泗拾壱 VS雷撃一族
西暦7000年 エレキ平原中間地点 sideウォルタ
「………うん、この辺なら休めそうだね。」
「そうだね。でも、早くしないと雨が降り始めるからあまり長くはいられないね。…………雷も鳴ってきたし……。」
ラテ君、ベリーの順番に、空を見、あたりを見渡していった。
確かにね。ラテ君は影響はないけど、ベリーは雨、ぼくは雷に弱いから、のんびりしてられないよ。
………おまけに、ありったけ持ってきた[爆裂の種]も残り5つ、[鉄の棘]は10本………。
ちょっと使いすぎたかな?
これがなくなったら攻撃手段が無くなるから、節約しないといけないね……。
技を使わない[通常攻撃]もあるけど、返り討ちに遭うリスクもあるし……。
「………2人とも、もう行ける〜?」
ぼくは早々と2人に聞いた。
シロとも待ち合わせしているし、待たせる訳にはいかないからね。
「わたしは大丈夫だよ!ラテは?」
ベリーはラテ君のほうを向いた。
「体力も回復できたから、僕もいいよ。ウォルタ君は?」
ラテ君は笑って聞いた。
「ぼくは技を使ってないし、ダメージを受けてないから、何時でも行けるよ。
……じゃあ、行こっか〜。」
ぼくも笑顔で答えた。
「「うん!」」
2人は声を揃えて、歩きはじめた。
あと少し、頑張ろう!
…………そういえば、中間地点に着く少し前ぐらいから、相手の動きがだんだん遅くなってきたような……………。
………気のせいだよね?
………
奥地 sideラテ
「[守る]!」
「[炎の渦]! ウォルタ、そっちにいったよ!」
「うん!わかったよ〜!」
僕が前にたって緑色のシールドを張り、その後ろからベリーが相手を拘束する。
これはいつもの戦法。
ベリーとの連携も完璧だよ。
ウォルタ君は、[ルクシオ]の追撃をかわして[惑わしの種]を投げた。
「[シャドーボール]!」「[火炎放射]!」
僕は炎の壁に漆黒の弾を放ち、ベリーはウォルタ君に攻撃を仕掛けた相手に奇襲攻撃をした。
「「っ!!」」
僕達の技は命中、二カ所で崩れる音がした。
……よし、倒したね。
「ふぅー。とりあえず、一段落だね〜。」
ウォルタ君が額の汗を拭いながらいった。
「うん。 そういえばウォルタ?素速さが上がってたけど、[駿足の種]でも食べた?」
ベリーが[PPマックス]を飲み干しながら言った。
言われてみれば、そうかもしれないね。
命中したかと思った[10万ボルト]を紙一重でかわしていたし、さっきだって追撃を簡単に避けていたから。
「ううん、ぼくは何も食べてないよ? ………きっと、前からの練習で素速さが強化されたからじゃないかな〜?」
ウォルタ君は、少し考えて、一度頷いてから答えた。
「この1ヶ月間、ウォルタが先陣をきっていたからね。きっとそうだよ。」
ベリーも頷いて言った。
「きっとそうだね。」
うん、絶対にそうだよ!
僕達は、あと少しと思われる目的地を目指してまた歩きはじめた。
………
最奥部 sideウォルタ
「ここが一番奥かな?」
「たぶんそうだね。」
あれから2、3回闘ったよ。
ぼくは極力道具の消費を抑えたけど、それぞれ1個ずつを残して全部使っちゃったよ。
でも、もう一番奥に着いたし、何とかなったね。
…………ん?
「………あれって、もしかして[水のフロート]じゃないかな〜?」
少し離れた所に、何か光る物が………。
「うん!絶対にそうだよ!ラテ、ウォルタ、早く拾って届けよ!」
ベリーが太陽のような笑顔で目的のものめがけて走った。
その時、
ピカッ!
「「「うわっ!!」」」
突然の雷鳴。
な………
「誰だ!ここに何をしに来た!!」……に!?今の!?
それに、この声は一体どこから!?
[テレパシー]じゃ無さそうだし………。
「何をしにって、ただ僕達は落とし物を………」
「問答無用だ!立ち入ったからにはくたばってもらうぞ!!」
ラテ君の言葉を遮って声が割り込んで、一匹の[ライボルト]が姿を現した。
「ちょ、ちょっと待って!!わたし達は………」「全員でかかれ!!」
「やられる前に殺る、」
「それが俺達の」
「モットーだ!!」
刹那、たくさんの[ラクライ]が……………えっ!?ヤバくない!?
「ベリー、ウォルタ君、これは戦うしか無さそうだよ!!」
「そうみたいだね!」
「でも、完全にぼく達が不利じゃない〜!?」
ぼく達は背中あわせになった。
今の状況は完全に四面楚歌……、おまけにぼくには殆ど攻撃手段が残ってない。
…………一体どうすれば………。
「「「「「[放電]!!」」」」」
四方から高電圧の電撃が放たれた。
っ! 逃げ場がない!!
「[守る]!!」「[炎の渦]!」
電撃が到達する前に、ラテ君がぼく達の周りにシールドを張り、ベリーがその外側に炎の壁を張り巡らせた。
「ウォルタ君、今のうちに地震をお願い!!」
ラテ君が大声でいった。
緑のシールドに少し亀裂が入った。
「ごめん!ずっと黙ってたけど、今日は訳があって技が出せないんだ!」
「えっ!?技が出せないってどういう事!?」
「今は話せないよ……。」「ベリー!ウォルタ君、もう保たないよ!!」
ぼく達が言い争っている間にも、亀裂が徐々に広がる。
破られるのも時間の問題………。
まさに絶体絶命………。
……………もっと道具を用意しておけば良かった………。
ぼくの脳内に後悔の言葉がよぎった。
ラテ君、ベリー、………本当にごめん………。
………
同刻 エレキ平原最奥部上空 sideシロ
「……やっぱり、旅はいいものだな。」
拙者は1人、風を切りながら呟いた。
………?そうだ。
読者の方々、お初にご挨拶し申し候。
拙者は[真実の使者]、[レシラム]のシロと申す。
以後、宜しくお願いし申し候。
堅苦しい事は嫌いな故、普段の話し方に戻させてもらおう。
拙者はウォルタ殿と合流するため、[エレキ平原]の最奥部に向かっている。
常に雷が鳴っていて、若干乾燥した地域として有名だな。
………雷といえば、クロを思い出すな。
確か、前に会ったのは[終焉の戦]の時だから………、2000年前になるな。
彼はこの時代では覚醒しているのだろうか…。
今度あそこに………
「「「「「[放電]!」」」」」
…行ってみて……?
地上から、幾つもの声がこだました。
……地上?
拙者は眼下を見下ろした。
「[守る]!!」「[炎の渦]!」
拙者が確認すると、何体もの[ラクライ]が3匹を取り囲んで電撃を放った。
「中の三体は………[イーブイ]に、[アチャモ]、それに[ミズゴロウ]………。………!?[ミズゴロウ]!?もしかすると、ウォルタ殿!?」
ここが待ち合わせ場所だから、確実………。
このままではウォルタ殿とあの2人が危ない!!
…………久しぶりに技を使うな……。
「[クロスフレイム]!!」
拙者は超高温の炎を口元に溜め、取り囲む標的に向けて拡散させた。
戦場に炎の雨が降り注ぐ。
「「「「「「!!?」」」」」「えっ!?今度は何!?」
「「「「っ!!」」」」「炎!?しかもわたしのとは比べものにならないぐらい強い!?」
「一体誰が〜!?」「1000年ぶりの技だ………。流石に威力が落ちるな……。
拙者は純白な翼を羽ばたかせ、大地に降りたった。
「ウォルタ殿、無事かな?」
「シロ!助かったよ〜!」「うわっ!凄く大きい!それに、威圧感が尋常じゃない!?」
「お仲間の方々も大丈夫そうだな?」「炎タイプの………ポケモン……、なの?種族………わからないよ……。」
ウォルタ殿の仲間の方々が、呆然と立ち尽くしている。
突然の登場だったから、驚かせたかもしれないな。
「うん!シロのおかげで無傷で済んだよ〜!」
ウォルタ殿が見上げて言った。
「………ウォルタ君?この人の事……、知ってるの?」
イーブイがウォルタ殿に、ゆっくりときいた。
「うん。昨日知りあったばかりだけどね。」
「申し遅れたが、拙者は[レシラム]のシロ、以後宜しく頼む。」
「えっ!?[レシラム]って、もしかして………[英雄伝説]のドラゴンポケモン!?」
アチャモが驚いて声を張り上げた。
「うん。ベリー、あってるよ〜。」
「でも、どうしてウォルタ君が伝説のポケモンと知り合いなの!?」
今度はイーブイがウォルタ殿に質問。
「ちょっと訳があってね。時が来たら話すよ〜。」
《シロ、今はぼく達の関係を黙っておいて。まだ話してないから〜。》
ウォルタ殿が話し終えるとすぐに、拙者の脳内に声が響いた。
………完全にコツを掴んだようだな。
〈御意〉
拙者は[真実のチカラ]でウォルタ殿に伝えた。
今は伏せておくのだな?
了解した。