絆の軌跡 〜過去と未来の交錯〜
























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巻之拾弐ー乙 大切な人のため………
六拾六 VS闇に沈みかけの棺
西暦7200年 ??? sideウォルタ

「…………う………ん……。」
「よかった。気がついたね。」

ぼくはチェリーの心配そうな声で目を覚ました。

前脚で目を擦り、そのまま4足で立ちあがった。

辺りを見渡すと、[黒]が世界を支配していた。

ここはどこかの山なのかな?……でも、ぼくが知っている風景と何かが違う。

風は無く、光という光が微塵もない。

対流しているはずの砂煙も、ある一点でその状態を維持している…………。

チェリーから聞いていたけど、これが[未来]………、[星の停止]を迎えた世界……。

調査で行った、[時]が止まっていた[導きの大河]とは雲泥の差だよ……。

「………チェリー、とうとうぼく達は7200年……、チェリー達の出身の時代に来たんだね…。」
「……そう……。わたしはこの世界を変えたくて7000年に向かったの。」

チェリーは暗い声で呟いた。

「変えたいって気持ちもわかるよ〜。………で、この先に洞窟が続いてるみたいだけど、どういうところなの〜?」

沈んだ気持ちを切り換えて、ぼくは普段通りの調子で言った。

いつまでも沈んでいたら、出来る事も出来なくなるからね〜。

「……あっ、ここは[黒の廃坑]って言うダンジョンなのよ。……位置はウォルタ君の時代だと[誘いの坑道]に位置するわ。」

チェリーは少し考えると、ぱっと明るい表情になって朗らかに言った。

やっぱり、チェリーはこうでないとね〜!

「[誘いの坑道]か〜。うん、わかったよ〜。……あっ、そうだ。チェリーに1つ聞きたいことがあるんだけど、いいかな〜?」

ぼくは続けて気になることを聞いてみた。

………ぼくがここに来た一番の目的だから……。

「ええ。こんどはなに?」
「グラスさんとぼくの大切な友達……、[イーブイ]と[アチャモ]なんだけど………、一緒にいると思う〜?」
「………たぶん、一緒だと思うわ。……グラスさんが先走ってなかったら……。」
「先走って…………、なかったら………?どういう事〜?」

言葉の意味が気になって、チェリーが言った事を復唱した。

「グラスさん、凄く短期でせっかちだから、心配なのよね……。あっ、でも、それ以上に仲間想いでいい人よ!」

チェリーが慌ててつけ加えた。

へぇ〜。グラスさんってそんな人なんだ〜。

何となくわかったよ〜。

「うん、ありがとう。あと、ぼくの事なんだけど、その友達には姿を変えれる事を言ってないから。……だから、ぼくはこの時代では[ウォーグル]の姿で行動しようと思ってるから、よろしくね。そのほうがシャドウにもぼくの事がバレないでしょ〜?」

シャドウはぼくの事を知ってるからね………。

自分の身を守るためにも………。

「うんわかったわ!」
「それと、無事に解決するまでは[ユー]っていう偽名を使うつもりだから、よろしくね〜。」

さすがに性格までは変えられないから、せめて、ね………。

「………ウォルタ君……、わかった。」

チェリーはゆっくりと頷いた。

………ぼくはここで、しばらくは[ウォルタ]という名前を………捨てる。

ぼくはは首からかけていたネックレスをゆっくりと取り外した。

そして、それを鞄の一番奥にしまう。

「じゃあ…………」

ぼくは目を閉じ、光を纏った。

「……いくよ!!」
「ええ、もちろんよ!ウォ………、いや、ユー!」

[ウォーグル]の[ユー]となったぼくは、威勢良く喝を入れた。

よし、いくよ!!

ベリーとラテ君を連れ戻すため………、シャドウの野望を阻止するために!!

………

黒の廃坑 sideユー(ウォルタ)

「チェリー、そっちにいったよ〜!」
「わかったわ!![花びらの舞]!!」

白い[真実の証]を靡かせ、ぼくはチェリーに注意を促した。

チェリーはぼくの言葉をうけて、文字通り花びらを散らして華麗に攻撃した。

「っ!!」「ならぼくは[惑わしの種]で。」

敵対している2体の[ゴース]のうちの一体は崩れ落ちた。

ぼくは嘴で種を取り出し、それを翼で打ちとばした。

それは一直線に飛んでいき、見事に相手の口内に納まった。

たちまち、相手は幻覚に襲われた。

「チェリー、あとは頼んだよ〜!」
「ユー、わかったわ!!「[エナジーボール]!!」

ぼく達は手短にコンタクトをとる。

チェリーは手元にエネルギーを溜めながら滑空(?)し、翠の弾を放った。

「[念り………]……っ!!」

技を出そうとしていた[ゴース]に命中した。

ぼくは力いっぱい羽ばたき、接近する。

「[シャドークロー]!!」

ぼくは脚の爪に黒いオーラを纏い、高度をあわせて滑空する。

目前に迫ると、両脚をつきだし、飛びかかる体勢にはいる。

「ぐっ!!」

相手を捉えると同時に、引っ掻く要領で脚を振りかざし、その勢いで上昇……。

空中で宙返りして、結果を確認すると、相手を倒れていた。

「ユー、もう完全に[ウォーグル]ね。」
「もちろんだよ〜!技は2つしか使えないけど、それ以外はそうだよ!!」

地面に降り、翼を折りたたみながら言った。

技に制限があるから、あまり使えないね……。

でも、それはいつもとかわらないか!

「……じゃあ、他に敵が来ない今のうちに行きましょ。」
「うん!」

ぼく達は互いに頷きあい、静止した空気の対流をかき分けた。

………

黒の廃坑奥地 sideユー(ウォルタ)

「……よし、とりあえず突破したね〜。」
「ええ。ユー、ここから少し進んだところで合流する事になってるから、行こっか。」

ぼく達は2人で協力して、ゴーストタイプのポケモンだらけの迷宮を突破した。

「確か……、[森の高台]の麓だったよね〜?」
「ええ、そうよ。」

チェリーが、もちろんっていう感じで大きく頷いた。

さっき聞いたんだけど、グラスさん達と初めて出逢ったのもそこみたいなんだよ〜。

「……もしかすると、もう着いてるかもしれないね〜。ぼく達も、遅れるといけないから………」

行こっか〜!

そう言おうとした時、

「ワタシノ住処ニ侵入シタノハオ前達カ………。」

「「!!?」」

声のしたほうに慌てて振り返ると、いつからいたのか、[デスカーン]が凄い剣幕で襲いかかってきた。

!!?

ぼく達は空中に避難する。

「チェリー!?この人、自我を失いかけてない!?」
「確かに、そうに違いないわ!!……まえに来たときはこんな人じゃなかったのに………、ヘルさんまで………。」

チェリーが悔しそうに言った。

「チェリー!?この人、知り合い!?」
「ええ。この世界ではわたし達以外で唯一自我があった人のうちの1人だったのに………、[闇]に染まりかけてる……。」

彼女は頭を抱えて嘆いた。

「[闇]にって、どういうこと!?」
「この時代に来る前に言ったわよね?<精神を乱す事がないように>って。もしその状態が長時間………いや30分続くとこうなってしまうのよ!!こんな世界だから、強い[心]を持ってないと、[自我]を失ってしまうのよ!!」

チェリーは言葉を強めて言った。

嘘でしょ!?

「でもチェリー!?[闇]に沈み“かけてる”って事は、完全には呑まれてないって事だよね!?」
「ええ、そうよ!でも、闘って倒すしか………」

「なら、そうするしかないよ!![ツバメ返し]!!」「イイ加減、降リテコイ!![シャドーボール]!」

ぼくはチェリーの言葉から解決方法を理解して、標的に向けて急降下した。

「ちょっとウ……ユー!」
「助かる見込みがあるなら!!」

ぼくは体勢を左に傾け、漆黒の弾をかわした。

「っ!!」「くっ!堅い!?」

ぼくの翼は敵を捉えたけど、大してダメージを与えられなかった。

勢いそのままに上昇する。

これがダメなら……、

「[シャドークロー]!!」「[鬼火]!!」

爪に黒いオーラを纏いなから身を翻した。

「くっ!しまった!!」

ぼくはそれに気づくのが遅れて、まともに受けてしまった。

火傷……、おまけに物理技の威力が半減……。

こうなったら、仕方ない……。

ぼくはやむを得ず光を纏った。

「[水の波動]!」

[ミズゴロウ]の姿で、音波を乗せた水塊を放った。

すぐに姿を戻す。

さっき失敗した技を………。

「[シャドークロー]!」「[怪しい光]!」

ぼくは再びオーラを纏い、相手は不審な光を球状にして放った。

「!!ヤバい!」「っ!!」

ぼくは慌ててそれをかわした。

相手は水塊を受けて、混乱状態となった。

「そのまま!」
「ぐっ!!」

命中。

ぼくは光を纏う。

着地と同時に、

「[地震]!!」

おもいっきり地面を踏み鳴らした。

たちどころに大地はうなりをあげて揺れ始める。

「ぐわああぁぁ……っ!!」「これで…どう……?」

相手は断末魔の叫びをあげた。

火傷で体力を削られ、ぼくの息が荒れはじめた。

それに構わず、[ウォーグル]の姿に戻した。

「………倒れた……みたいね……。」
「うん。何とか倒せたよ〜……。」

闘いが終結したのを確認して、ぼくは鞄から[チーゴの実]を取りだして啄んだ。

ぼくは闘いで削られた体力を回復するため、再び鞄を探り始めた。


巻之拾弐ー乙  完  続く

@ ( 2013/10/01(火) 00:39 )