参拾九 届いた脅迫状
西暦7000年 トレジャータウン sideフライ
「そうですか。シルクさん達は伝説の調査をしているんですね。」
「ええ。 今のところ、何も成果がないけどね。私達、一昨日まで怪我で外出できなかったから滞っていたのよね。」
シルクが後半部分をボソッと呟いた。
ボクも動けなかったし……。
「シルクは喉を火傷、フライは全身打撲で完治するのに1ヶ月もかかったからね。 でも、無事に治って良かったよ。」
ラテ君が改めて肩をなで下ろした。
「そんな重傷を…………」
……負ったのですね……。
シャドウさんが言おうとした時、
「シズク、はやくいくよ!」
「お兄ちゃん、待ってー!」
ブルー君とシズクちゃんが通りかかった。
急いでるみたいだけど、何かあったのかな?
「あっ、ブルーくんにシズクちゃん、どうしたの?」
「ベリーさんにラテさん、それにシルクさんにフライさんもお久しぶりです!」
ベリーちゃんが話しかけると、2人は息を切らして立ち止まった。
本当に久しぶりだね!
「久しぶりね。 それにしても、そんなに急いでどうかしたのかしら?」
シルクは2人に優しく話しかけた。
「前に話した[水のフロート]を見たっていう人がいたんです!」
ブルー君がぱっと明るい声で言った。
見つかってよかったね。
ボク達がこの時代に来たぐらいから探していたみたいだから、もう2ヶ月ぐらいになるかな?
……………どんなものかは知らないけど………。
「本当に? みつかって良かったね。」
「[水のフロート]?それは何なんですか?」
話していると、シスさんが口を挟んだ。
「商店経営している私達でも聞いたことがないですよー。」
今度はトランスさん。
2人でも知らない物ってあるんだね?
「えー、確か[マリル]と[ルリリ]専用の道具で、人々と何度も交換しないと手には入らない貴重な道具です。」
シャドウさんが淡々と説明した。
へぇー、珍しいんだー。
「シャドウさんは物知りなのね。」
「そんなに貴重なら、私達の店に入荷する事は殆どないですね。」
シスさんが笑いながら言った。
「入荷…………?あっ、そうだった!!ラテ、報告に行かないと!!」
「「「!??」」」
突然ベリーちゃんが声を張り上げ、ボク、シルク、ウォルタ君は飛びあがるほど驚いた。
………ベリーちゃん、ほんとにビックリしたよ……。
たぶん、[驚かす]に匹敵したと思うよ?
「僕もうっかりしていたよ! じゃあ、僕達はこの辺で失礼します!」
「あっ、うん!」
ラテ君は頭をぺこりと下げると、ギルドの方へかけていった。
「ベリー達、慌ててたけど、何かあったのかな〜?」
ウォルタ君は首を傾げた。
「トランスさん、何かあったんですか?」
ボクはトランスさんに質問をぶつけた。
「ラテ君達、[セカイイチ]がうちで入荷するか聞きに来たんですよー。」
「[セカイイチ]…………、ああー!ラックさんが大好きな林檎みたいな果物の事ね?」
少し考えて、シルクは閃いたように声をあげた。
ラックさんの好物だね?
「きっとフラットさんに、聞いてくるように頼まれたんだろうね。」
たぶんそうだね。
「[セカイイチ]も高価な木の実ですよ。」
「そうなんですね。 僕達もそろそろ行きますね。」
ブルー君も一礼して、この場をあとにした。
「……ブルー君、ラテ君と同じで礼儀正しいわね。」
「うん。ブルー君は妹ができてから、急にしっかりしたんだよ〜。ブルー君とも昔からの知り合いだからね〜。お互いによく知ってるよ〜。」
へぇー、そうだったんだー。
「……あっ、忘れるところだったわ。シスさん、トランスさん、いつものやつ、お願いしますわね!」
「そうだったね。すっかり忘れてたよ〜。ぼくもお願いね。」
「シルク達は買い物に来てたんだね?じゃあボクも買おうかな?」
シルク達、本来の目的を忘れかけていたんだね?
「「はい!毎度ありー!」」
2人が威勢良く返事した。
ボク達は、いつもの金額を払った。
「買い物も済んだし、私達も行きましょ。」
「そうだね〜。」
「では、私も失礼しますか。」
ボク達はギルドのほうに歩いていって、雑談会は幕を閉じた。
………
交差点 sideラテ
「ベリー、やっぱりダメだったね。」
僕達はフラットに報告を終えて、後回しにした買い物をするために坂道を駆け降りた。
毎日上り下りしているから、流石にもう慣れたよ。
「うん。でも、あんなにぼそぼそ言わなくてもいいよね?」
「確かにね。失敗したのは事実だけど、引きずられるのもね……。」
気分はいいものじゃないよ……。
僕達はさっきのことの愚痴をこぼした。
「嫌だよねー。……あれ?あんなところでブルー君達、どうしたんだろう?」
交差点の真ん中で、ブルー君達がたちつくしていた。
見つけた人と待ち合わせしているのかな?
「さあー?ブルー君にシズクちゃん、見つけた人と待ち合わせしてるの?」
「あっ、ラテさんにベリーさん、丁度よかった。僕達は2人に頼みたい事があるんです。」
ブルー君は何かを取り出しながら言った。
「僕達に?」「私達に?」
「はい。 [水のフロート]を取ってきてくれますか?」
ブルー君は安心したように言った。
……あれ?見つかったんじゃないの?
「いいけど、どうして?」
ベリーが不思議そうに聞いた。
「見つかった場所が、ここから凄く遠くにあるんです。 僕は弱いから1人では行けなくて……。」
「遠くで…………」
見つかったんだー。
そう言おうとした時、
「あれ〜?ブルー君、探しに行ったんじゃなかったの〜?」
ウォルタ君とシルクが通りかかった。
「うん。」
「遠くで見つかったらしいんだよ。」
僕が簡単に説明した。
「…………で、場所はどこなのかしら?」
「[エレキ平原]です。」
「………なら、わたし達が代わりに行ってこよっか?」
ベリーが提案………、僕もそう思ったよ!
「お願いします!」
ブルー君が目を輝かせた。
喜んでくれて嬉しいよ。
「ブルー君、ぼくも手伝おっか?」
「えっ!?ウォルタ君!?」
ウォルタ君も名乗りをあげた。
直後にシルクが驚いてウォルタ君のほうに振りかえった。
「大丈夫だよ〜。奮発して道具も沢山買ったし、何とかなるよ〜!」
「でも、ウォルタ君、あなたは……」
「大丈夫だって〜!じゃあ、ラテ君、ベリー、いこ!」
ウォルタ君はシルクの言葉を遮った。
何かを言いかけてたけど……。
「う、うん。」
僕はウォルタ君に押されて、ベリーと共に交差点をあとにした。
「ちょっと、ウォルタ君!!………行っちゃった………。」
交差点には、シルクの声が虚しくこだました。
………
sideシルク
「ちょっと、ウォルタ君!!………行っちゃった………。」
ウォルタ君、あなたは私と同じで明日までは技が使えないのに………。
「あれ?シルク?ウォルタ君も一緒にいたよね?」
私の背後から低い声……フライが私に話しかけた。
…………なぜフライと一緒にいなかったのかというと、あの後、フライはシャドウさんと話していたから、私とウォルタ君だけで先に来たのよ。
「ええ。私は呼び止めたんだけど、大声が出せなくて……、たぶん届かなかったわ。」
できる限り叫んだけど、声が掠れて……。
「うん。間が殆どなかったから、これを渡しそびれて……。」
ブルー君が徐々に暗い声になりながら一枚の紙を取り出したわ。
「………それは?」
フライと話していたシャドウさんが口を開いた。
「これをラテさん達に渡すように言われたんです。」
「これは……手紙?」
「そのようね。」
でも、読めないわね……。
「何て書いてありますか?」
シャドウさんに言われて……
「ええっと……」
ブルー君が読み始めた。
「………{[水のフロート]が欲しければ[エレキ平原]に来い!無事にたどり着けたらだがな…クックックッ……。}………。」
「……………もしかして、脅迫状!?」
文面からして、絶対にそうよ!
文末からすると………。
まさか、奴ら??
アイツ等、ポケモン失格ね!!
私はいつかぶりの怒りの炎を燃や……
「[エレキ平原]!? この時期は確か…………。 !!このままではあの3人が危ない!!」
……した……。
えっ!?
「えっ!?シャドウさん、どういう事!?」
フライが慌てて聞いた。
「今の時期はとても危険なんです!難易度もゴールドランクに匹敵します!」
「ゴールド!?……確か、ラテ君達もゴールドランクだったわよね!?」
「うん!そのはずだよ!」
私は揃って声を張り上げる。
………私はそれほど出なかったけど…。
「こうしてはいられない!今から行ってきます!」
言うや否や、シャドウさんが走り出そうとした。
「待ってください!ダンジョンの名前からすると、電気タイプが中心……。だから、ボクも行きます!」
彼を呼び止めて、フライが名乗りを挙げた。
「私も行きたいところだけど………、私は無理そうだわ……。だから、フライ、頼んだわ!!」
[木の枝]だけでは十分に闘えないから…………。
………だから、私は行けないわ……。
「うん!シャドウさん、行きましょう!」
「はい。こっちです!!」
「頼んだわよ!!」
フライとシャドウさんは、三人のあとを追った。
私は火傷の後遺症で掠れない限界の大きさの声で言って、2人を見送ったわ。
電気タイプなら、ウォルタ君、危ないわね……。
ただでさえ技が使えないのに……。