参拾参 真実、覚醒
西暦7000年 誘いの坑道北 sideウォルタ
「「目覚めるパワー]、[シャドーボール]!」
「[ドラゴンクロー]!」
「[水の波動]〜!」
「「「っ!!」」」
シルクは2つの技を混ぜて、フライは青黒いオーラで相手を切り裂く。
ぼくは[水の波動]で相手を混乱させる。
相手に命中して、4体中3体が倒れた。
やっぱり、シルクとフライは凄いよ。
だって、ぼくはここでは2体に一体ぐらいしか一発で倒せないのに、シルク達は確実に倒せているんだよ!
ぼくもシルクとフライみたいに強くて賢いポケモンになりたいよ〜。
「シルク、フライ、あれいくよ〜!」
「ええ、わかったわ! 発散っ!」
シルクは留めていた黒いエネルギーで風を起こした。
うん、これで大丈夫だね。
ぼくのこの技は威力が高いけど、敵味方関係なくダメージを与えるから、あまり出来ないんだよね……。
「[地震]〜!」
ぼくが地面を踏みならすと、大きな横揺れが発生した。
「「くっ!!」」
ぼくの周りにいた相手が一斉に倒れた。
………本当は少しずつシルク達がダメージを与えていてくれてたんだけどね…。
「ええっと、とりあえずは落ち着いたかな?」
一応は、いいかな?
「そうね。 私もバトルの感覚感覚を取り戻せたし、丁度良かったわ。」
「ボクも、技の確認も出来たから満足だよ。」
2人とも、1ヶ月のブランクが全く感じられないよ。
「やっぱり2人はすごいよ。だって、鈍るというより、むしろ強くなってるしね〜!」
本当に憧れるよ〜!
ぼく達は闘いながら出口を目指した。
………
誘いの坑道北出口 sideフライ
「あっ、もしかして、あれって出口じゃない〜?」
ボク達が薄暗い洞窟を進んでいると、待ちに待った光、薄く差しこんだ光が眩しいよ。
「きっとそうね。行きましょ!」
「うん。やっと着いたよ。」
言うや否や、シルクとウォルタ君は上機嫌でかけていった。
シルクは年の割に大人びているから、ああやってはしゃいでいるところを見ると安心するよ。きっとシルクは大人だと思っている人は多いんだろうなー。
「あっ、待ってよ!」
ボクはおいてかれそうになったから、慌ててその後を追いかけた。
数分後
「うわっ、凄い景色!」
「絶景ね!」
「つい見とれてしまうよ〜。」
洞窟を抜けると、見事な光景が広がっていた。
青く澄み渡った空に白い雲のコントラスト……、
それにくわえて、木々の緑が映えているよ。
それらを背景にひときわ大きな山がそびえ立つ………。
まさに写真家がないて喜ぶ光景だよ。
「坑道を越えた先にあるって言ってたから、あの山の山頂がきっと[真実の頂]だね。」
情報屋のフラットさんが言っていたことだから、確実だね。
「ええ、きっとそうね。」
「ぼく、一度でいいからここに来てみたかったんだよね〜!」
「早く行きたいところだけど、ボク達は病み上がりだから、そろそろ休憩をとろっか?」
ボクは絶景に見とれている2人にこう提案、……なにしろ、ボク達にとってはは1ヶ月ぶりの旅だからね。
「シルクの喉も心配だし……。」
シルクはまだ完全には治ってないから……。
「…………、わかったわ。フライの気遣いを無視するわけにはいかないわね。 なら、そうするわ!」
シルクはボクを見てにっこり微笑む。
シルクはよく無理をするから、きっと1ヶ月前も……。
「じゃあ、この辺で休もっか〜。」
うん。
ボク達は、適当な陰を見つけて小休憩をとった。
数分後 sideシルク
ここ、本当にいい景色ね。
私が長年旅してきていろんな絶景を観てきたけど、この光景は5位以内にはいる光景よ。
「改めて言うけど、本当にいい景色だね。」
フライが林檎にかじりつきながら、感嘆の声をもらしたわ。
「うん。ぼく、この景色が気に入ったよ〜。」
ウォルタ君も感想を………
「あれ?この辺では見かけない種族……。誰だろう?」
………いい……?
研ぎ澄まされた私の聴覚が、遠くの誰かの声を捉えた。
私は声がしたほうに目線をやった。
ええっと、黒い毛並みで小柄なポケモン………、あの種族は[ゾロア]ね?
「あれ?シルク?どうしたの〜?」
私の様子に気付いて、ウォルタ君は不思議そうに私に聞く。
「遠くで誰かの声がしたのよ。……あっ、ちょうどその人がこっちに来たわ。」
遠くで足音、風をきる音………、走って来てるわね。
「シルク?あの人のこと?」
フライが彼?の存在に気付いたわ。
「ええ。きっとあの子はたぶん私達と同じでまだ未成年ね。」
「こんな所で何をしているんですか?」
声からすると、彼は私達の所にたどり着いて、疑問を投げかけたわ。
「ダンジョンを抜けてきたから、少し休憩をね。」
私は笑顔で少年の問いに答えたわ。
「えっ!?ダンジョンって、[誘いの坑道]を抜けてきたの!? もしかして、あなたたちって、探検隊なの!?」
ゾロアの彼が目を輝かせて言ったわ。
でも、私達は違うのよね……。
「いいや、残念ながらボク達は学者だよ。」
「ぼくはまだ見習いだけどね〜。君は〜?」
フライ達も答えたわ。
「そうなんだ……。あっ、おいらはゾロアのルアン、年は15で、この近くの村に住んでいるんです。」
一瞬表情が曇ったけど、ゾロアの彼、ルアン君は元気よく自己紹介したわ。
「よろしくね〜。ぼくはミズゴロウのウォルタ、13歳だよ〜。」
ウォルタ君は、右前脚をだしてルアン君と握手を交わしたわ。
「ボクはフライゴンのフライ。考古学者をしているよ。 ルアン君、ボクは何歳に見える?」
簡単に紹介すると、フライは彼に問題をだした。
きっとはずれるわね…。
「身体はおおきいし、声も低いから………、22歳ぐらい?」
「いいや、ボクはもう最終進化だけど、まだ16だよ。」
「えっ!?おいらとほとんど変わらないの??」
ルアン君は驚きで声が裏がえった。
「そうよ。 私はエーフィーのシルクで、私も同じ考古学者よ。ちなみに、私の年は19よ。」
私も笑顔で答える。
「えっ!?きみも??」
「そうよ。だから、敬語は使わなくていいわよ。」
「ぼくのほうが年下だしね〜。」
そのほうが、[絆]が深まるでしょ?
「うん。なら、そうさせてもらうよ。」
私達もルアン君と握手を交わしたわ。
また1つ、[絆]の橋が架かったわ。
………
真実の頂4合目 sideシルク
ルアン君と話しているうちに、いつの間にか山を大分登ったわ。
えっ?何でこうなったのかって?
あの後、私達は[真実の頂]の神社に向かっている事を話したら、ルアン君もちょうど行くところだったらしいから、一緒に行くことになったのよ。
ルアン君のお父さん、その神社で神主をしているらしいわ。
道中で私達の出身の街の話とか、趣味とか話しながら登ってたのよ。
……もちろん、私とフライが5000年前のポケモンであることと、私が[絆の従者]であることを伏せてね。
「へぇー。一回行ってみたいなー。」
残念ながら、私とフライの故郷には来れそうにないわね………。
「ルアン君?ルアン君って夢とかあるの〜?」
ウォルタ君は、ここで話題を変えたわ。
「おいらは、とりあえず父さんの仕事を継ぐ事かな?おいら、一人っ子だし……。」
「ぼくも兄弟はいないよ。 ぼくの夢は、歴史に埋もれた[真実]をつきとめることだよ。 実は、ぼくは母子家庭で、お父さんの顔を見たことがないんだよね……。だから、いつか父さんに会うことも夢かな?」
えっ!?ウォルタ君!?
「ウォルタ君、あなたにお父さん……いなかったのね……。私と境遇が似ているわ……。」
ウォルタ君、私はあなたをほおってはおけないわ!!
「えっ!?シルク!?」
ウォルタ君が振りかえる。
「今まで言ってなかったけど、私の両親は私が幼い時に亡くなったのよ。」
私は場の空気が悪くならないように、声のトーンを上げて言った。
「でも、仲間がいたからちっとも寂しくなかったわ。」
私は笑顔で語る。
本当はしばらくの間孤独だった事を隠すために……。
「…うん、やっぱり持つべきなのは信頼できる[仲間]だよね?」
フライが空気を読んでくれたわ。
………ありがとう。
………
真実の頂5合目 sideシルク
「ここがおいらの父さんが勤めている神社だよ。」
あれからしばらくして、社らしき建物がみえてきたわ。
「あれ?頂上じゃないんだね?」
フライがルアン君に聞いた。
ここまでダンジョンも何もなかったから、私もまだまだ先だと思ったわ。
「うん。昔は頂上にあったみたいなんだけど、何百年か前に移動してきたんだよ。ここから先はダンジョンになっているから。」
………よく考えたら、そうよね。
ここは人気の観光名所って言ってたから、ダンジョン化していたら一般の人は来れないわよね。
「へぇ〜。でも、どうして今日は人が少ないの〜?」
確かに、人が疎らね。
「ちょうど今日は月に一度の閉山日なんだよ。 父さんー!来たよ!」
なるほどね。
ルアン君は社に向けて声を張り上げた。
しばらくすると……
「ルアン、お前が来るなんて珍しいな。」
ゾロアークが姿を表したわ。
当然と言えば当然だけど……。
「ちょっと気分的にね。」
「だが、その人達は?」
その人の視線が私達に向けられる。
「山の麓でできた友だちだよ。」
「私はエーフィーのシルクです。」
「ぼくはミズゴロウのウォルタ。」
「そして、ボクはフライゴンのフライです。」
私達は簡単に自己紹介………、これで今日は2回目ね。
「そうか……。ん?ウォルタ君?だったかな?君の鞄から光が漏れているが……。」
「「「「え?」」」」
私達はその人に指摘され、声を揃えた。
確かに………何かが光輝いているわね……。
「本当だ〜。取り出してみるよ〜。」
ウォルタ君は鞄の中を探りはじめた。
「うわっ!凄い光!!」
鞄からひときわ輝く丸い石が取り出された。
「もしや、それは[ホワイトストーン]!?」
でも、どうして[ホワイトストーン]が!?
……………あっ!!もしかして………
「ここは[真実の頂]………、それゆえに、ここの神社は[真実]にまつわるものが奉られているはず……。そして、ウォルタ君は持つ石は[ホワイトストーン]。これは[レシラム]が姿をかえたもの………。[レシラム]は[真実の使者]…………。」
ってことは………………この現象は………、もしかして………。
「[レシラム]が………覚醒するわ………。」
あの時も、建物の外から激しい光が差しこんでいたから、確実に………。
「えっ!?シルク、それはどういう……っ!!眩しい!!」
フライが言い終わる前に、[ホワイトストーン]の光が強さを増した。
………っ!眩しすぎて目が開けられないわ!!
…………………、収まった?
私は恐る恐る目を開けた。
…………!やっぱりね………。
「[真実]を求めし者よ。今、ここに、我が身、覚醒せん!」
そこに、白く、美しい毛並みを持つ、大きなドラゴンポケモン、[レシラム]が舞い降りた。
「まさか…………代々語り継がれている伝説のポケモンが見られるなんて………。」
「凄い………、カッコイい〜。」
「このポケモンが、[レシラム]……?」
ルアン君、ウォルタ君、フライの順番にいったわ。
知らないのも当然ね。
「汝はこの時をもって、[真実の英雄]に任命された………。」
「えっ!?ぼくが〜!?」
レシラムは、ウォルタ君を見おろして言ったわ。
………とうとうこの時がきたわね……。
「そうだ。我が名は…………」
「シロさん、久しぶりね。 あっ、シロさんにとっては5000年ぶりね。」
「「「「「!!?」」」」」
私の思いがけない言葉に、一同は騒然とする。
この際、私の正体を明かそうかしら?
「何故拙者の名を………」
「私も[英雄伝説]の当事者なのよ。18代目、[絆の従者]と言ったらわかるかしら?」
「18代目………確か[真実]が8代目の時……。」
シロさんが考えこむ。
「えっ!?シルク!?」
ルアン君が驚いて聞いた。
「この際、打ち明けると、私とフライはタイムスリップして5000年前から、この時代に来たのよ。そして、私は18代目の[絆の従者]よ。」
「…………確かに、18代目の種族は[エーフィー]、なら、[テレパシー]が使えるはず……。」
つまり、証明すればいいのね?
《ええ、確かに、使えるわ。》
「「!?」」「汝の言、誠だな……。確かに、確認した。」「あの後の事はクロさんから聞いているわ。」
「…………」
フライと私、シロさんを除いて、残りの三人は目が点になっているわ。
……………、無理ないわね。