eighty-eighth
PM0:00 ミナモシティー sideスーナ
リーフ〈雨降ってたから、やっぱりまだ人通りが少ないね。〉
ウチらは、とりあえずって事で昼間の港町に到着した。
………潮風が気持ちいいよ。
海からは少し離れているけど、鮮明に感じるよ。
飛行タイプは空気の流れに敏感なんだよ。
[水タイプの恩恵]とか、エスパータイプの[テレパシー]みたいな感じだね。
もしかすると、他のタイプにもあるのかもしれないね♪
今度リーフ達に聞いてみようかな?
ライト「そうだね。」
オルト〈……で、まずはラフの親捜しだよな?〉
オルトが、コルドの背中にとまってるラフちゃんをチラッと見て言った。
シルク〈いつ出発するかわからないもの。急を要するわ。〉
ラフ〈うん。 毎年ここにはあまり長い間いないから……。1日か2日ぐらいしかいないから……。〉
ラフちゃんが心配そうに海を見つめた。
ユウキ「そうなんだね。 ……なら、急いで探さないとね。」
フライ〈その方がいいね。〉
ユウキがいつものように総括した。
…………ラフちゃん、見つかるといいね。
ウチらの広い港町を、あるべき
水面に向けて歩きはじめた。
………ウチとフライ、ラフちゃんは飛んでだけどね♪
………
数十分後 波打ち際 sideシルク
コルド〈ラフさん? もしかしてあのグループですか?〉
波の囁きが耳を撫でる海岸で、コルドがポケモンの群れを発見した。
彼らを、目線で指した。
その先を見ると、青い身体に、綿のような翼を持つポケモンが数十匹、羽を休めていた。
きっと、そうね。
ラフ〈うん!そうだよ!!わたしのいる群れだよ!!〉
ラフちゃんがパッと明るい声をあげた。
シルク〈あのひと達ね?〉
ラフ〈シルク姉ちゃん、たしかにそうだよ!〉
そう言って、彼らの元へ飛んでいった。
見つかって良かったわね。
私達は海水で脚を濡らしながら追いかけた。
ラフ〈お母さんー!!〉
チルタリス〈!? ラフ!? どこに行ってたの!〉
ラフ〈突然の雨でビックリして……。〉
群れの中から、元々の色より青ざめた顔のチルタリスが彼女の前におりたった。
スーナ〈急に降ってきたから、仕方ないよね♪。〉
フライ〈ボクも驚いたから。〉
このひとはきっと、ラフちゃんのお母さんね。
母さん……か………。
ラフ〈……でも、お兄ちゃん達に会えて連れてきてもらったんだよ!〉
ラフ母〈彼らに? 娘がご迷惑をおかけ………!? 人間!?〉
ラフのお母さんが私達に視線を巡らせ、ある一点で止まった。
ラフ母〈もしかしてラフ、捕まった!?〉
オルト〈いいや、確かに俺達はトレーナーのポケモンだが、彼女は違う、野生のままだ。〉
ユウキ「僕のメンバーは既に6匹だから、彼女を入れると規定以上の数になるからね。」
シルク〈そういうことよ。だから安心して。〉
トレーナー就きのポケモンは6匹までって決まっているからね。
ラフ母〈そうですか…………。!? 今、私こ言葉に答えました!?〉
ユウキの返答に気づき、彼女は素っ頓狂な声をあげた。
…………この反応、流石に慣れたわ……。
スーナ〈ウチらのトレーナーはちょっと特殊で、ウチらポケモンの言葉が解るんです♪〉
ユウキ「僕は半分ポケモンみたいなものだからね。 確かに、解るよ。」
ライト「ちなみにわたしもね!」
ラフ母〈半分……?〉
彼女の頭上に疑問符が浮かんだ。
リーフ〈そう。ちょっとした事情でね。〉
ラフ〈何か凄い事に関わっているんだって!後で話すよ!〉
ラフちゃんが無邪気な声で言った。
オルト〈俺達の説明はラフに任せるとして、そろそろ行くか?〉
スーナ〈そうだね♪遺跡の調査も残ってるし、ジム巡りもあるからね。〉
シルク〈そうね。〉
まだ調査出来てないしね。
ラフ母〈そうですか。 娘を見つけて頂いてありがとうございました。〉
彼女は私達のほうを向き、深々と一礼した。
ラフ〈本当にありがとう! また、会えるよね?〉
オルト〈ああ、もちろんだ。〉
シルク〈私達も旅をしているからね。〉
そうよ。
いつかきっと会えるわ。
ユウキ「うん。 じゃあ僕達はそろそろ」
シルク〈失礼するわね。〉
ラフ〈元気でね!〉
ラフちゃん、あなたもね!
私達は、短かったけど行動を共にした小さな仲間と別れ、街の中心部に向かった。
……空には彼女の行く先を示すかのように、七色の橋が架かっていた。
………
PM0:40 ミナモシティー sideユウキ
スーナ〈とにかく、見つかって良かったね♪〉
シルク〈本当にそうね。もし見つからなかったらどうしようかと思ったけど、もう安心ね。〉
まだ湿気の残る夏空の下で、ふたりはホッと肩を撫で下ろした。
………もし見つからなかったら、誰かがひきとる事になってたかもしれないね。
ライト「うん。 ユウキ君?ラフちゃんの事もあってここまで来たけど、この後はどうするの?」
リーフ〈あっ、そうだったね。すっかり忘れてたよ。〉
ユウキ「この後…………、そうだったね。」
そうだった!
遺跡の調査も残ってたんだ。
ライト、僕もうっかりしてたよ………。
フライ〈そうだね。〉
オルト〈だが、聞いたところによると、止んでいるのも今だけみたいだが……。〉
オルトが心配そうに曇天の空を見上げた。
……言われてみれば、そうだね。
噂によると、前線が近づいていて、また大雨が降るらしい……、
コルド〈なら皆さん、僕に1つ案があるのですが、いいですか?〉
スーナ〈ん? 案って♪?〉
ふと、コルドが一通り全員を見渡した、
案?
コルド〈雨が降るとフェリーが出航しないので、二班に別れて調査するのはどうですか?〉
シルク・リーフ〈〈二班に?〉……言われてみれば、そうした方が良いかもしれないわね。 接近しているのは停滞前線、長く降り続くのは確実ね。そうなると降り出す前に船に乗るのが得策ね。〉
停滞前線……、そっか……。
コルド〈どうでしょうか?〉
スーナ〈ウチは構わないけど、組み合わせてはどうするの?〉
オルト〈俺は賛成だ。〉
リーフ〈分けるなら、弱点を補える方がいいね。〉
シルク〈ということは、リーフは賛成なのね?〉
リーフ〈うん。フライは?〉
フライ〈いいけど、できるだけ雨は避けたいから、ボクを遺跡の調査から外してもらいたいな。〉
みんなは賛成なんだね?
ライト「フライは地面タイプだもんね。 なら、わたしは遺跡の調査のほうにするよ。そうすればユウキ君もジム戦ができるでしょ?」
スーナ〈あと行ってないのは海の先にある島だけだもんね♪〉
ユウキ「……うん、わかったよ。なら僕も海の方を調査するから、ライト、そっちは任せたよ。」
僕は一度考え、ゆっくりと頷いた。
カエデが調査した[煙突山]の北側にはジムは無かったみたいだから……。
ライト「うん!任せて!」
ライトも大きく頷いた。
スーナ〈フライがユウキ側なら、ウチはライト側の方がいいね♪〉
リーフ〈海なら、相性的に僕はユウキのほうにいくよ。〉
オルト〈俺はライト側に行くか。書記が必要だろ?〉
コルド〈ライトさんはわかりませんが、ユウキさん以外に文字が書けるのはオルトさんだけですからね。〉
矢継ぎ早に、決まっていくね……。
組み分けとなると、結構時間がかかるかと思ったけど、案外早く決まりそうだね。
……第一に、役割を強制するのは良くないし……。
シルク〈そうね。 なら、人数的に私はユウキについていくわ。 ……これなら、弱点を補えると思うわ。 ユウキ、私達で勝手に決めたけど、これでいいわよね?〉
組み分けを終えて、シルクが僕の顔を真っ直ぐ見つめた。
ユウキ「あっ、うん。 いいよ。」
スーナ〈決まったね♪〉
うん。
このチームなら、良さそうだよ。
ユウキ「……もし何かわかったらこれで連絡して。」
僕はバッグの中に入れている自分のインカムを取り出しながら言った。
…………とうとう、本格的に使う時がきたね……。
奮発して買った甲斐があったよ。
メンバー全員「〈〈〈〈〈〈もちろん!/よ!/♪!/です!〉〉〉〉〉〉」
皆が一斉に声を揃えた。
ユウキ「…じゃあライト、一応オルトとスーナとコルドの[モンスターボール]を預けておくよ。あと、所持金もある程度渡すよ。」
僕は3つのボールと、小分けにしてケースに入れたそれを彼女に託した。
ライト「うん。 確かに預かったよ!」
ユウキ「あと、出発する前に、オルトの為にノートとペンを買っておいて。」
ライト「ノートとペンだね? わかったよ!」
ライト、それに皆も、頼んだよ。
僕は別行動をする仲間の顔を目にやきつけた。
そして、僕、シルク、リーフ、フライは船着き場に、オルト、スーナ、コルド、ライトはショップに向けて歩きはじめた。
………調査、開始だね!
……………
同刻 フエンの洞窟 最奥部 side・・・
アオイ〈…………何故ここを知って……〉
???〈言っとくけど、何ヶ月も前から知っていたわ。〉
アオイ〈何ヶ月も……。〉
???〈………任務だから、[鋼の封印石]は貰っていくわ。[催眠術]!〉
アオイ〈!!? この私が………、眠らされる………!? ………不覚………だわ……。 ただの[ムーマージ]…………なんかに…………zzz。〉
ムーマージ〈……やっと眠ったわね………。 任務のため、回収しないと………。 ………それにしても、何の変哲のない石ころがどうして必要なのだろうか………。 [サイコキネンシス]。 ………考えても仕方ないか……。〉
§14 End. To be continued...