ninety-fourth
PM6:00 110番道路 sideスーナ
コバルト〈………僕達が調べたのはここまでです。〉
アオイ〈……私が知らない事まで……調査していたのね…。〉
一時間かけて、ウチらは[ホウエンの結界]伝説の当事者であるアオイさんに調査の途中経過を報告した。
……直接関わっているアオイさんでも知らなかった事があったみたい……。
[失われた古代都市]との関わりを話した時に質問攻めにあってね……、説明するのに苦労したよ……。
アオイさんは知らない事が有るのが許せないらしくってすぐに反論してきたから、なかなか論が進まなくてね……。
本当はもっと手短に終わらせるつもりだったんだけど、日が暮れるまでかかっちゃったってわけ……。
……って事で、ウチらの頭上には漆黒の空と、所々に輝く白い光が散りばめられているよ……。
ここは街に挟まれた場所だから田舎のそれには及ばないけど…。
スーナ〈……だから、ウチらは[封印の鍵]の役割と残りの[古代都市]を聞きに来たって事だよ♪〉
オルト〈ある程度検討はついているがな。〉
そして、また質問攻めに遭う前にウチの目的を簡単に告げた。
……正直、ここまでで疲れたよ……、精神的に……。
ライト〈そういうこと。………一応聞くけど、わたし達が調べた事以外に知ってることってある?〉
コルド〈もし良かったら教えて頂けますか?〉
コルドが律儀に質問した。
本来の予定とは違うけど、もしかしたら他に何か解るかもしれないもんね!
ウチは彼女の返事に微かな期待の眼差しを向けた。
アオイ〈……私達に協力してくれているようだから………? この光は!〉
オルト・スーナ・コルド・ライト〈〈〈〈光??〉〉〉/ですか?〉
ウチらは彼女の口から突然漏れた言葉に首を傾げた。
それに、アオイさん……顔が赤くなってるよ?
ウチは視界の端でその光を捉え、その方に振り返った。
………この光って、[テレポート]の?
その光は次第に大きくなり、やがて形を形成する……。
ソウル〈……よし。とりあえず今日………!?アオイ!? どうしてここに!?〉
アオイ〈そっ……ソウル、1つ伝えたい事が、あるのよ…。〉
光が収まると、そこには一匹の[ラティオス]……、スカイさんではなくてソウルさんが姿を現した。
ライト〈わたし達も、聞きたい事があってね。〉
ソウル〈ライトに、皆さんまで!?〉
アオイさん!? 翼の色みたいに顔が真っ赤になってるよ!!
それに、今までとは全く様子が違うよ!?
………これって……もしかして………、
スーナ〈………もしかして……アオイさんって、ソウルさんの事が好きだったり……〉
アオイ〈!? いやいや、こっ、この私が、ほっ、惚れるなんて、あっ、あり得ないわ!〉
オルト〈…………図星だな………。〉
この焦り方、絶対にそうだよ!!
間違いなくソウルさんに惚れてるね!!
必死に隠そうとしてるけで、バレバレだよ?
ウチの隣でオルトがボソッと呟いた。
ライト
〈南の孤島出身者の間では結構有名な話だよ。………アオイさんは認めてないけど………。〉ライトはウチに聞こえるか聞こえないか際どいぐらいの声で呟いた。
ソウル〈………で、聞きたい事とは何ですか?〉
彼女の様子に気づいているのかは解らないけど、ソウルさんはアオイさんの言動をスルーして本題に戻した。
スーナ〈[ホウエンの結界]伝説についてなんだけど……。〉
ウチは話を始め、オルトはライトの鞄からノートとペンを取り出した。
………
PM7:00 トクサネシティーポケモンセンター内 sideシルク
リーフ〈ユウキ、
ホウエン地方のジムもあと1ヶ所だけだね。〉
ユウキ「そうだね。今思うとあっという間だったよ。」
シルク〈そうね。 トウカのジム戦が終わった時の事を考えると、いろんな事があったわね………。〉
私達は夕食を済ませて部屋に戻ってから、調査内容の確認を兼ねて今回の旅の回想をしているわ。
確かに、あっという間だったわね。
学会が終わった直後から、凄くそう感じるわ。
フライは凄い早さでバトルの………
コルド『シルクさん、リーフさん、フライさん!!大変な事がわかりました!!』
リーフ〈!? コルド!? そんなに慌ててどうしたの!?〉
!?
突然、イヤホンから切羽詰まった様子のコルドの声が響いた。
何か、解ったのね!?
スーナ『とにかく、ユウキにも直接伝えたいから姿を変えるように伝えて♪!!』
シルク〈えっ、ええ。わかったわ!〉
ユウキに直接伝えたいって事は、凄く重要な事よね!?
フライ〈うん!! ユウキくん、スーナ達が直接伝えたい事があるって言ってるから、姿変えてだって!!〉
シルク〈もしかすると、伝説に関わる事かもしれないわ!〉
ユウキ「えっ!? う、うん、わかったよ。〈」相当重要な事みたいだね?〉
その可能性が高いわ!
ユウキは私達の頼みに姿を変えながら答えた。
そして、そのまま鞄の中を漁り、これまで使わなかったユウキの分のインカムを取り出した。
そして、それを装着する。
ユウキ〈お待たせ。 で、わかった事って?〉
ライト『[封印の鍵]の役割と[封印石]がどこの遺跡に対応してるか解ったんだよ!!』
ユウキ・シルク・リーフ・フライ〈〈〈〈えっ!?役割と関係が!?〉〉〉〉
えっ!?わかったの!?
私はあまりの事に驚き、4つの声が重なった。
オルト『まず、[封印の鍵]の役割だが、俺達がたてた仮説とは違っていた。』
コルド『実は、最後の封印を解くためではなくて、解き放たれた[デオキシス]を再び封印するための道具だったんです!!』
ユウキ〈えっ!?それ、本当!?〉
スーナ『うん♪!!護ってるソウルさんから直接聞いたから間違いないよ!!』
封印するための道具だったのね!?
鍵っていう名前だから、てっきり解除するための物かと思ってたけど、間違いだったのね!?
フライ〈なら、確実だね!〉
ライト『あと、偶然アオイさんにも会ったんだけど、アオイさんが言うには、[岩の封印石]が[砂漠遺跡]、[鋼の封印石]が今日わたし達が調査した遺跡、[古代塚]に対応しているみたいなんだよ!!』
コルド『それに、[封印石]が結界を解除するたに必要な第2の鍵になっているそうです!!』
ユウキ〈って事は、その前にも段階があるって事だね!? その1つ目の鍵についてはどう?〉
[封印石]が解除する鍵に!?
嘘でしょ!?
私の予想が完全に外れたわ!!
[封印石]が逆に封じ込める道具かと思っていたのに……。
だとしたら、[封印石]が全部奪われたら大変な事になるわ!!
スーナ『ううん、アオイさんもソウルさんも、1つ目の鍵については知らないみたい…。』
だから、[岩の封印石]が奪われた今、残りの2つは絶対に護らないと!!
リーフ〈そうなんだ……。でも、これだけ解ったから十分だよ!〉
ユウキ〈そうだよ!!僕達の……〉
オルト『その事なんだが……、残念な知らせが1つある……。』
えっ!?残念な知らせ!?
私達はほぼ同時にオルトの言葉を復唱した。
フライ〈残念な………知らせって……?〉
コルド『[鋼の封印石]が………奪われたんです………。』
ユウキ・リーフ〈〈[鋼の封印石]が!!?〉〉
シルク・フライ〈嘘……よね……?〉〈嘘でしょ……? 奪われるなんて……。〉
信じられない………。
ユウキでさえ全く歯が立たなかったアオイさんよ……。
シルク〈アオイさんが敗れるなんて……。〉
私達はあまりのことに絶句………。
ライト『不意に[催眠術]をかけられて眠らされたみたいなんだよ………。』
スーナ『確か……[ムウマージ]っていう種族って言ってた。………ウチは知らない種族だけど……。』
………となると………残りはここの近くにあるらしい[浅瀬の洞穴]に隠されている……[氷の封印石]だけ………。
ユウキ〈………解ったよ………。 とりあえず、今後の予定についてこのまま話し合おうか………。〉
ユウキは何とか言葉を探り出し、会話を続けた。
………そうね。
ここからは慎重に予定を検討しないと………最悪の場合………封印が………解かれてしまう……。
この後、私達は調査についての会議を開始した。
…………私達のいる部屋には、時計の秒針が時を刻む音が響いていた。
………まるで、この先に何かが起こる事を示唆するかのように…………
§15 End. To be continued.........