泗拾七 解放されしチカラ
西暦7000年 言霊の森浅奥部 sideシルク
「ええっと、ウチらはこんな感じやよ!」
ハクが尻尾で額についた泥を拭いながら言ったわ。
ハク達、かなりの実力をもってるわね。
[アクアテール]の衝撃、[逆鱗]の威力、全力を出してないとはいえ、なかなかのものだったわ。
シリウスの[かまいたち]も良かったわね。
[影分身]も、普通は威力が分身の数に反比例するけど、彼のは普通の状態で放つのと殆ど差がなかった……。
彼も高度な技術を持っているわ。
「さすが、プラチナランクだね。 さあ、次はボク達の番だね。」
フライはそう言いながら肩をまわした。
………私も、今朝習得した[第5の技]の確認もしたいから、腕が鳴るわ!!
「うん。ぼくも[チカラ]を試したいから、ぼくは全力でいくよ〜。」
「もちろん、私もウォルタ君と同じよ! 」
私も戦意を奮い立たせたわ。
「………では、行きましょう。」
シリウスが、私達を見渡して言ったわ。
………さあ、戦闘開始よ!!
数分後 中奥部 sideウォルタ
「……よし、さっそく来たね〜。」
ぼく達が開けた場所に出ると、待ちかまえていたように[ヒトモシ]、[タネボー]、[モンメン]が姿を現した。
「相手は3体だね。タイプ的には……、ウォルタ君がいいんじゃないかな?」
「うん、ぼくもそう思ってたよ〜。[タネボー]は普段のぼくなら圧倒的に不利だけど、[第2の姿]なら……。技のイメージもできているから………。だから、ぼくにいかせて〜!」
ぼくとフライの意見が一致した。
………うん、これを試すのは初めてだけど、なんとかなるよね〜!
「うん。ウチもウォルタ君の実力が気になるよ。」
「………よし、じゃあ、いくよ〜![地震]!!」
ぼくは気持ちを戦闘に切り換えた。
ぼくは地面を踏みならすと同時に、後脚で地面を思いっきり蹴った。
……この時点で、揺れているのは元々いた場所から半径1mぐらい。
「[鬼火]!!」「「「[種マシンガン]!!」
相手も、ぼくの動きに反応して技を繰り出した。
………すごい。相手の技と動きが遅く見えるよ…………。
……これが、[真実のチカラ]……?
ぼくは全力で走って相手との距離を詰めた。
揺れが3mまで伝わった。
………相手とは7m、技とは3m。
「[水の波動]!」「「「「速い!?」」」」
ぼくは放たれた技に向けて水塊を打ちだした。
一直線に飛んでいった。
……よし、ここで!
ぼくは斜め前に跳んで、意識を集中させた。
「「「っ!」」」
ここで、相手に激しい揺れが襲いかかる。
ぼくは瞬時に光に包まれ、[ウォーグル]に姿を換えた。
この時、ぼくと相手の距離は2m。
姿が変化している最中に、ぼくの水塊が相手の技をうち消した。
ぼくは羽ばたき、虎視眈々と獲物を狙う……。
イメージ通りに技を出せば……。
ぼくは初めてだす技のイメージを鮮明にした。
相手との距離は1m………、もう目前に迫っているよ。
相手はなんとか立ちあがった。
「[翼で撃つ]!」
ぼくは滑空しながら、両翼に力を溜め始めた。
ぼくの翼が淡い光を纏始めた。
0m………、
「一発目!」
「っ!」
左翼で[タネボー]を叩きつけた。
「二発目!」
「うっ!!」
今度は右で打ちつけた。
ぼくは速度を落とさずに力いっぱい羽ばたいた。
そのまま、ぼくは高度を上げる。
…………残りは[ヒトモシ]だけ。
なら……。
元に戻って攻撃すれば………。
「[火の粉]……!」
ぼくの4m下から炎が放たれた。
……よし!
ぼくは向きを180°回転させ、再び眩い光を纏った。
すぐに変化が終了する。
「[水の波動]!」
ぼくは音波を乗せた水塊を炎に向けて放った。
炎と水の距離は1m、ぼくと水も1m……。
ぼくは重力に引かれて落下し始めた。
「もう一発!」
二発目の水塊を口元に集積………、すぐに放った。
炎が消火された。
水塊はそのまま相手に迫る。
……この姿では着地ができないから、また光を纏った。
「っっ!!!」
効果は抜群、他の2体体と同じように崩れ落ちた。
ぼくは羽ばたき、両足で着地した。
「………よし、なんとか[チカラ]をコントロール出来るようになったよ〜。」
ぼくは翼をたたんで一息ついた。
「ウォルタ君、すごいやん!」
「………目で追うのが大変でしたよ。」
「ボクと同等かもしれないね。 ……油断すると抜かれるかも………。」
「確かに、フライのスピードといい勝負所だったわよ。 ………ウォルタ君、あなたは完全に[チカラ]が馴染んだのね?」
みんながぼくを評価してくれた。
……ちょっと照れるよ〜。
「うん。だからこれからはダメージには気をつけないといけないね〜。」
[チカラ]が馴染んだってことは、[代償]も馴染んでるはずだから……。
でも、このスピードがあるから大丈夫だよね?
ぼくはひとり、堅く胸に誓った。
数分後 sideシルク
ウォルタ君、完全に[チカラ]が馴染んでいるわね。
変化にかかる時間も短くなってるし、素早さも格段に上がっていたわ。
……私はどうかまだわからないけど、少なくとも[第5の技]は馴染んでいるわ!
練習次第で、強力な技に派生することが可能だから、第一段階は突破したわ。
私はまだ[電気ショック]だけど、いつか[エレキボール]を使えるようになりたいわ!
……さあ、ここで話に戻りましょうか。
私達は順調に進み、ハク達の依頼も半分終わったわ。
そして、再び開けた場所に出て………。
「今度は5体やな。」
「………種族は[プルリル]、[デスマス]、[フシデ]、[ガーメイル]が2体ですか……。」
5体の熱烈な歓迎……、でも、[ガーメイル]2体は厄介ね……。
「……シルク、ここはボク達の出番だね?」
「えっ、ええ。そうね。じゃあ、いつも通りお願いね!」
私は相手との位置関係を確認し、フライに目で合図を送る。
「もちろんだよ!!」
フライが私を見て大きく頷いた。
私も頷く。
「……[絆]の名に賭けて……、いくわよ!![瞑想]、[サイコキネンシス]、[シャドーボール]!」
「[岩雪崩]!」
私のかけ声と同時に、フライは相手との間に大量の岩石の雨を降らせた。
その間に私は技の準備をする。
集中をいじめしながら、口元に漆黒のエネルギーを蓄積させる……。
完成すると、超能力でそれを拘束した。
その後私は超能力を維持しながら、
「「[目覚めるパワー]!!」」
フライと同じ技を出した。
フライは紺、私は暗青色。
「えっ!?2つの技を同時に!?」
岩石の雨が止む頃には、私の周りに黒、紺、黒青色のエネルギー塊が漂う。
「さあ、ここからが本番よ!!」
「[目覚めるパワー]連射!!」
私は接近しながら漆黒のエネルギーに意識を集中させる。
フライは低空飛行しながらいくつもの紺色の弾を放つ。
その数、1秒あたり4発。
この時まで、相手は岩石に阻まれて行動できなかったわ。
私は地面を蹴って跳びあがり、
「発散!!」
漆黒の弾を使って上昇気流を発生させた。
案の定、私は上空に投げ出される。
「「「「「!??」」」」」
フライの技が到達し、相手が慌ててかわす。
………これは想定内。
「悪と竜で……、化合!」
相手がフライに気を取られている間に、私は深青色の弾を2つ生成する。
〈フライ!!離れて!!〉
「OK!」
私はフライだけに念じた。
彼はすぐに上昇する。
私は彼が動き始めたのを確認すると、2つの弾を放って衝突させた。
すると、核分裂の要領で増殖をはじめた。
2、4、8、16、32………。
「………すごい数……!」
深青色の雨………、混乱作用を秘めたダメージのない小球が降りそそぐ。
「シルク、背中に乗って!!」
〈わかったわ!!〉「「「「「!!??」」」」」
私のちょうど真下にフライが移動し、私を受けとめる。
その間に、ダメージのない弾丸が相手を襲う。
5体中3体が混乱した。
[ガーメイル]が2体とも、平行感覚を失って墜落した。
「フライ、私を[プルリル]の上空に運んでくれるかしら?」
「わかったよ![超音波]!!」
フライは私の言葉を聞くとすぐに応じてくれた。
音波と共にフライは旋回する。
「ここでいいかな?」
「ええ!助かったわ!」
2秒と経たないうちに標的の真上についた。
私はフライの背中から飛び降りる。
今、私の相手の上空8m………。
「[目覚めるパワー]!」「実戦で使うのは初めてね……。私の[第5の技]………、[電気ショック]!!」
私は体内の静電気を溜め、一気に放出する。
「「「「えっ!?[電気ショック]!?」」」」
あちこちで驚きの声があがった。
私の電撃は一直線に飛び、[プルリル]に命中、崩れ落ちた。
「拡散![シャドーボール]!!」
私は留めていた弾とともに、いくつもの小球に拡散させた。
私はそれらを[デスマス]を取り囲むように操り、
「???」
「収束!!」
中心に向けて小球を凝縮させた。
「っっ!!!」〈フライ!あとは頼んだわ!!〉
「あっ、うん![銀の針]で……、[ドラゴンクロー]!」
[デスマス]は崩れ落ち、私は華麗?に着地した。
フライはポーチから[銀の針]を2つ取り出し、手元に暗青色のオーラを纏った。
「これで最後!!」
フライは急降下し、
「一体目!!」
「っ!」
左、
「二体目!!」
右、
「最後、三体目!!」
左、
瞬く間に相手を相殺した。
「ふぅー。とりあえずおわったね。」
「そうね。 私も、試せて良かったわ。 はい、フライ。」
私は一息ついてから彼に[林檎]と[オレンの実]で作ったドリンクを手渡した。
………正確には、[サイコキネンシス]でね。
「シルク、ありがとう。」
フライはそれを一気に飲みほした。