六拾伍 感じる懐かしさ
西暦7200年 処刑場 sideラテ
「…………よし、奴らは出ていったみたいだな。」
ジュプトルの機転で、僕達は何とか処刑から免れれた。
…………でも、[水晶の湖]以外のどこかで聞いたことがあるような………、どこだったっけ?
「……みたいだね……。でもシャドウさん、どうしちゃったんだろう…。」
「……うん。どうして僕達まで……。」
本当に、訳がわからないよ………。
処刑されるのはジュプトルだけのはずなのに……。
………あんな状達だと、頼れそうにないよ……。
でも、どうすれば………。
僕は毛に絡んだ土を払い落とした。
「………生き残りたければ、俺と一緒に来い。」
僕達の前に立っているジュプトルが、横目で言った。
………確かに、たとえジュプトルでも、人数が多ければ逃げられるかもしれない……。
「………わかったよ。……完全に信じた訳では無いけど、ついて行く……」
「えっ!?でも、あのジュプトルだよ!!」
僕は彼の意見に賛成だけど、ベリーは猛反対……。
「わかってるよ………。僕も信じられないよ……。でも、こうするしか帰れそうにないよ……。」
「でも、でも………、シャドウさんの帰りを待ったほうが………」
「お前、アイツの行動を見てもまだわからないのか!?アイツは目的のためなら手段を選ばない奴だ。」
「ベリー、僕も正直、誰を信じたらいいかわからないよ。……でも、僕達の時代に帰るにはこうするしかないんだ…………。」
それ以外に方法が浮かばない……、だから………。
「でも、ジュプトルは[星の停止]を引き起こそうとした………」
「俺が、だと?それは寧ろアイツの方だ。俺は食い止めるためにあの時代にいったんだ。」
「ちょっと待って!!話が違うよ!!だって、シャドウさんは有名な探検家でしょ!?……」
ベリーとジュプトル、完全に口論になってるよ………。
「それに、ジュプトルは引き起こそうとした凶悪犯……」
「有名、か……。卑劣な奴、でか?それとも、別の理由か?」
「そっ、それは………。」
ジュプトルに核心を突かれて、ベリー、黙り込んじゃった……。
確かに、ただ有名とだけしか知らないよ………。
「………ジュプトルの言うとおりだよ………。わたし達はただ有名とだけしか知らないよ…………。……………わかったよ。そこまで言うなら…………。一応ついて行くけど、信じた訳じゃないからね!」
一歩も退かなかったベリーがとうとう折れた。
「…………好きにしろ…………。ついて来い。」
ジュプトルはボソッと呟いて歩き始めた。
「………ラテ………。」
「うん、わかってるよ……。行こ………。」
「………うん。」
僕達は消え入りそうな声で頷き、ジュプトルの後を追いかけた。
…………絶対に戻ろう!!元の時代に!!
………
封印の岩場 入り口 sideグラス
俺達は会話もなく、黙々と2つのダンジョンを突破した。
[水晶の湖]で戦った時はそうでもなかったが、こいつ等はそれなりに実力は持っているな。
あの2人の連携はなかなかのものだ。俺に戦いを挑んだだけはあるな……。
……………1つ気になるのがこの[イーブイ]………。性格といい、話し方といい、どうしてもラツェルと被ってしまう………。
………全く行方がわからないが、本当に無事だろうか……。
………知り合いと重なるのは良くある事だ…。気にする事はないか………。
「……ハア、ハア………。ジュプトル………、ちょっと休もうよ………。」
「そんな暇は無い。行くぞ……。」
「待ってよ………。いくら何でも急ぎすぎだよ……。」
俺のスピードについてこれず、とうとう[アチャモ]が遅れを取り始めた。
………これでもペースを落としたつもりだが………。
「僕も……、ちょっと息が切れてきました…………。」
こいつもか………。
………っ、どうしてもラツェルと被る!!
何故だ!?
「………2分だけだぞ………。すぐに出発………」
「待ってください!!流石に2分は短すぎますよ!!僕でもこのままだと体力が保ちそうに………」
「いい加減にしろ!!これでもお前らのペースに合わせてやっているんだ!!これくらい我慢しろ!!…」俺はとうとう我慢出来ずに怒鳴った。
見知らぬ奴が俺の大切なパートナーと似ているだなんて…………イライラする!!
「第一に、お前もお前だ!!俺なんかに敬語を使いやがって!!はぐれた仲間と被って仕方がない!!………もう我慢出来ん!!ここからは俺1人で行く。休みたければ好きなだけ休め!!俺にも都合という物があるんだ!!」「待って!!そこまで怒らなくても………」
俺は感情的になり、溜まりに溜まった不快感をぶつけて先を急いだ。
……………少し言いすぎたか…………。
………
sideラテ
「待って!!そこまで怒らなくてもいいのに……。…………行っちゃった……。」
ジュプトルさんが突然キレて、僕達を置いて先に行ってしまった。
……………でも、何でだろう………。何故か懐かしい気が…………。
それに、この暗黒の世界………なぜか落ち着くと言うか………、この雰囲気を知っていると言うか…………、不思議な気分だよ……。
あと、微かにだけど、力が沸いてくるのは………気のせい?
「………たった2分の休憩だなんて…………、無茶だよ……。せっかちにもほどがあるよ……。」
「うん。……ベリー、少し休んだら僕達も行こっか。………一度僕達の時代に来たことがあるジュプトルしか頼れる人がいないから………。」
僕は疑問に包まれながら、言の葉を繋いだ。
「…………そうだ………よね。ジュプトルの事はまだ完全に信じた訳じゃないけど………。」
ベリーは何とか言葉を絞り出して言った。
僕達はこの後、10分ぐらい休んでからダンジョンに足を踏み入れた。
………
封印の岩場最奥部 sideグラス
俺は本来のペースで薄暗い迷宮を疾走した。
………ここを抜ければあと少しだ!
「………それにしても、アイツ等は大丈夫だろうか………。感情的になって置いてきてしまったが………。」
…………、少し心配になってきたな………。
ここは人目につきにくいから、暫く待ってやるか………。
俺は鎮座する岩陰に腰を下ろした。
「………ダレダ………。イマスグニココカラタチサレ………。」
「!!?何者だ!?」
突然、辺りに声が響いた。
誰だ!?
「どこにいる!?姿を現せ!!」
俺は辺りを見渡す。
だが、この岩と石ころ以外、何もない。
………っ!どこだ!?
「タチサラナイトイウノナラ………。」
「!!?そんな所に!? っ!!」
突然声の主が姿を現し、種族を確認する前に……っ!!俺の鼻の穴から俺の体内に進入し、俺の自由を奪った。
……っ!!身体が…動かん!?
一刻も早く、チェリーと合流しないといけないというのに!!
………
数十分後 sideラテ
「……ふぅ。やっと抜けれた。」
「……にしても、やけにゴーストタイプとか、エスパータイプが多くない!?」
僕達は何とか突破したけど、ベリーの言う通り、さっきからそのタイプばかりだよ………。
………これも、[星の停止]の影響なのかな?
あの時、シルクに[シャドーボール]を教わっていてよかったよ。
「言われてみれば、そうだね。………ベリー、大分とばしたがらそろそろ追いつくはずだよ。」
「うん。行こ。」
僕達はこれだけ言うと、再び歩き…………ん?何か緑の物体が………。
少し開けた場所に緑色の物体?が落ちて……………!!?
「「ジュプトル!!」どうしたの!?/どうしたんですか!?」
それは、さっきまで行動を共にしていたジュプトルだった。
一体何があったの!!?
「……っ!敵が………すぐ近くにいる!」
「敵!?でも、ここにはわたし達とジュプトルしかいないよ!?」
「他には、小石ぐらいしか………。」
敵!?でも、誰もいないよ!?
僕はその小石に視線を移した。
カタッ
「「!!?動いた!?」」
!!?
「ココカラ……タチサレ……。」
小石が突然動き出し、[ミカルゲ]が姿を現した。
まさか、この人が!?
「気をつけろ!!」「[シャドーボール]!!」
僕達の反応に構わずに、相手は漆黒の弾を発射した。
「「!?」[守る]!!」
僕は慌ててベリーの前に立ち、緑のシールドを張り巡らせた。
互いに衝突し、黒の弾は消滅した。
「ベリー、戦うしか無さそうだよ!!」
「うん!!いつも通りいくよ!!」
僕達は意を決し、戦闘体制に入った。
僕達はバックから[猛撃の種]を取り出し、噛み砕いた。
「いくよ!!「[シャドーボール]!!」」
「うん!![炎の渦]!!」
二カ所から漆黒の弾が放たれ、もう一カ所からは炎塊が放たれた。
僕達側のほうは互いに混ざり合い、えんじ色に変色した。
「[真空切り]!!」「[火炎放射]!!」
間髪を入れず、僕達は次の一手をくり出した。
衝突する前に僕の見えない空気の刃が漆黒の弾を切り裂いた。
それは真っ二つに割れた。
「もう一発、[シャドーボール]!!」「ッ!!!」
ダメ押しで造られた弾が放たれたのと、えんじ色の弾が爆発したのはほぼ同時だった。
種で強化されているから、威力はかなり高いと思うよ?
「!!?」
この後も、立て続けに技が命中する。
言葉にならない悲鳴があがった。
技の影響で砂煙があがる……。
「………倒せた…………かな?」
「わからないよ!」
僕達は固唾をのんで結果を見守る。
「……よし、倒せたね…。」
砂煙がはれると、目を回して倒れている[ミカルゲ]の姿がそこにあった。
巻之拾弐ー甲 完 続く