seventeenth
AM10:55 カナズミシティースクール
「ユウキさん、お時間です。」
「あっ、はい。もうそんな時間ですか?」
公演5分前、主任のツツジが呼びにきた。
「はい。グラウンドですので。」
「ツツジさん、ここのスクールに何人ぐらい生徒がいるんですか?」
「ここは特待生コース20人、一般コース20人、それが3学年です。」
「120人ですね。」
話している間にグラウンドに出てきていた。
「結構な数、いるんだ……ですね。」
「うん。このくらいなら大丈夫かな。」
「さあ、今回の特別講師、ユウキ先生です!前へどうぞ。」
ユウキはグラウンドにでた途端、全生徒のいる前に通された。
「先生だなんて……、はい。ご紹介いただいた考古学者のユウキです。」
「えっ、ユウキって……」
「あの?」
辺りがざわつきはじめた。
「ユウキ先生は考古学だけでなく、トレーナーでもあって、昨日主任の私を簡単にうち負かしたほどの実力者です。」
ツツジが付け加えた。
「ああ、はい。というわけで、今回は考古学でなくて、バトル講座をしに来ました。単刀直入に言うと、自分にとって不利なバトルでも、技の使い方、応用の利かせ方で有利なバトルをする事ができます。話してばかりなのも退屈すると思うので、生徒で誰か1人、協力してくれる人、いますか?」
ユウキは教師陣に目で合図をおくった。
「ああ、なら、生徒会長、前に。」
「えっ、俺っすか?」
脇に控えていた教師に呼ばれて、1人の少年が前に出てきた。」
「生徒会長をしているリュウジっす。お願いします。」
「リュウジ君だね。まずはポケモンを出してくれるかな?」
「あっ、はい。ロコン!」
〈えっ!?公演中なのに!?〉
「ロコンか。なら、ジャローダ、頼んだよ!」
〈うん、僕からだね〜。〉
「じゃあ、まずは何でもいいから技を指示して。」
「はい。ロコン、[火の粉]!」
〈OK![火の粉]!〉
ロコンは小さな炎の粒を飛ばした。
「よし、まずは技を使った交わし方から。ジャローダ、地面に[リーフブレード]!」
〈うん、OK〜。[リーフブレード]!〉「そのポケモン、草タイプですか。」
ジャローダは技の反動で飛び上がった。
「えっ、そんな交わし方が!?」「そのままロコンに当たらないように[リーフストーム]!」
〈うん、[リーフストーム]!〉
ジャローダはそのまま誰もい方に向けて草の嵐を引き起こした。
「こんな感じで技に応用を利かせたら、次の技に簡単に繋げることが出来るんです。他にもさっき僕が指示した[リーフストーム]とか、[葉っぱカッター]みたいな物質を沢山飛ばす技は、使い方によっては相手の目を眩ますことができます。ジャローダ、今度は広範囲に[リーフストーム]お願い!」
〈うん、任せて〜。[リーフストーム]!〉
今度は前、横上の4方向に草を飛ばした。
「凄い、全く隙がない……。」
「まあ、交わし方の例はこのくらいかな。ジャローダ、ありがとう、後ろにさがってて。次は、攻撃についていくつか例を挙げます。まずはシングルバトルから。エーフィー、頼んだよ。」
〈ええ。今度は私ね。〉
「じゃあ、リュウジ君、もう一度ロコンに[火粉]を指示してくれるかな?」
「あっ、はい。ロコン、[火の粉]!!」
〈えっ、うん、[火の粉]!〉
「エーフィー、いつものように[サイコキネンシス]!」
〈ええ、わかったわ。[サイコキネンシス]!〉
エーフィーは放たれた小火に技をかけた。
「えっ、技が止まった!?」
「打ち返して!」
〈ええ、加減した方がいいわね。〉
エーフィーは技をコントロールし、すぐに打ち返した。
〈確かあなたの特性は[貰い火]だったわよね?〉
〈えっ、はい。そうですけど?〉
〈あなたにはわざと自分に炎タイプの技を当てて、自分の攻撃力を上げてから戦うことをオススメするわ。〉
〈あっ、はい。わかりました。〉
「エスパータイプの技を使えるなら、こんな使い方も可能です。エーフィー、上に向けて[シャドーボール]!」
〈ええ、いつものあれね。[シャドーボール]!〉
エーフィーは口元に漆黒のエネルギーを溜め、球状に形成した。
すぐに空に向けて漆黒の弾を放った。
「〈[サイコキネンシス]!〉」
技を掛け、放たれた弾を操った。
「この時に大切なのが技の相性。とりあえず発散させて。」
〈ええ、わかったわ。〉
エーフィーは超能力により、弾を内側から分散させた。
「コジョンド、[波動弾]をお願い!」
〈ああ、任せろ!〉
ユウキは三体目のメンバー、コジョンドを出した。
コジョンドはボールから出るとすぐに手元にエネルギーを溜め始めた。
〈[波動弾]!〉「エーフィーは波動弾に[サイコキネンシス]!」
〈失敗例を見せるのね。わかったわ。[サイコキネンシス]!〉
コジョンドはドッヂボール程の大きさのエネルギー弾を放った。
エーフィーはすぐにそれに技をかけた。
弾は次第に小さくなり、消滅した。
「こんな感じで相性によっては、技をかける側が負けて消滅する事があるから。そこが注意点かな。エーフィー、お疲れ。さがってて。コジョンドは引き続きお願い。」
〈ええ、そうさせてもらうわ。コジョンド、あとは頼んだわよ。〉
〈ああ。〉
「スワンナ、[ハイドロポンプ]を凍らせて!」
〈うん♪今度はウチとコジョンドだね♪[ハイドロポンプ]!〉
スワンナは出るとすぐに圧縮された水を放った。
〈[冷凍ビーム]♪〉
すぐに冷気を放ち、凍らせた。
「コジョンドは[飛び跳ねる]から氷に[跳び膝蹴り]!」
〈了解した。〉
コジョンドは跳躍力を生かし、高く跳びあがった。その頃には水は凍りついていた。
〈[跳び膝蹴り]!〉
空中で姿勢を変え、氷に重力を乗せた蹴りを放った。
蹴られた氷塊は粉々に砕けた。
「技を組み合わせれば、このように、出すのに時間のかかる技も予備動作なしで繰り出すことも可能です。コジョンド、お疲れ。」
〈ああ。〉
〈次はウチだね♪〉
「うん。最後に上級技の組み合わせの例を紹介します。スワンナ、[アクアリング]から[ハイドロポンプ]!」
〈うん♪あれだね。[アクアリング]♪〉
スワンナは次の技に備えて水のベールを纏った。
〈[ハイドロポンプ]!〉「[ブレイブバード]で突っ込んで!」
スワンナは再び水を放った。
〈よし、[ブレイブバード]!〉
淡い光を纏い、放たれた水に突入した。
スワンナは水の勢いを借りて、音速に近い速さまで加速した。
スワンナが通過した部分は時間差で2つに裂けた。
「凄い。もうあんなところに……」
「こんな感じで、技は使い方でいくらでも強力になるんです。これらはあくまで一例だから、自分達で考えて造りだすといいかな。これで僕の公演は以上です。今日はありがとうございました。」
一斉に拍手が起こった。
「ユウキさん、ありがとうございました。」
「僕は今日はしばらくここにいるつもりだから、質問とかあったらその時に聞いてください。もちろんバトルも受けますよ。」
約1時間に及んだ初めての公演は無事成功で終わった。
この日の午後はスクールの生徒からの質問の応答、バトルをして過ごした。
………
PM5:00 カナズミシティースクール
スクールの生徒は帰宅、教師もそれぞれの家へと帰っていった。
今、グラウンドはユウキ達とライト、仕事を終えたスカイだけになった。
「ユウキさんって本当に強いんですね。」
〈私達はもう何年も旅して廻ってるからね。〉
「うん。ライト、スカイさん、僕はそろそろこの街を出発しようと思います。」
「もういっちゃうの?」
〈うん、別れるのは寂しいけど、また会えるよね♪?〉
「うん。本当はもっと戦い方とか教わりたいけどなー………。」
「では、またいつか会える時まで、お元気で。」
「はい。ユウキさんも。何か伝承についてわかったら、連絡お願いしますね。」
「はい。」
「…………うん、よし!ユウキくん、私も連れてってくれる?」
ライトは何かを決心したように言った。
「「〈えっ!?〉」」
「本当はもっと沢山技とか教わりたいから!ユウキくん、お兄ちゃん、いいでしよ?」
「………うん、ユウキさんならライトを任せられますね。」
〈うん、僕達も歓迎するよ〜。〉
〈また旅が楽しくなりますね。〉
「はい。ライト、これからもよろしく!」
「やったー。よろしくね!」
こうして、ユウキ達に新たな仲間が加わった。
§3 End. To be continued...