絆の軌跡 〜過去と未来の交錯〜
























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巻之拾 動きだすシナリオ
伍拾 親子の絆
西暦7000年 ギルドB2F sideシルク

「私には………、家族喧嘩したくても…………する親が………いないんだから…………。」

私はとうとうこらえきれず、涙がこぼれ落ちた。

「………ウォルタ君、……親がいるだけでも………。………2人の気持ちもわかるけど………、傷つけあうのだけは………やめて……。さっきも言ったけど………、私は物心つく前に両親を亡くしたのよ………。だから、………私は親の顔……、何に進化したのか知らないわ………。」

成長してから聞いたら…………、父さんは鉄パイプの落下に巻きこまれ…………、母さんは車との事故で即死……。

その時を思いだしただけでも………。

「………それに、私は肉親のいる家庭の温もりを知らない………。………おまけに、私は………」

「シルク、もういいよ……。」「………あなたは………。」

私の技で拘束されているウォルタ君に構わず、私は続ける。

「………幼少期、………飢えと孤独で苦しんだ……。………だから、私に比べたら、………あなた達は些細な事で…………。………」
「シルク………だから……。」

ウォルタ君にも嗚咽が混ざり始め……。

「だから、私にはない[母親]だけは、傷つけるのはやめて………。」

私は声を強める。

「シルク………。」「あなたも、私を含めて、考古学者をけなすのは構わないわ。………だけど、折角の親子の[絆]を自ら壊すのだけは………、やめてほしいわ。………一度壊れた[絆]は修復不可能だから……………。」

…………ウォルタ君をはじめ、誰もが私にはないものを持っている………。

だから……………。


私は頬を伝っている一筋の光を拭った。
私はここで技を解除した。

「シルクにこんな過去があったなんて……知らんかったわ……。」
「あっしも……。」

辺りにしんみりとした風が吹き抜けた。

「………すまないわね。私のせいでこんな空気になってしまって……。」

私が2人の争いに首を突っ込んだから……。

「…………私は……一匹の親……、ポケモンとして、失格ですね………。まだ若い彼女を泣かせた挙げ句、辛い事を思い出させるなんて………。」

ウォルタ君のお母さんが申し訳なさそうに言った。

「………、考古学者は必ずしも自己中心的だとは限りませんよ。……確かに、狂ったように研究に明け暮れている人もいますが、シルク……、彼女みたいに無理をしてでも仲間のために行動する人もいます。人格的にも模範なのが彼女、考古学者のシルクです。………実際に、ボクは何度も彼女に助けられています。考古学者としてまだまだ経歴が浅いボクが言うのもあれですが…………。」
「フライ…………。」

フライが泣き崩れている私をフォローした。

私の瞳から、さっきとは違う、暖かい光が流れた。

「………あなた達、考古学者だったのですね……。自己中だと決めつけていた私は一体………。」
「母さん、だから前に言ったでしょ〜…………。学者……、ひとに対する偏見は良くないって……。」

2人とも、怒りが収まったわね……。

届いたのかしら………。私の想い……。

「………私は………間違っていたのね……。彼女の思いを聞いて、よくわかったわ……。ウォルタ………、好きにしなさい……。」

どうやら、私の思いは伝わったようね。

ウォルタ君のお母さんは、それだけ言うと螺旋階段に向けて歩きはじめたわ。

「ハイド………♪?」

去ろうとしている彼女を、フラットさんが呼び止めた。

名前だけで呼び合ってるけど、どういう関係なのかしら……。

私は乾きかけた涙を拭いながらそう思った。

「フラット、1人になって考えてみることにするわ………。………ウォルタとはしっかり話し合いたいけど、こんな時期だから仕事が山積みで……。だから、もう暗いけどこの辺で失礼するわ……。……そうだ、ウォルタ、渡すものがあるわ……。」

彼女、ハイドさんが思い出したように振りかえった。

「……えっ?渡すもの〜?」

………

sideウォルタ

「……えっ?渡すもの〜?」

母さんと大喧嘩している時に、シルクに止められて……。

それに、シルク……、ぼく達のために過去をさらけ出さなくても……。



ぼくは、母さんに呼ばれた。

「……前脚を出して……。」
「前脚……?うん、わかったよ〜。」

ぼくは言われるがままに右前脚を出した。

母さんは、長年大切に首からかけていた銀のリングのネックレスを取り外した。

「母さん、これって大切な物じゃないの〜?」

家にいる時も、出かける時も、肌身離さず着けていたから………。

「……そう。これは私の宝物よ………。実は、このネックレスには対になる物があるのよ……。」
「対になるものが………、知らなかったよ…。」

何回か聞こうとしたけど、聞いてくれなかったんだ……。

「話すのを躊躇ったからね。 金色のリングのネックレスがそう………。それを私の元夫……、ウォルタの父さんが持っているわ。」
「父さんが………?」

父さんが、もう片方を………?

「そう。……だから、思ったように私事ができない私の代わりに私の元夫、[ラグラージ]の[ラムダ]を捜して……。」
「………母さん、わかったよ〜。」

……母さんの本当の気持ち、分かったよ。

本当は、父さんの事を信頼して、愛していたんだね………。

ぼくは母さんから託されたネックレスを堅く握りしめた。

………決意と共に。

「………頼んだわ……。」

母さんはぼくにしか聞こえない声で囁いた。



@ ( 2013/09/10(火) 00:39 )