六拾参 処刑
西暦7200年 牢獄 sideラテ
「ええっと、確かシャドウさんに呼ばれて………。」
僕はさっきまでに起こった事を記憶を頼りに探りはじめた。
「……突然シャドウさんに掴まれたよね?わたし達?」
「で、そのまま引きずり込まれた………。「えっ!?ってことは……もしかして……。」」
数分考えて、ある結論にたどり着いた。
「「ここって、[未来]!?」」
僕達は顔を見合わせ、声を揃えた。
嘘でしょ!?
ジュプトルならわかるけど、なんで僕達まて[未来]に!?
「あの渦に引き込まれたってことは、絶対にそうだよ!!」
「うん。でも、どうして僕達まで………。」
時代はわかったけど、ここは一体どこ!?
薄暗いし、鉄格子の引き戸がある以外何もない………。
……………まるで牢屋みたいだ……。
でも、牢屋って悪い事をした人が入れられる場所のはず…。
僕達は探検隊“悠久の風”として沢山の人達を助けてきたのに、どうして………?
それに、僕達は現代のポケモンのはずなのに、どうして………。
「…………目が覚めたか……。」
僕が思考を巡らせていると、金属が擦れる音と共に扉か開いた。
「!? なに!?」
「僕にもさっぱりわからないよ!?」
この部屋唯一の入り口から4人のの[ヤミラミ]が入ってきた
「大人しく来い!」
「!?目を塞がれた!?」
「何も見えない!?」
突然、目を何かで覆われた。
!?
「っ!?押さないでよ!!」
「痛っ! 僕は後ろ脚を蹴られた!」
僕達はまるで腫れ物のように誘導された。
これだとまるで、囚人………。
僕達がなにをしたっていうの!?
僕達は寧ろジュプトルを捕まえようとしていた側なのに!?
僕とベリーは、訳がわからないままどこかに誘導された。
………
同刻 sideグラス
「クソっ!あと少しだったのに……。」
俺は気がついたら、ロープで縛られ、天井から吊されていた。
腕まで縛られて何も出来ん!
それに、初めて戦ったが、シャドウ、強過ぎるだろ!!
俺のPPが無くなるまで散々いたぶった挙げ句、[ヤミラミ]共に集中攻撃された。
卑劣は戦法でかかってくるとは思っていたが、ここまでとは………想定外だ………。
俺は歯を食いしばった。
…………チェリー、ラツェル…………すまん……。
俺が無念さに打ちひしがれていると、鋼鉄の扉が音をたてて開いた。
すぐに[ヤミラミ]達が姿を現した。
「処刑の時間だ。[縛り玉]!」
「くっ!!」
狭い部屋に入るとすぐに、玉の効力を俺に向けた。
たちどころに俺の自由は奪われた。
「[切り裂く]!」
俺が拘束されたのを確認すると、別の一匹が高く跳び、俺を吊していた縄を切った。
「っ!!」
重力に引かれ、俺は地面に叩きつけられた。
「[金縛り]!」
「くっ!!」
更に縛られ、縄、玉、技による強烈な痛みに襲われた。
俺は思わず顔を歪める。
俺はこのまま為す術がなく、護送された。
この先に待ちかまえているのは処刑か?
………
数分後 処刑場 sideグラス
俺は大部屋に誘導され、一本の柱に縛りつけられた。
ここに到着すると、技の一つが解かれた。
だが、きつく結ばれて身動きがとれない……。
「…………だから、放してください!!」
「わたし達が何をしたっていうの!?」
「いい加減黙れ!!」
奴らが俺の周りから離れた頃、広い部屋に3つの声が響いた。
最後のは[ヤミラミ]だとわかったが、残りは誰だ?
………最近聞いたような気がするが……。
こいつらも、俺と同じように縛られた。
「目隠しが外された!」
「でも、どうして僕達が……。」
「わたし達は何も悪い事はしてないのに……」
「シャドウの気に障る事をしたんじゃないのか?」
おそらく、[イーブイ]と[アチャモ]の会話に口を挟んだ。
「「!? ジュプトル!?」どうしてあなたがここに!?」
「おそらく、処刑されるところだろう…。」「シャドウ様、処刑の準備が整いました。」
「「処刑!?」」「………ご苦労だった……。」
俺達が口論をしていると、事の元凶が姿を現した。
「シャドウさん、わたし達だよ!!気づいて!!」」「奴らを縛り付けました。」
「……今のシャドウは目的のためなら手段を選ばない奴だ。だから、何を言っても無駄だ。それより、ここからは小声で話せ。」「……よし、よくやった。…」
「小声で?」
「そうだ。 とにかく、今はここから逃れる方法を考えろ。」「技の準備は出来ているな?」
「手段?手段って、どうやってですか!?」「もちろんで御座います。」
「[ヤミラミ]は攻撃の時、8割ぐらいの確率で[乱れ引っかき]を使う。それは無差別に対象を切り裂く。」「いつでも執行可能です。」
「そっか!もし縄に当たった、ロープが緩む。その時に攻撃すれば、逃げられますね!」「シャドウ様、御指示をお願いします!!」
「でも、もし[乱れ引っかき]を使ってこなかったらどうするの!?」「では、始めろ。特にグラスには重点的にな!!」
「その時はその時だ!!」「「「「ウィーーー!!」」
作戦会議が終わると同時に、奴らが技のために身を構えた。
………信頼した訳ではないが、耐えるんだ!!
「「「「[乱れ引っかき]!!!」」」」
「「「くっ!!」」」
[ヤミラミ]達は容赦なく俺達に切りかかる。
「今は…………耐えるんだ!!」
大ダメージを受けるが、これは想定内。
「………あっ!縄が緩んだ!」
「僕も!」
「よし、
今だ!!」
斬撃は縄に命中し、俺達を拘束する力が弱まった。
このタイミングを逃す訳にはいかない!!
俺達は隙をついて奴らに捨て身で攻撃する。
「「「「!!?」」」「何っ!?」
俺達に不意を突かれ、奴らは吹っ飛んだ。
「これでも食らえ!!」
俺は隠し持っていた[光玉]を発動させた。
その隙に、こいつらと共に身を地中に隠す。
「[光玉]を目くらましに!?すぐに収まる!!」
奴の声がこだまする。
「「!? 消えた!?」」
「まだ近くにいるはずだ!!追え!!」
黒の悪魔が悔しそうに叫ぶ。
すぐに走る音がして、やがて辺りは静まりかえった。
よし、ひとまず危機は去ったな。
俺達は地上に帰還した。
……………よし、誰もいないな……。