伍拾弐 捜索開始
西暦7000年 導きの大河 sideシルク
あの後、私達は三人でトレジャータウンでいつものように旅の準備をしたわ。
私は木の実と不思議玉そして[木の枝]………、いつも通りね。
フライは[PPマックス]と[銀の針]。
そしてウォルタ君は[猛撃の種]、[駿足の種]を中心とした種一式。
[真実のチカラ]を授かってからは[種]を多用しているわ。
きっと、素早さが高いから相手の口に放りこむのが簡単だからだと思うわ。
……今日はフライとは別行動だから、一度ラテ君達と立ち話をしてから別れたわ。
だから、この場所には私とウォルタ君の2人だけ。
ウォルタ君だけとの探検は[濃霧の森]の時以来ね。
「シルク、ここが[導きの大河]だね〜。」
「ええ、やっと着いたわね。………にしても、ここまで遠かったわ…。」
途中まではウォルタ君に乗せてもらったけど、それでも2時間かかったわ。
「………でも、何か違和感があるような……、気のせいだよね〜?」
「言われてみれば、そんな気がするわ。」
確かにそうね。
昼前にしては、晴れているにもかかわらず薄暗い気がするし、何より川のせせらぎが聞こえない……。
無風なのは気圧の関係からかもしれないけど……。
「………とりあえず、行ってみましょ!」
「うん。そうたね〜。」
ウォルタ君が翼を羽ばたかせながら言ったわ。
………言い忘れてたけど、今のウォルタ君は[ウォーグル]よ。
中身は変わらないけど、見た目は凄くたくましいわ。
私達は違和感を覚えながらも、薄暗いダンジョンに足を踏み入れた。
………
北の砂漠 sideラテ
「……ある程度は覚悟していたけど、やっぱり暑いよ………。」
僕は流れる汗を拭いながら言った。
僕の体毛は長いから、こういう所は苦手だよ……。
ベリーは炎タイプだから平然としているけど………。
「ラテ君、あまり無理しないでね。」
「うん。」
フライは涼しい顔で僕に言った。
………そうだったね。フライは生まれも育ちも砂漠って言ってたっけ?
「わたし達はラテのペースに合わせるから、ね?」
ベリー、その気遣い本当に助かるよ。
飲み水も十分過ぎるぐらい持ってきたから、大丈夫だよね?
「ベリー、ありがとう。 じゃあ、行こっか。」
僕は一度、照りつける太陽を仰ぎ見て、威勢良く行った。
……よし、探検開始だね!!
僕は陽光で熱せられた地面に苦戦しながら、広大な砂漠に足を踏み入れた。
数十分後 sideフライ
「ラテ、そっちにいったよ!![火炎放射]!」
「わかったよ!![穴を掘る]!」
「じゃあ、ボクは時間を稼ぐよ!![超音波]!」
ベリーちゃんが燃え盛る炎で相手を牽制し、ラテ君が瞬時に地面に潜伏する。
そして、ボクは砂嵐の中で場所を悟られないように音波を発生させる。
ボクには効果がないけど、砂嵐は少なからず負担がかかるから、長期戦を避けないといけないね。
「[炎の渦]!」「[目覚めるパワー]連射!!」
ベリーちゃんが炎で相手の自由を奪い、ボクがそこに紺色の弾を5発放つ。
ちなみに、今の相手は4体、すでに4体とも逃げ場を失っているよ。
ボクはエネルギーを節約するために弾を小さめに放った。
「「「「っ!!」」」」「そこだ!!」
ボクの技が命中すると同時に、ラテン君が地中から奇襲攻撃を仕掛けた。
「[守る]!」「[岩雪崩]!」
技の是非を確認する間もなく、ラテ君は自分だけを囲むように緑色のシールドをつくりだした。
それとほぼ同じタイミングで、ボクの技の効果でその上空から幾つもの岩石が降り注ぐ。
岩の勢いで砂煙があがる…。
煙が晴れると、4体のポケモンが目を回して倒れていた。
「………よし、倒したね。」
「うん。 わたし達の連携も完璧だったね!!」
ベリーちゃんが、明るい声で言った。
2人も、この1ヶ月で随分実力をつけたね。
「相変わらず、フライも強いよ。」
ラテ君も、身体についた砂を払いながらいった。
「………にしても、この砂嵐は本当に厄介だよ……。視覚がほとんど機能しないぐらい酷いし、何より、ここは地面タイプが中心だから全く気が抜けないよ……。」
ベリーちゃんがため息混じりに言った。
………フラットさん、この事を分かっていてラテ君達にここを任せたのかな?
それとも、2人にいろんな環境を体験させるためかな……?
ボク達は、一息ついてから先を急いだ。
………
導きの大河奥部 sideシルク
「そういえばシルク?シルクは[第6の技]を何にするか決めたの〜?」
足元を濡らしながら歩いていると、私の頭上でウォルタ君が言った。
「ええ。実戦では試してないけど、一応使えるようにはなっているわ。」
私は見上げて、笑顔で言ったわ。
私、毎朝技の練習をしているから、その時に習得したのよ。
通常の効果も使いやすいし、化合させた効果も便利だから、きっとバトルで役立つわ。
「だから、次に来た相手に試してみるわね。…っと、早速来たわね!!」
まるで誰かが図ったように、新手が現れたわ。
「[バスラオ]に[ケイコウオ]、[ハスブレロ]の3体だね〜。」
まさに、絶好の相手ね。
「ええ。ウォルタ君、ここは私に任せて!!まずは[縛り玉]で!」
私は相手の存在を確認すると、鞄から [縛り玉]を取り出し、発動させた。
相手はたちまち身体の自由が奪われた。
「さあ、[絆]の名に賭けて……、いくわよ!![瞑想]、[ベノムショック]、[[サイコキネンシス]!!」
私はいつも通り2つの技を出した。
それと同時に、体内に溜まっている毒素に意識を集中させ、それを口元に蓄積させた。
「溜まったわ!」
私はそれを球状に形成して、敵のうちの一体、[ハスブレロ]に向けて発射した。
紫の弾が一直線に飛んでいき、
「っ!」
標的に命中した。
その相手の顔色が悪くなる。
「毒も、効いているわね。次は、[シャドーボール]、[ベノムショック]、化合!!」
私は維持していた[サイコキネンシス]で二重に拘束した。
そして、口元で漆黒と紫のエネルギーを化合させる。
[チカラ]で強化されたそれは、バランスボールぐらいの大きさまで膨れ上がった。
それを群れに向けてはなった。
ここで[縛り玉]の効果が切れたわ。
でも、まだ拘束は続く。
「拡散!!」
黒紫色のそれを細かく分裂、そしてそれで相手を8方向から取り囲む。
「収束、[10万ボルト]!」
中心に一気に凝縮させ、相手の守りを軟化させる。
そして、ハクのには及ばないけど、高電圧の電撃を放出した。
「「「っ!!!」」」
効果は抜群、悲鳴をあげる間もなく相手は倒れた。
「……よし、技は完璧ね。」
「シルク、残りの技は毒にしたんだね〜?」
戦闘が終わったのを確認すると、ウォルタ君が滑空しながら駆け寄って(?)きた。
「ええ。これなら単発でも毒状態にできるし、化合させれば守りを下げる効果を追加できるからね。悪臭三人組と戦ったときも、それを使ったのよ。」
「へぇ〜。なら、ますますシルクは強くなるね〜。[チカラ]での技の強化、それに相手の守りを弱くできるとなると、まさに敵無しだね〜!」
…………今思ったけど、私の能力はもう常識では考えられないレベルに達しているわね……。
でも、これは事実。
それゆえに乱用はできないわね…。
とりあえず、威力は調整出来るから、問題ないわね。