泗拾参 明星
西暦7000年 海岸 sideシルク
第5の技……、まだ馴染んでないから難しいわね。
あれから5回くらい試したけど、まだ1回しか成功してないわ。
……やっぱり、2日以上経たないと馴染まないのね。
「そういえばシルクさん?[エーフィー]は電気タイプの技を使えないと思うんですけど、どうしてシルクさんは使えるんですか?」
私が一息ついていると、ブルー君が不思議そうにきいたわ。
「……最近気づいたばかりだけど、実は私、ちょっとした特異体質なのよ。まだ完全にコントロール出来ないけど、使えるみたいなのよ。」
[従者のチカラ]の事は言えないから、とりあえずこうしておこうかしら?
[チカラ]はいわゆる特殊能力みたいなものだから、これでいいわよね?
うん、そうしておきましょ!
「特異体質、ですか?」
「ええ。私の場合、普通では使えないタイプの技を少しだけ使えるのよ。………そのかわりに、私には出来ない事もあるけどね。」
私は、道具では回復出来ないから、 注意が必要…、捨て身の攻撃が出来ないわ。
「…………いろいろ大変なんですね。」
「………そうなるわね。………………?」
ブルー君は納得したように答えた。
私は、続きを話そうとしたけど………ん?
波の音が乱れてる……。
私は音を乱れを察知するため、目を閉じ、耳に意識を集中させた。
……………、何者かが水中からここに近づいているわね……。
水の中だから、位置は分からないけど、おそらく1匹。
私はここで目を開けた。
「……シルクさん、どうかしたの?」
私の様子を不審におもって、シズクちゃんが不思議そうに聞いた。
「水の中から何者かがここに近づいているわ。…………2人共、危ないから海から離れて!」
私は声が掠れないように注意しながら、やや強めに警告した。
「えっ?はい。シズク、シルクさんの言うとおり、離れよう。」
ブルー君がシズクちゃんを安全な場所に誘導する。
……これで2人は大丈夫ね。
2人の様子を確認すると、私は再び水面に目を向ける。
………ここから大体10mぐらいの所に細長い影……、やっぱりポケモンだったわね。
………5m、
「[瞑想]!」
私は襲撃に備えて精神を研ぎ澄ます。
………3m、
影が水面ギリギリに迫る。
…………2メー…………
ザバッ、
……トル、
水しぶきをあげて細長い影が水面から姿を現した。
「ふぅー、やっと着いたー!」
全体的に青と白で、四肢がなくてスラッとした体型……。
このポケモンは………、
「[ハクリュー]……?」
私はそのポケモンの種族を口にした。
「日の傾きからすると………、うん、予定通りやな。」
私より高い声で[ハクリュー]は青空に輝く太陽を見て言ったわ。
声からすると………彼女は一体……。
私達、3人は目が点となった。
「……あっ、驚かしてごめんなさいね。早速で悪いんやけど、ここって[トレジャータウン]であってますよね?」
ハクリューが太陽に負けないぐらいの笑顔で私達に聞いた。
「えっ、ええ、あってますけど、あなたは?」
私は彼女に質問を返した。
「ウチは[ハクリュー]のハク、探検隊“明星”のリーダーを務めているわ。………あなたのほうは?」
探検隊なのね。
リーダーということは、他にもメンバーがいるのね?
「私は見ての通り[エーフィー]のシルク、考古学者よ。よろしくお願いしますわね。」
私は右前脚をつきだした。
「よろしくお願いしますね。」
彼女は尻尾で応じたわ。
ハクさん、よろしくお願いしますわね!
「ところでシルクさん?ウチは[プクリンのギルド]に行きたいんやけど、場所わかりますか?」
「[ギルド]なら、そこの道を道なりに進んだ先にある丘の上よ。行けばわかると思うわ。」
ギルドは特徴的な建物だから、すぐにわかるわね。
…………正直センスを疑うけど……。
「ありがとー、助かりました。じゃあ、ウチは仲間と合流する予定やからこの辺で行きますわね。」
ハクさんはぺこりと頭を下げた。
「どういたしまして。」
私は笑顔で答えた。
ハクさんは、彼女の仲間と合流するために海岸をあとにした。
………
数十分後 海岸 sideフライ
「シロ、この辺でいいかな〜?」
「この海岸だな?」
ボク達は雑談で盛り上がりながら、空の旅を楽しんだ。
今までに見た景色とか、街とか………。
やっぱり、シロさんとは話があうよ!
「うん!シロさん、海岸だけど大丈夫ですか?わたしと同じで炎タイプでしょ?」
ベリーちゃんが心配そうに聞いた。
「心配無用だ。拙者の身体は丈夫な故、少し濡れたぐらいでは何の影響もないんだ。さあ、着陸するぞ。」
シロさんはそう言うと、そのまま高度を下げ、地に脚をつけた。
ボクもシロさんに続く。
シロさんは背を低くして、4人を下ろした。
「シロさん、今日は助けてくれてありがとうございます。助けがなかったら、僕達は全滅していたと思います。」
ラテ君が見上げて言った。
たぶん、ボク達では間に合わなかったかもしれないね……。
きっとウォルタ君が事前に知らせてくれていたのかな?[真実のチカラ]で……。
「礼を言われるほどではない。拙者は偶然近くにいただけだからな。だけど、その気持ちは素直に受けとっておくとするか。」
シロさんは口元を緩めて言った。
やっぱりシロさん、威厳があるよ……。
同じドラゴンタイプとして憧れるよ……。
「では、ウォルタ殿達と話ができた事だし、拙者はこの辺で失礼するか。」
それだけ言うと、シロさんはボク達一人一人と目線をあわせてから飛びたった。
風圧で砂が舞い上がる。
砂埃が晴れた頃には、もうシロさんの姿はそこにはなかった。
「………さあ、僕達はブルー君達に[水のフロート]を届けよっか。」
「うん、そうだね〜。」
「少し遅くなったけど、無事に見つかってよかったね。」
ボク達は頷き、海岸から交差点のほうに向かった。
………
ギルドB1F sideラテ
「ブルー君、シズクちゃん、おまたせ!」
階段を降りると、ベリーが真っ先に2人……いや、シルクを含めて3人のもとにかけていった。
「あっ、ラテ君にベリーさん、それに皆さんも、今日は本当にありがとうございます!」「その様子だと、見つかったのね。」
ブルー君はラテ君から[水のフロート]を受けとると、涙を流して喜んだ。
…………本当に大切な物だったんだね?
「うん。ボク達では間に合わなかったけど、シロさんが助けてくれてね。」
「えっ?シロさんが!?」
シルクは驚いて声が掠れた。
「シルクさん、大丈夫ですか?」
ブルー君が心配そうにシルクの顔を覗き込む。
「ええ、ちょっと掠れただけだから、平気よ。」
シルクは喉の痛みで顔を歪めながらも、何とか笑顔で答えた。
本人は大丈夫って言ってるけど、本当に痛そう……。
「よかった。」
ブルー君はシルクの言葉を聞いてホッと肩をなで下ろした。
………
食堂 sideシルク
「……えー、今日は嬉しいお知らせが1つある♪」
いつもの連絡で、1日の締めくくりの夕食が始まったわ。
どんな知らせなのかしら?
「いい知らせって、何なの〜?」
フラットさんの言葉を聞いて、ウォルタ君が聞いた。
「今日から、一組の探検隊の方に助っ人として加わってもらうことになった♪お二人共、こちらにどうぞ♪」
フラットさんが入り口の方に向かって声をあげた。
一体誰なのかしら?
入り口から二つの影……。
1つ目は……、
「えっ!?ハクさん!?」「シルクさん、なぜここに!?」
[ハクリュー]のハクさ……えっ!?
もしかして、助っ人って、ハクさん達なの!?
私は思わず立ちあがった。
「あれ?シルク?知り合い?」「お二人共、知り合い何ですか♪」
フライとフラットさんがほぼ同時に声をあげた。
「ええ。フライ達が帰ってくる少し前に、ここの場所を聞かれたのよ。」
「シルクさんにはお世話になったのよ。にしても、こんなことろで再会出来るなんて思わんかったわー。 あっ、ウチは[ハクリュー]のハク、チーム“明星”のリーダーを務めているわ。」
ハクさんは凄く明るい声で自己紹介したわ。
元の時代に、似たような感じの親友がいるわ。
………どこか重なるところがあるわね……。
「…………自分は、[アブソル]のシリウス、よろしくお願いします……。」
ハクさんとは対称的に、[アブソル]の彼………シリウスさんは控えめに挨拶。
さっきからあまり喋ってないから、控えめな性格なのね?
ハクさんはこの人と合流する予定だってたのね?
「そういうことやから、よろしくお願いしますね!」
ハクさんが代表…………と言っても2人だけど…………して挨拶したわ。
こちらこそ、よろしくお願いしますわね。