泗拾 技無き猛攻
西暦7000年 エレキ平原 sideウォルタ
「ここが、[エレキ平原]かな?」
ぼく達はブルー君に頼まれて[エレキ平原]に来たんだけど………、
「そうかもしれないね。…………でも、雨が降り始めそうだよ…。わたしは、雨はちょっとね…」
空は雨雲でまっ黒。たぶん雷雨になるね。
ぼくは雨は好きだけど、ベリーは炎タイプだからね……。
「うん。(ベリーのためにも)早めに行こっか〜!」
「そうだね。僕も、毛が濡れると乾くのに時間がかかるから、急いだ方がいいね。」
ラテ君の毛は長いからね。
たぶんぼくも、[ウォーグル]の姿だと同じかもしれないね。
ぼく達は足早にダンジョンへと足を踏み入れた。
数分後
「えっ!?ここのダンジョンって電気タイプが中心だったの〜!?」
ぼく達は入ってから2体に遭遇したんだけど……
「そうかもしれないよね。さっきから[コリンク]とか[ラクライ]しか見かけないもんね。」
ベリーが、相手に睨みを利かせながら言った。
「そのようだね。[神秘の守り]!」
ラテ君が技を発動させると、ぼく達は薄い光に包まれた。
これなら、麻痺状態になることはないね。
「「[電気ショック]!」」
「ラテ、ウォルタ、きたよ![炎の渦]!」
相手は、ぼくにとっては脅威となる電撃を放った。
………絶対にくらいたくないね。
ベリーは、ぼく達の前にたって炎の塊を打ち出した。
すぐに相手を取り囲んで、行動範囲を狭めた。
ベリー、強くなったね。
「[シャドーボール]!」
「ぼくは[爆裂の種]で……。」
燃え盛る炎にラテ君は漆黒の弾を放った。
ぼくは鞄から種を取り出して、そこに向けて投げた。
弧を描いて、炎の中に入っていった。
すると、炎の熱と衝撃で、赤の壁の中で爆発した。
これはフライから教わった戦法。
いつもは種だけだけどね。
「うわっ、凄い威力。」
「ぼくもあんなに強い爆発は初めてみたよ〜。なにしろ、炎に投げ入れるのは初めてだからね〜。」
「たぶん、炎で威力と増したと思うよ。」
きっとそうだね。
ラテ君は一息ついて呟いた。
「かもしれないね〜。」
「うん。バトル一発目は上手くいったし、先に進もっか?」
ベリーはぼく達のほうに振りかえって言った。
「「うん!」」
ぼく達は頷きあった。
今のは準備運動だね。
ベリーのかけ声と共に、ぼく達は奥地を目指して歩みを進めた。
…………技が使えなくても何とかなりそうだね。
………
中奥部 sideウォルタ
「[火炎放射]!」「[シャドーボール]!」
2、3回ぐらい[モンスターハウス]に入っちゃったけど、ぼく達は今のところ無傷。
ベリーは燃え盛る火炎を放ち、ラテ君は漆黒の弾を2発、火炎に向けて発射した。
「シルク達みたいにいくかなー?」
「さっきのは今までで一番、タイミングが合ってたとおもうよ〜!」
技を出し終えたラテ君が期待を込めて赤と黒のエネルギー塊を見つめた。
実は、2人はシルクの合成技の練習を前からしていたんだよ。
シルクが言うには、タイミングさえ合えば誰でも出来るらしいんだよ。
…………一秒、1cmでもずれると失敗するみたいだけどね……。
やっぱり、高度な技なんだね。
話に戻ると、二色のエネルギーは相手との丁度中間点で重なった。
「あっ!上手くいきそうじゃない!?」
ベリーが弾んだ声で言った。
「うん!僕もさっきのは手応えがあったよ!」
ラテ君も、技の結果を見守った。
二色のエネルギーは、重なってから混ざり…………
…………あわなかった。
[シャドーボール]は、完全には炎に収まりきらず、何事もなかったように両者は相手に命中した。
「………やっぱり難しいね。」
「でもベリー、タイミングは合ってきたからあと少しだよ!」
ラテ君は、失敗して気を落としているベリーを励ました。
「そうだよ〜。練習さえすれば何とかなるよ!だから、頑張ろ!」
ぼくも、ベリーに優しく声をかける。
タイミングが合ってきたから、もうすぐ出来るようになるよ!
「うん、そうだね!」
ぼく達の言葉で、沈んでいたベリーは再起動。
いつもの笑顔が戻った。
「気を取り直して、次いこっか。」
「うん。」
ラテ君、ベリー、頑張ろう!
数分後
《ウォルタ殿、聞こえるかな?》
「ん!?」
群がっていた相手を倒して一息ついていると、ぼくの頭に声が響いた。
………この声って………シロ?
《突然ですまないな。[真実のチカラ]を利用して話しかけている。 ウォルタ殿も、話したい事を念じれば話せるはずだ。》
[チカラ]で……?
あっ、そういえば前にシルクが言ってたっけ?
これが、[繋がり]なのかな?
念じればいいって言ってたけど………、
〈……こう、かな?〉
これで、出来るのかな?
《ああ、それで出来ているぞ。ウォルタ殿、筋がいいですな。》
〈本当に〜?〉「あれ?ウォルタ君?」
《簡単だろ?ウォルタ殿、拙者は貴方と合流したいのだが、どこにいますのかな?》「ぼーっとしてどうしたの?」
合流ね……。
うん。直接会って話がしたいし、ちょうどいいね!
《[エレキ平原]だよ〜。》「ウォルタ?聞いてる?」
「えっ!?」
ぼくは突然、肩をたたかれてとびあがった。
…………ビックリした〜。
「ぼーっとしてたけど、どうしたの?」《[エレキ平原]か。なら、その奥地で合流しようか。》
ベリーが不思議そうに聞いた。
「ごめん、ちょっと考え事をしてて……。」
〈奥地だね?うん、わかったよ〜。じゃあ、そこで会お!〉
《御意》
奥地だね?わかったよ〜。
「なら、安心したよ。でも、今日のウォルタ、何か変だよ?技、一回も使ってないし……。」
ベリーがぼくに聞いた。
いたいところを突くね……。
「そういえば、そうだね。どうしたの?」
話そうか……、でも、…………。
「たまには、道具を使った戦法も試してみようと思ってね。」
まだ完全に[チカラ]は馴染んでないから、言うわけにはいかないね……。
素早さが上がるはずだけど、まだその様子はないし……。
「だから、次はなにを試そうか考えていたんだよ〜。」
ぼくは笑顔をつくって答えた。
…………嘘をつくのは心苦しいけど、仕方がないよ………。
「へぇー、そうだったんだね?」
ベリーが目を輝かせて言った。
…………。
「技を使えなくなった時の対策だね?」
ラテ君が期待を込めて言う。
「えっ、ああ、うん、そうだよ〜。」
とりあえず、そういう口述にしておこうか……。
「うん。ウォルタ君も大丈夫そうだし、行こっか。」
ラテ君は、気を奮い立たして言った。