とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§15 examination
ninety-first
PM3:50 トクサネシティージム sideシルク

シルク〈……勝負あったわね。〉

砂埃が晴れ、私達にとって15回目のジム戦は幕を閉じた。

……イッシュでもそうだったけど、終盤になるとジムの難易度も上がるわね。

フウ・ユウキ「……凄い……。ぼく達の連携が全く効かなかった……。」「シルク、フライ、お疲れ様。」

ラン「9年間ジムリーダーを務めてくきたけど、ここまで呆気なくやられたのは初めて……。」

2人とも、呆然としてるわね。

シルク《何故なら、ユウキは1つ星のトレーナー、それもここ以外にあと1つでホウエンリーグの挑戦権を得る程の実力者だからよ。》
ユウキ「遅咲きですけど……、そうです。」

フウ・ラン「「[エーフィー]が喋った!?」」

2人は声を揃えて驚いた。

シルク《あら、その様子だと知らないようね? エスパータイプなら、練習さえすれば誰でも[テレパシー]を使えるのよ! 戦いながら察させてもらったけど、あなた達のパートナーも十分習得出来るレベルまで達しているわ。》
ユウキ「………本人に習得する[意志]さえあればね。」

エスパータイプのジムなら特権ぐらいは知っておいて欲しかったけど、残念ね……。

私の説明にユウキが補足を加えた。

ラン「……[テレパシー]を……?」
シルク《ええ。 [サイコキネンシス]と同じ原理で、強く念じれば伝えれるわ。………ただ、かなり練習が必要だけどね!》

私は彼らに笑顔を見せながら念じた。

意思伝達が出来れば、今まで以上に[絆]が深まるはずよ?

ユウキ「………らしいです。 他にも、文字を教えれば筆談で会話も出来ます。」

その通りね。

ユウキから文字を学んだお陰で本も読めるようになったし、これがキッカケで[エスパータイプの特権]についても知れたわ。

シルク《そうよ。 私達の仲間のひとりも、私と同じで文字の読み書きが出来るのよ。》
フライ〈文字かー………。〉

文字なら、簡単に覚えれたから、手っ取り早いかもしれないわね。

ユウキ「………試すか試さないかは自由ですけど……。」

強制するものではないからね。


私達は、この後も暫く話し続けた。


…………バッチ?

バッチなら、ちゃんと受け取ったわ。


………

30分前 120番道路 sideライト

オルト〈情報によると、この辺りらしいな。〉
スーナ〈そうだね。小高い丘にあるって言ってたもんね♪〉

ペリーさんの情報なら、可能性は高いね。


……あの後、わたし達は20分ぐらい話してからユウカちゃんと別れたんだよ。

ユウカちゃんも今日中にトクサネシティーに行く予定なんだって!

時間的にユウキ君達とセンターで会うかもしれないね。

……それにバトルも、凄く新鮮だったよ!

いつもならわたしは闘う側だけど、指示する方も結構楽しかったよ!

普段以上に周りに注意を払うのは大変だったけど、充実してたよ!

ユウキはトレーナーであってポケモンでもあるから、1つのバトルでも十二分に楽しんでいるって事だね?

わたし達、[ラティアス]と[ラティオス]の中には誰も旅しているひとはいないから、一段落したら目指してみようかな?

わたしも旅は好きだし!

コルド〈年配の方に聞いても同じ返事だったので確実ですね。〉
ライト「うん。」

……話に戻ると、こんな感じで聞き込みとバトルをしながら元来た道を辿ってきたんだよ。

相変わらず雲行きは怪しいけど、日が暮れるまでなら何とか保ちそうだよ。

わたしは目の前の丘を見つめながら頷いた。

スーナ〈坂があるからそこから登ってみよっか♪〉
オルト〈そうだな。直接見て確かめた方がいいからな。〉
コルド〈では、行きましょうか。〉

うん!

わたし達はなだらかな斜面を生い茂る雑木林を掻き分けながら突き進んだ。

ここ、獣道も何もないけど、あまり人が来ないのかな?





ライト「………あまり高くなさそうだから、もう少し登れば頂上かもね!」
スーナ〈うん♪ライト達がいるところから推測すると、あと30mぐらいで茂みを抜けれるよ♪〉

わたし達の頭上から、揚々としたスーナの声が響いた。

スーナは飛行タイプ、わざわざ地面を歩く必要が無いもんね!

わたしもそうすればいいんだけど、たまにはね…。




オルト〈……よし、抜けたな。〉

スーナの推測通り、少し進んだだけで………

???〈[目覚めるパワー]!!〉

スーナ・ライト・コルド・オルト〈〈〈!!?〉〉〉〈奇襲か!? っ!! 飛行タイプ!?〉

いきなり何!?

わたし達が草むらを抜けると、突然空色の弾丸が先頭を進んでいたオルトに命中した。

???〈ここから先は断じて通さん!!〉
スーナ〈姿が見えない♪!?〉
コルド〈ステルス能力ですか!?〉
ライト「これだと何処にいるか解らないよ!?」

どこからともなく太い声が響いた。

???〈人間なら尚更だ![目覚めるパワー]!!〉
オルト〈ライト、スーナ、コルド、まずは落ち着け! 敵は必ず近くにいる!![波動弾]!〉
ライト「……う、うん!」

パニック寸前のわたし達に、オルトが力強く訴えた。

それと同時に、彼は手元に青色のエネルギーを溜め、空色のそれを狙って発射した。

それらは衝撃音と共に衝突、消滅した。


オルトの言葉によって、わたし達は何とか平生を取り戻した。

その間にも続けて2色の弾が放たれる。

スーナ〈これは戦闘になりそうだね♪〉
コルド〈その前に、相手の正体を明かさないと戦えないですね!〉
ライト《うん!だからオルト、そのまま攻撃を続けて!コルドはオルトを援護、スーナはわたしと空から仕掛けるよ!!》

わたしは見えない相手に聞かれないように、さんにんの脳内に直接語りかけた。

[ステルス]を使えるのは、わたしが知る限りお兄ちゃんとアオイさん、あとシンオウ地方でとけ込んでいる[ラティアス]しか知らないよ!!

他に使える種族は知らないから、少なくともわたしの知り合いではないのは確かだよ!

スーナ・オルト・コルド〈うん♪〉〈よし、任せろ!〉《はい!!〈》[ラスターカノン]!〉

わたしの指示にさんにんとも大きく頷いた。

コルドはオルトの隣に立ち、白銀の弾を無数に飛ばした。

スーナは浮上し、空色の弾の発生元に狙いを定めた。

わたしは目を瞑り、鞄を肩から掛けたまま光を纏った。

無数の青と白銀の弾は一度混ざり、螺旋運動をしながら飛んでいった。

???・ライト〈!? [ラティアス]!?〉〈[ミストボール]!〉

わたしは手元に純白なエネルギーを蓄積させながら滑空した。

……よく聞こえなかったけど、相手は驚きの声をもらした。

???〈[ラティアス]がいるなら話は別、バトルは止めだ!![守る]!!〉

ライト・オルト・スーナ・コルド〈〈〈〈!!?〉〉〉〉

突然空色の弾の発生元に緑のシールドが張られ、その中に一つの陰が姿を現した。

スーナ〈ええっと、確か彼の種族って[カクレオン]だよね♪?〉

相手の姿を見て、スーナが思い出したように言った。

ライト〈[カクレオン]?〉

初めて聞いたよ、その種族……。

コルド〈確か、ホウエンに着いた時、アオギリさんの後で戦った相手が彼の種族でしたね。〉
オルト〈攻撃する毎にタイプが変わる種族だったな。〉
カクレオン〈ワシの種族の特性まで知っているとは、大したものだな。〉

たぶん、わたしが旅に加わる前だね?

会うの初めてだし……。

ライト〈………でも、何でわたしを見てすぐに闘うのを止めたの?〉

わたしは不可解な行動の真意を彼に訊ねた。

カクレオン〈ワシが見張ってる遺跡の伝承にお前さん達の種族が関わっているからな。………ついて来なさい。 お連れの仲間も一緒にな。〉

ライト・オルト・スーナ・コルド〈〈〈〈??〉〉〉〉

わたし達が、関わってる?

わたし達は首を傾げながら彼の後を追った。

………

数分後 古代塚前 sideライト

伝承?

伝承といえば、[失われた3大都市]の事が気になるけど………、わたし達が関わっているって事は[ホウエンの結界]の伝承なのかな………。

レオンさん…………あっ、この年配の[カクレオン]の事。

レオンは今まで30年間もこの遺跡を見張ってきたんだって!

レオン〈……これが、[失われた3大都市]のうちの名残の1つ、[古代塚]だ。〉
ライト〈これってどう見ても………〉
スーナ〈[砂漠遺跡]と瓜二つだね………。〉

わたし達の目の前に、砂漠のそれをそのまま移したような佇まいの大岩が鎮座していた。

オルト〈同一の物で間違いないな。〉

オルトはわたしからノートとペンを受け取りながら呟いた。

コルド〈でも、[失われた3大都市]の伝承がどうしてライトさんと関係があるのですか?〉

コルドが事の核心に迫った。

レオン〈……それはこの[古代塚]に伝わる1つの言い伝えからだ。………{失われし都市の責務を此処に記す。滅びし3筋の英知、岩、氷、鉄により未曾有の脅威を封ず。断じて解くべからず。さあらば、世の終焉、明らかなり。}………。〉

コルド〈………どう考えても……、[滅びし3筋の英知]は[失われた古代都市]の事ですよね………。〉
オルト〈英知………か………。おそらく当時の3大都市は技術的にも発展していたはずだ…。俺の推測が正しければ、[ホウエンの結界]と[失われた3大都市]は同じ事を指しているな。〉
スーナ〈それに、岩と氷と鉄って、完全に[封印石]と属性が一致してるよ………。〉
ライト〈………[伝承]が…………繋がった………。〉

………辻褄が合うから…………可能性は高いよ…………。

わたし達は大きすぎる事実の発見に声が震えた………。

[未曾有の脅威]って…………もしかして………封印された……[デオキシス]の…………襲撃………?

[3大都市]が滅んだ原因も…………これ?




……………ユウキ君達がたてた仮説が…………証明された………。



……………震えが………止まらないよ………。



@ ( 2013/11/10(日) 02:13 )