強いと言っても、ボクの仲間の中ではボクが一番新入りだったから、強いとは言えないよ。なにしろ、ボクがいちばん戦闘経験が短かったからね。」
「えっ!?フライでも!?」
!?あんなに凄かったのに!?フライ達の仲間って………一体……。
「うん。ボクのトレーナーとシルク達のおかげで、ここまで強くなれたんだよ。……ボクはまだまだだけどね。」
フライ、謙虚すぎるよ。僕はもっとその強さを誇ってもいいと思うよ。
「ちなみに、ボク達の中ではシルクがダントツで強かったんだよ。シルクに全員で同時に挑んでも勝てなかったくらいだから。」
「えっ!?大勢で戦っても!?」
うそ!?シルク、1人で勝ったの!?
「うん。シルクはボク達とは比べものにならないぐらい経験を積んでるからね。
……ボクが加わる前の話だけど、ボクが加わる前に地方に君臨する伝説のポケモンと一戦を交えた事があるらしいよ。」
伝説のポケモンと!! 見る事でさえほぼ不可能なのに!?
「伝説のポケモンと!?」
「うん。ちょっとした事情があってね。」
事情?事情って、何なんだろう?
「事情?」
「うん。この時代では無駄かもしれないけど、機会があったら話すよ。」
今は話せないってことは、長くなるのかな?
「うん!その時に聞かせてね?」
「うん。 さあ、捜そっか。」
「そうだね。」
この話は置いといて、肝心なお尋ね者を捜さないとね。