ninety-eighth
AM9:30 キナギタウン西方 海上 sideシルク
ユウキ・シルク〈〈……ゴホッ……。〉何とか……… 間に合っだ………。/危なかったわ…………。〉
私達は辛うじて、海の藻屑にならずに済んだ。
……本当に、危なかったわ………。
あの洞窟があと少しでも深い場所にあったら私達……、絶対に窒息していた……。
あいにくエネルギーを全部使いきったけど、生きているだけで十分ね……。
私は深く空気を吸い込む時に水まで吸い込み、むせかえった。
ユウキ〈シルク、大丈夫!?〉
シルク〈ええ、何とか。ユウキこそ。〉
ユウキ〈脚の筋肉が悲鳴をあげてるけど、ギリギリOKだよ……。〉
ユウキはハハハと、軽い笑みを浮かべながら呟いた。
それもそうよね。
[ピカチュウ]の足は人間のそれよりも短いから、泳ぐのには適さないのよね………。
独特な足の使い方をする平泳ぎとなると、尚更ね………。
4足歩行の私にはできない芸当ね……。
シルク〈明日はきっと筋肉痛になるわね。〉
私を笑みを浮かべて答えた。
シルク〈……にしても、潮の流れが速いのは気のせいかしら?〉
ユウキ〈言われてみれば、そうだね。立ち泳ぎしてるだけなのに、流されてるような感じがするし……。〉
今気づいたけど、川並みに流れが速いわね………ここ……。
私達………完全に潮の流れに乗ってるわね……。
このまま流されても大丈夫なのかしら……。
シルク〈私達、海流に乗ってるわね。〉
ユウキ〈みたいだね。………あっ、そうだ……。コルドに無事だって知らせないと……。〉
コルドに?
……ああー、そういえば、ユウキとコルドって[絆のチカラ]で繋がっていたわね。
危うく忘れるところだったわ。
私の兄は思い出したように言った。
シルク〈なら、さっき得た情報も伝えた方が良いわね。……現地にいるよにんには特に……。〉
私達以外はその事は何ひとつ知らないから、大至急知らせる必要があるわ!
それに、今ライト達がいる[カナシダトンネル]は結界の中心、間違いなく“グリース”との戦闘が起こるわ。
最悪の場合、封印が解かれて[デオキシス]と戦う事になるかもしれない………。
流れ着く場所によっては私達がそこに着くまでかなり時間がかかる可能性だってある……。
ルネシティーに取り残されたフライとリーフにもまだ連絡してないから……。
ユウキ〈うん。ついでに伝えておくよ。〉
ユウキ、頼んだわよ!
ユウキは意識を集中させ、コルドと意思伝達を試みた。
………
20分後 カナシダトンネル外部 sideスーナ
コルド〈…………と、言ってました。〉
……………まさか、ここが結界の中心だったなんて………。
それに、封印の1つが解かれたなんて……本当にマズくない!?
コルドの話によると、[古代都市]の封印もまさに解除されようとしているみたいだし……。
そして何より………
オルト〈どおりで、これだけ下っ端がいる訳だ……。[波動弾]!!〉
スーナ〈やっと謎が解けたよ♪[冷凍ビーム]!!〉
ライト「スーナの推測通り、ここが重要な場所だったからだね。」
……この状況……。
ウチら、沢山の集団に囲まれてるんだよ………。
ウチらは背中合わせになって技をしのぐ……。
相手の実力は低いとはいえ、完全に四面楚歌……、空以外逃げ場がないよ……。
一応、用が済んだらここでアオイさんとソウルさんと合流する事になってるけど……、それまでは保つよね……?エネルギー的に……。
オルトは青い弾をいくつも連射し、ウチは凍てつく冷気で正面を凪払う。
ライトは姿を戻すタイミングを逃したから、囲まれているウチらに指示を出してくれているよ。
……くっ、敵が多すぎる!!
キリがないよ!!
………でも、まだアルファ、ベーダ、ガンマ、そして他の幹部はいない。
これが不幸中の幸いかな?
ライト「……とにかく、ユウキくん達が着くまで少しでも多く数を減らしておかないと!!」
スーナ〈うん♪!! コルド、ウチらが相手するからフライ達にも伝えて!!〉
ウチらの中で一番守りが堅いコルドなら、例えウチらが防ぎきれなくても多少は大丈夫だよね?
コルド〈はい!!任せて下さい!!〉
コルド、頼んだよ!!
………
同刻 カイナシティー付近上空 sideフライ
コルド『フライさん、リーフさん。大至急僕達の所に来て下さい!!』
リーフ〈でも、コルド!ユウキは!?〉
コルド!?正気?
ユウキくんとシルクは今海流に流されてるんだよ!?
ライトちゃん達が動けない今、ボク達が向かうべきなのに、どうして!?
ボク達はマイク経由でコルドを問いただした。
コルド『ユウキさんと相談した結果、戦闘が起きている方を優先してほしい、という事になったんです!!』
フライ〈でも、それだとユウキくん達となかなか合流できないよ!〉
ボクは声を荒げ、コルドに反論した。
コルド『これは推測ですが、ユウキさんは地元の飛行タイプのポケモンに頼んで連れてきてもらうつもりなのだと思います!』
リーフ〈という事は、ユウキは心配するなって言っているんだね!?〉
コルド『そうです!』
………わかったよ。
ユウキくんの言うことなら、信じるしかないね。
フライ〈…………わかったよ。リーフも、いいよね?〉
リーフ〈うん。ユウキがそう言うなら……。〉
ボク達は、コルドの提案に従う事にした。
コルド『助かります!! では、お願いします!』
それだけ言い残し、通信は遮断された。
……という事は、ボクはこのまま[カナシダトンネル]に行けばいいんだね?
リーフ〈フライ!〉
フライ〈うん!!〉
だから、みんなの為にも急がないと!!
ボクは翼に力を込め、今まで以上に羽ばたくスピードを早めた。
待ってて!!
今いくから!!
………
同刻 ??? sideソウル
ソウル〈ここに来るのは初めてだけど、あのひとなら………。〉
[氷の封印石]も奪われた………。
もしかすると、封印が解かれるかもしれない……。
………そうなるとホウエン地方……いや、世界が危ない!
宝具を護る者として、何としてでも最悪の事態を防がないと!!
僕は万が一の事を考え、あるひとの元へと向かった。
………会うのは3回目だけど………、[伝説]には、[伝説]で……。
おそらく僕の実力では到底及ばない。
だから………。
ソウル〈……ティスさん、居ますか?〉
僕はそのひとの名前を呼んだ。
ティス〈……この声は確か……ソウルだな?〉
ソウル〈はい。 今、下界では[ホウエンの結界]が破られようとしています………。8年前と同じように、また力を貸していただけますか?〉
僕は浮遊したまま、彼に失礼が内容に丁寧に嘆願した。
ティス〈この地方に君臨する者として、見過ごせないな……。……わかった、我が輩もソウルに加担しよう……。〉
ソウル〈ありがとうございます!!ティスさんに協力してもらえるとなると、心強いです!!〉
本当に、ありがとうございます!!
ティス〈加担するにあたって、状況が知りたい。話してくれるか?〉
ソウル〈はい。……〉
本当には簡潔に説明し始めた。
………
sideリーフ
フライ〈……あっ!あの人ってもしかしてミツルさんじゃないかな?〉
リーフ〈えっ!? ミツルさん!?〉
えっ!?
僕はフライに言われたまま、眼下に目を向けた。
……うん!あの人は間違いないよ!
[サーナイト]のミンクさんがいるから、確実だよ!!
リーフ〈……うん、間違いないね!ミンクさんは[テレパシー]が使えるから、いこう!フライ!お願い!〉
フライ〈うん!ボクもそのつもりだったよ!!〉
頼んだよ!
フライは絡みついた僕を乗せたまま高度を落とした。
リーフ〈ミンクさん!!〉
ミンク〈えっ!? 上!?〉
澄んだ声でミンクさんは驚きの声をあげ、僕達の姿を探した。
ミツル・リーフ「!?」〈はい!ミンクさん、ミツルさんに伝えたい事があるんです!!〉
僕は精一杯の声で言い放った。
鳴き声だけでも、ミツルさんに聞こえているはず……。
ミンク〈えっ、ええ。わかったわ!〉
リーフ〈じゃあ、話しますね!……〉
そうこうしている間に、フライは地面に降り立ち、僕は彼の背中から降りる(………というより、彼に絡みつくのを止める)。
僕とフライは、今までに分かった事と、事態の緊急性を彼女に伝えた。
リーフ〈…………あと、この事をルビーさんとカエデにも伝えるてほしいって伝えてもらえますか?〉
ミンク〈分かったわ!!ふたりが言った事、正確に伝えるわね!!〉
ミンクさん、お願いします!!
………
ルネシティー sideーーー
カエデ「はい!俺も今すぐに向かいます!」
ユウカ「カエデさん、私も行きます!!」
カエデ「いや、君を巻き込む訳にはいかんよ!!」
ユウカ「でも、聞いちゃったから無視出来ませんよ!!」
カエデ「いや、でもそういう訳には……」
ユウカ「カエデさんが止めても私は行きます! そこに、私の大切な友達がいるはずだから……。だがら、その友達の手助けをしたいんです!!それに、私ももう一人前のトレーナー。それにもうリーグへの挑戦権を持ってます……。だから……行かせてください!!」
カエデ「………そこまで言うなら………。分かった。なら、いくで!!」
ユウカ「はい!!」
………
sideユウキ
ユウキ〈あの街はもしかして!カイナシティー?〉
シルク〈あの建物と船からすると……、間違いないわね!〉
あれから30分ぐらい流され続け、ようやく海流から抜け出せた。
……うん、あの街は絶対にそうだよ!
もう2回も来てるから・間違いない!
ユウキ〈シルク、まずは上陸しよう!〉
シルク〈ええ!ユウキは、姿を変えるのはその後ね!〉
うん。
僕達は念願の大地に向けて泳ぎ始めた。
………一刻も早く皆と合流する事しないと!
それに、カエデにルビーさん、ミツルさんに伝えないといけない!!
だから………早く…………。