弐拾八 VS 大地創造の神
西暦7000年 熱水の洞窟最奥部 sideフライ
「やった、やっと出口だー!!」
ボク達がむさ苦しい洞窟を進んでみると、待ちに待った光………、とうとう最奥部だ!
「ふぅ、やっと不快な湿気から解放される………。」
「僕ももう、汗だくだよ……。」
ラテ君が汗で濡れた額を拭いながら言った。
ベリーちゃんは炎タイプで、ボクは砂漠出身だから平気だけど、ラテ君にはつらかっただろうな………。
「ラテ、フライ?まだ続いているみたいだから、先に進もうよ!」
ベリーちゃんが元気いっぱいで促した。
「ベリー、ちょっと待って。水分だけ摂らせて………。」
言うや否や、ラテ君はバックから水の入ったボトルを取り出した。
「ふぅー、生き返ったー。」
ラテ君は一気に飲みほした。
相当渇いていたんだね?
「ベリー、フライ、お待たせ。水分も摂れたし、行こっか?」
「うん。ラテ君、ベリーちゃんも、無理………」
しないようにね、そう言いかけたその時、
「グオオオォォォ!!」「「「っ!!!」」耳が!」
鼓膜が破れそうなくらいの声量。
くっ、耳を塞いでも防ぎ切れない!?
…………?収まった?
「今のは何!?」
「わからない!?しかも、今までのとは比べものにならないくらい大きかったよ!?」
ラテ君、ベリーちゃんが辺りを見渡しながら言った。
「けど、ここに何かがいるのは確かだよ!」
でないと、有り得ない。
……!??えっ!?今度は地震??
しかも、一定間隔で………。
ボクは揺れを避けるために飛び上がった。
だんだん揺れが大きくなってる……。
しばらく続き………ん?何?あの赤い影……?
「………っ!ラテ、フライ……。何か、赤いポケモンが、近づいてきてるよ??」
ベリーちゃんが揺れに耐えながら言った。
「うん、僕にも見えたよ……。あのポケモンって……像の……?」「えっ!?このポケモンは………。」
あのポケモン………、間違いない!気温が急激に高くなっているのが何よりの証拠……。
「ベリー!あのポケモン、何て言う種族かわかる!?」
「ううん、わからないよ!!フライは!?」
2人は声を張り上げる。
「見るのは初めてだけど、よく知ってるよ……。あのポケモンは、ボクの出身の地方では、大昔に大地を作り出したとされている、地方に君臨する“伝説”のポケモン………、[グラードン]……。とてもボク達で太刀打ちできる相手じゃないよ!!」
「「えっ!?“伝説の!??」」
「そうだよ!!だから、いますぐにでも逃げ……」
「ここまで来たからには、生きて帰す訳にはいかん!!くたばってもらうぞ!![火炎放射]!」ボクの言葉を遮り、グラードンが燃え盛る火炎を…………えっ!?
マズい!!
このままでは2人が危ない!!
「えっ!?いや、でも……」
2人は完全に棒立ち状態……。
ボクはいた場所から急降下し、間一髪で2人を抱え込み、救出した。
「「フライ!?」」
「2人とも、よく聞いて!ボク達は戦闘無しでは助かりそうにない……。だから、ボクは今からシルクに助けを要請する。その間、ボクは戦えない。………だから、ラテ君、ベリーちゃん、ボクが連絡している間、避けて………出来れば戦って少しでもダメージを与えておいて!!」「ちっ、外したか……。」
ボク達の中で地面、炎に有効なタイプを使える人はいない………。
でも、戦うしか方法はない……。
「でも、相手は“伝説”………。」
ベリーちゃんがためらう。
「ベリー!何もしないで死ぬのと、全力を尽くして勝って、生き残るのとでは、どっちがいい?ボクは死ぬのはイヤだよ!!だから、死にたくなかったら戦うしかないんだ!!」
ボクは怒号混じりにベリーちゃんを説き伏せた。こうでも言わないと………。
「ベリー!僕もそう思うよ!!何もしないでやられたら悔いが残る……だから………。」
ボクはここで2人を降ろす。
「…………でも………」
「ここでやられたら、………だから……」「[火炎放射]!」
相手に背を向けているラテ君に技が放たれた。
「ラテ!!」「ラテ君!!」
「えっ!?[守…………]っ!!」
反応が遅れ、技を出す前に命中………。
「………っ、だから………、ベリー…………、[勇気]を、出し………て………。」
「ラテっ!!」
ラテ君は崩れ落ちた。
くっ、こうなったら………、ボクだけで……。
ボクは気を失ったラテ君を安全な場所に運んだ。
…………、連絡するのは後回し……。それとも、誰かがここに来るのを待つしか……。
よし!
「[目覚めるパワー]!」
ボクは手元に紺のエネルギーの蓄積を開始。
「ほぅ、やっと戦う気になったか……。」
「当然です!!仲間がやられて黙って見ている人がどこにいるんですか!!連射!!」
ボクは立て続けに紺の弾を放つ。
「面白い。[大文字]!」「[岩雪崩]!」
炎でボクの技が打ち消された。
ボクは負けじと岩を出現させる。
ボクはそのまま低空飛行で接近。
ポーチから[銀の針]を取り出し……、
「[ドラゴンクロー]!」
暗青色のオーラを両手に纏う。
「[火炎放射]!」
「!?っ!」
目前に迫った時、突然火炎が放たれた。
ボクは慌てて高度を上げたけど、尻尾が焼かれた。
「くっ、火傷………」
「ぐっ!」
ボクは構わず竜の小刀で切りかかる。
両者共に体力が削られる……。
もちろん、ボクに攻撃を続けさせてくれる訳にはいかず………
「[大文字]!」
「!?」
燃え盛る炎塊が放たれた。
ボクは間一髪かわし、高度を上げる。
「これで……」
ボクは小刀を投げるため、振りかぶった。
「[ソーラービーム]!」
うわっ、このタイミングだとかわせない!
でも、[ソーラービーム]なら、溜めるのに時間がかかるはず。
なら、今のうちに………、!?えっ!?もう!?
ボクに向けて太い光線が放たれた。
くっ!!やられた…………。
小刀を投げ、丸腰となったボクに……………くっ!………命中………。
ボクは…………大ダメージを…………被った。
ボクは………そのまま墜落…………。
伝説………、やっぱり…………強い……。
………
sideベリー
「[ソーラービーム]!」
「くっ!!」「フライ!!」
フライに光線が命中した………。
フライはそのまま落下して、地面に叩きつけられた…。
っ!わたしが………、わたしが、もっとしっかりしていたら………、ラテも……、フライも傷つかなかったのに………。
わたしが……臆病だから………。
「くっ、ようやく……倒れたか……。残りは……。」
そう言って、赤の巨体が、わたしを睨む……。
「わたしの………わたしのせいだ………。」「お前だけだ!![大文字]!」
世界が涙でぼやけはじめた。
…………もう、誰も、傷つくのは……
「まだ…………終わって……いない![目覚める………パワー]………。」
「何っ!?っ!」
見たくない!
「まだ……戦えるのか……しぶといな……[ソーラー…ビーム]!」
「うわっ!!!」
もう、誰も………傷つかないで!!
「………っ、やっと…倒れたか………。今度こそ………。」
わたしに相手が刻一刻と迫る……。もう、おしまいだ………。
sideフライ
…………っ!
もう、………限界だ………。
意識を維持するだけでも………、辛い………。
このままだと…………、ベリーちゃんまで…………。
でも……………ダメだ……………。体に…………力が………入らない………。
ボクは………最後の力を………ふりしぼり………、通信機の………マイクの………電源を………入れる…………。
「………シルク………、今………、どこにいる………?」ボクは………、何とか………声を………ふりしぼる………。
《フライ、私達は[熱水の洞窟]の奥地、もうすぐで抜けれそうだわ。でも、フライ!?そんな声でどうしたのよ!??》
そうか………もうすぐで来れるんだね………。
「そっか………。なら………ベリーちゃんを…………助けて…………すぐに………逃げて…………」《えっ!?フライ!?どういうことよ!??》
これだけ伝えれば…………、もう……、安心だ………。
シルクが………来てくれるから………。
「だから…………あとは…………頼んだ……よ………。」《フライ!?フライ!?一体何があったのよ!!返事して!!フライ!!!》
ボクは…………マイクの電源を…………切る間もなく…………意識を…………手放した…………。
シルク………、あとは…………頼んだよ………。