とある青年の物語 〜kizuna〜


























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§14 In the rain
eighty-fifth
AM10:00 120番道路 sideユウキ

フライ〈………雨、降りそうだね…。〉
ユウキ「うん。 場合によっては急がないといけないね。」

フライが難しい顔をして空を仰ぎ見た。

確かに、そうだね。

空の雲の色は黒くなってきたし、風も湿っぽい……。

……これは間違いなく、降るね。

でも、ヒマワキシティーに戻るには離れすぎているし、ミナモシティーとも離れてる……。

急いだほうがいいけど、ペリーさんの情報も確かめたいし………。

シルク〈早いうちに調べて雨宿り出来る場所を探した方がいいわね。〉
コルド〈フライさんは地面タイプなので、雨が降ると行動出来なくなりますからね。〉

ふたりも表情を曇らせた。

スーナ〈その時はウチとリーフの出番だね♪〉
リーフ〈僕にとっても、水は命の源だからね。〉
オルト〈草タイプだからな。〉

フライ以外は、行動出来そうだね。

ライト「うん。 とにかく、急いだ方がいいね。」
ユウキ「じゃあ、行こっか。」

その方がいいね。

うん、よし。

僕達は足早に歩みを進めた。

………保ってくれるといいけど、大丈夫かな………。

………

数分後 sideシルク

フライ〈うわっ!もう降ってきた!!〉

ユウキよりも高い草をかき分けながら進む私達に、大粒の雫が滴り落ち始めた。

………スーナとフライはその上を飛んでいるわ。

………私には雑草が邪魔で殆ど視界が翠一色だけど……。

可能な限り聴覚を使ってる私は、何とか位置関係を掴めているけど、オルトは苦労してるわ……きっと……。

煩わしそうにしているのが聞こえるから……。

コルドは、たぶん頭だけ草から出てるわね。

リーフは、久しぶりに草に埋もれれて楽しそう。

オルト〈スコールか!?〉
シルク〈そのようね。〉
フライ〈ユウキ! ボクをボールに戻してくれる!?〉

[サイコキネンシス]で草をかき分けている私の横で、フライが切羽詰まった様子で慌てふためいた。

ユウキ「うん、わかったよ。」

そう言って、ユウキはベルトに装着している私達のボールから、フライのを取り外した。

そして、それをフライに向けると赤い光が放出され、フライを包み込んだ。

ユウキ「………雨も強くなってきたし、僕もそろそろ姿を変えようかな。」
ライト「服、濡れるしね。 私も元に戻るよ。」
オルト〈ライトは特にその方が良いな。〉

そうね。

ライトは浮遊出来るからね。

言うや否や、ユウキは姿を歪ませ、ライトは光を纏った。

ライト〈……これでいいね。〉
ユウキ〈うん。見にくくなったけど、服が濡れるよりはマシかな?〉

旅している関係であまり着替えを用意できないからね……。

ポケモンである私達にとっては関係ない話だけど………。

リーフ〈そうだよね。〉
スーナ〈うん♪〉
コルド〈………では、行きましょうか。〉

ええ。

私達は(ほの)かに香る茂みを突き進んだ。



………

更に数分後 sideリーフ

ライト〈みんな、そろそろ茂みを抜けれそうだよ!〉
スーナ〈あと、300mぐらい、かな?〉

僕達の上でスーナ達が歓喜の声をあげた。

僕も満足だよ。

森の木々とは違って、青い草木の香りもたまにはいいね。

オルト〈やっとだな。〉
ユウキ〈うん。あともう……〉
???〈お母さん………、どこなの………?〉
リーフ〈ユウキ? 今誰かの声が聞こえなかった?〉
シルク〈私にも聞こえたわ。〉

? こんな所で、誰だろう…。

僕達の近くから小さくて弱々しい声が聞こえた、

ユウキ〈声がまだ幼かったから………、迷子かもしれないよ。〉
スーナ〈たぶんそうだよ♪ 捜したほうがよくない?〉
コルド〈そうだな。 親も心配しているはずだ。それにこの雨、体温が低下したら大変だ。〉

本当にそうだよ!

あれから弱まるどころか強くなってきたから……。

もし、炎タイプとか地面タイプなら尚更大変だよ!

ライト〈わたし達が空から探してみるよ!〉
ユウキ〈じゃあ僕達は中から捜すよ。 相変わらず雨は強いけど、みんなも良いよね?〉

ユウキ、言われなくてもそのつもりだよ!!

僕達は一言、声を揃えて捜索を開始した。

…………雨が打ちつける音で声が聞きとりにくいけど………。

………

sideシルク

ユウキ、もちろんよ!

ユウキならそう言うと想っていたわ!

シルク〈声が聞こえたから、私は[テレパシー]で呼びかけでみるわ。〉
ライト〈じゃあわたしも、使ってみるよ。〉
コルド〈その方が、雨の音にかき消されないですからね。〉

コルドの言う通りね。

オルト〈ああ、頼んだ。〉

ええ、任せて!

私、ライト、コルドは近くにいるはずの姿無き迷い(ポケモン)に向けて語りかけた。

シルク(私達の声、聞こえるかしら?)
ライト《聞こえたら返事して!》
コルド《居場所がわかるように草を揺らして頂ければありがたいです。》
???〈………!? 誰………?〉

すると、案の定近くから嗚咽の混じった囁きが聞こえたわ。

やっぱり、近くにいるのね?

私は冴えていないなりに、耳に意識を集中させる。

シルク(私達は通りすがりの旅のポケモンよ。)
ライト《……とりあえず、姿が見えないから種族だけ教えてくれる?》
???〈………うん。…………私は……[チルット]だけど………。〉
ライト《うん、わかったよ。みんな、[チルット]だって!》

[チルット]ね?

声からすると、女の子かしら?

スーナ〈[チルット]だね♪?〉
リーフ〈OK!〉
チルット〈………何にん……いるの……?〉

消え入りそうな声が微かにした。

シルク(私を含めて7にんよ!)
チルット〈7にんも……?〉
スーナ〈うん♪………あっ!君だね?〉

見つけたのか、スーナが茂みの中に降りたったわ。

チルット〈…うん。 さっきからしている声って、お姉ちゃんなの?〉
スーナ〈ううん、ウチじゃないよ。 とにかく、この茂みから抜けよっか♪〉

スーナが彼女に優しく語りかける。

チルット〈うん。〉
スーナ〈………見たところ飛行タイプっぽいけど、飛べる♪?〉
チルット〈飛べるよ!〉

安心したのか、弾んだ彼女の声が微かに聞こえた。

スーナ〈じゃあ、行こっか♪ ライト、みんなに伝えてくれる?〉
ライト〈うん、任せて!〉
   《見つかったって!みんな、居場所はわかる?》
ユウキ〈ううん。〉
リーフ〈草が邪魔で分からないよ。〉

そうね……、近くにいるとはいえ、この高さだと集まるのも困難ね………。

………なら……、

シルク(なら、私が[シャドーボール]を打ち上げるから、そこに来てくれるかしら?)

目印を出せば、合流出来るわよね?

シルク〈[シャドーボール]!〉

私はすぐに、口元に漆黒の弾を形成して厚い雲に向けて2、3発放った。

コルド《シルクさん、そこですね!》
ユウキ〈何とか見えたよ。〉
リーフ〈案外近かったんだね?〉
オルト〈みたいだな。〉

刹那、あちらこちらから仲間の声が聞こえた。

この様子なら、すぐに集まりそうね。

ユウキ〈……みんな集まった?〉

私の兄が声を張り上げる。

スーナ〈うん、いるよ♪〉
ユウキ〈なら、一応点呼をとるよ! シルク!〉
シルク〈左にいるわ。〉
ユウキ〈オルト!〉
オルト〈右だ。〉
ユウキ〈リーフ!〉
リーフ〈うん。ちゃんといるよ!〉
ユウキ〈スーナ!〉
スーナ〈うん♪〉
ユウキ〈コルド!〉
コルド〈はい!僕はユウキさんの後ろです!〉
ユウキ〈ライト!〉
ライト〈ユウキくん、わたしも、[チルット]の彼女もいるよ!〉

揃ったわね!

スーナ〈みんないるね? なら、ウチらが茂みの外に誘導するよ♪ついてきて!〉
ユウキ〈うん。スーナ、ライト、頼んだよ!〉
スーナ・ライト〈〈任せて!!〉〉

スーナ、ライト、頼んだわよ!

私達はふたりの導きで、茂みの出口を目指した。

@ ( 2013/10/24(木) 00:02 )