泗拾泗 明星と学者
西暦7000年 食堂 sideハク
「そういうことやから、よろしくお願いしますわね。」
ウチはあたりを見渡して挨拶したわ。
………あっ、どうも、はじめましてやね。ウチは[ハクリュー]のハク、これからよろしくね。
年は21、これでも“明星”のリーダーをしているんやよ。
パートナーは[アブソル]のシリウス、彼も21、かな?
無口で無愛想って想われがちやけど、実は凄く優しくて礼儀正しいんやよ。
年下のポケモンにも敬語を使うぐらいね。
ウチらの探検隊はプラチナランクで、結成してから2年になるかな?
……一応ウチがリーダーやけど、実力ではシリウスのほうが上なんやよ。
時々手合わせするんやけど、今のところウチは30戦中10勝。
ちなみに、ウチが使える技は、[アクアテール]、[10万ボルト]、[竜の舞]、[逆鱗]の4つ。
いつも装備しているのは[キーの鉢巻き]、[逆鱗]をすると混乱状態になるから欠かせないんよ。
そして、シリウスの技は[かまいたち]、[悪の波動]、[影分身]、[捨て身タックル]の4つ。
彼は[影分身]の使い方が凄く上手くて、反動を受ける[捨て身タックル]をノーダメージで使えるんよ!
……それに、ここだけの話やけど、シリウスは過去のポケモンらしいんやよ。
確か……3180年の出身って言っとったかな?
どうやって来たのかは言ってくれないけど……。
何か辛い事があったのかもしれんね……。
………ウチらの事についてはこのくらいにして、話に戻ったほうがいいね。
「“明星”……、あっし、知っているでゲス!有名な探検隊でゲスよ。」
ウチが頭をあげると、[ビッパ]の彼が声をあげた。
「ブラウンさん、わたしも知ってるよ!去年、お尋ね者を捕まえた数が全部の探検隊で一番多い探検隊でしょ?それに、一日で5人も捕まえたっていう噂も聞いたことがあるよ!」
[アチャモ]の彼女が目を輝かせて言った。
……そう、ウチらは去年そんな大記録を達成したのよ。
お陰で、去年はブロンズランクからプラチナランクに上がったんよ。
ウチらが強くなった秘訣はこれなんやよ。
「ベリーちゃん、本当!?2人とも、かなりの実力者なんだね。」
[フライゴン]の彼が、[アチャモ]、ベリーさんのほうを見て言った。
「うん!フライ、ひょっとするとシルクとフライと同じくらいの実力かもしれないね〜。」
[ミズゴロウ]の彼が、フライとよばれた[フライゴン]に笑顔で言った。
「そうね。一度手合わせしてみたいわね。」
シルクさんが彼に答えた。
話からすると、彼女達も実力があるみたいやね。
「…………その時は、よろしくお願いします……。」
沈黙を破って、シリウスが口を開いた。
そういえば、シリウスのほうから話しかけるって珍しいわね……。
殆ど自分からは話しかけないのに……。
ウチ以外では初めてね…。
「こちらこそ、お願いします。」
「うん。よろしくね!」
ウチらは互いに握手を………、ウチは尻尾で、シルクさんとシリウスは前脚で………交わした。
楽しみやね!
………
部屋 sideシルク
ハクさん、私はあなたと強い[絆]の橋を架けれそうだわ!
さっき、フライもウォルタ君も、2人と話していたしね!
………そして、私達は食事を終えて、今は3人でハクさん達の部屋にお邪魔しているわ。
食堂だけでは話が終わらなかったから、その続きをね!
「………えっ!?シルクさん達って、ウチらより年下やったんやね!?」
ハクさんは素っ頓狂な声をあげた。
もうこの反応には慣れたわ。
「うん。ぼくは13でシルクは19、フライは16なんだよ〜。」
「………もう成人しているかと思いましたよ……。フライさん、最終進化だからてっきり24、5かと……。」
控えめだけど、シリウスさんも驚きの声をあげたわ。
……聞いたところによると、2人とも21らしいわね。
「ボクとシルクはかつて仲間と共に各地を旅して巡ったからね。…シルクに至っては8歳の時には既に進化していたみたいなんですよ。」
「確かに、私はそのくらいに進化したわ。」
進化したのは、確か私のトレーナーがまだスクールに通っていた時……。
当時、進化できて本当に嬉しかったわ。
「2人とも、一般常識では、有り得ない時期に……、一回しか進化しない種族は早くても20歳、2回進化する種族はフライさんの年だと1回進化したばかりなのに………。最終進化系の種族になるためには若くても25歳にならないと出来ないのに………。有り得ないやん……。」
ハクさん、多分疑問の渦に捕らわれているわね……。
…………この時代は、年も進化の条件になるのね……。
………もしかして、私達が[過去]のポケモンだって事がバレるかもしれない……。
「…………シルクさん、それにフライさん、もしかしてあなた達は自分と同じ、[過去]のポケモンですか?」
「「えっ!?今何て言った!?」」「「!!?」」
ハクさんとウォルタ君、私とフライ………えっ!?もしかして、バレた!?
「………進化の性質からすると5180年、[終焉の戦]以前のはずです。………あってますよね………?」
シリウスさんから思いがけない言葉……。
…………もう言うしかないわね……。
「フライ、ばれたから、話しましょ。」
「うん、そうだね。」
私は、フライと頷きあい、意を決して口を開いた。
「確かに、シリウスさんの言うとおり、私とフライは[過去]、5000年前のポケモンなの。」
「………まさか………。」「………やっぱり、そうでしたか……。」
ハクさんは驚きで開いた口が塞がらない。
「……でも、どうして2人が[過去]のポケモンってわかったの〜?」
そういえば、どうしてかしら?
ウォルタ君が2人に聞いた。
「……実は、自分も[過去]……、3180年の出身です。」
「「「えっ!?シリウスさんも!?」」………もしかして、シリウスさんも[セレビィ]のシードさんに会っていたりして………」
えっ!?
まさか私達以外にも[過去]のポケモンがいたなんて……。
「……はい。一度会ってます。何故かは言えませんが……。」
「シリウス、伝説のポケモンに会ったことがあるんやね?初めて聞いたよ……。」
ハクさんが、やや暗めの声で言ったわ。
「………私達以外に誰かを導いていたのね。」
「………そうみたいです。 本人に聞いたのですが、自分以外にも[ラツェル]と言う[人間]の少年を導いたことがあるらしいです。」
「[人間]を、ですか?」
[ラツェル]………そういう名前の人は聞いたことがないわね……。
「……はい。それだけしか聞いていませんが……。」
シリウスさんが申し訳なさそうに言った。
「………これが自分の……、ハクにしか打ち明けていない秘密です……。」
シリウスさんが、ここで話を締めくくったわ。
「………へぇ〜……。シルク?いっそのことぼく達の秘密も明かす〜?」
ウォルタ君が、私のほうを見て言った。
「えっ?もしかして、シルクさん達にも秘密が………。」
「…ええ、そうよ。2人とも、[英雄伝説]は知っているわよね?」
私は2人に問いかける。
「はい。ウチは小さいときにおとぎ話として聞いてるよ。」
「自分も知ってます。確か、話が大まかに2つ、ありますよね?」
「そうです。 ……それはおとぎ話ではなくて、実話です。」
フライが言った。
「えっ!?実話やったの!?」
ハクさんが声を荒げた。
「そうよ。………私の正体……、それは18代目の[絆の従者]なのよ…。」
「そして、ぼくはこの時代の……、17代目の[真実の英雄]なんだよ〜。……ぼくはまだ任命されて1日しか経ってないけどね〜。」
私とウォルタ君は、とうとう自分達の正体を明かした。
……………2人とも、目が点になってるわね……。