とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§16 gravity
one-hundredth
AM11:00 カナシダトンネル外部 sideシルク

ユウキ「みんな、待たせたね!!」
シルク〈だから、みんなはゆっくり休んでて!!〉

私とユウキは、激戦が繰り広げられている戦場に足を踏み入れた。

……到着が遅れた理由?

実は、ここに来る途中でトレーナーにバトルを挑まれたのよ……。

その時、ユウキはまだ[ピカチュウ]の姿だったから、野生に間違えられたのよ。

おまけにふたりともエネルギーが底をついているから、必死で逃げてきたって訳。

[ピカチュウ]は人気がある種族。

更に野生では滅多にお目にかかれない[エーフィ]の私がいるから尚更ね。

そんな追いかけっこがシダケタウンまで続いて、ようやくひと息つけたわ……。

ユウキの体力を回復する事を考えたけど、彼にあっさり断られたわ。

ユウキ曰わく、〔トレーナーの僕が使ったらポケモンのみんなが回復できないでしょ?だから、止めておくよ。〕って。

という訳で、私達はこのままでは戦えないと思って、ユウキが申し訳程度に持っていた[PPエイド]で少しだけエネルギーを回復し、ユウキは姿を戻して現在に至るわ。

リーフ達とアオイさんが来る事は分かっていたけど、ルビーさんやミツルさん、カエデにユウカまでいたから驚いたわ。

ユウキ「とにかく、簡単に状況だけ教えてくれる?」
シルク〈長期戦は無理だけど、私達も参戦するわ!!〉

私は彼らに威勢良く言い放った。

スーナ〈最初は……〉

スーナ、オルト、コルド、ライトが簡単に説明し、私達は頷きながら聞き入った。

シルク〈つまり、私達は実力者が揃っているものの、多勢に無勢。おまけに相手は幹部全員が揃っているって事ね?〉

背後で繰り広げられている戦闘に耳を傾けながら、私は聴いた事をまとめ、確認する。

コルド〈はい、合ってます。〉
ユウキ「なら、スーナとコルドはオルトと味方の救護に徹して!僕の鞄を預けておくから、道具はそれを使って!」

ユウキは瞬時に状況を判断し、的確に指示を出す。

PPを回復する道具は元々数がなくて私達で使い切ってしまったから、それが一番いい役割かもしれないわ!

オルト〈わかった、任せろ!……だが、殆どエネルギーが残ってないと聞いているが、大丈夫なのか?〉

オルトは二つ返事で答え、聞き返した。

シルク〈短時間で終わらせれば、何とかなるわ。〉
ユウキ「だから、そっちは頼んだよ!」

コルド・スーナ〈はい、もちろんです!!〉〈うん♪ユウキにシルク、ライトも、無理しないようにね!!〉

ライト・ユウキ・シルク「「うん!」」〈ええ!!〉

スーナ、オルト、コルド、そっちは頼んだわよ!

私達も、全力でいくから!!

私達は頼れる戦友の姿をしっかり目に焼き付け、戦闘の最前線へと向かった。



ユウキ「ルビーさん、大丈夫ですか!?」

ユウキは周りの騒音に負けないぐらいの声でルビーさんの元に駆け寄った。

ルビー「この数だから、4人ともメンバー全員を出して闘っているよ。」
ミツル「でも正直、厳しいです。一応僕達は最初のポケモンを倒したんですけど、カエデ君は苦戦しているみたいだよ。」
シルク《わかったわ。私達はカエデの元に行くべきね?》

あの幹部の前で倒れているポケモンがそうね?

種族、分からないけど………。

見た感じ、岩タイプと鋼タイプかしら……?

……でも、今はそこに先入観を持っても仕方ないわ!!

ルビー「カエデ君より、あの女の子の所にいってくれるかな?」
ミツル「何故か[テレパシー]を使える[キュウコン]もいるはずだから。」
ライト「きっとユウカちゃんの事だよ!!」
シルク〈あと、アオイさんね?〉
ユウキ「うん、わかりました!シルク、ライト、いくよ!」

手短に会話を済ませ、私達はユウカ達の元へと急いだ。



ライト・ユウカ「ユウカちゃん!!」「クロム、[地震]………ライトちゃん!それにユウキさんも!!」

私達の到着に気づき、彼女は歓喜の声をあげた。

………でも、まだ喜ぶのは早いと思うわ……。

クロム・シルク〈[地震]………!〉《ユウカ、ここからは私達も参戦するわ!!》

クロムが疲れた表情を見せながら、地面を踏み鳴らした。

ユウカ「ありがとう。でも、私は大丈夫。それよりあの[キュウコン]の所に行ってあげて!!」
ユウキ「ちなみに、ユウカのメンバーは誰が残ってる?」
ユウカ「みんなまだ闘ってくれているけど、疲れが目立ってきたかな……?」

シルク・アルファ《わかったわ。ユウカ、無理しない程度に、頼んだわ!》「誰か知らないけど、“冷酷な轟炎”と呼ばれたこの私を相手によそ見してもいいのかしら?[フレアドライブ]!!」

ユウカ、頼んだわ!



ライト「アオイさん!!」
アオイ〈[大文字]!!………この声はライト!?それにこの人間は誰よ!!〉

アオイさんはライトに応じるや否や、ユウキに警戒の眼差しを向けた。

ユウキ「……そうだつたね。元の姿で会うのは初めてだったね。青いバンダナをした[ピカチュウ]と言ったら分かるかな?」
シルク〈あと、私と。〉

アオイさん、流石に私達の事を覚えていてくれているわよね?

アオイ〈………確か、ライトが言ってたわね。〉
ライト「そのトレーナーが、このユウキくんだよ!」
アオイ・シルク〈彼が………〉〈アオイさん!![シャドーボール]!!〉

私達が話しているところに問答無用で技が放たれ、私はそれを漆黒の弾………節約のため小さめ………で打ち消した。

アオイ〈…そのトレーナー?〉
ユウキ「はい。その証拠に[テレパシー]無しで会話が成立しているでしょ?」
アオイ〈言われてみれば、そうね。確かに………〉

………私と会話が成立しているわね。

おそらく彼女がそう言おうとしたその時……、



グラグラグラグラ…………

一同「「「「〈〈〈〈!!?〉〉〉〉」」」」

耳を塞ぎたくなるくらいの轟音と共に、大地は唸りをあげて震れ、岩壁の一部が崩れ落ちた。

何!?

私達、敵味方関係なく、突然の事に驚き、闘いの手を止めた。

ガンマ「俺達に刃向かうお前達自ら最後の封印を解くとは、愚かなものだな!!」

そして、眉を吊り上げながらガンマは大声で言い放つ。

ちなみに、ガンマのポケモンは私達に全て倒されたから出してないわ。

……一体、何の事よ!?

カエデ「封印をって……一体どういう事なんや!!」

静まり返っているから、良く聞こえるわ……。

ガンマ「事が済んだらもう後の祭りだ。教えてやろう………」

このセリフ、聞くのは2回目だわ……。

ガンマ「ベータ、デルタ、イータが出したポケモン……[レジロック]、[レジアイス]、[レジスチル]をこの地で倒す事こそが、[ホウエンの結界]、最後の護りを解く方法なのだ!!」

また勝ち誇ったように言い放つ。

ルビー「という事は、僕達に倒させる為にわざと………。」
ガンマ「その通りだ!!つまり、作戦だったのさ!……おっと、早速お出ましだ……。」

言い放つガンマの背後の洞窟から1つの影………。

でも、まだ砂煙があがってるから良く見えないわ………。

???〈……………〉
アオイ〈まさか……………封印が…………〉
ユウキ「くっ………1日に2回もハメられた……。」
ミツル「あのポケモンが…………?」

勝ち誇っているガンマ以外………アルファやベータでさえ、そのポケモンの威圧感に言葉を失っていた……。

ユウキ「[未曾有の脅威]を表す……[デオキシス]…………?」

ユウキは恐る恐る、そのポケモンの種族を口にした。

ガンマ「野郎共、最終段階に移れ!![デオキシス]に総攻撃だ!!!」

ガンマは狂ったように言い放つ。

ガンマ「アルファ、ベータ、デルタ、イータ、お前達も!!」
アルファ「ガンマ………流石にこれはマズい気が……。」
ベータ「嫌な予感しかしない……。」
イータ「私達はあなたがどうしてもって言うからプロジェクトに参加したけど……、私は直ちに中心すべきだと思うわ……。」
デルタ「それにお前、最後まで伝承を調べたのか……?」

…………?

もしかして、内部分裂が始まってる………?

ガンマ「何のためにここまで来たんだ!!捕まえる為だろ!?たかがポケモン相手に………」
デオキシス〈[ミラーコート]………!〉

一同「「「〈〈〈!!?〉〉〉」」」

デオキシスに向けて放たれた技の数々は、その1つの技によって何倍もの威力となって打ち返された。

何よ!?あの威力!?

たった一回であの威力!?

打ち返された技は、敵味方関係なく襲いかかった。

カエデ・ルビー・ミツル・ユウカ・ユウキ「フローゼル!!」「チルタリス!!」「ミンク!!」「ツバキ!!」「シルク!!」

!?

もちろん、私達の方にも飛散し…………っ!!

私達は………大ダメージを………被った………。

…………油断………したわ………。

跳ね返した技………なのに、こんなに威力が……強いなんて………。

フロゼル・グラージ・ミンク・ツバキ・シルク〈〈〈〈〈!!?〉〉〉〉〉

アオイ〈!!?何!?この威力!?…レベル高過ぎじゃない!?〉

アオイさんの言う通り…、有り得ないぐらい…高いわね…。

[脅威]と言われるだけあるわ………。

シルク〈何とかね…。まさかここまでの威力とは思わなかったわ…。〉

私は若干ふらつきながら立ち上がり、[未曾有の脅威]を睨みつけた。

技を跳ね返しただけだから…実力は未知だけど………やるしかないわ!!

ユウキ「皆さんは大丈夫ですか!?」

ユウキは声を張り上げ、仲間の安否を伺う。

ルビー「僕はさっきので全滅……。」
ミツル「僕はミンク以外やられたよ……。」
カエデ「俺はエースのフローゼル以外、連戦だった事もあって力尽きてしまったよ…。」
ユウカ「私はニトルしか……。ユウキさんは大丈夫ですか……?」

みんな……さっきので……。

今はガンマ以外の幹部が立ち向かっているみたいだけど……圧されてるわね……。

相変わらずガンマは偉そうに…罵声を浴びせるだけ……。

私とユウキに全滅だったとはいえ、回復させる事も可能だったのに……。

……絶対に、味方の反感を買ってるわ……。

シルク《私達の状況も悪いわ……。体力は残ってるけど…、みんな長時間の戦闘で…エネルギーを使いきっているわ……。》
ユウキ「正直、僕とシルクもガンマを倒してきたばかりだから、あまり長くは保たないです……。」

まさに……状況は最悪ね……。

ライト《…………ユウキくん、シルク……、わたし、闘うよ!!》

ユウキ・シルク「〈えっ!?ライト!?〉」

ルビー・ミツル・カエデ・ユウカ「「「「!?」」」」

私のユウキの脳内に、決心したライトの声が響いた。

シルク〈でもライト!!あなたの正体を…明かす事になるわよ!!〉

ライト!!私は絶対に戦わない方がいいと思うわ!

ライト「でも、みんなが闘っているのに、わたしだけ見ているだけなんて……出来ないよ!!それに、ここで戦わなかったら何のためにここまで一緒に旅して来たのかわからないよ!!」

ライトは必死に訴える。

ルビー・ユウキ「闘うって……ライトさん?」「……分かった。その代わり、僕のサポートにまわってもらうよ。」

シルク〈ユウキ!!でも……〉
ユウキ「こうなったのも、情報を完全に集めきれなかった僕のせいだから……。そのせいで自らが封印を解いてしまった………。僕が招いた結果だ………。だから、責任は全て僕にある!!………1人の考古学者として……、[絆の賢者]として……、1人のトレーナーとして……。………仲間を守るため……、そして、シルク!君の兄として!!」
シルク〈ユウキ………。〉

私の兄は、口を挟んだルビーさんに構わず、真剣に私に訴えた。

表情が………変わった?

こんな表情のユウキ………見たことないわ……。

……何か、決心したのね……………。

………なら………

シルク《わかったわ……。なら、私も妹として、全力でサポートするわ!!》

ユウキ、私も闘うわ!!

ユウカ・アオイ「えっ……!?兄…?妹…?」《彼の言う通り、ひとりでも戦力が多い方が良いわね……。………分かったわ、ライトがそのつもりなら、私も全力で向かう!!》

絶対に、止めないと!!

ユウキ「……うん!…」

兄は真っ直ぐ相手に睨みを効かす。

ユウキ「…ライト、待たせたね!………[絆]の名の下に……〈」……いくよ!!〉

シルク・ライト〈ええ!!〉「うん!!《」わたしも伝説……だから……、何としても止めないと!!》

ルビー・ミツル「「!? ライトさん!?」」

ユウキは姿を変え、ライトも光を纏う。

やがて、光が収まる……。

ユウキ・ルビー〈ライト、[デオキシス]の所までお願い!!〉「まさか……[ラティアス]!?………初めて見た………。」

ライト〈任せて!!〉

ユウキは変化を終えたライトに飛び乗り、すぐに加速した。

私とアオイさんもその後を追う。



ベータ「まさか………ここまでとは……。」
デルタ「4人でかかっても全く歯が立たないなんて……。」
アルファ「それよりもガンマ、あんたもいい加減闘いなさいよ!!」
イータ「あと、私達に戦わせておいて、その口のききかたは無いわ!!」
ガンマ「これは俺のプロジェクトだ!!そんな事、知ったことか!!」

“グリース”……もはや分裂寸前ね……。

ガンマがあの態度なら、無理ないわね………。

アオイ《あんた達、ここからは私達がいくわ!!〈》[火炎放射]!!〉
シルク《だから、下がってて!!〈》[目覚めるパワー]、[サイコキネンシス]!!〉

ライト・ユウキ〈[竜の波動]!!〉〈[10万ボルト]!!〉

私達は彼らの前に立ち、アオイさんは燃え盛る火炎を、私は竜を秘めた暗青色の弾をそれと混ぜ合わせる。

あまりエネルギーが無いから、操ることは出来ないけど……。

ユウキはライトから飛び下りながら高電圧の電撃を放ち、ライトは私と同色のブレスを放出する。

デオキシス〈目障りだ……[サイコキネンシス]!〉

相手も私達の攻撃に対こ………!?

全部受け止めた!?

そして、そっくりそのまま私達に向けて放たれる。

アオイ・シルク・ライト・ユウキ〈〈〈〈!??〉〉〉[大文字]!/[シャドーボール]!/[ミストボール]!/[目覚めルパワー]!〉

咄嗟に、私達は技を放ち、迎え撃つ。

シルク〈くっ……強い。〉
ライト〈威力を弱めたのに……。〉
ユウキ〈本当に……歯が立たない……。〉
アオイ〈こうなったら……。〉

えっ!?

技で軽減したのに!?

嘘でしょ!?

威力が落ちてない!?

……くっ。

かなり削られた。

アオイさんは光を纏う。

アオイ〈[ミストボール]連射、[流星群]!!〉

そして、いくつもの純白な弾と共に、竜のエネルギーを打ち上げた。

アオイさんの技なら………いけるかもしれない!!

デオキシス〈無駄だ……[ミラーコート]!!〉

相手はシールドを張り………!?

アオイ・ライト・シルク・ユウキ〈跳ね返された!?/嘘でしょ!?〈[竜の波動]!!〉〉〈!?[サイコキネンシス]、[瞑想]!!〉〈!?かわせない!?[10万ボルト]!!〉

!?全然攻撃出来ない!?

よにんでも!?

ユウキ・シルク・ライト・アオイ〈〈〈〈くっ!!〉〉〉〉

防ぎきれず…………大ダメージを………受けた………。

このままでは………マズい………。

やられる………。

ダメージに耐えられず、………ライトと………アオイさんは………墜落した……。

ここまで…………技が効かないと………心が折れそうに………いや………もう………私は折れかかっているわ………。

ライトに……アオイさんも……起き上がれない……様す………

ユウキ〈諦めて……なるものか!!〉
シルク〈ユウ………キ……。〉

しかし………[絆]の名を背負った……[ピカチュウ]………ユウキだけが………立ちあがった。

チラッと振り返り……、

ユウキ〈絶対に………守らないと……!!〉

すぐに………向かっていった……。

…………?

黒いはずの…………瞳が………青かった………ような………?

気のせいよね……?

それに、守備力が………上がったような………。

いや………そんなはずはないわ………。

ユウキは一気に距離を………詰め………、

ユウキ〈[気合いパンチ]!!〉

浮遊している………[脅威]を狙って………跳びあがり…力を溜めた拳を……振りかざす………。

デオキシス〈[サイコカッター]!!〉
ユウキ〈ぐっ…………!!〉

拳は相手を……捉えきれず………、代わりに………超能力で形成された………刃が、ユウキに命中する。

ユウキは………派手に吹き飛ばされる………。

ユウキ〈まだ…………だ![10…………万……………ボルト]………!!〉

ユウキはまるで………とりつかれたように立ち上がり……攻撃する。

体中傷だらけで………もう体力も限界の………はずなのに………。

デオキシス〈[サイコキネンシス]!!〉

電撃を超能力で拘束し、………私達めがけて………放たれる…。

ライト〈!? うごけない………。〉
アオイ〈私達も…………ここまでね………。〉
シルク〈やられたわ………。〉

私達は結末を覚悟し、目を堅く閉じた。

……………………………?

シルク〈………ダメージが……………ない………?いや………少ない……………?〉
ライト〈ユウキ…………くんの………技の…………………はずなのに………。〉
アオイ〈有り得……………ない………わ………。守備……………力を…………上げる………技を………誰も……………使って…………ないのに………。〉

あの[デオキシス]が…………打ち返した……………………技なのに…………。

何故……………私達の……………体力は…………残ってる…………の?

……………全く………………わからないわ…………。

???〈まさか、このタイミングで覚醒しましたか………。〉

私達が………何とか…………意識を………つないでいる…………所に…………、1つの………聞き慣れた…………声がした。

■筆者メッセージ
初の7000文字超え。

謎の守りの正体は次回明らかになります。
@ ( 2013/11/27(水) 01:38 )