六拾八 知らされる真実
西暦7200年 森の高台入り口 sideラテ
「ねえ、ユーさん?ユーさんはどうして[過去]に行くの?」
「えっ!?いや、ぼくは………。」
ベリーが[ウォーグル]のユーさんに興味津々だよ…。
ユーさん、突然だったから慌ててるよ……。
それにしてもユーさん、ギャップが凄いよ。
見た目は大きくて厳つい感じだけど…………、なんて言うか……、凄くマイペース……。
話し方ものんびりしてるし、格好いい[ウォーグル]なのに一人称が[ぼく]って……。
多分平均より大きいし、進化しているからもう大人なのかな?
でもあどけなさもあるし、不思議な人だよ……。
「……[過去]にいる大切な人に会いに行くため、かな〜?」
「へぇー、大切な人かー。会えるといいね。」
「……う、うん。」
ユーさんが、何故か悲しそうな顔で言った。
……何かあったのかもしれないね…。
でも、聞かないほうがいいかも。
「……とりあえず、息も整ったし、そろそろ行こっか。」
話が終わったところで、僕は2人に明るく言った。
「うん、そうだね!」
「ぼくは言うほど戦ってないから大丈夫だよ〜。」
2人も、笑顔で答えてくれた。
「チェリー、グラスさん、お待たせ。ぼく達はもう大丈夫です。」
ユーさんがチェリーさん達のほうに飛んでいった。
僕達も追いかけないと!
「僕達も行こっか。」
「うん、そうだね!」
僕達も走って後を追いかけた。
………やっぱり、湧き上がる力、気のせいじゃないよ!!
鮮明になってきてるし、何より何かのイメージが膨らんできてる!?
本当に何なの??
………
森の高台 中腹 sideユー(ウォルタ)
「くっ、囲まれた囲まれた……。」
「こんな沢山に遭遇するのは初めてよ!?」
「油断するとさすがにまずいかも…。」
「どうする!?」
「戦うしかないですよ!!」
ぼく達は順調に進んでいたけど、[モンスターハウス]に足を踏み入れてしまった。
……正直、[ミズゴロウ]にも戻って[地震]で一掃したいところだけど……、相手はゴーストタイプばかりで地に足が着いてないし、何よりここでは正体を明かす訳にはいかない……。
「ラテ君、ここはぼく達でいくよ! チェリー達は援護をお願い!!」
ぼくは瞬時に作戦をたて、大声で伝えた。
作戦はこう。
まずぼくが先陣をきって、素速さを生かして相手の口内に種を放りこむ。
その間にラテ君には[シャドーボール]を最大まで溜めてもらう。
元々ラテ君は5100年代の出身のはずだから、ぼく達とは違ってエネルギー量が多いはずだから、多分可能……。
ベリーには[炎の渦]で相手を拘束してもらう。
チェリーに聞いたら、戦闘は苦手みたいだから補助にまわってもらうとして、グラスさんには[穴を掘る]で奇襲をしかけてもらう、
グラスさんが着く頃には相手は何らかの状態になっていて、炎が取り囲んでいるはずだから、ぼくが[シャドークロー]をするついでにグラスさんを回収する。
おそらく、これでいけるはず。
「……なかなかいい作戦だな。」
「わかったわ。」
「はい。僕は大丈夫ですよ。」
「わたしもいいけど、ユーさんが一番大変だけどいいの?」
グラスさんは腕を組んで頷き、チェリーは快く承諾。
ラテ君も笑顔で答えてくれて、ベリーは心配そうに見上げた。
……この中ではぼくが一番身長が高いからね。
「平気だよ〜。さあ、いくよ!!」
ぼくはそれだけ言うと、翼に力を込めた。
……さあ、戦闘開始だ!!
………
数分後 sideラテ
「[シャドークロー]!!」「[シャドーボール]!」「[火炎放射]!」
僕達はゴーストタイプの群れにトドメの一撃を放つ。
僕は漆黒の弾、ベリーは燃え盛る火炎、ユーさんは……声しか聞こえない。
ユーさん、ジュプトル………確か[グラス]って言ったっけ? 彼を乗せたままなのに凄いスピードだよ……。
残像だけが残って、何をしているのかわからないよ……。
「「「っぐ!!!」」」
三人の技が命中し、群れはバタバタと倒れていった。
「よし。終わったな。」
「うん。 にしてもユーさん、凄く早かったよ!!」
「でも、これでもまだ8割ぐらいかな?」
「えっ!?あれでもまだ全力じゃないんですか!?」
えっ!?でも、凄くはやかったよ!?
僕達も結構戦闘を積んできたつもりだけど、あんなスピード見たこと無いよ!!
「うん。まあ、準備運動にはなったね〜。」
グラスさんもだけど、ユーさんとは次元が違う……。
僕達はこの後、ひと息ついてから頂上を目指した。
溢れる謎の力は、技を出せそうなくらいまで溜まっていた。
本当に何!?訳がわからないよ!?
………
森の高台 頂上 sideラテ
「よし。とうとうここまで来れた……。」
あの後、おかしいぐらい順調………、一度も戦わずに突破した。
順調なのはいいんだけど、その分何か都合の悪いことがあるような気がして、気が気でないよ……。
「ここが、[時の回廊]だね〜?」
「ええ、そうよ。さっそく準備するわね!」
「とうとうわたし達、帰れるんだ!!」
ベリーが歓喜の声をあげた。
やっとだ!!
チェリーさんが何かの装置に飛んでいこうとしたその時、
「そこまでだ!!」「「「「「!!?」」」」」
最も恐れていた人物の声が響いた。
まさか、この声は………
「「「シャドウ!!?」」」「「「「「ウィーーー!!」」」
たちどころに、ぼく達は沢山の[ヤミラミ]に囲まれた。
やっとの事でここまで来れたのに!!
「大人しく………」
「せっかく………、せっかくここまで来れたのに、シャドウさん……、いや、シャドウ!!こっちだって邪魔はさせません!!」
僕はシャドウの言葉を遮って、怒鳴った。
謎の力にもイライラしていたし、もう我慢の限界だ!!
いっそ、この力を放出して活路を開ければ………。
僕は目を閉じて、力を意識を集中させた。
「「「「「!!?」」」」えっ!?ラテ!?身体が!?」
ベリーの声が聞こえたけど、今は関係ない!!
僕は周りを無視してそれを続けた。
「!!?これは一体……。」「やっぱり、思った通りだ………。」
力が溢れんばかりに蓄積する。
………よし、溜まった!!
「これで、決める!!」
目をあけ、名前の知らない技を発動させた。
僕を中心に、黒い波が標的に向けて広がる。
「「「「「ぐっ!!!」」」」」「何っ!?あり得ん!?」「もしかして………、[悪の波動]………?」「ラテ?本当にラテなの!?」
僕の技で、[ヤミラミ]達は吹き飛んだ。
よし、あとは!
「チェリー、今のうちに!!」
「!?わかってるわ!!」「!? させて、なるものか!![ディアルガ]様!!」
「何っ!?[ディアルガ]だと!?」
「グオオオォォォ!!!」「「「くっ、耳が……!!」」」
僕達が次の行動に移ろうとした時、鼓膜を破りそうな声量の声(?)が響いた。
っ!!!
その声で僕達は止められる。
……収まった……?
僕は恐る恐る両耳を押さえていた前脚を離した。
「クソっ、俺達もここまでか………。」
「「!?ジュプトル!?」」
ジュプトルの諦めの含んだ声がした。
「グラス、お前にしては諦めが早いな。」
悔しそうに目を堅く閉じながら言った。
「………[ディアルガ]が来た以上、俺達に勝ち目は無い……。降参だ……。」
「……確かに、無理だよ……。チェリーの種族、[セレビィ]は[時]を司っているけど、[ディアルガ]はそれ以上の力を持つ………。例え[時渡り]を使ったところで、すぐに破られる………。」
!?ユーさんまで!?
「………だが、[過去]にはもう1人の仲間がいる。だから俺はそいつに託す!!」
彼が力強く言った。
「………ハッハッハッ!…」
「何がおかしい!!」
突然シャドウがあざ笑いだした。
「なら、そのパートナーとやらの名前を言ってみろ!!」
「名前は[ラツェル]、俺は親しみを込めて[ラテ]と呼んでいた!!」
「「ええっ!!?」」
!?[ラテ]って、僕と名前が同じ!?
「[ラテって、この[イー……]……、今はちがうけど、わたしのパートナーの名前も[ラテ]だよ!!」
「何だと!? 何故だ!?」
どういう事!?それに、今は違うって……!?
「そういうことだ!!種族は知らんが、[イーブイ]だったそいつが[ラツェル]だ!!」
「いや、違う!!俺のパートナーは[人間]だ!!」
「「えっ!?」それって、完全にラテの事だよ!!」
!!!?
「確かに、僕は元人間です!!でも、どうして!?」
嘘でしょ!?
「それは、ポケモンになったからだ!![時空の叫び]を使えるのが何よりの証拠。」
!?ってことは、僕って[未来]の人間だったって事!?
「もう、完全にラテの事だよ!?」「だから、その鳥ポケモンは知らんが、全員ここでくたばってもらう!!」
そう言って、シャドウは膨大なエネルギーを溜め始めた。
「俺達も、ここまでか………。」
「待って!!何か手段があるはずだよ!! そうだ!チェリーさん、少しでいいから[時]を止めれる!?」
「えっ!?一応できるけど、[ディアルガ]がいるからすぐに破られるわ!!」
「でもいい!諦めたら、底で終わりだよ!!何もしないで失敗すると悔いが残るよ!!だから、お願い!!」
ベリーが叫びにちかい声で訴えた。
「………わかったわ。みんな、行くわよ!![時渡り]!!」
刹那、僕達を光が包み込んだ。
………なんの音も聞こえなくて、シャドウ達も止まってる……。
「今のうちに、[時の回廊]まで全力で走って!!もう準備は出来ているから!!」
「「うん、わかった!!」」「わかりました!!」「すまんな。」
僕達は死に物狂いで光の渦を目指して走った。
あと2mというところまで迫ったその時、
バリッ
ガラスが割れるような音が響いた。
「くっ、破られた!?」
「でもまだ間に合う!!」
「早く!!」
「何っ!?もうそんな所に!?[シャドーボール]!」
最後の手段は破られ、シャドウは漆黒のエネルギーを溜め始めた。
僕達は慌ててそれに飛び込んだ。
「本当は使いたくなかったけど……。」
視界の端で、ユーさんが鞄から何かを取り出しているのが見えた。
次の瞬間、轟音と共に熱風が発生して、僕達を渦の中に押し込んだ。
ダメージは………ない。
「グワァァ………」
渦が閉じる寸前、ユーさんとチェリーさんが飛びこんだのと同時に、シャドウの悲鳴が聞こえた。
…………これで、帰れるの…………かな?