eighty-fifth
AM10:00 120番道路 sideユウキ
フライ〈………雨、降りそうだね…。〉
ユウキ「うん。 場合によっては急がないといけないね。」
フライが難しい顔をして空を仰ぎ見た。
確かに、そうだね。
空の雲の色は黒くなってきたし、風も湿っぽい……。
……これは間違いなく、降るね。
でも、ヒマワキシティーに戻るには離れすぎているし、ミナモシティーとも離れてる……。
急いだほうがいいけど、ペリーさんの情報も確かめたいし………。
シルク〈早いうちに調べて雨宿り出来る場所を探した方がいいわね。〉
コルド〈フライさんは地面タイプなので、雨が降ると行動出来なくなりますからね。〉
ふたりも表情を曇らせた。
スーナ〈その時はウチとリーフの出番だね♪〉
リーフ〈僕にとっても、水は命の源だからね。〉
オルト〈草タイプだからな。〉
フライ以外は、行動出来そうだね。
ライト「うん。 とにかく、急いだ方がいいね。」
ユウキ「じゃあ、行こっか。」
その方がいいね。
うん、よし。
僕達は足早に歩みを進めた。
………保ってくれるといいけど、大丈夫かな………。
………
数分後 sideシルク
フライ〈うわっ!もう降ってきた!!〉
ユウキよりも高い草をかき分けながら進む私達に、大粒の雫が滴り落ち始めた。
………スーナとフライはその上を飛んでいるわ。
………私には雑草が邪魔で殆ど視界が翠一色だけど……。
可能な限り聴覚を使ってる私は、何とか位置関係を掴めているけど、オルトは苦労してるわ……きっと……。
煩わしそうにしているのが聞こえるから……。
コルドは、たぶん頭だけ草から出てるわね。
リーフは、久しぶりに草に埋もれれて楽しそう。
オルト〈スコールか!?〉
シルク〈そのようね。〉
フライ〈ユウキ! ボクをボールに戻してくれる!?〉
[サイコキネンシス]で草をかき分けている私の横で、フライが切羽詰まった様子で慌てふためいた。
ユウキ「うん、わかったよ。」
そう言って、ユウキはベルトに装着している私達のボールから、フライのを取り外した。
そして、それをフライに向けると赤い光が放出され、フライを包み込んだ。
ユウキ「………雨も強くなってきたし、僕もそろそろ姿を変えようかな。」
ライト「服、濡れるしね。 私も元に戻るよ。」
オルト〈ライトは特にその方が良いな。〉
そうね。
ライトは浮遊出来るからね。
言うや否や、ユウキは姿を歪ませ、ライトは光を纏った。
ライト〈……これでいいね。〉
ユウキ〈うん。見にくくなったけど、服が濡れるよりはマシかな?〉
旅している関係であまり着替えを用意できないからね……。
ポケモンである私達にとっては関係ない話だけど………。
リーフ〈そうだよね。〉
スーナ〈うん♪〉
コルド〈………では、行きましょうか。〉
ええ。
私達は
仄かに香る茂みを突き進んだ。
………
更に数分後 sideリーフ
ライト〈みんな、そろそろ茂みを抜けれそうだよ!〉
スーナ〈あと、300mぐらい、かな?〉
僕達の上でスーナ達が歓喜の声をあげた。
僕も満足だよ。
森の木々とは違って、青い草木の香りもたまにはいいね。
オルト〈やっとだな。〉
ユウキ〈うん。あともう……〉
???
〈お母さん………、どこなの………?〉リーフ〈ユウキ? 今誰かの声が聞こえなかった?〉
シルク〈私にも聞こえたわ。〉
? こんな所で、誰だろう…。
僕達の近くから小さくて弱々しい声が聞こえた、
ユウキ〈声がまだ幼かったから………、迷子かもしれないよ。〉
スーナ〈たぶんそうだよ♪ 捜したほうがよくない?〉
コルド〈そうだな。 親も心配しているはずだ。それにこの雨、体温が低下したら大変だ。〉
本当にそうだよ!
あれから弱まるどころか強くなってきたから……。
もし、炎タイプとか地面タイプなら尚更大変だよ!
ライト〈わたし達が空から探してみるよ!〉
ユウキ〈じゃあ僕達は中から捜すよ。 相変わらず雨は強いけど、みんなも良いよね?〉
ユウキ、言われなくてもそのつもりだよ!!
僕達は一言、声を揃えて捜索を開始した。
…………雨が打ちつける音で声が聞きとりにくいけど………。
………
sideシルク
ユウキ、もちろんよ!
ユウキならそう言うと想っていたわ!
シルク〈声が聞こえたから、私は[テレパシー]で呼びかけでみるわ。〉
ライト〈じゃあわたしも、使ってみるよ。〉
コルド〈その方が、雨の音にかき消されないですからね。〉
コルドの言う通りね。
オルト〈ああ、頼んだ。〉
ええ、任せて!
私、ライト、コルドは近くにいるはずの姿無き迷い
人に向けて語りかけた。
シルク(私達の声、聞こえるかしら?)
ライト《聞こえたら返事して!》
コルド《居場所がわかるように草を揺らして頂ければありがたいです。》
???〈………!? 誰………?〉
すると、案の定近くから嗚咽の混じった囁きが聞こえたわ。
やっぱり、近くにいるのね?
私は冴えていないなりに、耳に意識を集中させる。
シルク(私達は通りすがりの旅のポケモンよ。)
ライト《……とりあえず、姿が見えないから種族だけ教えてくれる?》
???〈………うん。…………私は……[チルット]だけど………。〉
ライト《うん、わかったよ。みんな、[チルット]だって!》
[チルット]ね?
声からすると、女の子かしら?
スーナ〈[チルット]だね♪?〉
リーフ〈OK!〉
チルット〈………何にん……いるの……?〉
消え入りそうな声が微かにした。
シルク(私を含めて7にんよ!)
チルット〈7にんも……?〉
スーナ〈うん♪………あっ!君だね?〉
見つけたのか、スーナが茂みの中に降りたったわ。
チルット〈…うん。 さっきからしている声って、お姉ちゃんなの?〉
スーナ〈ううん、ウチじゃないよ。 とにかく、この茂みから抜けよっか♪〉
スーナが彼女に優しく語りかける。
チルット〈うん。〉
スーナ〈………見たところ飛行タイプっぽいけど、飛べる♪?〉
チルット〈飛べるよ!〉
安心したのか、弾んだ彼女の声が微かに聞こえた。
スーナ〈じゃあ、行こっか♪ ライト、みんなに伝えてくれる?〉
ライト〈うん、任せて!〉
《見つかったって!みんな、居場所はわかる?》
ユウキ〈ううん。〉
リーフ〈草が邪魔で分からないよ。〉
そうね……、近くにいるとはいえ、この高さだと集まるのも困難ね………。
………なら……、
シルク(なら、私が[シャドーボール]を打ち上げるから、そこに来てくれるかしら?)
目印を出せば、合流出来るわよね?
シルク〈[シャドーボール]!〉
私はすぐに、口元に漆黒の弾を形成して厚い雲に向けて2、3発放った。
コルド《シルクさん、そこですね!》
ユウキ〈何とか見えたよ。〉
リーフ〈案外近かったんだね?〉
オルト〈みたいだな。〉
刹那、あちらこちらから仲間の声が聞こえた。
この様子なら、すぐに集まりそうね。
ユウキ〈……みんな集まった?〉
私の兄が声を張り上げる。
スーナ〈うん、いるよ♪〉
ユウキ〈なら、一応点呼をとるよ! シルク!〉
シルク〈左にいるわ。〉
ユウキ〈オルト!〉
オルト〈右だ。〉
ユウキ〈リーフ!〉
リーフ〈うん。ちゃんといるよ!〉
ユウキ〈スーナ!〉
スーナ〈うん♪〉
ユウキ〈コルド!〉
コルド〈はい!僕はユウキさんの後ろです!〉
ユウキ〈ライト!〉
ライト〈ユウキくん、わたしも、[チルット]の彼女もいるよ!〉
揃ったわね!
スーナ〈みんないるね? なら、ウチらが茂みの外に誘導するよ♪ついてきて!〉
ユウキ〈うん。スーナ、ライト、頼んだよ!〉
スーナ・ライト〈〈任せて!!〉〉
スーナ、ライト、頼んだわよ!
私達はふたりの導きで、茂みの出口を目指した。