拾壱 シルクの戦法
西暦7000年 オレンの森 奥部 sideラテ
僕達はシルク達から教わった方法を実践しながら奥に進んでいった。
「シルク、さっきからずっと技を使いっぱなしだけど、大丈夫なの?」
「ええ、私は平気よ。」
シルクはもう一時間ぐらい[サイコキネンシス]を出し続けているよ。
「シルクは10年以上戦闘経験を積んでいて、ボクが知る限りでは全戦全勝だよ。」
「えっ!?負けてないの!?」
ベリー、驚きのあまり、声が裏がえってるよ。
「私は長いこと鍛えているからね。これも[精神力]を鍛えたお陰よ。」
「へぇー、やっぱり[精神力]は大事なんだね!」
シルクの強さの秘訣は[精神力]だったんだね!?
「特殊技ではね。 フライ、[岩雪崩]と[目覚めるパワー]を貸してくれるかしら?」
「シルクの戦法の見せるんだね!わかったよ![岩雪崩]!」
フライはシルクに頼まれて、いくつかの岩石を頭上に出現させた。
………一体何をするんだろう?
シルクはそれを維持していた超能力で拘束した。
「[目覚めるパワー]!」「そろそろ補充しないといけないわね。[目覚めるパワー]!」
フライは紺色のエネルギーを手元に溜め、シルクはグレーのエネルギーを口元に蓄積させた。
あれ?そういえば………、
「ねぇ、シルク?もしかして、シルクって同時に2つの技を出せるの?」
僕はいても経ってもいられずに、シルクに聞いた。
「ええ。」
「これはたぶんシルクにしか出来ないと思うよ。……少なくとも、2000年代ではね。出来る人、シルク以外に見たことがないからね。」
へぇー。
「[シャドーボール]!ベリーちゃん、確か[火の粉]を使えたわよね?」
「えっ!?うん。使えるけど?」
シルクは僕のものより強力な漆黒の弾を形成しながらベリーに聞いた。
一体何をするんだろう?
「貸してくれるかしら?」
「いいけど、どうして?」
「タイプが色々あったほうがバリエーションが増えるでしょ?」
シルクは微笑んで言った。……そうかもしれないね。
「そっか。わかったよ![火の粉]!」
ベリーは、嘴に炎を溜めて一気に放出した。
それをシルクが受けとめる。
「ありがとう。とりあえず、5色ね。」
今、シルクの頭上には、黒、紺色、グレー、茶、そしてベリーの[火の粉]の赤、5色の物質が漂ってる。見とれてしまうよ。
「シルク、さっそくいつもの戦法を見せるんだね!」
「ええ、そうよ。フライは見せたから、私も見せたいのよ。」
「シルクの戦法?見てみたかったんだよねー。」
ベリー、僕もそうだよ!
「シルクの技は凄く綺麗だから、楽しみにしてて!技と言うより、芸術って言ったほうが相応しいから!」
フライは力強く言った。
芸術?本人に?
「そうなの?」
「うん。きっとこれはシルクにしか出来ないだろうね。」
「あっ、ちょうど来たわね。ざっと4体かしら?」
僕達が話していると、茂みからピジョンが3体、ラッタが1体、戦意むき出して近づいてきた。今にも飛びかかりそうだよ……。
「フライ、ラテ君、ベリーちゃん、ここは私に任せてくれるかしら?」
シルクが闘うんだね!見たかったんだ!
「うん!」
「芸術に匹敵する技なんでしょ!?見せてくれるんだね?」
ベリーは目を輝かせて聞いた。
もちろん、僕も見たいよ!
「ええ、じゃあ、いくわよ![瞑想]!」
そう言ってシルクは目を閉じて…………凄い集中力、ここまでピリピリした空気が伝わってくるよ。
「[ツバメ返し]!」
4体のうちの一体が凄いスピードで接近を始めた。
「まずは、岩と竜からしようかしら。」
そういって浮かせている物質を操って………えっ!?混ぜ合わせた!?
「「混ざった!?」」
2つの物質は混ざって、ええっと、何て言ったらいいんだろう………、とにかく形容し難い色に変色した。
「[翼……]っ!!」
接近していたピジョンに向けて飛んでいって………あれ?弾が大きくなっているような………気のせいかな?
その弾は命中して、相手は墜落した。
「まずは一体。」「ねぇ、フライ?さっき弾が大きくなったような気がするんだけど、どうして?」
ベリーもそう感じたんだ!やっぱり気のせいじゃなかったんだね!
「確かに、膨張しているよ。あれは混ざった時に発揮する、ドラゴンタイプ特有の効果なんだよ。それぞれに違った効果があって、組み合わせ次第で色んな攻撃が出来るんだよ。」
えっ!?そうなの?
「へぇー。それぞれ違うんだー。」「次は、これを試してみようかしら?」
シルクは自分のバッグから[木の枝]を取りだした。
今度は何をするんだろう……。
「材質は木だから、草タイプの代用として使えそうね。」
そう言って、シルクは木の枝を一本くわえて上に放り投げた。
すぐに超能力で拘束され……
「試しに、悪タイプでいこうかしら?」「「「[電光石火]!」」」
留めていたうちの1つ、紺色の物質と混ぜ合わせた。
もしかして、シルクはタイプを混ぜ合わせて攻撃するのを戦法にしているのかな?
三体は同時に接近、逃げ場が無さそう……。
シルクが混ぜ合わせた弾はというと………ミントグリーンの弾になっていた。
………綺麗。
「さあ、くらいなさい!」
シルクは相手に向けて放った。
三体の目前まで迫り、数メートル手間で横一直線に弾けた………えっ!?
「「弾けた!?」何で!?」
僕とベリーは度重なる疑問符で押し潰されそうになった。
「草タイプは混ざると横方向に拡散させる効果を追加するんだよ。」
へぇー、方向に関係するものもあるんだね?
フライ、そうなんだね?なんとなくわかったよ。
ミントグリーンの弾はラッタ以外に命中した。
「複雑な動きをしてたのに、当たった……。」
精度、高いよ……。
でもダメージを受けて……あれ?何かおかしくない?
「ベリー、ピジョン、ふらついてない?」
「ほんとだ。千鳥足だ……。」
混乱状態、なのかな?
「フライ、もしかして、もう一つの方の効果って、混乱状態にする事なの?」
確信は無いけど、その可能性はあるよね?
「当たりだよ。悪タイプは1/2の確率で相手を混乱状態にするんだよ。」「しばらく二体はほおっておいても大丈夫そうね。次は……」
やっぱり、そうだったんだー。
シルクは、残りの二色、赤と黒を混ぜてえんじ色の弾を造り上げた。
確かに、芸術作品だね。こんなに美しいから!
「[怒りの前歯]!」
ラッタはシルクに向かって走りだした。
「これで二体目も終わるわね。」
弾を放った。
ラッタの手前1Mで弾け……というよりは、爆発……えっ!?
「っ!!?」
声にならない悲鳴があがった。………巻き込まれたんだ……。熱そう……。
「フライ、さっきのは?」
ベリーは間髪を入れずに聞いた。
「炎タイプは見てのとおり、爆発を引き起こして、ゴーストタイプで増幅させたんだよ。できればあれはくらいたくないね。」
「威力、高そう。」
炎タイプは完全に攻撃向きなんだね。
「さあ、残りは混乱した2体。あとひといきね。っ!」
そういって、シルクは何時間も維持していた[サイコキネンシス]を解除し……
「[目覚めるパワー]、[シャドーボール]!」
た。
口元に二色……えっ!?
「シルク、今朝していた方法、試してみるんだね?」
「ええ。この2色なら、私だけでも出来るからね。渦を巻くように混ぜれば……。」
シルクの口元で2つの技は合わさって……深青色の弾が出来上がった。
「これで最後よ!」
シルクはそれを放った。大きさはバスケットボールぐらいかな?
「もう一発!」
すぐにもう一つ、さっきより小さいのを作って放った。
2つの弾は膨張しながら飛んだ。
小さい弾のほうが速いね。
2つの弾はぶつかって、今度は斜め四方に弾けた。
「「!!!」」
ようやく視覚を取り戻した相手に命中、即戦闘不能になった。
経験、シルクの圧倒的勝利。
今気づいたけど、シルクはダメージをうけてないね。
シルク、やっぱり強い……。憧れるよ。