六拾壱 未来へ
西暦7000年 トレジャータウン sideラテ
「皆さん、お待たせしました。」
「あっ!シャドウさんが来たよ!!」
僕達が口々に話していると、交差点のほうから待ちに待った人物が姿を現した。
先陣をきってシャドウさん、口と腕を縛られた[ジュプトル]………。
腕ならともかく、口まで縛らなくても………。
そして、ジュプトルを取り囲むように3人の[ヤミラミ]。
これだと完全に逃げ場がないね。
ちなみに、何故かは知らないけど、この場にシルク達はいない。
…どうしてなんだろう……。
いつもならこういう時はいるはずなのに………。
「そういえばハクさん?何で今日はシルク達はいないの?」
ベリーが僕の隣にいたハクさんに聞いた。
………実はこの2日間でハクさんとシリウスさんと、シルク達を通して仲良くなったんだよ。
今まで話したことがなかったけど、ハクさんって、こんなに明るい人だったんだね!?
シリウスさんは相変わらず口数が少ないけど、前よりは話してくれるようになったかな?
それに、シリウスさんってシルクとフライと同じで[過去]のポケモンだったらしいよ!!
知らなかった………。
「何でかは知らないけど、来れない理由があるんやって。………ウチらも知らないけど………、」
「「理由?理由って?」」
僕達は思わず声を揃えた。
どうしてだろう………。
「………シャドウさんが[未来]に帰ったら話してくれるそうです……。」
帰ったら………?
「帰っ………」「皆さん、今回は[ジュプトル]の逮捕………、[星の停止]……」
「………の阻止にご協力頂き、ありがとうございます。」「!!!♯♨、✓♥!!」
僕達が続けてハクさん達に聞こうとする前に、遂にシャドウさんが話はじめた。
「……縛られていたら何も話せないね……。」
シャドウさんの言葉を聞いた途端、ジュプトルが何かを訴えはじめた。
…………何を言ってるのかわからないけど……。
ベリーが僕にしか聞こえない声で呟いた。
「つべこべ言わずに来い!!」
「っ!!」
ジュプトルは、1人の[ヤミラミ]に、黒くて禍々しい渦に突き落とされた。
………もしかして、あれが[未来]に繋がる入り口?
ジュプトルを突き落とすと、取り囲んでいた[ヤミラミ]達も渦の中に飛び込んだ。
「………皆さんの協力が無ければ、極悪人の[ジュプトル]を捕まえる事が出来ませんでした。本当に、ありがとうございました。」
シャドウさんは深々と頭を下げた。
「………名残惜しいですが、私もそろそろ戻ります。」
頭をあげると、全体を一通り見渡してから、渦に向けて一歩一歩歩きはじめた。
…………もう、会えないんだ………。
僕達の瞳からは自然と涙がにじみ始めた。
「……あっ、そうだ。ラテさん、ベリーさん、少しここに来てもらってもいいですか?」
「「え?」」
突然呼ばれて僕達は、別れによる悲しみで俯いていた視線を正面に向けた。
………霞んでよく見えないけど………。
「……個別に挨拶をしたいので…。」
「……ラテ、いこ。」
「………うん。」
僕は溢れる涙を拭い、人混みをかき分けてシャドウさんの正面に立った。
「……シャドウさん、短い間でしたけど、ありがとうございました。」
「もうお別れなんて、寂しいよ……。」
僕達は、思い思いに別れの言葉を述べた。…………嗚咽混じりに……。
もう、会えないんだね………。
瞳から涙が溢れた。
「お別れ…………か。それはどうかな?」
「「えっ?」」
???
「別れるのはまだ速い!!!」シャドウさんは突然両手を振りかざし、僕達を鷲掴みにした。
!!?どういう事!??
「「「「「「「!!?」」」」」」」
あまりの光景に辺りは騒然となった。
僕達は掴まれたまま引き込まれる。
…………!!
驚きと恐怖で身体が竦んで、動けない。
抵抗出来ずに、黒い渦に引き込まれた。
「ラテ君!!!べ……」渦が閉じる直前、聞き慣れない低い声が僕の名前を呼んだ気がした。
聞き終える前に、完全に遮断された。
…………ここから先は、どうなったかわからない………。
……気を失ったから………。
………
西暦7200年 ??? sideラテ
「…………テ、ラテ!! ……良かった。気がついたね……。」
「…………ここは………?」
ベリーにつつかれて、僕は何とか意識を取り戻した。
「わたしもさっき気づいたばかりなんだけど……、なんかわたし達、閉じ込められているみたいだよ!!」
「えっ!!?閉じ込められているだって!!?」
ベリーの言葉で、朦朧としていた意識が鮮明なものになった。
えっ!!?嘘でしょ!?
言われて、見渡すと、ギルドの食堂ぐらいの部屋……だね………、ここは……。
あの後、僕達ってどうなったんだっけ?
僕は[記憶]を探りはじめた。