eighty-seventh
AM11:00 121番道路 sideライト
シルク《近くにはいないけど、私達はトレーナー のポケモンなのよ。》
A・B「「!!? ポケモンが喋った!?」」
ユウキくん達と戦っていた2人が信じられないって感じて声をあげた。
それもそうだよね。
一般の人にはわたし達の声は鳴き声しか聞こえないもんね。
ラフ・B〈ねえ、オルト兄ちゃん? あの人達ってシルク姉ちゃんの声が聞こえてるの?〉「気のせいじゃないよね!?」
オルト〈ラフに語りかけた時と同じ、[テレパシー]だ。〉
シルク《ええ。[テレパシー]を使ってね。》
A「えっ!?でも、[テレパシー]って伝説のポケモンしか使えない能力だよね!?」
2人とも、慌てふためいているね……。
B「そのはずだよ!! でも[エーフィー]って普通のポケモンだよ!?」
シルク《私達、ポケモンの間でもほんの一握りしか知ってないわ。 エスパータイプのポケモンなら、経験さえ積めば使いこなせるようになるのよ。エスパータイプのポケモンをメンバーに加える予定が有るなら、知っていて損は無いと思うわ。》
シルクは言葉を発すること無く伝えてから、にっこりと笑顔を見せた。
………シルクの笑顔って本当に可愛いよね!
A「………へぇ。 ………そんなことを知ってるなんて……、凄いよ……。」
B「一度会ってみたいよ……。」
ユウキ〈………一応、トレーナーの僕はここにいるけどね……。〉
リーフ〈流石に今は姿を変えられないからね……。〉
ユウキくんがボソッと呟いた。
だってユウキくん、今は[ピカチュウ]だもんね。
シルク・ラフ《だから、ここにいる全員を捕まえる事は不可能なのよ。》〈えっ!?トレーナーって、どういうこと!?〉
A・ライト「……うん、わかったよ。……捕まえるのは諦めるよ。」〈ユウキくん、この際言っちゃってもいい?〉
2人共、シルクの説得で納得してくれたみたい……。
……ユウキくん、言ってもいいよね?
ラフちゃんは一時的だけど、仲間だし……。
B・ユウキ「そうだね。トレーナーのポケモンなら無理だもんね。 凄く強かったのにも納得出来たよ。」〈うん。せっかく紡いだ[絆]だし、構わないよ。〉
ユウキくんは大きく頷いた。
うん、わかったよ。
ライト〈わたしは違うけど、みんなトレーナーのポケモンなんだよ。〉
ラフ〈えっ!?〉
スーナ〈それに、ユウキはポケモンじゃないんだよ♪〉
ラフちゃん、驚きで変な声が出てるよ?
リーフ〈ユウキは僕達のトレーナー、つまり人間なんだよ。〉
ラフ〈人間!? でもリーフお兄ちゃん!?ユウキお兄ちゃんはどう見ても[ピカチュウ]だよ!?〉
ラフちゃん、完全にパニック状態……。
ラフ〈オルトお兄ちゃん、本当なの!?〉
彼女は凄い勢いでオルトのほうに振り返った。
オルト〈ああ、そうだ。〉
コルド〈ユウキさんは特殊なんです。〉
ラフ〈特殊? 特殊って?〉
ラフちゃんは不思議そうに首を傾げた。
………誰がどう見ても頭の上に<?>が浮かんでるよ?
ユウキ〈僕はある伝説に関わってるから、姿を変えられるんだよ。〉
コルド〈あと、僕の種族は準伝説なんです。〉
ラフ〈!??〉
ラフちゃん、驚きでもう言葉になってないよ?
ユウキ〈雨が止んだら見せてあげるよ。〉
スーナ〈
人気の無いところでね♪〉
シルク〈姿が変わる所を見られたら大変な事になるから、細心の注意を払わないといけないのよ。〉
オルト〈姿を変える事自体、常識はずれだからな。〉
………目が泳いでいるよ……。
ユウキ〈うん。 ………さっきの2人はもう行ったみたいだし、僕達も行こっか。〉
リーフ〈そうだね。 フライにずっと待ってもらう訳にはいかないもんね。〉
スーナ〈それに、また降り始める可能性もあるからね♪〉
雨好きな2人は弾んだ声で付け加えた。
……スーナ、それにリーフ?
本当は雨をもっと楽しみたいんじゃないの?
明らかに表情に出てるよ?
……とにかく、わたし達は雨が弱まった今のうちに次なる目的地を目指した。
………
AM11:30 ミナモシティー入り口付近 sideシルク
シルク〈……あっ、雨、止んだわね。〉
ん? 止んだ?
私が空を仰ぎ見ると、細かな水滴の降下が収まっていた。
コルド〈言われてみれば、止んでますね。〉
ラフ〈ホントだ! それに陽がさしてきたよ!〉
雲の切れ間から、一筋の光が差し込んだ。
………幻想的ね……。
ユウキ〈……じゃあまずはオルト、フライを出してくれる?〉
オルト〈確か鞄の中だったな?〉
シルク〈そのはずよ。〉
リーフ〈それに、ユウキとライトは姿を変えるんだよね?〉
私が幻想的な風景に見とれていると、私の隣でオルトが預かっていた鞄を漁り始めた。
ライト〈うん。 まだ止んだばかりで人通りが少ないから、今がチャンスだね。〉
ラフ〈えっ!?ライトお姉ちゃんも!?〉
コルド〈はい。 言ってませんでしたが、ライトさんも僕と同じ部類なんです。〉
ユウキ〈まあ、見てて。〉
そうね。
まだ止んで間もないし、街道も今のところ私達以外誰もいないしね!
それだけ言うと、火傷の痕がある[ピカチュウ]の姿が歪み始めた。
[ラティアス]の彼女も、光に包まれた。
ラフ〈えっ!?どういう事!?〉
シルク・オルト〈見ての通りよ。〉〈見ての通りだ。〉
ユウキ・ライト「「こういうこと。」」
変化が収まると、[ピカチュウ]と同じ位置に痣、青バンダナをしている青年と、黄色い瞳の少女がそこにいた。
ラフ〈本当に……人間だったんだね?〉
ライト「わたしは違うけどね。」
スーナ・オルト〈うん♪ これがユウキの本来の姿なんだよ♪〉〈ユウキ、おわったな?〉
ラフちゃんはあまりの光景に腰を抜かしたわね……。
………私はもう慣れたけど……。
ユウキ「うん、ありがとう。フライ、お待たせ。」
ユウキはオルトから荷物を受け取り、1つのボールを投げた。
フライ〈雨、止んだんだね?〉
放物線を描いて投射されたそれから、長い尻尾を靡かせてフライが飛びだした。
スーナ〈うん♪ついさっきね♪〉
フライ〈そうなんだね。 ………ところで、この子は?降る前はいなかったけど……。〉
彼は一度空を見てから、彼女に視線を移した。
私達の中ではきっと彼が彼女に歳が一番近いわね。
………雰囲気から推測すると……。
シルク〈群れとはぐれたみたいだから保護したのよ。〉
コルド〈そして、お仲間が待つミナモシティーまで一緒に行く事になったんです。〉
フライ〈へぇー。……うん、わかったよ。 よろしくね。〉
ラフ〈うん!よろしく!!〉
2人は、軽く握手を交わした。