とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§16 gravity
ninety-fifth
AM8:00 トクサネシティー sideユウキ

ユウキ「とりあえず、出発しようか。」

僕は側に控えている旅仲間を見渡し、高らかに宣言した。

……会議の結果、僕達は予定通りルネシティーに向かうことになったよ。

本当は僕達が[氷の封印石]を確認しにいくつもりだったんだけど、確実な場所を知っているアオイさんが行くことになったんだよ。

[キュウコン]の姿の彼女の実力はもはや常識を越えていたから、心配ないかな?

………まさに、“伝説”に相応しいくらいだよ。

あと、ソウルさんはライト達に[封印の鍵]を託したらしい……。

ライトの実力も上がってるし、オルトとスーナ、コルドがいるからこっちも問題なし。

当の本人は、何か思い当たる事があったみたいでホウエンの各地を飛び回っているらしい。

姿、見られないか心配だけど………。

そして、[封印の鍵]を預かったライト達はスーナの提案でカナシダトンネルの調査。

スーナはそこに封印されているって思っているみたいで、昨日の調査内容をまとめてから向かうって言ってた。

スーナ達、1日でとんでもない発見をしかからね、流石にオルトでさえ整理出来てないと思うよ。

……少なくとも、僕では無理だと思うから……。

ライトの話によると、ユウカもトクサネシティーに来ているみたいだけど、結局会えてないよ。

シルク〈そうね。早めにジム戦を終わらせて調査に時間を割きたいもの、それが得策ね!〉
リーフ〈僕が中心的に闘えば案外早く終わるかもね!〉
フライ〈最後は水タイプだもんね!〉

さんにんは今日の予定に心を弾ませて明るく答えた。

シルク、リーフ、フライ、僕も同じ気持ちだよ!

ユウキ「うん。だから、最後は昨日戦ってないリーフが先発でいいかな?」
シルク〈ユウキ、あなたならそう言うと思っていたわ。もし私がユウキの立場なら、同じ事をしたと思うわ。〉
フライ〈ボクも、昨日戦ったからリーフに譲るよ。〉

流石、僕の妹、考える事は同じだね!

兄弟は似るとも言うから………、まさにその通りだよ。

さんにんとも、僕の意見に賛成してくれた。

ユウキ「みんな、ありがとね。」
シルク〈闘うメンバーも決まったから、行きましょ!〉

シルクが弾けんばかりの笑顔で言った。

フライ・リーフ〈〈うん!!〉じゃあユウキ、いつも通り頼んだよ!〉

シルク〈フライもね!〉

フライ〈もちろん!〉
ユウキ「うん!」

フライのグーサインで応え、僕はふたりのボールを取り出しながら答えた。

そして、そのふたりをボールに戻し、

ユウキ「フライ、場所は分かる?」
フライ〈ライトちゃんに大体の位置と特徴を聞いてるからたぶん大丈夫だよ。〉

彼の背中に跨がりながら語りかけた。

それに彼も元気よく答える。

フライ、頼んだよ。

僕を乗せたフライは翼を大きく羽ばたかせ、宙を舞った。

そして、風を切り、尻尾を靡かせ、目的地を目指した。

………

AM8:30 ルネシティー上空 sideユウキ

フライ〈………ええっと、たぶんここだよ。〉
ユウキ「この島? がそうなんだね?」

時間にして大体30分、目的の島………というよりはカルデラと言った方がいい地形の島が姿を現した。

地盤沈下によってできた窪地に水が溜まり、陸地と勢力を争うかのように限られた範囲に広がっている。

例えるなら、底の浅い皿に盛られたカレーライスだね。

フライ〈うん。岸壁に囲まれている島って言ってたから、間違いないよ。〉
ユウキ「見た感じ、センターもあるから、確実だね。」

きっとそうだよ。

僕は情報と景色が一致し、最後のジムがある町だと確信した。

フライ〈うん! じゃあユウキくん、しっかり捕まって!〉
ユウキ「フライ、掴んだよ。」

フライは横目で促し、僕を背中に乗せたまま重力に身を任せて降下した。


………

ルネシティー sideユウキ

フライ〈よし、ユウキくん、お待たせ。〉
ユウキ「うん、ありがとね。」

フライはジムがある小島に降りたった。

いよいよ、この地方最後……、16回目のジム戦……。

慣れてるはずなのに、何故か緊張してきたよ……。

僕はこれから挑む関門(最後のジム)をまっすぐ見つめた。

フライ〈…………ユウキくん、最後のジム戦、頑張ってね!〉
ユウキ「うん。 悔いが残らないように精一杯やってくるよ。」

僕はフライの激励に応え、彼のボールに手をかけた。

フライ〈じゃあ………。〉
ユウキ「うん。」

彼は一度頷き、赤い光と共にボールに収まった。

………よし、行こう。

僕は仲間の思いと共に、ジムの入り口をくぐり抜けた。

………

ジム内 sideユウキ

ユウキ「すみません、ジム戦をお願いします!」

僕はいつもの決まり文句を高らかに宣言した。

アダン「ほう、こんな朝早くから挑戦だなんて、珍しいね〜。」

僕の声を聞き、ダンディーなジムリーダーが欠伸をしながら、奥から歩いてきた。

ユウキ「この後にも予定が詰まっているので。 ユウキと言います。使用ポケモンは3体ですよね?」

僕はある程度予想して、ルールの確認をした。

アダン「いや、ここは使用ポケモン2体の勝ち抜きでいかせてもらうよ〜。」
ユウキ「という事は、入れ替えは無しですね? わかりました。」
アダン「君は物わかりが早くて楽だよ〜。では、始めようか。」
ユウキ「はい!望むところです!!」

僕達の宣言と共に、僕にとって16回目のジム戦が幕をあけた。

最初から、全力でいかせてもらいますよ!!

………

sideリーフ

ユウキ・アダン「[絆]の名の下に……、リーフ、いくよ!!」「ミロカロス、頼んだ!」

リーフ・ミロカロス〈もちろん!〉〈今日最初の相手ですね…。〉

僕はユウキの期待に応えるべく、自らを奮いたてた。

ミロカロス〈あなた、見かけない種族ね…?[リーフ]というのはニックネームかしら…?〉

可憐な容貌の彼女が、凛とした様子で僕に訊ねた。

リーフ〈いや、これは僕が野生の時からの名前…………、本名だよ!〉
ミロカロス〈本名ね…。 久しぶりに、私も名乗ろうかしら……。[ミロカロス]のフィア、丁重にお相手させてもらうわ!〉

[フィア]っていう名前なんだ……。

……関係ない話だけど、彼女、絶対にモテるよ。

………あいにく、僕のタイプじゃないけど……。

ユウキ「リーフ、いつも通り頼んだよ!」
リーフ〈もちろんだよ!〉

僕はいつもの作戦を確かめた。

アダン「では、いこうか。[ハイドロポンプ]!」
フィア〈様子見といこうかしら。[ハイドロポンプ]!〉
リーフ〈じゃあ僕は、[リーフブレード]!〉

相手のフィアは僕に接近しながら高圧の水流を放つ。

僕は尻尾に力を込め、それを元に草の刃を形成した。

そして、僕も接近を開始する。

水流まで3m………。

フィア〈あら、開始早々血迷ったかしら?〉

相手は僕の行動に毒舌で答えた。

水流まで2m………。

リーフ〈これが僕の作戦だよ!〉

僕は進行方向を僅かに左に逸らして草の刃を地面に打ちつける。

水流まで1m………

僕は打ちつけた反動で跳びあがった。

ユウキ「もう一発[リーフブレード]!」

ユウキは咄嗟の判断で僕に指示を出す。

フィア〈跳んだ!?〉

僕の思わぬ行動に、フィアは狼狽える(うろたえる)

ユウキ、わかったよ!!

0m……

僕のすぐ斜め右下を水流が虚しく通過。

リーフ・アダン〈もう一発、[リーフブレード]!〉「[アクアテール]で迎え撃つのだ!」

フィア〈まんまとかわされたけど、これならどう?[アクアテール]!〉

僕は再び技を構え、対してフィアは尻尾に水の刃を形成した。

おそらく、相性的にも、実力的にも僕の方が有利……。

僕の刃の射程範囲まで1m………。

僕は気付かれないように光の蓄積を開始……。

0m………、

僕は刃を真上から振りかざした。

相手もそれに応じ、水のそれで応戦する。

フィア〈ここまでジムを制覇してきたのも伊達じゃないわね!〉
リーフ〈そっちこそ、最後のジムに相応しいよ。……だけど、まだまだだね。〉

相討ちとなり、僕は上空に飛ばされた。

………相手はまだ全力を出してないとはいえ、ある程度の実力はわかったよ。

………よし、ここから一気にいこう!

アダン・リーフ「[冷凍ビーム]!」〈[リーフストーム]!〉

僕は相手の視界を遮るように草の嵐を引き起こし、重力に身を任せて降下する。

フィア・リーフ〈[冷凍ビーム]!〉〈!? [リーフブレード]!〉

相手は凍てつく冷気を一直線に放出した。

その冷気は僕の葉を凍らせ、氷片へと変貌させた。

………[冷凍ビーム]を使われたのは想定外だったけど、当初の目的である目眩ましは成功した!

僕は氷壁の裏で刀を構えた。

リーフ〈悪いけど、一発で仕留めさせてもらうよ!!〉
フィア〈!? しまった!! くっ!!〉

相手の意表を突き、草の刃はフィアの脳天を正確に捉えた。

………よし、手応えあり!

アダン・リーフ「!? 一度体勢を……」〈追撃、[リーフブレード]!〉

僕はこの体勢のまま身体を右に捻り、彼女の胴を凪払った。

フィア〈………私が………あっさり……やられるなんて………。〉

視界を遮られたフィアは為す術なく崩れ落ちた。

アダン「まさか………指示無しでやられるとは………。」
ユウキ「必要な時だけ指示を出す………、これが僕のチームの戦法ですから。あと、これでも星、持ってますから。」

ユウキの言う通り、彼は必要な時以外全く指示を出さないよ。

ユウキ曰わく、判断力と戦術の強化を図るためみたいだよ。

それと、僕達の判断で動くから、ワンテンポ早く行動できる利点もある。

僕はこう解釈してるよ。

アダン「どうりで……。トドゼルガ、気を引き締めていくのだ!」
トドゼルガ〈……なかなかの手練れらしいな……………。〉

続いて、[トドゼルガ]…。

彼の種族は知ってるよ。

氷タイプ………、僕にとっては厄介な相手だよ……。

ユウキ「僕の方が不利ですが、負ける訳には行きません!リーフ、引き続き頼んだよ!〉
リーフ〈うん!〉

僕は相手を見据えたまま頷いた。

………光も溜まったし、これを上手く利用すれば………いける!

アダン「[アイスボール]!!」

早速、氷技か………。

トドゼルガ〈任せな![アイスボール]!〉

相手は無数の氷塊を僕に飛ばした。

リーフ〈[リーフブレード]!〉

僕は淡々と切り裂きながら相手との距離を詰める。

一度使ったから、恐らく同じ手は通用しない……。

なら………、

リーフ〈[ソーラービーム]!!〉

溜めていた光を口元で凝縮させ、一気に放出した。

相手まで2m………。

トドゼルガ・アダン「〈!?〉[吹雪]で迎え撃て!」

相手まで1m………。

トドゼルガ〈くっ!! [吹雪]…!〉
リーフ〈!? かわせない!? っ!!〉

0m………。

光線が命中すると同時に、僕を猛烈な寒波が襲う。

…………効果は………互いに……抜群……。

僕もたけど………、相手の体力も………半分以上は……削った………。

僕は構わず接近する。

アダン「[絶対零度]!」
ユウキ「かわして[逆鱗]!!」
トドゼルガ〈これで……[絶対零度]!!〉
リーフ〈命中率が低い技……、なら……[逆鱗]!!〉

相手は凍てつくエネルギーを全身に貯め始めた。

僕は全身を使って猛攻…………。

トドゼルガ〈…………っ! 今……だ……!〉
リーフ〈!?〉

僕は咄嗟に……技を解除し、身を屈めた……。

…………よし、外れた!

………でも、焦点が定まらない………。

………こんな時に…………混乱………。

アダン「混乱している今がチャンスだ!!至近距離からの[冷凍ビーム]!」

リーフ・ユウキ〈ここまで………削られているなら………ダメ元で………〉「リーフ、一か八か……」

リーフ・ユウキ「〈[ハードプラント]!!〉」

僕は………[リーフストーム]を………応用して………、それを出すときよりも強く…………念じる………。

技のイメージを………膨らませ………、それをくり出すために……………意識を………集中させる………。

冷気が命中するまで…………4秒……。

目を閉じ、………技のイメージで……身体全体を…………満たす。

3秒前………。

次第に………僕の体に……エネルギーが……沸き上がる………。

2秒前………。

目を開け、ぼやける視覚で標的に……………狙いを………定める………。

1秒前………。

僕はありったけのエネルギーを…………一気に…………放出した。

0………、

リーフ〈うっ!!……………これで……………どう………………?〉

僕にそれが…………命中した……。

僕は………ふらつく……………身体で…………………何とか……………こらえ…………、技の………結果を…………見守った。

トドゼルガ〈……!?〉

相手の…………足元が…………ひび割れ……、

トドゼルガ〈何っ!? …………いつの間に!?〉

そこから………極太の………(いばら)が生え始める………。

トドゼルガ・リーフ〈くっ……………。〉〈良かった……………、発動した…………。〉

僕は……とうとう……崩れ落ちた。

…………でも、結果を………確認するまでは…………倒れる訳には……………いかない…………。

薄れゆく…………意識を………何とか………つなぎ止める…………。

荊は………相手に………まとわりつき、キツく…………締めあげた………。

トドゼルガ〈……………くっ……………、やられた………。〉



彼と…………僕が……………意識を…………手放した……のは…………ほぼ……………同時………だった………。


結果…………残り…………1………対………0で…………、ユウキ…………の…………勝………………り……………。

■筆者メッセージ
久しぶりの5000文字超え。
@ ( 2013/11/19(火) 01:46 )