七拾壱 再戦
西暦7000年 ギルドB2F sideハク
「………これでいいですね♪?」
明日の打ち合わせ、とりあえず終わったね。
「うん。………いよいよだね〜。」
「そうだね。 でもまさかわたしの夢が叶うなんて思いもしなかったよ!」
ベリーちゃんが、嬉しそうに言った。
ウチもびっくりしたよ!
身近な人が謎を解く鍵を持っていたなんて、予想外やよ!!
それに、もう一つびっくりしたのがラテ君やよ!!
だって、[イーブイ]やった彼が[ブラッキー]に進化して帰ってきたんやよ!
確か、ラテ君は14歳って言っとったから………もしかして、ラテ君って、[過去]のポケモン!?
……有り得ないって思ったけど、よく考えたらシルクとフライも[過去]のポケモンやったね。
実際、シリウスもそうやし……。
「じゃあ、決まったことだし、今日はここで解散だね。」
「ラテ君達も疲れているはずだからね。」
フライとシルクが会議を締めた。
…………なら、ウチらはこの間に明日の準備やね!
まだ昼やし、今から出かけてもかえって明日のためにならないからね。
ウチらは散り散りになった。
………
翌日 sideフライ
昨日は、ラテ君達の事を考えて休養日になったよ。
ハクとシリウスは備品の調達、ラテ君、ベリーちゃん、チェリーさん、そしてグラスさんは休息。
明日行かないギルドのメンバーはいつも通り仕事を再開して、フラットさんとラックさんも珍しくトレジャータウンを訪れていたよ。
ウォルタ君は、シロさんと海岸で合流して[未来]の事を話したって言ってたよ。
そして、ボクとシルクはトレジャータウンに挨拶まわりを兼ねて道具の整理。
………ボク達、ある決心をしてね……。
「…………で、話って何なの?」
皆が集まっているギルドの地下で、ベリーちゃんが不思議そうにボク達に聞いた。
「………フライと昨日の夜に話しあったんだけど、[星の停止]の件が解決したら…………」
重い口を開いて、シルクが言った。
………シルク、ボクも同じ想いだよ………。
「…………2000年代………、[過去]に帰ろうと思うのよ。」
「「「「「ええっ!!?」」」」」
…………驚くのも、当然だよね………。
「“帰る”って!? でも、シルク、フライ、どうして〜!!?」
ウォルタ君が声を荒げる。
「………潮時……だからかしら……。ラテ君の事も解決できて、[星の停止]の事が解決したら私達、この時代にいる[目的]が無くなるのよ………。」
「それに、元々ボク達はこの時代には存在しないはずだからね……。」
「待て!!お前等が[過去]のポケモンだなんて聞いてないぞ!!」
グラスさんが状況を理解出来ずに慌てふためく。
「グラスさん、わたし達以外にも違う時代の住民がいるって言ったわよね? それが、彼女達なのよ。」「でも、どうして急に!?」
「一度も話したことがないけど、元の時代にも仲間がいるわ……。…………もちろん、この時代の仲間……、ラテ君やベリーちゃん、ウォルタ君にハク、シリウス、チェリーも大切な仲間よ! でも、2000年代の仲間を待たせる訳には………いかないの……。」
「でも、でも…………。」
「………ボク達も、辛いよ………。でも、これが[時代]を越えた出逢いに必ず訪れる…………[別れ]、だよ……。」
「おまけに、いい意味でだけど、存在しないはずの私達が少なからず[現在]………、私達にとっての[未来]も変えてしまった………。…………変えたなら、変えたなりに、結末を最後まで見届けないと………。だから、私とフライにとっては、この調達が、この時代での最後の旅になるわ…………。…………しんみりした空気になってしまったけど、これで以上よ。」
………でも、ボク達の[決意]は伝えた。
辛いけど、避けられないよ………、これは……。
「………………。」
しばらくの沈黙………。無理ないよね………。
「……すぐに別れる訳じゃないから、気を取り直していきましょ!!」
慌てて、シルクが場を取り繕った。
「明日って訳じゃないから、ねっ?」
「ボクも、すぐには帰ろうと思ってないから!」
ボク達は笑顔で語りかけた。
…………実は、ボクもまだ心の準備が出来てないんだよね…。
「と、と、と、とにかく、行くよ♪[磯の洞窟]に♪!!」
フラットさんが、驚き慌てながらも、総括した。
………
磯の洞窟入り口 sideウォルタ
「ここが[磯の洞窟]だよ!!」
目的地に着くや否や、ラックさんが元気良く言った。
「この先だな?」
「そうです♪ じゃあ、昨日話したチームで行きましょうか♪」
「確か、僕はベリーとフラットさんですよね?」
ラテ君が、フラットさんに確認。
フラットさん、ラテ君達のチームに入って大丈夫かな………。
フラットさんが戦ってるところ、見たことがないし………。
「ウチはシリウスとラックさんやね?」
「わたしは、グラスさんとだったわね?」
「そして、私はいつも通り、フライとウォルタ君ね?」
うん、確かそうだよ。
「そうです♪じゃあ、行きましょうか。」
「「「うん!!」」」「「はい!!」「「ええ!!」」「そうだな」「そうやな!」
ぼく達は一致団結して、沿岸部の洞窟に足を踏み入れた。
…………まだ誰にも言ってないけど、ここの一番奥でシロとシードさんと合流する予定だよ。
……
数分後 side・・・
「アニキ、ヤツら、行ったな。」
「そうだな。 ………アイツの石版を奪って、[幻の大地]に行くのは俺様達だ………クッ、クックッ……。」
………
一時間後 奥地 sideラテ
「………ねえラテ?ダンジョンのわりには敵が少なすぎなかった?」
「言われてみれば、そうだね。フラット?前に来たときはこんな感じだったの?」
長いダンジョンだったけど、確かに少なかったよ。
なにしろ、5回しか戦わなかったからね………。
でも、その5回で僕の新しい身体に慣れれたよ。
「前に来たときはダンジョン化してなかったからな、未知だった♪」
それに、五感が冴えるって、こんな感じなんだね!
遠くで流れる水の音とか、吹き抜ける風とかが鮮明に感じたよ!!
「えっ?そうなの?」
「そうだ♪だから事実上初めてになるな♪」
「そうなんですか……」
前は、ダンジョンじゃなかった…………?
今、誰かの足音が聞こえたような……?
ん?近づいてこない?
僕は音がしたほうにふりかえった。
「痛っ!」「おっと、ごめんよ。」
「!?」
振り返ると………!!?
“ドクローズ”!?どうしてここに!?
「貰っていくぞ。」
「あっ!わたしの………。」
突然ぶつかって、ベリーが宝物を落としてしまった。
………
sideシルク
「ふぅ、一応、抜けたわね。」
「うん。それにしても、敵、多くなかった〜?」
「そうだよね。何回戦ったっけ?」
私達は洞窟に入ってからバトルの連続………。
[モンスターハウス]に7回も入ってしまったわ………。
「数え切れないわね。」「へっ、お前は相変わらずの弱虫だな!」
?
声?
どこかで聞いたような………?
「シルク!?聞こえた?」
「ええ。」
「ボクにも聞こえたよ!この声は、きっと……」
…………間違いないわね。
「「「“ドクローズ”!!」」」
私達は声と顔を合わせた。
もしかして、また懲りずに悪事を………。
こんな時に………。
「ウォルタ君、シルク!!」
「わかってるわ!!行きましょ!!」
「うん!!」
奴らはどうして懲りないのかしら……。
…………呆れてものも言えないわ………。
私達は意見が一致した。
「奪えるものなら奪って……」
《そこまでよ!!ラテ君、ベリーちゃん。ここは私達がいくわ!!》
紫の言葉を遮って、私達は修羅場に乱入した。
「「「誰だ!?」」」「「シルク!!」」「!!?」
奴らは声を荒げ、ラテ君とベリーちゃんは奴らと正反対の反応。
フラットさんは訳が分からずまごついているわ。
「まだ懲りずにそんな事を………。ボク達の時代でもそんなにしつこい人は悪党しかいないよ……。」
フライがため息混じりに言った。
「またお前達か。学者のクセによくも俺達をやってくれたな。」
名前忘れたけど、[ズバット]が言い放った。
…………最初から覚えるつもりはなかったけど………。
「“ドクローズ”、その悪行、許せないよ〜!!」
「ハァ!?やるのか!?」
「そのつもりよ!![瞑想]、[サイコキネンシス]、[10万ボルト]!!」「そのつもりだよ!!」」
私達も、闘志をむき出しにしてみれば言い放った。
精神統一をしながら空気を歪め、電気をそれで拘束する。
「せいぜい俺達探検隊に刃向かった事を後悔するんだな!!」「[水の波動]!」「[エアーカッター]!」
ウォルタ君は音波を乗せた水塊を打ち出し、奴は空気の刃を飛ばした。
フライはポーチから[銀の針]を取りだしたわ。
「[絆の名に賭けて……、いくわよ!![目覚めるパワー]」「[真実]の名を背負う者として、負けるものか!!」「[ドラゴンクロー]!!」
いつものかけ声と共に、私は暗青色の魂を生成した。
ここで、刃と水塊が衝突し、互いに打ち消した。
フライは手元に私のと同色のオーラを纏った。
フライ、最初から全力でいく気ね!?
「[シャドーボール]、[ベノムショック]!!」
漆黒と紫です生成して、私も戦闘準備は完了したわ!!
「「「えっ!?技を6つも!!?」」」
私の属性のパターンは10通り、化合後を含めて。
「紫と黒を………、化合!!黄色を発散!!」「「[スモッグ]!!」
私は一部の魂を化合させ、暗紫色の弾を2つ生成した。
それと、黄色はエネルギーを少量発散させて、私は飛びあがる。
毒2人は汚染物質を放出した。
…………でも、無駄ね。
私が起こした突風でかき消されたから………。
《フライ、ウォルタ君、あれ、いくわ!!》
2人だけに念じた。
「わかったよ!![目覚めるパワー]連射!!」「うん!![地震]!!」
フライは右手の小刀だけを敵に向けてとばし、その手でいくつもの紺の小球を飛ばした。
ウォルタ君は思いっきり地面を踏みならすと、フライの背中に飛び乗った。
………準備完了ね!
私は2つのそれを発射し、衝突させた。
それと同時にフライは飛びあがる。
「クソっ!またあれだ!?[ヘドロ爆弾]!」「紫を………拡散!!」
暗紫色の弾は増殖し、それは守りの軟化作用を秘めた雨となった。
奴は毒素の塊で迎え撃つ。
私もそれに、同じ紫で対抗する、…………超能力を駆使して。
威力のない小球は次々に命中した。
第一段階、突破。
「えっ!?[エーフィー]は電気タイプと毒タイプは使えないはずなのに……。」「超音波]!」「[水の波動]!」「収束!!」
フライとウォルタ君は混乱作用を秘めた技を出し、私は奴らを自身の毒素で取り囲んで凝縮させた。
今のところ、両者ともダメージはゼロ。
「くっ!俺達が、毒を!?何故だ!?」
次々に技は命中する。
「おそらく最後のバトルだから言うけど、私の特殊技は人一倍威力が高いのよ!!雷と竜を……化合!!」
降下しながら、暗緑色の弾を生成。
「[水の波動]連射!」「[岩雪崩]!!」
2人も、次々に攻撃を仕掛ける。
……………実力の差は………歴然ね………。
でも、奴らは痛い目に遭わないとわからないようね!!
自分達の愚かさを!!
それは[絆]に背く行為、野放しにはさせないわ!!
「これできめる!![10万ボルト]!!」「「連射!!」
着地する前に、高電圧の電撃を単発で放った。
フライとウォルタ君も、それぞれの得意技を次々に放った。
「「「っ!!!?」」学者如きに……………二度も………。」
断末魔に近い叫びがあがった。
守りが無くなった身には堪えるわね………。
でも、これは奴らが招いた結末。
足を洗ったらこんな事にはならなかったのに………。
結果……………、私達の圧勝。