七拾六 念願の再会
西暦7000年 光の雲海 sideシルク
「シルク殿、頼んだ![火炎放射]!」「フライさん!![リーフストーム]!!」
「わかったわ!!/はい!!「[目覚めるパワー]!」」
シロさんは[トロピウス]に向けて燃え盛る火炎を放ち、シードさんは草の嵐を引き起こした。
流石は[伝説]のポケモンね。
一般のポケモンでも使える技だけど、高い威力ね。
対して、フライは悪、私は竜の弾丸を単発で、[ボーマンダ]に向けて放った。
……連戦で疲れているせいか知らないけど、なかなか倒れなくなってきたわね。
初めのうちは[ベノムショック]でも倒せたけど、今では[瞑想]を積まないと無理になってきた……。
それに、私もフライも3回、エネルギー切れを起こしてるのよ。
………つまり、ずっと戦いっぱなしってわけ。
初めは星が輝いていた夜の闇も、今では薄明るくなってきてる……。
私達は的確に技を当て、標的を墜落させた。
………やっぱり、地面がないと不便ね。
私はフライの背中の上で額の汗を拭った。
「………シロさん、大分すすんだけど、あとどのくらいで……。」
「ダンジョンにしては、長い気もするけど、あとどのくらいなのかしら?」
私達は息を切らしながらシロさんに訪ねた。
「もうすぐだ。………ほら、あの光だ。」
そう言って、シロさんは目線でそれを指した。
「はい、突入する前にあった光、覚えてます?」
「えっ、ええ。確かに、あったわね。」
光…?
あっ、思いだしたわ!
あの光ね!
「というとは、あの光が出口ですか?」
フライが期待を込めて彼に言った。
「ああ、そうだ。 その先が、[幻の大地]だ。」
「「あの先が、ですね!!」」
そうなのね!!
やっと、着いたのね。
「なら、早く行きましょう!」
もちろんよ!!
私達は、待ちに待った光に飛び込んだ。
………
幻の大地上空 sideフライ
「………ここが、[幻の大地]、ですか?」
「……地面が………、浮いてる?」
ボク達はやっとのことで難関の迷宮を突破した。
………時間にして12時間……。
もう限界だよ……。
ボク達は感嘆の声を漏らした。
「特殊な場所なんですよ。」
「そんなんですね。シルク、……、シルク?」
あれ?シルク?
「………シルク殿、………寝てますな…。」
「ずっと戦いっぱなしでしたからね。」
「……[磯の洞窟]から考えると、もう15時間以上戦ってますから……。」
後ろを見ると、シルクが寝息をたてて眠っていた。
「休まずに闘ったからな。 ………拙者達も休むとするか………。」
「「そうですね。」」
正直、ボクも疲れて身体が重いよ……。
「あの遺跡で休むとするか。」
シロさんが右翼で屋外に佇む石造りの遺跡を指した。
……そうだね。
「ウォルタ君達もまだ来てないみたいだし、そこで休みましょうか。」
うん、そのほうがいいよ。
ボク達は適当な場所に降りたち、しばしの休息をとった。
……………やっと休めるよ………。
ボクはすぐに眠りにおちた。
………
幻の大地遺跡 sideウォルタ
「うわっ、凄いよ!! 壁画がたくさんあるよ!!」
「これも、大発見だね。」
ベリーが声をあげてはしゃいだ。
確かに、ぼくも興奮するよ!
だって、遺跡だよ〜!!
考古学者としての血が騒ぐよ!
………えっ?なぜここにいるのかわからないって?
………うん、じゃあ、説明するよ。
ライルさんに送ってもらったぼく達はすぐに[幻の大地]に足を踏み入れたんだよ〜。
彼から聞いたんだけど、[幻の大地]は[時限の塔]を護るために意図的にダンジョン化されたんだって!
……確かに、侵入されて何かされたら大変な事になるもんね〜。
………あっ、その前に、[幻の大地]に来る時点でほぼ不可能だね。
シロは他の方法を知っているみたいだけど、今のところ[時の海道]を渡らないと来れないし………。
で、2、3時間かけて[幻の大地]を突破したんだ。
そして、この遺跡を発見したってわけ。
………そう、[ラグラージ]の[ラムダ]………、ぼくの父さんがいる遺跡に……。
「…………おい、行くぞ。」
「えっ、あっ、うん。ごめん、待たせたね。」
ぼくはグラスさんの呼び声で我に返った。
ぼくは慌てて後を追いかける。
「ウォルタ君、ボーッとしてるなんて、らしくないよ。」
「ラテ君、ちょっと考え事をしててね。 でも、もう大丈夫だよ〜!」
ぼくはみんなに心配をかけないように笑顔で答えた。
「じゃあ、行きましょっか!」
チェリーの元気な声と共に、ぼく達は歩き始めた。
「……………にしても、広いね。この遺跡…。」
ふと、ベリーが声を漏らした。
「うん。確かにそうだね。 調査をする甲斐がありそうだよ〜。」「…………よし。このくらいでひとまず戻るとするか。」
「これだけ大きな遺跡は見たことがないからね。」
ぼく、ラテ君も口々に呟いた。
……………あれ?
さっき、聞き慣れない声が聞こえたような………?
「……グラスさん?何か言った?」
「いや、俺は何も話してないが、どうかしたか?」
「でも、確かに聞こえた………」「ライルに心配をかける訳にはいかないからな。」
「……あっ、やっぱり気のせいじゃなかった!!」
やっぱり、聞こえたよ!!
って事は、もしかして、この声は…………、
…………父さん?
ぼくはいても経ってもいられず、声のする方へ走りだした。
ここは歴史に埋もれた土地。
だから、ここにはライルさんと彼しかいない。
…………絶対に父さんだ!!
「ウォルタ! どこに行くの!!」
幼なじみの声を聞きながら。
ぼくは四肢に力を込めて全力で走る。
…やっと会える!!父さんに!!
「……よし。戻るか。」「……!!」
角を曲がると、そこには一匹のポケモン………。
左目に大きな傷を負っていて………、首には金のリングのネックレス……………。
…………間違いない!!!
「父さん!!」ぼくは呼べなかった13年分の思いを載せて、思いっきり声をあげた。
「!!?誰だ!?」
当然、父さんは驚きで声を荒げる。
ぼくは走り、彼との距離を詰める。
「会ったことはないけど、[ラグラージ]の[ハイド]の息子の[ウォルタ]です!!」
「!!?ハイドの!? ということは………、まさか………。」
「そうだよ!![ラムダ]さん……………、いや、父さん!!あなたの息子だよ!!…」
父さん、やっと会えた!!
「この銀のネックレス、覚えてるでしょ!!」
ぼくは首に着けていたネックレスを手に取った。
「………ということは……、本当に………。」
「うん!! 父さん、会いたかったよ!!!」
ぼくは目から温もりの光を散らして、彼の懐に飛び込んだ。
父さんーー!!!
やっと………、やっと…………。
「………ふぅ、やっと追いついた。」
「ウォルタ君、何で…………?」
「……………邪魔しないほうが、良さそうね……。」
「………そのようだな……。」
追いついたラテ君達が、黙ってこの光景を見守った。