参拾 2人の聖霊
西暦7000年 sideフライ
「………ううっ。」
「良かった……。気がついたね〜!」
ボクは何とか意識を取り戻した。
ウォルタ君がいるってことは、シルクもいるはず。
でも、横たわったまま見渡しても見当たらない……。
「シルクは………?」
「シルクなら、闘ってるよ〜。」
えっ?シルクが………。
ボクは現状を確認するため、身体を起こした。
「あと、ベリーもラテ君も無事だよ〜!」
ボクは頷き、ウォルタ君の言葉を聞いた。
「[ソーラー………ビーム]!」
身体を起こすと、真っ先に光線、ボクを倒した[ソーラービーム]を放つ光景が目に入った。
その先には………
「[シャドー………ボール]!」
今にも倒れそうなシルク………。
彼女はかろうじて横に跳んで技を放った。
っ! 光線が邪魔で見えない!!
シルクは!?
「っっ!!!」
シルクの悲鳴……。まさか……。
「シルク!!」
ボクはいても経ってもいられず、飛びたった。でも…………
「くっ!!」
「フライ!!」
翼に力が入らず、顔面から地面に激突。
身体がいうことを利かない。…………何で……!?
「フライ……シルクも心配だけど、無理しないで……。フライ、君は火傷を負って、さらに瀕死の重傷だったんだから……。だから、今も予断を許さない状態だよ〜。」
瀕死……。
確かに、節々が痛むというか………身体の内側に違和感があるというか………。
!!?
ここで激しい揺れ…。
ボク達はその揺れの発生もとと思われる方向に目をやった。
ちょうど赤い巨体が崩れ落ちた瞬間だった。
「…………終わった………?」
倒れたということは………きっとそう。
「はっ!シルクは!?」
シルク…………。
ボクは急いで彼女の姿を捜した。
「シルク………。」
彼女は力なく横たわっていた………。
ボクは自由の利かない身体に鞭を打って、無理やり動かした。
「フライ!シルクが心配なのはわかるけど、君も…………。」
ボクは脚を引きずって歩み寄った。
彼女の安否を確認しないと気が済まない……。
「シルク!!フライ!!」
そこにベリーちゃんが血相を変えて駆け寄ってきた。
……元気そうで安心したよ……。
「………たぶん、気を失ってるだけだよ。ちゃんと息もしてるし………。」
ラテ君がシルクの状態を確認した。良かった…………。
「フライは、大丈夫なの!?」
「ベリー、フライは予断を許さない状態。本当は一歩も動けないはず……。」
ボクは…………大丈夫だから……………。
「っ!!」
「「「フライ!!」」」
ボクはとうとう崩れ落ちた。
力が………入らない………。
「ウォルタ君、ボクのポーチから、[復活の種]を出して、シルクに食べさせてくれる?」
「えっ?でも、フライ?君も……」
「ボクは意識があるだけまだマシ………。ボクも危ない状態だけど、意識がないシルクの方がもっと危ない………。だから………。」
ボクはラテ君の言葉を遮った。
シルクがウォルタ君達に指示してくれたように…………。
ボクは横たわったまま訴えた。
「……うん〜、…わかったよ……。」
ウォルタ君がボクの代わりに、ポーチを探り始めた。
「………あった。」
「それを食べさせれば、しばらくすると意識を取り戻すはず………。」
ボクのポーチから例の種を取りだして、ウォルタ君は無理やり食べさせた。
「とりあえず、シルクの方は経過観さ…………「「「!?」」」
ボクが話していると、視界の端から強い光………。
今度は何!?
ボク達は再びグラードンの方を見た。
だけど、そこには目を疑う光景があった。
その身体から光が発せられて………、
「えっ!?消えた!?」
グラードンは光と共に消滅した。…………えっ!??何で!!?
一体どういうこと!?
《それは、私が作りだした幻です。》
そんな状況で、ボク達の脳内に誰かの声が響いた。
「[テレパシー]!?」
「うん!でも、これはシルクのものじゃない!!」
しばらくすると、ボク達の近くに光が集まり始めた。
光が収まると、そこには、種族は分からないけど、黄色と白のポケモンが浮遊していた。
「君は?」
ベリーちゃんが声をあげる。
「名乗る程の者ではありません。この先に行かせる訳にはいきませんので、
[記憶]消させていた…………」
えっ!??記憶を!?ボク達はただここに来ただけなのに………、何があるのか知らないのに………
「記憶? なら、1つ聞いてもいい?」
ベリーちゃんがそのポケモンの言葉を遮った。
「……だき……!?」
「ここに[ラテ]と言う人間が来なかった?」
「………いいえ、来てませんけど………。」
突然割り込まれて、キョトンとしてる……。
「そっか………。手がかりを掴んだと思ったのに………。」
ラテ君が残念そうに言った。
「………でも、これとそれは話が別、宣言通り、[記憶]を消させてもらいます!!」
そのポケモンは話を元に戻した。
記憶を………消される……!?
《ベガ!ちょっと待って!!》
そこに声が響く。今度は誰!??
「この声は………、シード!?」
そのポケモンは声を張り上げた。
《その人達は無実、迷い込んだだけだよ!!》
また[テレパシー]……。一体どうなっているの??
……どこからともなく、黄緑色の…………、あのポケモン、もしかして……。
「迷い込んだだけって……」
「だから、ぼくがみる限り、盗賊でも、犯罪者でも、何でもないよ!!そのエーフィーとフライゴンの様子を見ればわかるはず………。意図的に侵入したポケモンが、傷ついた自分よりも仲間の事を優先すると思う!?少なくとも、ぼくの時代ではそういう悪党はいないよ!!」
黄緑色のポケモンが力強く説得……。
「でも、ここに侵入したのにはかわり………」
「彼等の身元はぼくが保証するよ!!それに、そのエーフィーとフライゴンはぼくが捜していた人だから………。」
えっ!?ボク達を捜していた!?どういう事!?
「えっ!?」
黄色いポケモンも驚く。
「フライゴンの君、そのエーフィーの名前は[シルク]であってますよね??」
「えっ!?どうしてシルクの名前を……」
一体どういう事!?さっぱりわからない!?
「彼女とミズゴロウの彼に聞けば分かると思います!」
「シルクとウォルタ君に!?」
えっ!?
「………シード、わかったよ……。君がそう言うなら……、信じるよ……。なら、2人の手当てをしないといけないですね……。ついてきてください。」
「「「「???」」」」
ボク達は顔を見合わせた。
「………、とりあえず、行こっか?」
………うん……。
ボク達はそのポケモン、ベガについていった。
ボクは脚を引きずり、ラテ君達は意識の戻らないシルクを背負って……。