とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§16 gravity
ninety-seventh
AM8:50 キナギタウン付近上空 sideリーフ

リーフ〈ライト、オルト、スーナ、コルド、聞こえる!?〉

蔓はフライにしがみつくのに使ってるから、僕は彼の背中に押しつけて電源を入れた。

兎に角、ユウキの身に起きた事をよにんにも知らせないと!!

ライト『うん、聞こえるよ!連絡を………』
リーフ〈大変だよ!!〉

僕はライトの声を遮り、声を荒げた。

スーナ『えっ!?リーフ、そんなに慌ててどうしたの!?』
コルド『まだ早いですが、何かあったのですか?』
オルト『リーフが取り乱すとなると、相当だな。』

よにんとも、僕の声を聞いて当然の反応をする。

リーフ〈単刀直入に言うよ!………ユウキとシルクが、“グリース”のガンマに、拉致された………。〉

ライト・スーナ『『えっ!?あのふたりが!?』嘘でしょ♪!?』

オルト『リーフ、詳しく教えてくれ!!』

リーフ〈うん。……〉

オルト、最初からそのつもりだよ!!

ここからフライも加えて、事件の要項を話し始めた。

何とかして、ユウキ達を救出しないと!!

………

5分後 カナシダトンネル外部 sideライト

ライト「[御触れの石室]?」
リーフ『うん。直前にそう言ってた。』

まさか、ユウキくん達が連れ去られるなんて……。

それに、何回語りかけてもユウキくんとシルクだけ応答が無いよ………。

ふたりとも、大丈夫かな……。

スーナ〈うーん……、[御触れの石室]なんて、聞いたことないよ……。〉
コルド〈この地方である事は確かですけど……〉
オルト〈名前以外の手がかりが全く無いな…。〉
フライ『今のところ、そんな名前の遺跡は出てこなかったもんね……。』

うん………。

本当にどうしよう……。

一応、私達は山の外壁に何かの印みたいな物を見つけたけど、それ以外は何も無かったし……。

オルト〈………!コルド、[絆のチカラ]でユウキと交信を試みてくれないか?〉

………あっ!そっか!!

その手があったね!

すっかり忘れてたよ。

そういえば、ユウキくんとコルドって、離れていても会話できるって言ってたっけ?

コルド〈あっ、最初からそうすれば良かったですね。うっかりしてましたよ……。〉

コルドも忘れてたんだ……。

これを買ってもらってからずっとこれに頼ってたもんね。

リーフ『じゃあコルド、頼んだよ!』
コルド〈はい!任せて下さい!!〉

コルドはそれだけ言うと、意識を集中させた。


コルド、今ユウキくんと話せるのは君だけだよ!

だから………お願い………。

………

同刻 御触れの石室 sideユウキ

ユウキ〈よし……。エネルギーを使い切ったけど、何とかなったかな……。「〉ガンマ、僕達が勝った。だから僕達を解放してもらおうか!」

僕は姿を元に戻しながら言い放った。

ガンマ「…………ハッハッハッ…」
シルク《何が可笑しいのよ!!》
ガンマ「お前達が勝った? バトルでは俺は負けたが、作戦は成功したからな!!」

何が可笑しいのか、ガンマはあざ笑った。

僕達が勝ったのに、どこが成功したっていうんだ!!

ユウキ「作戦?足止め以外にも有るって言うのか!?」
シルク《私達が勝ったのだから、私達に知る権利はあるはずよ!!だから、大人しく白状してもらうわ!!》
ガンマ「……フッ……、いいだろう……。もう済んだ事だ。特別に教えてやろう……。」

そう言い、ガンマは落ち着いた様子で語り始めた。

………勝ち誇ったように笑みを浮かべながら……。

ガンマ「この洞窟には奇妙な言い伝えがある……」

ユウキ・シルク「《言い伝え?》」

ガンマ「…現代訳はこうだ………。{遥か昔、未曽有の脅威を封じる者がいた。その者の偉業をここに記す。[脅威]を4重の守りで封じる。中心は岩、氷、鋼の化身にて、それを3点の史跡に封じる。更にその空間を3色の秘宝で封じ、その史跡の入り口をこの地にて封印する。封印の生け贄となった[古来の生]に始まり、[青の巨影]に終わる6つの命をここに称える。}………。また、その史跡のうちの1つにも伝承がある………。{海原の底にて[起]に[古来の生]、[結]に[青の巨影]を従えし6対の者滅びし時、[終焉]の初めし時来たれり。}………。ここで[古来の生]と[青の巨影]はあるポケモンを表している。それが何か分かるか?」

[古来の生]…………?

[青の巨影]………?

…………僕達が調べた伝承と完全に一致している………。

[3点の史跡]は[失われた古代都市]の事を、[3色の秘宝]はそれぞれの[封印石]の事を表している………。

属性も一致しているし、伝承が示している場所もここで間違いない………。

全てが一致しているから、例え敵の情報であっても信憑性が高い……。

そうなると、気になるのが[古来の生]と[青の巨影]を表す種族………。

あと、頻繁に出てくる[6]という数字………。

それに[起]と[結]が表す意味………。

[6]といえば、規定で定められているトレーナーの所持可能ポケモンの数と同じ………。

…………今思い出したけど、確か四字熟語に[起承転結]というのがあった………。

ここでの意味は、[起]が問題提起………つまり論の[始まり]……、[結]が結論………つまり論のまとめ………、いわゆる[終わり]………。

ひょっとして、この2つば順番を表しているのかもしれない………。

[古来の生]は最初、[青の巨影]は最後っていう事になる……。

シルク〈ユウキ……、改めて考えてみたんだけど、私が最初に倒したのは[ジーランス]だったわよね?〉
ユウキ「うん。僕が最後に倒したのは[ホエルオー]だった………。ホエルオー!? もしかして、[青の巨影]は[ホエルオー]の事を!?」

シルクの助言により、僕の脳裏に電流に近い何かが流れた。

………次第に散らばっていたパズルのピースが埋まっていく……。

ガンマ「その通りだ。」
シルク〈となると、[古来の生]は[ジーランス]になるわね。…………えっ!?〉

シルク、僕も今気がついたよ!!

ユウキ・シルク「《封印の1つが解除された!?》」

僕とシルクは同じ結論に至った。


!!?

ガンマ「ようやく気づいたか。 そうだ。俺の真の目的は[史跡]の封印を解く事だ!!」

ガンマはまた勝ち誇ったように言い放った。

……まさか………陥れられた!?

くっ…………気付くのが遅かった………。

僕は事の重大さにやっと気がつき、苦汁を飲んだような気がした。

クソっ!やられた……。

シルク《まさか、封印を解かせるために、私達を利用したという事!?》
ガンマ「ああそうだ。それぞれの[史跡]、[結界の中心]には既に他の幹部が向かってる。今頃2つ目の封印も解いた頃だろう……。だから、もうお前達にはもう止められないのさ。つまり、作戦は大成功という訳だ!!もし止めたければ、[結界の中心]………、[カナシダトンネル]の外部に来るといい。………その前に、ここから脱出出来たらの話だがな!![キルリア]、シダケタウンに[テレポート]!!」
キルリア〈………[テレ………ポート]……。〉

ガンマは直ぐにキルリアを出し、僕達を残して姿を消した。

…………もっと早く気づいていたら………。

………でも、こうなったら、もう後戻りは、できない……。

…………ん?まって………。

[カナシダトンネル]って確か………

ユウキ「!!シルク!!」
シルク〈言いたいことは分かってるわ。[カナシダトンネル]に向かうのよね?〉

僕は妹に目で語りかけた。

もちろん!

ユウキ「そうだよ!〈」そのためにも、ここを脱出しないと!!シルク、泳げるよね!?〉

姿を歪ませ、手短に伝えた。

シルクなら、これだけ言えば分かるよね?

シルク〈ええ![サイコキネシス]を使えば何とか泳げるわ!〉

ここで僕達は洞窟の入り口である海水の元へかけていく。

ユウキ〈なら、頼んだよ!!〉

顔を見合わせ、頷く。

シルク〈[サイコキネンシス]!!〉

覚悟を決め、漆黒の海底に飛び込む。

それと同時に、シルクは僕と彼女の頭の周りに超能力で空気の層をつくりだす。

ユウキ〈やっぱり、何も見えない……。シルク、まだいける?〉

これだけ暗いと、行く先も分からない……。

有りっ丈のエネルギーをかき集めれば1回分ぐらいはありそうだけど……。

電気タイプの技だと、そのタイプの僕でも感電してしまう…。

[目覚めるパワー]だと、僕のは炎だからなにもしないと消えてしまう……。

もし可能なら、シルクにコーティングしてもらえば………、少しだけど灯りになるかもしれない……。

僕は隣で必死にみずをかくシルクに尋ねた。

シルク〈[瞑想]で強化すれば何とか……。〉
ユウキ〈なら、僕の[目覚めるパワー]を拘束してくれる?〉

普段の姿よりも短い手足に苦戦しながら、僕は平泳ぎで進み続ける。

シルク〈………わかったわ。[瞑想]………。〉
ユウキ〈[目覚めるパワー]!]〉

シルクは無言で意識を集中させる。

僕は周りの海水に触れないように注意しながら、シルクが辛うじて作り出した気泡の中に、僅かに残ったエネルギーを全て紅蓮の炎に変換して蓄積させた。

シルク〈………何とか、できたわ………。でも、5分が限界かもしれないわ………。〉
ユウキ〈5分か………。わかったよ。海面の方向もわかったし、急ごう!!〉


僕達は微かに光る燈だけを頼りに、遥か先の外界を目指した。

何とか……間に合って……!!




3分後 

コルド『ユウキさん、聞こえますか?』
ユウキ(!? コルド!? ……そっか。[絆のチカラ]か……。)

進む先に微かな光が見え始めた頃、僕の脳内にコルドの声が響いた。

コルド『拉致されたそうですが、大丈夫ですか!?』
ユウキ(うん。今、脱出している真っ最中だよ……。でも、あまり状況は良くないね…。)

そろそろ、筋肉が痛くなってきたよ………。

人より丈夫なポケモンの身体でも、流石に厳しいよ……。

なにしろ、戦闘の直後に全力で泳ぎ続けているから……。

水タイプじゃない僕達にとって、水中での移動はかなり難しいから……。

コルド『本当ですか!?』
ユウキ(うん。あいにく、連れ去られた先が海底の洞窟で、今も泳いでいる真っ最中だよ……。)

手足に力をこめながら、強く念じた。

たぶん、あまり時間は残されてない……。

ユウキ(……だから、完全に脱出できたらまた連絡するよ!)

ここで僕は念じるのを止めて、泳ぐ事に専念する。

コルド『はい!わかりました!!だからまずはお二人が無事だと伝えておきますね!!』

コルド、頼んだよ………。


………大分、水面からの光が強くなってきた……。

あともう少し………。

シルク〈ユウキ………、もう限界……だわ……。〉
ユウキ〈………わかった。ありがとう………。なら、ここからは自分の肺活量だけでいくよ。このまま行けば20秒ぐらいで到達するはずだから!!〉

僕はそう言い、残された空気を思いっきり吸い込んだ。

シルク〈……一か八かの賭けね……。〉

シルクも、深く吸い込んだ。


僕達は死に物狂いで海水をかく………。

あと10m………

8…………

6………

4……

2…

あと………少し………。

もう………限界だ………。

ユウキ〈…………っ。〉

遂に僕の口から大量の空気が漏れ出た。

………マズい……。

……50cm……

25………

10………

意識が……朦朧と……してきた………。

5…………

2………

1……

ユウキ・シルク〈〈……ゴホッ……。〉何とか………間に合っだ………。/危なかったわ…………。〉

間一髪、念願の大気にたどり着いた。

大体5分ぶりの空気…………。

今日ほど酸素がありがたいと感じた事はないよ………。

むせたけど、僕達は新鮮な空気をとり入れた。

@ ( 2013/11/23(土) 00:30 )