六拾七 合流
西暦7200年 黒の廃坑 sideユー(ウォルタ)
「………ううっ………」
「あっ、良かった。チェリー、気がついたみたいだよ〜。」
ぼくはさっきまで敵対していた彼の意識が回復したのに気づき、翼でチェリーを手招きした。
「よかった!ヘルさん、大丈夫!?」
「……っ、チェリー…さん?どうしてここに?」
[デスカーン]のヘルさんが、ちゃんとした口調で言った。
……やっぱり、ぼくの推測は正しかったんだ!
「グラスさんが奴に阻まれて失敗しちゃったのよ……。だから、また導くために戻ってきたのよ。……それより、ヘルさんは大丈夫なの!?」
「えっ!?私、どうなってました!?」
ヘルさんが、驚き慌てて言った。
種族のせいかしらないけど、ヘルさんって♂か♀のどっちなんだろう……。
「ヘルさん、あなた、[闇]に呑まれかけていたのよ!!……もう少し遅かったら………。」
チェリーが言葉を濁した。
「!?でも、誰が私を……」
「この[ウォーグル]のユー君が止めてくれたのよ。」
浮遊しているチェリーが、ぼくのほうを指差しながら言った。
「彼が………?」
「うん。[鬼火]をくらった時は焦ったよ〜。」
ここでやっと会話に参加できた。
「危険を省みず、ありがとうございます。………にしても、飛行タイプ、初めて見ましたよ。」
「えっ!?ぼくみたいな飛行タイプはいないんですか!?」
えっ!?嘘でしょ!?
「……はい。常識のはずですけど?」
ヘルさんが当然かのように言った。
「!?チェリー!?本当なの!?」
ぼくは切羽詰まって聞いた。
「………残念ながら………、本当よ。他にも、火、氷、竜、毒、雷が絶滅してしまったのよ………。こんな世界だから、[闇]に呑まれて途絶えてしまったの……」
タイプの…………絶滅………?
有り得ないよ………、そんなこと。
「他のタイプもいるにはいるけど、エスパー、悪、ゴースト、岩、鋼以外はそれぞれ両手におさまるぐらいしかいない……。草に至ってはわたしとグラスさんだけ………。一応いるいにはいるけど、みんな[闇]に呑まれた………。」
そうなんだ………。
なら、尚更…、止めないと!!
「なら、チェリー!絶対に、止めないと!![種族]、タイプを絶滅させないためにも!!」「「!!?」」
ぼくが突然声をあげたがら、二人とも、目が点だよ。
「この時代の[真実]を知った以上、絶対に成し遂げる!!……」「……ところでチェリーさん、絶滅したはずの飛行タイプの彼は一体………。」
「[真実]の名を背負う者として、絶対に!!」「……黙っていたけど、彼は[過去]のポケモンなのよ。」
ぼくは自分に言い聞かせ、自らを奮い立たせた。
この後、ヘルさんの驚きの声があがったのは言うまでもないよね?
少し話した後、ぼく達はヘルさんと別れ、先を急いだ。
………
封印の岩場奥地 sideラテ
「……やった、たおしたよ!」
僕達は、それほど時間がかからずに[自我]のない[ミカルゲ]を倒せた。
「……っ、こっちも、解放された。お前等、すまないな。」
「“探検隊”として、困っている人を助けるのは当然ですよ。」
僕はジュプトルに笑顔を見せた。
…………そういえば、この時代に来てから初めて笑った気がする……。
あと、さっきから湧き上がっている力、時間が経つにつれて増している。
……何でだろう……。
「………フッ、やっぱり、お前ははぐれたパートナーに似ているな………。」
ジュプトルが、微かに安堵の表情を見せた。
こんな表情、初めて見たよ………。
まるで、誰かの事を思い出して懐かしんでいるみたい………。
「……ジュプトル?さっきから気になるんだけど、パートナーって誰なの?」
ベリーが首を傾げながら聞いた。
………確かに、誰の事なんだろう?
「………俺以外に、[星の停止]をくい止めるためにお前等の時代にいったやつがいるんだ……。……」
ジュプトルが淡々と話し始めた。
「種族と名前は言えないが、そいつは[イーブイ]のお前と性格といい、行動、言動がそっくりだった………。」
「えっ?僕とですか?」
!?
「そうだ。俺達は共に行動して、この時代で全てを調べてからあるポケモンに[過去]へ導いてもらった………。順調に進んでいると思ったが、ある事故が起こった……。」
「「事故?」」
僕達の言葉が揃った。
「[時]を渡っている最中、何者かの襲撃に遭い、そいつとはぐれてしまった………。以後、そいつの行方はわからない………。」
ジュプトルにとって、その人は大切な人だったんだ………。
話を聞いててわかるよ………。
ジュプトルの瞳から一筋の光が流れたから………。
ジュプトルの本当の人格を垣間見られたきがするよ………。
本当は、優しい人だったんだね……。
「……………すまんな……。こんな情けない姿を見せてしまって…。」
彼は慌てて目を擦った。
「……うん、いいよ。だって、本当のジュプトルがわかったし、気にしないで!」
ずっと暗かったベリーが初めて笑った。
僕達のジュプトルに対する疑念は晴れ、[闇]に包まれた暗い世界に暖かい[ひかり]がさしこんだ。
………
森の高台入り口 sideユー(ウォルタ)
「チェリー?この辺がそう〜?」
「ええ。もう2分も飛べば着くわ。」
ぼく達は鬱蒼と茂る森を飛び越した。
お陰で、数少ない技の使用回数を節約できたよ。
「2分だね〜?わかったよ〜。」
ぼくは飾り羽根を靡かせながら言った。
「じゃあ、そろそろ高度を落としましょっか?」
「うん、そうだね〜。」
ぼく達は互いに頷き、重力に身を任せて降下した。
………こうして、重力に身を委ねるのもいいね〜!
「………。チェリー、俺だ。いたら返事してくれ。」眼下から、誰かの声がした。
「チェリー?今の聞こえた?」
「ええ、ユー、聞こえたわ。きっとこの声はグラスさんよ!!」
待ちに待った人の声を聞いて、チェリーは嬉しそうに声をあげた。
「もしかして、あの三人組じゃないかな〜?」
種族の関係で発達したぼくの視力が、[ジュプトル]、[イーブイ]、[アチャモ]の姿を捉えた。
よかった〜!三人共、無事だったんだ〜!
「絶対にそうよ! 早くいきましょ!」
「うん!!」
ぼくは翼に力を込めた。
「………来ないね……。もう捕まっちゃったのかな……?」
ここでようやく、ぼくの大切な幼なじみの声を聞けた。
怪我もないみたいだし、安心したよ!
………すぐにでも話したいけど、今のぼくは[ウォルタ]じゃない…。
募る想いを押し殺さないと……。
《誰が捕まったですって!?》
ベリーの発言を受けて、チェリーは[テレパシー]で言い放った。
………そっか。チェリーとベリー達は初対面だったね。
何回かギルドに来てくれたけど、その時はいつも依頼でいなかったからね。
ぼく達は三人の前に降りたった。
……つい昨日会ったばっかりなのに、何十年ぶりの再会みたいだよ……。
「グラスさん、言いたいことはわかっているわ。」
「一回ならともかく、二回も、すまんな。……で、そいつは誰だ?」
再会を喜ぶと、グラスさんはぼくに疑いの眼差しを向けた。
……眼力が、強い………。
シロにひってきするかも……。
「[ウォーグル]の[ユー]君、わたし達の協力者よ!」
「「「協力者?」」」
三人が不思議そうに声を揃えた。
「あっ、はい。ぼくは[ウォーグル]のユーです。よろしくよろしくお願いします〜。」
ぼくは右翼を前に出した。
「わたしは[アチャモ]のベリー、よろしくねー!」
「僕は[イーブイ]のラテです。」
2人も、ぼくの握手に応じた。
……自己紹介しなくてもよ〜くしっているけどね。
「……で、わたしは[セレビィ]のチェリー、よろしくね!」
チェリーもにっこり微笑む。
「うん!よろしく!!」「よろしくお願いします!」
これで、自己紹介は済んだね。
「……あら?あなた……?」
「ん?僕がどうかしました?」
「………いや、まさかね…。」
チェリーは何かが引っかかったのか、ラテ君のほうを二度見した。
シルクとフライ以外はラテ君がラツェルさんと同一人物って事をしらないけど、もしかしたら気づいたのかもしれないね……。
「「???」」
当然、2人はキョトンとなる。
「……休めたら俺に言ってくれ。」
2人の疑問を押しのけて、グラスさんがぼく達に言った。
うん、わかったよ。