伍 ギルドのメンバーとシルクの思い
西暦7000 プクリンのギルド sideシルク
「シルクさん、フライさん、失礼します。」
私達は今、ギルドと呼ばれる施設にいるんだけど、案外落ちつけるわね。
数時間前では、私達がこの状況にいることは全く想像できなかったかもしれないわ。
話に戻ると、私はフライとこの時代の事について整理していたところよ。
そこに、この時代での数少ない知り合いのイーブイ、ラテ君が私達のいる部屋に来たわ。
「ラテ君、どうしたの?」
そこに、フライが応じたわ。
「夕食ができたので、一緒にどうですか?」
「いいわね。 私達、食糧もお金も持ってないから、助かるわ。」
私達は何も持たない状態で時を越えたから、いわゆる一文無し。この言葉が相応しいわね。
「ありがとね。ボク達、何も持ってないからどうしようか困ってたんだよ。じゃあ、そうしようかな?」
「なら、ついてきてください。」
そう言ってラテ君は手招きしながらでていったわ。
「フライ、私達もいきましょ!」
「うん、そうだね。」
私達もラテ君の後を追いかけたわ。
ラテ君、走るの速いのね。
………
食堂 sideベリー
ラテくん、早く戻ってこないかなー。
あっ、どうも。わたしはベリー。ラテくんから聞いてるよね?
ここはギルドの食堂。ここで過ごす事が楽しみの1つなんだよねー。
「えー、ラテが呼びに言っているんだか、今夜ここに2人の客人が泊まる事になった♪」
フラットからの連絡。いつもこの時にしているの。稀に何もない時もあるけどね。
この客人っていうのは、たぶんシルクさんとフライさんのことだね。
「ヘイヘイ、フラット、その客人って誰なんだ?」
この人はわたし達先輩で、ヘイガニのシザーさん。
「あっしも気になるでゲス。」
次はビッパのブラウンさん。わたし達の前に弟子入りしたみたいなんだー。
「本人によると、今時珍しい考古学者らしい♪長旅で疲れてらっしゃるはずだから、くれぐれも迷惑を……」
「皆さん、お待たせしました!」
フラットの話の途中だけど、帰ってきたね。
「ここが食堂なんだね?」
「ということは、この人達も探検隊なのね?」
「いやー、お待ちしていましたー。狭い部屋ですが、やすめましたか♪?」
フラット、自分で迷惑をかけるなって言ったのに、シルクさんとフライさん、困った顔をしてるよ……。
「ええ。おかげさまで十分に休めたわ。 私は考古学者をしてるエーフィーのシルクよ。今晩はお世話になりますわ。」
シルクさんはフラットのほうから向き直ってわたし達のほうを見渡して言った。
シルクさん、強くて礼儀正しいから憧れるなー。
「考古学者って珍しいわねー、よろしくお願いしますわー、キャー。」
テンションが高いこの人はキマワリのシャインさん。わたし達のギルドのムードメーカーなんだよ。
「あと、ボクはフライゴンのフライ、今日はお世話になります。あと、ボクも考古学者です。」
フライさんも優しそう。どれくらい強いのかわからないけど。シルクさんと同じで過去のポケモンだから、強いのかな?
「ねえ、お父さん、考古学者って何なの?」
この子はディグダのホールくん。ギルドの見張り番をしているの。一度も外したことはないんだって!
「昔の事を調べている人だ、我が息子よ。」
この人はダグトリオのガッツさん。依頼の管理をしているの。
「まあ、大船に乗ったつもりでゆっくりするといい。」ううっ、この声が大きい人はドゴームのヘルツさん。この人はこのギルドで2番目に長くいるらしいよ。
「「そうさせてもらいます。」」
「じゃあ、シルクさん、フライさん、僕達の隣でお願いします。
「うん。わかったよ。」
……ラテくんも席についたね。その隣にフライさん。
そして、わたしからラテくんの反対側がシルクさん。この順番。
「では、全員揃ったところで、親方様、号令のほうを………あれ?親方様?」
いただきま……あれ?
「……………zzzz」
寝ちゃってる……。あっ、この人がわたし達の親方で、プクリンのラックさん。子供っぽいけど、凄く強いんだよ。世界中で最年少でギルドマスターになったんだって。
「………はっ!いただきます!!」
「「!!?」」
「「「「「いただきます!」」」」」
ラックさん、よくこうなるから、時々驚かされるんだよね……。
あっ、やっぱりシルクさんとフライさん、腰を抜かしてる……。
そうそう、他にもギルドにはチリーンのスズネさんと、グレッグルのフログさんって言う人もいるの。
スズナさんは、探検する時のチームの編成とか、事務関係をしているの。
フログさんは………いつも陰で何かをいじってる。一回聞いたんだけど、怪しげに笑うだけで教えてくれなかったの……。
ええっと、わたし達のギルドのメンバーはこんな感じかな?
このまま雑談をしながら夜が更けていったの。
ああー、おいしかった!
………
翌日 プクリンのギルド sideシルク
昨日の夜は楽しかったわ!
やっぱり、大勢で食事するのはいいわね。
話が弾んでつい夜更かしをしてしまったわ。
ほとんどフラットさんに聞かれっ放しだったけど……。
そんな感じで昨日の夜を過ごしたわ。
そんな中、朝を迎えて……。
「………っ、ここは……。 そうだったわね、5000年後の世界だったわね。」
太陽が姿を現した頃、私は目を覚ましたわ。
私は[太陽ポケモン]だから、朝が早いのよね。
だから、フライはまだ寝てるわ。
「目が冴えて寝れないから、外を見に行こうかしら……。」
時刻はおそらく午前6時、7時までには戻ればいいわよね?
私はフライを起こさないように部屋を出たわ。
………
トレジャータウン 交差点 sideシルク
気の向くままに来てみたけど、どこに行こうかしら……。
「あっ!シルクさん!シルクさんって朝早いんですね?」
坂を下ったところで、私を呼ぶ声。ラテ君ね。
「私は日の出と共に起きるのが習慣なのよ。 ラテ君はどうしたのかしら?」
ラテ君も朝が早いのかしら?
「ちょっと早く目が覚めたから、時間潰しをするために海岸に行こうと思ったんです。一緒に行きませんか?」
「いいわね。話ながらいきましょ!」
海岸があったのね。フライとも来てみようかしら?
「はい!」
朝日が迎える浜辺にラテ君と歩いていったわ。
………
数分後 海岸
「!! 凄い、綺麗だわ……。」
視界が開け、海を見ると、目を疑うような絶景が広がっていたわ。
水面に煌めく柔らかな朝日。波うつ水面に反射して光り輝いている。
もし例えるなら、細やかな細工が施された万華鏡を覗いている、そんな感じだわ。
私は思わず感嘆の声をもらしたわ。
「シルクさんには話しますね。………実は僕、元々人間だったんです。」
「そうなのね……人間だった………えっ!?」
ラテ君は前脚を揃えて座り、秘密を暴露………!?人間ですって!?
「それに、1ヶ月前以前の記憶がないんです。」
「えっ!?」
私も同じように座ったけど………開いた口が塞がらないわ……。
「記憶が!?」
「はい。気がついたらここに倒れていたんです。」
ラテ君、本当にそうなの?
「……そうなの……ね……。姿を変えられる人間なら1人知ってるけど、ラテ君みたいな事例は初めてね……」
「えっ!?他にもポケモンになった人間がいるんですか!?」
私もそうだけど、驚くのも仕方がないわね。
「その人は完全にポケモンになってはないのよ。その人は私達のトレーナーなんだけど、伝説に関わっている関係で人間とポケモンの両方になれるのよ。でも、ラテ君のケースについては全くわからないわ……ごめんね……力になれなくて………。」
「いえいえ、謝らなくても大丈夫です。」
ラテ君は笑顔を取り戻して答えたわ。
………悔しいわ……。困っている人がいるのに…何もできないなんて……。
私も昔、同じように助けてもらったのに………。
「シルクさん、大丈夫ですか?」
………よし、決めたわ!
「ええ。ラテ君、私、あなたがどうして記憶を失ったのか、そしてどうしてポケモンになったのか、全力でしらべてみるわ!」
「えっ!?シルクさん!?」
「学者として、いや、一匹のエーフィーとして、ほおっておけないわ!だから、私達に協力させて!」
私はラテ君に構わず続けた。
「シルクさん?」
「私も幼少期は本当に苦労したから、ラテ君、私みたいに大変な思いをしてほしくないから!」
私はラテ君に思いをぶつけた。
「……」
「私は小さい時に両親をなくしたの。当時、とてつもない飢えと闘っていたわ。そんな時、1人の少年、私のトレーナーとなる人に助けられたのよ。 もし、その時拾われてなかったら、私は衰弱死していたわ。………だから、私は極限な状況にある人をほおっておけないの!私みたいに極限を超えた[死]の危機にふれてほしくないから……だから……。」
「シルクさんにそんな過去が……」
私の過去、それは究極の孤独。
「ええ。だから……。」
「………はい、シルクさんがそう言ってくれるなら……お願いします!」
ラテ君、絶対に助けてみせるわ!
朝焼けの海岸で決意を新たにしたわ。