弐拾九 マモるために………
西暦7000年 熱水の洞窟奥地 sideシルク
「だから…………あとは…………頼んだ……よ………。」 「フライ?フライ!何があったのよ!!返事して!!フライ!フライ!!」
ついさっき、フライから連絡が入ったわ。
でも、フライの声は弱々しくて………、
「!?シルク!?どうしたの〜!?」
私の様子を見て、ウォルタ君が切羽詰まった様子で聞いた。
「私の推測でしかないけど………、フライ達、何者かに襲われて、倒れた可能性があるわ………。フライの様子からすると、一刻の猶予も許さない状態………、戦いで敗れたかもしれないわ……。」
フライもかなりの実力をもってるのに………、まさか彼がやられるなんて……。
「嘘………でしょ?フライも、あんなに強いのに………。」
「となると、一緒にいるラテ君とベリーちゃんが危ないわ!!ウォルタ君、急ぐわよ!![サイコキネンシス]!!」
急がないと………、フライ達が……全滅してしまう………。
私は、ウォルタ君を超能力で浮かせた。
「!?シルク!?」
「ウォルタ君、少しの間我慢してて!!……素早さでは私の方が上だから………、とばすわよ!!」
私は四肢に力を込める。
「でも、ぼくも頑張れば………!?」
後ろ脚で地面を蹴る。
たちまち、私は風に乗った。
っ! やっぱり、簡単には進ませてくれないわね………。
私の前に2、3体が立ちはだかる。
「今はあなた達の相手をしている暇はないのよ!![シャドーボール]、[目覚めるパワー]!!」
走りながら口元に竜、霊を蓄積させる。
深青色の弾を生成、発射。
「「っ!?」」
種族は確認してないけど、何体かに命中。
「[水鉄砲]〜!」
浮遊しているウォルタ君が私を援護。
相手の状態は……………、確認する暇はないわ!!
急がないと………!!
フライ、ラテ君、ベリーちゃん、今行くから!!
だから、もう少し耐えて!!
………
熱水の洞窟最奥部 sideベリー
「………ちょこまかと………、目障りだ……、[火炎放射]!」
わたしに向けて炎が放たれた。
同じ炎とはいえ、あれをくらったら……、わたしでも……耐えられないかもしれない……。
でも、今はかわせそうにない!
わたしは向きを変え、
「[火炎放射]!!」
同じ技で応戦。
………くっ!火力が強い!!気を抜いたら………いや、全力を出しても圧されてる……。
このままだと……。
相手の炎がわたしに迫る……。
わたしまであと2m……。
1m…………、50cm……………。
フライが削ってくれたとはいえ、伝説……。
!! ヤバい!!
わたしは技を解除して、ありったけの力で左に跳ぶ。
……っ!
完全にはかわせずに、右脚を掠めた。
………やっぱり………強い……。掠っただけなのに……、体力をごっそり……持ってかれた……。
「これで…最後だ!![地震]!!」
わたしの隙をついて、赤の巨体が地面を踏みならす。
…………!やられた……。
わたしは………結末を覚悟して、目を堅く閉じた。
「[サイコキネンシス]!」「[水鉄砲]!」
………あれ?ダメージが………ない?
「良かった、間にあったわ!ベリーちゃん、[グラードン]相手によく耐えたわね!もう安心よ!!」
わたしは恐る恐る目をあけた。
………この声は………、シルク!?それに、わたしの幼なじみのウォルタ!?
「ウォルタ君、[復活の種]は持ってるわよね!?」
「うん〜!ちゃんと2つ持ってるよ!!」
「なら、そっちは任せたわ!!」「くっ、……新手か……。誰が来ても同じこと……。」
わたしは……シルクの超能力で……脇に移動されられた。
技が解除され、わたし達は地に脚をついた。
「ベリー、これ飲んで〜!」
ウォルタは……鞄から薄い水色の液体が……入った瓶を取りだした。
「これは……?」
「何も言わずに、すぐに飲んで〜!」
「えっ?」
それだけ言うと……ウォルタは………ラテが倒れている方に……走っていった。
………
sideシルク
「手負いとはいえ、油断は出来ないわね……。」
グラードンは伝説。気を抜いたら私でも……。
「俺が手負いだと?………確かに……あいつは……侵入者にしては…強かった。…俺をここまで追いこんだからな……。」
相手はうなり声をあげる。
“あいつ”は、フライの事ね……。
フライを倒すなんて……。
「だが、[エーフィー]如きに………倒される俺ではない!くたばってもらうぞ!!」
「言っとくけど、私の事もなめてもらったら困るわ!」
私達は互いに睨み合う。
「相手が誰であろうと、……ここを通す訳にはいかんのだ!!」
「望むところよ!![絆]の名に賭けて……、いくわよ!![瞑想]!!」
私は目を閉じ、精神を研ぎ澄ます。
相手との距離は10m。
「[火炎放射]!」
私に向けて放たれた。
スピードは………、そこそこあるわね……。
私はそれを右に跳んでかわす。
「かわしたか………。」
風から推測すると、右脚を上げたわね……。何かをするつもりね。
「[シャドーボール]、[サイコキネンシス]!」
私は目を瞑ったまま漆黒の弾を形成。
すぐに拘束。
相手は地面タイプ。片足を上げたということは、次にくるのはあの技……。
「[地震]!」「発散っ!」
案の定、大地が揺れはじめた。
私はその前に垂直に跳び、上昇気流を発生。
私は宙を舞った。
「何っ!?かわされた!?[ソーラービーム]!」「[目覚め……]……!?」
!?
相手はその巨体からは想像できないような速さで光線を放ったわ。
[ソーラービーム]は溜めが必要な技のはず………。
………あっ、そっか。グラードンの特性は[日照り]。だから溜める必要が無いのね…。
「発散っ!」
私は溜めかけていた暗青色の弾を左に発散させ、私自身を右に飛ばした。
「っ!!」
風力が足りず、二股に別れた私の尻尾に命中。でも、直撃は避けたわ。
流石は伝説。クロさん並みに威力が高いわね。
おそらくフライが敗れた要因はこのワザ……。
「[目覚めるパワー]、[シャドーボール]!」
私は深青色のエネルギーを溜める。
これで属性のストックは3色。
でも、三色以上は混ぜられないから実質二色。
「[炎の渦]!」「連射!!」
相手は炎の塊を放ち、私は青の雨を降らせる。
膨張し、増え続ける弾により、炎塊は打ち消された。
「何っ!? っ!」
相手に降り注ぐ。
その間に、私は地面に着地する。
私は相手との距離を詰める。
その距離、3m。
「拡散!![シャドーボール]!」「[地震]!」
私は留めていた二色を含め、[サイコキネンシス]を駆使してエネルギー弾で相手を取り囲んだ。
対して、再び大地がうなりをあげて振動。
エネルギー弾を円の中心、グラードンに向けて収束させた。
「「くっ!!」」
相手は無数の弾で、私は大地の猛威で大ダメージ。
………ここまで追い込まれたのは………初めてだわ………。
「………………っ、[ソーラー………ビーム……]!」「[目覚める………パワー]!」
両者は………相手に向けて……技を放つ。
丁度中間で衝突………、両者共に消滅………。
威力は…………、互角ね……。
まだ………集中が…………足りない………。
「[瞑想]、………[シャドー………ボール]!」「[火炎…………放射]]!」
目を閉じ、風と聴覚だけを頼りに………火炎を……かわす。
同時に…………ありったけのエネルギーを…………口元に………蓄積させる。
おそらく、これが………私の出来る………最後の攻撃……。
私のエネルギーは底を尽きかけているわ………。
もし、これで……倒せなかったら………。
「[ソーラー………ビーム…]!」
相手もおそらく………これが最後………。
私は全神経を耳に集中させ、接近する。
相手の光線が………放たれた。
私まで4m。
3m、
私はここで目を開ける。
2m、
私は脚に力を込めて…………左に跳ぶ。
………間にあって!!
1m、
私は大ダメージ覚悟で………最後の弾を放つ。
この時、私の……脚は……地を離れている。
0m、
「っっ!!!」
私に……………光線が……………命中………………。
私は……………10mぐらい…………………飛ばされた……………。
意識が……………飛びかけて……………いるわ…………。
でも……………結果を………………確認するまで…………倒れる……………訳には…………いかないわ………。
2秒後、…………私の弾が…………相手に………命中………。
「当たった………わね………。」「くっ!!!」
相手の……………巨体が…………………揺らぐ…………。
前のめりに……………なって………………、地響きと………………共に……………崩れ落ちた……………。
結果を…………確認すると……………私は………………意識を………………手放した。
激戦の……………結果……………引き分け……………。
私の………………連勝………………記録が…………ここで………………途絶えた。